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2009年7月30日 (木)

周産期関連の最近の話題から

つい昨日民主党のマニフェストでは医療政策を重視しているという話をしたところで、これは対案となる自民党側のそれがどうなるのか注目されるところだといったことを書いた記憶があるのですが、実はその直後に自民党側からもマニフェスト案の概略が明らかになってきました。
民主党案と対比して医療制度にどのような提言があるのかと期待していた人も多かろうわけですが、蓋を開けてみますと何とほとんど目立った話がないという驚くべき内容らしく、正直肩すかしを食らったという印象が拭えないところです。
昨日も国民の最も関心の高い分野は社会補償問題だと言うような話がありましたが、これは月末の正式発表時までに更に煮詰めてくるということなのか、あるいは何も言及がないということは今まで通りの現状維持ということなのか、今後政策討論などを通じて垣間見えて来るであろうそのあたりの本音を見ていかないことにはコメントのしようもない話です。

しかしまあ、そう来たか…と口をあんぐり開けているばかりでも仕方がありませんので、本日は表題の通りの話を見繕ってみましょう。
まず先日はこういう記事が出ていたわけですが、ご覧になりましたでしょうか。

脳性まひ回避の可能性は明言せず(2009年7月23日CBニュース)

7月23日に開かれた日本医療機能評価機構の原因分析委員会の第6回会合では、分娩に関連した脳性まひの発症の原因分析をまとめた報告書案について意見交換が行われた。この中で、前回の会合で争点となっていた脳性まひ回避の可能性の記載については、明言を避けることで決着。責任追及を懸念する医療者らに配慮する形になった。

岡井崇委員長(日本産科婦人科学会常務理事)は会合の冒頭、脳性まひ回避の可能性の記載について、現在、日本内科学会などが実施している「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」を参考にすることを提案。
同モデル事業の「評価結果報告書」のマニュアルでは、「もし何々があったら何々が生じなかったはず」といった結果を知った上で診療行為を振り返って評価することについて、「将来への改善に向けての必要な提案は再発防止への提言の章で述べられるべきもの」としている。
「再発防止への提言」は、「どうすれば死亡を回避することができたのかという視点での評価」としており、結果を知った上で臨床経過を振り返り、死亡を回避できる可能性をすべて考え、実際に行われた診療行為を勘案してできる限り提言するとしている。

岡井氏の提案に対して委員からは、「提言した内容が裁判の時の資料として利用されていくことに懸念がある。思い切った報告書を書きづらくなる」などの意見が出た。岡井氏は「裁判に訴える権利は止められない」と強調。ある程度の期間、訴訟は避けられないとの見方を示しながらも、司法関係者の制度への理解が進み、「ある程度の常識的な判断をしてくれるようになってくれればいい」との期待感を表明し、訴訟も収束していくのではないかとした。

会合では、前回の模擬部会で示された原因分析報告書の原案と、この提案を踏まえた案が提示された。脳性まひ回避の可能性の記載について、原案では「胎児機能不全と診断され、吸引分娩とクリステレル胎児圧出法で児が脳性まひとなったことを考えると、胎児機能不全と診断された午前5時10分、もしくは胎児心拍数の回復が見られなくなった午前5時30分以前に速やかに帝王切開によって児が摘出されていたら、脳性まひは回避できた可能性があると考えられる」と明記していた。
しかし、この日提出された案では、「当該分娩機関での診療行為の安全性向上に当たり、以下の点を考慮する必要がある」として、「吸引分娩で児の摘出が困難な場合には、早期に鉗子分娩か帝王切開に切り替える方がよい」「吸引分娩とクリステレル胎児圧出法の併用は、胎児への負荷を考慮すると、 1、2回の施行で児を摘出できると判断された場合にのみ行うべきである」など、「提言」の形に修正されていた。

原因分析報告書案、大筋で固まる―産科医療補償制度(2009年7月27日CBニュース)

 日本医療機能評価機構の「産科医療補償制度原因分析委員会」(委員長=岡井崇・昭和大医学部産婦人科教授)は7月23日、第6回会合を開き、仮想事例を基に事務局が作成し、模擬部会で検討してきた原因分析報告書案を大筋で固めた。同案は、同委員会で審議するための報告書を作成する「原因分析委員会部会」の委員を対象にした説明会で資料として用いられる。説明会は9月に開かれる予定。

 この日事務局が示した報告書案は、▽事例の概要▽脳性まひ発症の原因▽臨床経過に関する医学的評価▽今後の産科医療向上のために検討すべき事項▽関連資料-などで構成されており、関連資料では医学用語の解説などを記載している。
 事務局は報告書案のほか、模擬部会での審議の要約や報告書の原案などを示し、修正個所の確認を行った。これらの資料は、部会の委員を対象に9月に開かれる説明会で、報告書作成の参考“教材”として用いられる。

 会合では、分娩機関から提出されるカルテなどの記載に改ざんがあった場合の対応などについて議論が行われた。
 弁護士の鈴木利廣委員は、「改ざんというよりは後日記載。後日記載が問題になる点は、分析にとって極めて重要なところについて、『なぜここだけ行間にこんなにいっぱい書いてあるのか』ということがある」とし、原因分析委員会の対応としては、「(報告書の)提言の中に付記する程度のことはあり得るかもしれないが、カルテの後日記載と原因分析はかかわりのある部分はないと思う」と述べた。ただ、「後日記載が明らかに出るケースは、標準逸脱が極めて大きい場合に、それを覆い隠そうとしてやるという動機付けがある。後日記載だけを調整委員会で問題にするのではなく、重大な過失があるような事案にこそまさしく、そういうものがくっついて回ることが多いので、その中でやっていけばいいのではないか」とし、「重大な過失」につながる可能性がある場合は、医療訴訟に精通した弁護士らで構成され、分娩機関との間の補償などについての調整を行う調整委員会で対応することを提案した。
 議論を受け岡井委員長は、改ざんを疑い、調べることは、原因分析委員会の役割ではないとした上で、「明らかにおかしいことが見つかった場合は、部会から本委員会に上げてもらう。本委員会で審議し、難しい場合は分娩機関に問い合わせもする。原因分析での結論は調整委員会に上げ、そこで対応するということでいいのではないか」と述べた。

 また、報告書の書き方について、「分かりやすさ」と「報告書としての厳密性」をめぐっても議論となった。岡井委員長は、「医学用語それぞれに括弧で説明を入れるのはやめ、分かりやすい説明を読みやすいところに入れていく。難しい用語については、簡単に説明を付ける」とまとめ、説明をどこに入れるかなどについては今後の検討が必要との考えを示した。

 次回の会合は9月4日に開かれ、報告書に記載する用語などについて審議する。事務局によると、補償申請書類の受け付けは7月から始まっているが、現時点で申請はないという。原因分析委員会部会の審議は早ければ11月に、同委員会での審議は12月に行われる見通し。

何となくまとめてしまったかなという印象も拭いきれないところはありますが、ここで注目すべきは岡井崇委員長(日本産科婦人科学会常務理事)のコメントでしょうか。
報告書に記される「再発防止への提言(どうすれば死亡を回避することができたのかという視点での評価)」に関して「裁判に証拠として利用されることになれば書く側も萎縮してしまうのではないか」という懸念に対し、同氏は次のような見解を示したということです。

岡井氏は「裁判に訴える権利は止められない」と強調。ある程度の期間、訴訟は避けられないとの見方を示しながらも、司法関係者の制度への理解が進み、「ある程度の常識的な判断をしてくれるようになってくれればいい」との期待感を表明し、訴訟も収束していくのではないかとした。

前段部分は全くその通りと思われるのですが、後半部分の言わば司法との阿吽の呼吸に対する期待感というものは、かねてネット上でも非常に議論が割れているところではありますよね(司法に対する信頼度の違い、という言い方も出来るのかも知れませんが)。
こうした形での運用を実際に行っていくのだということになれば、最終的には何年、あるいは何十年という経過の中で実際にどれくらい訴訟絡みとなって報告書が利用されていくのか、それに対する司法判断はどのようなものなのかと言ったものを書き手の側にフィードバックしながら何をどの程度書くかという現実的な落としどころを探っていくしかないのかも知れません。

当然ながらその間には適正であるべき水準からすると過度、あるいは過少な報告書の記載によって患者側、あるいは医療側それぞれに望ましからざる不利益を被る可能性があるわけですが、個人的にはそうした過渡期の被害よりも報告書の記載レベルの不統一、書き手によるバラツキをいかに減らすかということの方が重要かなという気がしています。
世に言うトンデモ判決を導くともいうトンデモ鑑定なるものがしばしば一般的医学常識から解離していると批判されていることを思えば、他人の仕事を評価して報告書をまとめる側にこそ何かしらのチェックシステムが必要なのではないかなという気がするのですが、そのあたりは今ひとつ情報が流れてきていないようにも思えますね。

ところでこうした医療補償制度の議論とも関連無しとしない話題がこちらなのですが、まずは記事から引用してみましょう。

NICU長期入院の子どもを在宅に―都が来年度にモデル事業を実施(2009年7月22日ロハスメディカル)

 東京都は来年度から2年間、新生児集中治療室(NICU)に長期間入院している子どもがスムーズに在宅に戻れるよう、院内に退院支援コーディネーターを配置するなどのモデル事業を実施することを決めた。慢性的なNICU不足の解消を図ることが目的で、国内でも初の取り組みと見られる。(熊田梨恵)

 昨年秋に都内の妊婦が複数の医療機関に受け入れを断られて死亡した問題から、NICUが不足しているために受け入れ「不能」となっている周産期救急医療の現状がクローズアップされている。このNICU不足の理由の一つに、NICUに1年以上入院する「長期入院」の子どもがいることが挙げられている。厚労省研究班は、国内でNICUに1年以上入院する新生児は年間約200-300人おり、200-250人は在宅か療養施設に移行する必要があると指摘している。

 ただ、長期入院児が退院できない理由としては、つききりの医療や介護ケアが必要になることによる家族の負担感や、訪問看護やデイサービスなど地域の医療・福祉サービスの不足などが挙げられており、なかなか整備が進んでいない。このため、国は今年度予算で、退院コーディネーターの配置などを含めた長期入院児への対応策などを支援している。

 東京都は7月22日にNICU退院支援体制検討会(座長=多田裕・東邦大医学部名誉教授)の初会合を開催。長期入院児の在宅移行を支援する地域ぐるみの取り組みを、都立墨東病院を総合周産期母子医療センターに持つ区東部地域(墨田・江東・江戸川の3区)で、来年度から2年間実施することを決めた。院内外の関係する医療・福祉機関と家族間を調整したり、人工呼吸器など在宅医療に必要な機器の使用法を教えたりする「退院支援コーディネーター(仮称)」を設置し、子どもがスムーズに在宅生活に戻れるよう促す。コーディネーターの職種には、医療ソーシャルワーカーや看護師、保健師などが想定されている。

 事業の中では地域のネットワーク体制も構築する。在宅医療を行う家族への重要なサポート役となる一方で、人材不足などによる経営難が問題となっている訪問看護ステーションに対しては、医療保険で提供できる限度を超えて訪問看護を行った場合の支援、重症心身障害児をケアできる訪問看護師の育成、事務員配置などに対する財政的支援も考えられている。このほか、急に容体が悪くなった子どもを受け入れる周産期母子医療センターに対する支援や、母親同士のピアカウンセリングの場の提供、医療機関に向けた乳幼児用の在宅医療マニュアルの作成も示された。

 都はモデル事業を基に退院支援のガイドラインを作成し、都内全域に取り組みを広げていくことを目指している。多田座長は会合中、「1年以上入院する子どもが東京都からいなくなるようにしたい」と述べた。

 このモデル事業について厚生労働省は、「他の自治体では聞いたことがない」と話しており、国内でも初の取り組みと見られる。

 都内のNICUは現在240床。都が2007年に実施した調査では、調査日にNICUに入院していた123人の入院児のうち、44人が1年以上入院していた。

東京のNICU不足の一端につきましては以前にも取り上げまして、妊婦救急搬送困難の一因となっているのではないかとはかねて指摘されてきたところですが、これに関して東京都副知事の猪瀬氏が面白いことを言っているのも併せて参照いただければと思います。
それはともかくとして、今の時代「三ヶ月たったら容赦なく病院から追い出された」といった話は世にあふれているわけで、病院側としても在宅でやれる患者であればいつまでも病床を占有させておくような余裕はどこにもないわけです。
特にNICUを設置しているような基幹病院ではそれこそ次から次へと新しい患者が運び込まれてきて症状が安定次第ところてん式に患者を回していかなければならないはずであるのに、在宅でのケアを検討できるような安定期の患者さんが年余の期間にわたって入院をしているなどということが何故起こり得るのか、ということですよね。

周産期医療に限らず(というより、医療業界に限らず)普通ならあり得ないということが起こっていく背景を見ていくと、その始まりに何かしらのトラブルが存在していたという事例は結構あるものです。
しばしばあることには手術後などに何かしらの予期しないトラブルなり合併症なりがあった、その対応を巡って患者側と病院側の間で話がこじれた、結局「どうしてくれる」「元に戻せ」と患者がいつまでも病室を占有しているといった事例があります。
特に新生児の場合は何が過失による事故で何が不可避的事例かといった話も誰にも判らないあたりに医療側、患者側双方にとっての対応の難しさがあることは、産科無過失補償制度を巡る一連の議論の中でもシメされてきたところですよね。

ただここでも初期の状況はどうあれ、そこで消費されるべきでない医療資源が消費された結果として他の医療資源を必要としている誰かが不利益を被っているという点ではやはり結局は医療の受益者たる患者側にとっても不幸な状況であるということは間違いないわけで、これも何とかして解決していかなければならない課題の一つと言えるでしょう。
産科の無過失補償制度が直ちに理想的な運用が出来るわけもないことですし、その過程で誰かが泣きを見るということも多々あるだろうとは思いますが、少なくとも軋み続けている医療の現場が現状より少しでも円滑に回るようになる、少なくともそのための潤滑剤として働く制度となって欲しいというのが多くの関係者の切に願うところではないでしょうか。
そうでなくとも患者側にとって「退院強要=見捨てられる」という感覚は未だ根強いですから、話の流れで色々とドロドロした部分も見え隠れしてくる可能性は多分にあるかと思いますが、東京都には是非とも少なからぬ苦労をしていただいて、どこにどんな問題があるのか徹底的に洗い出していただきたいところですね。

さて、周産期医療と言えば今やマンパワー不足が労働条件をますます過酷なものとし、更なるマンパワー不足を招くという悪循環の中にあることはかねて知られているところです。
なかなか一朝一夕に改善する有効な手だてもないかと思われているところですが、搦め手の方角からこんな提言も出ているようなのでご紹介しておきましょう。

「産科医療はITで補完できる」、香川大学の原特任教授が強調(2009年7月15日ITpro)

 「約30年間産科医として働いた後、医療情報システムの世界に足を踏み入れた。産科医として医療現場にいた当時から将来の周産期医療に危機感を抱き、ネットワークを介した医療情報の活用を考えていた」。香川大学瀬戸内圏研究センターの原量宏(かずひろ)特任教授は2009年7月15日、「国際モダンホスピタルショウ2009」の主催者セミナー「かがわ遠隔医療ネットワークと周産期電子カルテ構築の経緯」の冒頭でこう語り、産科医不足による産科医療の危機を救うために医療のIT化が重要であると強調した(写真)。

 原特任教授は厚生労働省の調査を引用して産科医療の背景を説明。1994年から2006年にかけて、医師総数は20.6%増加した一方で産科・婦人科医は13.1%減少した。男女構成では徐々に女性医師の割合が高くなってきた。

 こうした産科・婦人科医の構造の変化から、「周産期医療の第一線で長く働ける医師が減ってきている。医師が減れば、医師のいる施設に検診からお産まで、あらゆる目的で妊婦さんが殺到する。医師は多忙を極め、病院側は訴訟などのリスクを考えて産科を閉めることになる」と現在の悪循環を指摘した。

 こうした産科医療はITで補完できると原特任教授はみる。その一つが「在宅妊婦管理システム」だ。胎児の心拍数と母体の子宮収縮を遠隔で観察する仕組みを指す。胎児の心拍数と母体の子宮収縮を専用機器を使って測定すると、測定結果を自動的に専用サーバーに伝送する。同時に医師の携帯端末にメールを自動送信し、医師はメール本文のURLにアクセスすると胎児の心拍と子宮収縮の状況をグラフで確認できる。専用サーバーは香川県にある四国電力のシステム子会社のSTNetに設置する。

 「システムが普及すれば、離れたところにいる妊婦さんの状態を複数の医療施設で把握できるようになる。普段の検診は診療所で、お産は病院で、と目的ごとに医療施設を使い分けることができ、個々の産科への負担を減らせる」と原特任教授は説明する。今後こうした仕組みを血糖値や血圧に変えて、高齢者向けのシステムとして利用することもできるという。

 こうした医療情報ネットワークは、開始当初から収益が見込めるわけではないので、企業が先行して始めるのは難しい。国の予算を獲得して企業を巻き込んで実証実験を進めている原特任教授は、「国として、医療のIT化の予算は今後も減らさないでほしい」と訴えた。
(二羽 はるな=日経コンピュータ)

いやまあ、収益性がどうとか言う以前にですね、個人的には色々と面白いデバイスを使ってみることに大いに賛同なんですが、一般臨床に導入してどうなるかということを考えた場合に、使う側のヒューマンファクターも含めた現代の産科医療現場の状況にももう少し考慮された方がよいのではないかと愚考いたしますが。
今や臨床よりもコンピューターにお詳しいとも側聞する原先生としては得意分野にお話を持っていきたいのも理解できますが、産科医不足でIT?何それ食べられるの?な熟年世代まで動員せざるを得ないという今日、まず臨床現場で求められているサポートとはどのようなものなのかといったあたりから語られた方がお言葉にもより説得力が増すのではないでしょうか?
全国末端医療機関で日夜診療に勤しんでいる臨床医が求めているのは、24時間365日携帯のメールをチェックし続けていなければ逮捕されかねないようなシステムの整備では決してないと思うのですが、常時監視なんてことを言い出す前にまずはこんな足許の改善から始めてみてはどうでしょうか。

新生児集中治療室(NICU)の8割強、医師待遇に難(2009年7月23日読売新聞)

安い「宿日直」扱い

 重症の赤ちゃんを24時間態勢で受け入れる新生児集中治療室(NICU)の8割強で、労働基準法上は割増賃金が必要な医師の「時間外労働」が、一般的に手当の安い「宿日直」と見なされていることが新生児科医らでつくる「新生児医療連絡会」のアンケート調査で分かった。

 労基法では、平日の夜間や休日の業務は、軽度なものであれば宿日直として認められるが、昼間と同じような治療を行っていれば時間外労働となる。調査は、今年3月に愛育病院(東京都)で、4月に県立奈良病院(奈良市)で、産婦人科医や新生児科医の宿日直が時間外労働にあたると労基署や地裁から指摘されたのを受けて実施された。

 総合・地域周産期母子医療センターなど190施設に質問紙を送り、50%にあたる95施設が回答。夜間や休日の勤務の扱いについて、50施設が「すべて宿日直」、28施設が「宿日直と時間外勤務の併用」とした。だが、宿日直中の勤務実態は、時間外労働と変わらなかった

 一方、労基法上、最も好ましい2交代か3交代制が実施できているのは6施設にとどまり、64施設は人材難を理由に「交代勤務制は不可能」と答えた。

 調査をまとめた杏林大准教授の杉浦正俊さんは「国の医療費カットでどの病院も経営が苦しく、現場も改善を強く求めづらい。だが、このままでは、ただでさえ人材難が深刻な新生児医療に若い医師を積極的に勧誘できない」と話していた。

思うにいつもこの手の話題となると最後のまとめとして「医療費削減で金がないから」云々という話になるわけですが、根本的には人手不足で交代勤務が出来ないのが理由であると思われる状況で、金があれば全ての問題は解決するとでも受け取られかねない結論はミスリードではないかと思うのですけれどもね。
金の問題だと言うならこうした各施設は収益が幾らまで増えればこのような対策が取れる、その結果全ての違法行為は現場から一掃されるという見通しを明示出来るはずなんですが、今もってそうした試算を示してきたという施設なり団体なりの存在を寡聞にして知りません。
まさか「金があれば札束で頬をはたいて他施設から産科医だろうが小児科医だろうが幾らでも引っ張ってくるのに」なんてシナリオを考えているというのであればともかくとして、現状で昼夜を問わず現場医師が働き続けている事がそもそもの問題であって、安い宿日直手当で働かされているというのは極めて枝葉の問題ではないかと思うのですが。

せっかく総選挙を前に政治の方でも医療にいい顔をしようと言うつもりがあるわけですから、どうせならもう少し実のある要求を突きつけてみるチャンスだと思うんですが、そのためにまず「とりあえず金を出せ」なんてレベルではなく、業界内部でもっと議論を深めなければならないところですよね。
「医者を増やせば全てが解決する」もいささか暴論だと思いますが、「医療費を増やせば全てが解決する」というのもまた同じ程度に暴論ではないかと思いますし、せっかく何かしら外部の状況を改善させる余地があるというのであれば、どうせなら現場にとってより居心地の良い方向へ改善をさせる方がお徳だろうと言うことです。
ま、実のところそうやって徒党を組んで一つの主張をまとめるという行為自体が医者という人種の最も苦手とするところでもあるわけで、医者を増やすべきかどうかなんて話ですら一向に結論がまとまらないのも現実ではあるんですが(苦笑)。

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