« 大丈夫なのか?と心配になる話 | トップページ | 今日のぐり「かねや」&「荒木屋」 »

2009年7月25日 (土)

久しぶりの新型インフルエンザ

最近はすっかり話題にのぼることも少なくなった新型インフルエンザですが、むしろ一向に感染の広がりが終息していないことが最近の話題となっていることは以前にもお伝えした通りです。
これは日本だけの話でも何でもなくて、全世界的に見ても同じ傾向にあるということが知られているわけですが、これはどう解釈するべきなのでしょうか?
実は以前の大流行においても同様に水面下で感染は拡大していたが、今回のような迅速診断技術がなかったから判明していなかっただけなのか、それとも実際今までと伝染の勢いが違うということなのか、疫学のみならず生物学的な面からも早急な検証が待たれるところです。

新型インフル「前代未聞のスピード」で拡大、WHO(2009年07月18日AFP BB News)

【7月18日 AFP】世界保健機関(World Health Organization、WHO)は17日、新型インフルエンザA型(H1N1)の感染が「前代未聞のスピード」で世界中に拡大していると述べた。一方、今後は感染者数の発表をやめる方針を明らかにした。

 WHOはウェブサイトで、今回の新型インフルエンザは過去のインフルエンザウイルスが6か月以上かかって拡がった範囲に6週間足らずで拡がったとし、新型インフルエンザが前代未聞のスピードで世界的に拡大していると警告。個々の感染者数を数えることはもはや新型インフルエンザ感染リスクの評価に必要ないと説明している。

 方針転換の理由は、新型インフルエンザの予想外の展開やパターンをつぶさに監視することに各国が資金を回せるようにするためだという。また、感染者の症状が比較的軽く、大部分は治療をしなくても1週間程度で回復することも一因だという。

 WHOが6日に発表した最後の統計では、4月以降に確認された感染者数は、136の国と地域で死者429人を含む9万4512人だった。

WHOもこのように言っている通り、既に個々の症例把握にさほど意味はないのは誰でも判ろうという状況ですから、日本でもこの24日から検査は原則しないという方針になってきました。
国としてこうした方針となってくれば日本人の場合そもそも飽きっぽく冷めやすいという一面がありますから、様々な基礎疾患持ちの患者さんで混雑する外来で「新型かどうか心配で心配で!」と大騒ぎしながら飛沫をまき散らす患者さんが減ってくれるんじゃないかと胸をなで下ろす思いの先生方も多いのではないでしょうか?
日本人はタミフル信仰が世界でも最も強力とも目されていますが、新型であれ在来型であれ元気の良い健常人なら病院で待つより大人しく寝ておいた方がよほどいいという基本をもう一度思い出していただきたいし、医者の方でも「万一のことがあるといけないので」などと何でもかんでも病院に来させるという前時代的対応はいい加減卒業しなければならないでしょうね。

新型患者の届け出基準を改正―24日から集団サーベイに(2009年7月22日CBニュース)

 厚生労働省は7月22日、新型インフルエンザ患者の届け出基準などに関する省令を改正し、同日付で各都道府県などに事務連絡を行った。詳細については Q&Aで説明しており、24日から施行する。これにより、患者の全数把握は23日までとなり、24日以降は集団発生の場合にのみ届け出を行う「集団発生サーベイランス」に切り替える。

 今回の省令改正により、大きく変わるのが届け出基準。これまでは医師が新型インフルエンザの患者(疑似症を含む)を診断した場合には、全数報告を義務付けていたが、改正により集団発生でなければ届け出は不要となる。届け出が必要となるのは、患者が所属する施設で、▽新型インフルエンザの確定患者が他に確認されている▽新型インフルエンザが集団的に発生している恐れがある―旨の連絡を保健所長から受けた場合。保健所長からの連絡は、ファクスや電子メールなど書面で行う。
 これ以外にも、同一の施設に所属するインフルエンザ様症状患者を1週間以内に2人以上診察した場合や、問診を行い集団発生の疑いがあると医師が判断した場合には、患者が所属する施設の名称と所在地、その施設でどのような症状の患者がどの程度発生していると推測できるかを保健所に連絡し、患者の検体を極力採取する。
 保健所は、情報提供に基づき集団感染が発生していると判断した場合には、都道府県や保健所設置市などに報告を行うとともに、患者の検体を入手してPCR検査を実施する。検査の結果、感染が確認された場合には、保健所は医師に集団感染が発生している疑いがあることを連絡し、医師が確定患者としての届け出を行う。

 「患者が所属する施設」に当たるものとしては、学校、社会福祉施設、医療施設、職場、部活やサークル、塾、寮を挙げた。人数の目安は10人以上。学校については、学級単位ではなく、学校単位で集団発生を判断するものとした。集団の規模が小さい家族(家)や、継続的に同一の人が接触するわけではないスポーツクラブやイベントは、「一義的には当たらない」としている。ただし、地域で定期的に開催される大規模なイベントなどは、大規模な感染拡大につながる可能性があるため、イベントの参加者でインフルエンザ様症状患者を複数診断した場合は、保健所への連絡の対象とすることが望ましいとした。

■症例定義
 「38度以上の発熱または急性呼吸器症状」としていたが、「38度以上の発熱かつ急性呼吸器症状」に改めた。急性呼吸器症状の定義は、「鼻汁もしくは鼻づまり」「のどの痛み」「せき」「発熱または熱感、悪寒」のうち少なくとも2つ以上が要件とされていたが、4つのうち「発熱または熱感、悪寒」は削除され、要件も少なくとも1つ以上となった。また、確定患者の診断については、「年齢、基礎疾患、服薬状況などの影響によって、38度以上の発熱を呈さない場合もあることに留意する」と付け加えられた。

■感染状況の公表方法
 全数把握を取りやめるため、確定患者の人数の発表はなくなるが、厚労省健康局結核感染症課の江浪武志課長補佐は、「様式は別途調整するが、今後もサーベイランスの結果については情報提供を行っていく」としている。

臨床的に考えますと、現実的な新型インフルエンザの症状に合わせる形で症例定義が変更されているあたりが要注目といったところでしょうか。

さて、個別の事例で気になる話が幾つか出ていますが、まずは前回も紹介しました大阪府の耐性ウイルス隠しと同様な話がまたもや発生しているということです。
今や大抵のことはネットなどから噂が流れ広まってしまう時代ですから、隠そうとしたところで結局はバレてしまう一方でそのダメージは実際以上に大きくなってしまい、特に公務員のような風評被害で会社が潰れるという心配もない人々にとって損得勘定を考えれば不用意に隠すという行為は明らかに損という時代になってきています。
近ごろではちゃんとした企業ですとこのあたりの対応もかなり巧みになってきたなと感心する例が増えてきましたが、あまり迂闊な行動ばかり取っていますと真っ当なことをやっていても疑惑の目で見られてしまうようになるということを公務員の皆さんも早急に学習した方がいいと思いますね。

新型インフル 県がうそ発表、謝罪 看護師感染を公表せず /佐賀(2009年7月18日西日本新聞)

 新型インフルエンザの感染者発生をめぐり、県が、患者の1人を公立病院の看護師と知りながら「把握していない」と虚偽の発表をしていたことが17日、分かった。患者は16日に感染が判明した7人の中の1人で、多久市立病院の女性看護師だったが、県は「多久市職員という以外は把握していない」と発表した。

 16日の発表では、7人中5人を公務員が占めていたことから、記者から「住民らと接する機会の多い業務に従事した職員は含まれているのか」との質問が出た。これに対し、県健康増進課の岩瀬達雄課長は「把握できていない」と答えた。

 岩瀬課長と鷲崎順危機管理・広報課長は17日に緊急会見し「事実と異なる説明で、おわび申し上げたい」と謝罪。16日に多久市側から「市職員と出さないでほしい」と要望されたといい、「勤務先公表への了解が得られなかったと勝手に解釈してしまった」(岩瀬課長)と経緯を説明した。

もう一つは医学的にはより興味深い事例ですが、新型のインフルエンザ脳症が確認されたというニュースです。

新型インフル感染男児が急性脳炎 後遺症なし、快方へ /神奈川(2009年7月22日日経ネット)

 厚生労働省は22日、新型インフルエンザの感染を確認された神奈川県内の小学生男児が急性脳炎を発症したと発表した。男児は19日に39度の発熱があり、幻覚症状を訴えたため20日に入院。治療薬タミフルを投与されて22日に熱は36度台に下がり、快方に向かっているという。同省は「後遺症もなく重症ではないが、急性脳炎を起こしたという報告は初めて」としている。

 季節性のインフルエンザによる脳炎は、推計で年100~300人発症しているとみられ、死亡したり後遺症が残ったりすることもある。

新型インフルエンザ:感染の小学女児が急性脳炎--国内2例目 /栃木(2009年7月24日毎日新聞)

 ◇発熱とめまいで入院

 県と宇都宮市は23日、新型インフルエンザに感染した県内の小学生女児が感染症法に基づく急性脳炎と診断されたと発表した。国内で2例目。女児は市内の感染症指定医療機関に入院しており、38・5度の発熱とめまいなどの意識障害があるが、意思疎通はできるという。

 県と同市によると、女児は県東健康福祉センター管内(真岡市、茂木町、市貝町、芳賀町、益子町)在住。21日に発熱、せきの症状が出たため、22日に診療所を受診したところ、簡易検査でA型インフルエンザ陽性だった。22日午後11時ごろ、意識がもうろうとするなどの症状があったため、宇都宮市内の病院に救急搬送され、23日に市衛生環境試験所の遺伝子検査で新型インフルエンザと確定した。女児や家族に海外への渡航歴はなく、感染ルートは調査中という。【戸上文恵】

「死亡したり後遺症が残ったりすることもある」とはまた誤解を招きかねない表現ですが、小児期に発症するインフルエンザ脳症は重篤で予後も悪いと言うことが知られていて、かつては「1/3は死亡、1/3は助かっても後遺症」などとも言われたくらい悲惨な疾患でした。
近年になってようやく病態の解明が進んだこともあってようやく元気に回復する症例も増えてきたということですが、相次いで発症者が見つかったということになると在来型と比べて発症率はどうか、予後はどうなのかといったあたりも気になってくるところですよね。

元々は流行期に出てくる病気ですからこんな時期にこんな話題が出てくるというのも何とも妙な感じがする話ですが、特に新型の場合は典型的なインフルエンザ症状を呈する例はむしろ少ないという話もあるだけに、現場において診断に迷うということも多々あるのではないかとも思われ、実際の診療に当たっている先生方には頭の痛いところではないでしょうか。

|

« 大丈夫なのか?と心配になる話 | トップページ | 今日のぐり「かねや」&「荒木屋」 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

現場ではインフルエンザ脳症ガイドライン
http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/051121Guide.pdf

脳症届出基準
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-03.html
を参考にしながらですが、まず、状況によってインフルエンザ脳症疑いあるいは脳症と届けて同時にPCRまでとなると思うのですがどうでしょうか

投稿: 京都の小児科医 | 2009年7月25日 (土) 13時23分

これらの症例がインフルエンザ脳症かどうかの検証もあとから必要と思います。

予想としては新型インフルエンザによる肺炎による死者が出ていると思っていたのですが。。。新型インフルエンザ脳症が先に出て、日本の特異な状況にすこし驚いています。

たぶん、症例が増えてからかも知れませんがタミフルの因果関係とか他の内服はとかのご指摘をされる
関連団体のコメント待ちの状況でしょうか

投稿: 京都の小児科医 | 2009年7月25日 (土) 13時31分

末端診療に従事する大多数の医者は「子供の病気で良かった…」と胸をなで下ろしているんじゃないかとも思うところですが(苦笑)。
それはともかく仰るとおりで、意外に感染者数が増えてきているという割に重症化の話が聞こえてこないなと思っていた矢先にこのニュースですから、少しばかり意表を突かれたような気になっているところではあります。
これだけ若年患者が多発しているのに未だに死者が出ていないというのは良いことではあるんですが、国毎の致死率とタミフル等の投薬歴などを比較してみると面白いデータが出てくるかも知れませんね。

投稿: 管理人nobu | 2009年7月26日 (日) 19時19分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/45733714

この記事へのトラックバック一覧です: 久しぶりの新型インフルエンザ:

« 大丈夫なのか?と心配になる話 | トップページ | 今日のぐり「かねや」&「荒木屋」 »