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2009年7月 8日 (水)

産科絡みの最近の話題 不景気の最中に厳しい話が多いようですが

というわけなんですが、先日も少しばかり紹介しました妊婦健診の公費補助の話とも絡めて、本日まずはこちらの記事から紹介してみましょう。
しかしこれ、控えめに言っても誇大広告とも言うべき話じゃないかと思うのですが、もっと妊婦の皆さんは文句を言ってしかるべきなんじゃないでしょうかね?

妊婦健診無料じゃない? 産科医ら火消し躍起(2009年7月2日産経新聞)

 少子化対策の目玉として昨年秋に打ち上げられた「妊婦健診の無料化」。緊急経済対策に盛り込まれてスタートしたが、多くの地域で“無料”にはなっていないようだ。妊娠中の女性からは「無料だという話だったのに、違うの?」と、落胆の声が上がり、産科医らは「あの『妊婦健診無料化』という表現だけは、やめてほしい」と火消しに躍起になっている。(佐藤好美)

 東京都内に勤務する会社員、小山内香さん(34)=仮名=は妊娠8カ月。出産予定の病院で2週間に1度、妊婦健診を受けるが、その費用に納得できない。

 「受診した過去6回のうち、2回は1万円以上。それ以外も6000円とか、安くても3000円くらい。昨年から、政治家も、ネットの識者も『14回無料化』って断言していたから、てっきり無料になるとばかり思っていたのに。助成額はどこへ行ってしまったんでしょうか」

 小山内さんの受診先は、国立病院機構の病院(旧国立病院)。出産費用は40万円程度で、地域の“相場”より安く、健診費だけ高いとも思えない。「私の検査費が人より余計にかかるのか、一体どうなっているんでしょうか」

 納得できない小山内さんは自治体に助成の詳細を問い合わせた。回答によると、この自治体の助成額は14回合計で約9万円。「助成額を超えた分は、自己負担をしていただいています」と聞いて、ガックリした。
(略)
 選挙を控え、政治家の街頭演説では、いまだに「妊婦健診無料化」の言葉が出る。しかし、ある産婦人科医は「助成拡大はありがたいが、あの『無料化』という表現だけは、やめてほしい」と漏らす。多くの地域で妊婦健診は無料にはなっておらず、そもそも無料化は難しいからだ。

 別の自治体の保健師も「母子手帳を取りにいらした妊婦さん一人一人に、助成の仕組みを説明して、無料でないことをご理解頂いています」と、誤解の払拭(ふっしょく)に努める。

 妊婦健診への助成は従来、5回分計5万円程度だったが、昨年の緊急経済対策で14回分11万3000円程度に拡大された。若い夫婦には、「1回あたり数千円」の健診費負担は大きく、未受診で飛び込み出産する妊婦は産科の悩みの種だったからだ。

 しかし、助成は拡大されても、多くの地域で無料にはなっていないようだ。理由は複数ある。第1に助成範囲が限られていること。対象は血液検査3回、超音波検査4回、子宮頸(けい)がん検査などを含む「標準的に必要な」検査14回分。主治医によっては、これで収まらないケースも多い。

 ある産婦人科医は「超音波検査を毎回行う先生もいる。負担は生じるが、しないと、妊婦さんから『手抜きじゃないか』と言われることもあり、やめるのも難しい」と漏らす。

 第2に、妊婦健診は本来、自由診療だから値段が一律でない。医療機関によって健診内容やサービスも違えば、同じ検査で費用が違うこともある。助成で窓口負担が一律ゼロになるとはかぎらない。

 さらに、最大の理由は自治体の助成額がまちまちなこと。厚生労働省によると、都道府県平均の公費負担額は表の通りで、全国平均は8万5759円。全国最低の大阪府守口市(1万2500円)と、最高の北海道初山別(しょさんべつ)村(15万円)とでは13万円超の違いが出た。

 国が担保した妊婦健診の費用は「14回分で1人当たり11万3000円相当」(厚労省母子保健課)で、地方交付税交付金と補助金を充てた。しかし、地方交付税交付金の使途は自治体の裁量に任される。税収が逼迫(ひっぱく)し、すべてが健診費に回らなかったり、予算が十分取れなかったりした自治体もあるようだ。

 加えて、国の助成が2年間の時限措置なのも、自治体に二の足を踏ませる要因。自治体によれば、「後のことが分からないまま、多額の公費助成をして、2年後にはしごを外されてはたまらない」というわけだ。(略)

このあたりの経緯については前回にも取り上げましたが、二年後と言わずすでに現在進行形でこれだけの問題が噴出していることを見ても、政治家達が目先の耳障りの良い思いつきで適当なことをやっていると非難されても仕方のないところかとも思うわけですが…
これだけでもショックなところにさらに全国の妊婦さんには頭の痛い話でしょうが、こんな話も出ているようなんですよね。

約4割の産科施設、今年度中に出産費用増額を予定―厚労省研究班(2009年6月22日ロハス・メディカル)

 厚生労働省の研究班(可世木成明・日本産婦人科医会理事代表)の調査に答えた分娩を取り扱う施設のうち、約4割を占める703施設が今年度中に出産費用を増額する予定であることが分かった。(熊田梨恵)

 1月に分娩を扱う全国の病院と診療所2886施設を対象に調査し、1707施設から回答を得た。

 分娩費用を今後増額する予定と答えた施設は892施設と過半数。全体の41%に当たる703施設が2009年度中に分娩費用を増額する予定と答えた。
(略) 
 分娩費用を増額する理由(複数回答)は、「医療安全の維持・向上」が33.3%と最多で、「医師・スタッフのQOLを改善し、離職を防止」が30.6%、「産科医療補償制度に加入したため」「診療機器・施設等の充実」が各29.8%など。

 全国の出産費用の平均額は約42万4千円だった一方、病院側が求める「適正」な分娩費用の平均総額は約53万4956円。「現在の分娩費用にすべての要素(人件費、検査費用など直接経費、医師賠償責任保険など間接経費)が含まれているか」との問いに対し、60.7%の施設が「含まれていない」と回答した。

 分娩費用を増額できない理由には、「地域住民の所得が低い」22.0%、「近隣の私的同業施設と競合している」20.3%、「近隣に市議会等の意向で分娩入院費用が安い公立中核病院がある」15.1%、などが上がった。

 分娩費用1件当たり平均額を設置主体別に見ると、「都道府県立」が約37万2千円と最も低く、「市町村立」約38万7千円、「厚生連」約41万2千円、「社会保険」約42万千円と続く。最も高い「大学病院」は約47万9千円だった。
(略)
 研究班は記者会見で、「地方の公的病院が分娩費を非常に安く据え置いてきており、現在の医療崩壊の基礎になってきた」との見解を示した。また、「採算を度外視した病院が多く、しかもそれらは地域の中核病院。都道府県立や市町村立の分娩費用が低額であることが明らかになり、近隣医療機関への影響が大きい」と、産科診療所などに与える影響を示唆した。
 公立病院の分娩費用が他の設置主体に比べて低額になることについて、「公立病院の分娩費用は市議会などで決まるため、病院独自で決められないのが問題」と、分娩費用を安く抑えることが市議の住民に対するアピールになっているとした。平均額が最も高かった大学病院については、「あまりにも安いと考えている。お産の時に出て行ってそこだけで処理するのではなく、安全を担保するためによる当直をしたりしているが、その対価が全く考慮されていない」と述べた。

 また、研究班は「地域住民の所得水準」が分娩費用に大きな影響を与えていると分析。
(略)
 研究班は、医師数や産科病床数、分娩数などは分娩費用総額と相関せず、「地域住民の所得水準」と「分娩費用が安い公立病院がある」に相関性があるとした。その上で、「安全を提供するシステムに差はないはず。地方を活性化させるためにも、都市部と同等の費用が望ましい」と主張。現在の周産期医療の危機的状況を打開するには分娩費用の増額が求められると要望した。

お産に限ったことではありませんが、求められる標準的な医療水準というものが年々向上してきており、当然ながらそれに必要な経費が上がる一方であるのに対し、医療の質的な担保というものが更に厳しく求められている昨今の世情においては、一昔前にあったような「薄利多売」方式も成立しがたいという状況にあります。
妊婦さんにすれば一人一人の分娩の扱いが丁寧になったということであれば喜ばしいことですが、経営的に考えるなら顧客の数が減り一人当たりの経費支出は増え、一方で平均単価が上がらないとなればどう見ても厳しくなるのは当然ですよね。
現在の医療レベルで求められる水準で経費を積み上げていくと37万円などということにはならないはずですが、記事中にもありますようにここでも市民の票を期待する政治家というものが医療の実態を歪めてしまっているということでしょうか。
結局その歪みが回り回って当の市民に返ってくるのだと考えれば、一体これは選良として誰のために何をやっているのかと思うような話ではありますよね。

お産というのは病気ではないということで保険診療外の自由診療扱いですが、今まで何となく横並びの価格設定でやってきた医療の側にも問題はなしとしません。
医療の安全にかかるコストに関してはきっちりと算出した上で正当なコストに対しては受益者に応分の負担をいただくのが筋でしょうし、その上でコスト負担が無理だという人々に対しては安全を削っても負担を減らすというプランを提示するとか、公的に何らかの補助をしていくことを求めるとか言うことであれば話は判ります。
しかし近所の公立病院が安売りしているからうちも赤字価格でやりましょうということでは何ら主体性や正当性がないばかりか、その分の収支をどこかで埋め合わせているということであれば不要の検査なり処置なりでもやっているのかと要らぬ疑惑も招きかねないですよね。
安くもない上に一生にそう何度もないイベントだけに、お産費用は何をするためにどれだけのコストがかかっています、そのエヴィデンスはこれですと明細をはっきり示してもらった方が妊婦さんの方でも安心するのではないかと思うのですが、まだまだこのあたりの顧客対応に関して医療業界は他業界の水準に遠いかなという気もしています。

さて、産科絡みの話題として産科無過失補償制度については以前にも何度かその問題点を取り上げてきたところです。
とりわけ以前から保険料が余った場合にどうするのかといった下世話な話で盛り上がっていて、これについては保険会社の儲けになるとか、強制加入のくせに儲けを出すのかとか紛糾していましたが、最終的なところではこんな話に落ち着いたとのことです。

対象者300人未満で保険会社に利益-産科補償制度(2009年6月30日CBニュース)

 日本医療機能評価機構は、「産科医療補償制度」に剰余金が生じた場合、保険会社が運営組織に返還する仕組みの骨格を固めた。補償対象者が年300人以上の場合、保険会社は、掛け金の総額から経費を引いた「補償原資」から、20年分の補償金支払いの必要額を差し引いた全額を返還する。補償対象が「300人を下回る場合」には、補償原資のうち300人分の保険金を超える部分を全額返還し、差額分を保険会社が取得する。

医学的視点による公平な審査を-産科補償審査委が初会合
 返還された剰余金の使途は制度の運営などに限定するが、具体的な対応は実際の剰余額を踏まえて議論する。また、逆に欠損が生じた場合には、決算見込み以降の保険契約で、保険料の引き上げなどを検討する。

 今年1月からスタートした産科医療補償制度は、分娩に関連して発症した重度脳性まひ児に対し、看護や介護のための補償金として総額3000万円が支払われる仕組み。一分娩当たり3万円の掛け金(保険料)が必要になり、同機構では年500-800人程度が補償対象になるとみている。補償対象者数が予測を下回る場合は剰余が生じ、逆に上回れば欠損が生じることになる。

 制度運営で生じた剰余金の取り扱いについては6月15日の運営委員会で話し合い、機構側は当初、補償の対象が見込み下限値(500人)の半分に当たる「250人を下回る場合」に、補償原資と250人分の保険金額の差額を返還する案を提示していた。

 しかし、委員から保険会社が利益を得にくいことを指摘する意見があり、今回、「300人を下回る場合」に改めた。同機構では「補償対象が300人を下回ることはまずないと見込んでいる。(保険会社には)公的な制度としての色合いが強いことを理解して、ご協力いただきたい」と話している。

保険会社も適正な利益を出していかなければ会社が続きませんから、良い具合の落としどころというものが見つかればいいわけですが、このあたりは実際にどれくらいの数になるものかはっきりするまで何とも言えませんかね。
ただ脳性麻痺の発生数が年間3000人とされている現状で、実際に対象者が300人そこそこを巡るような数となるのであれば、これは明らかに補償制度として過少過ぎるという批判は出るでしょう。

結局のところこの制度、補償対象の認定と言う部分で大いに荒れそうな予感が大なのですが、補償対象から漏れた方々の批判の向く先が取り上げた産科医に向くのか、それとも審査委に向くのかといったあたりにもどうしても注目せざるを得ないところです。
その意味では以前にも書きました通り症例を検証して出すところの報告書の書式がどうもはっきり見えてこないと言う話が気になるところなんですが、いったん始まってしまうと矢継ぎ早に申請が出てきそうなだけにもしかすると大騒ぎになるかも知れないですね。
少なくとも申請しながら補償の対象から漏れたという方々にとっては納得のいく報告書を出してもらわなければ心情的にも収まりがつかないだろうとは思われるところですが、医者という手合いはこの種のプレゼンテーション能力に欠けている人間が結構多いものですから、またぞろ余計な火種になりはしないかと相当に不安ですが…

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コメント

無料と思わせて子供を産ませようとするとは・・・とんでもない連中がいるもんですね。こんなあこぎなことを考える連中がいるから少子化が加速するんです。

投稿: ponpon | 2009年7月 8日 (水) 18時14分

逆にこれをどう考えると健診無料化という表現になるのか、その方が不思議な話です。

投稿: 管理人nobu | 2009年7月 9日 (木) 09時20分

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