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2009年6月 5日 (金)

医療行政の主導権争い?最初から勝負はついているような…

不景気は底を打ったなどという声も一部に出始めているようですが、経済情勢が相変わらず厳しい中で医療費削減政策は特に財務省筋を中心に根強く継続を主張されているようです。
先日もそうした議論の経緯を取り上げました財務相の諮問機関である財政制度等審議会(財政審)がいよいよ次年度予算に向けての意見書を出してきたのですが、まずは記事から紹介してみましょう。

医師の適正配置を提言…医療改革で財政審が意見書(2009年6月3日読売新聞)

 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は3日、2010年度予算に向けた建議(意見書)を与謝野財務相に提出し、そのなかで、地域や診療科間による医師の不足や偏在について、医師の適正配置などを柱とした医療改革の必要性を提言した。

 我が国では原則、医師は診療科や勤務地を自由に選べる。このため、激務とされる産科や外科などの診療科や、地域医療などで、深刻な医師不足を招く背景となっている。

 建議では、ドイツが保険医の開業に際し診療科や地域ごとの定員枠を設けているなどの例を挙げ、日本以外の主要国では制度や事実上の規制があるとして、このような取り組みを参考に「我が国においても、早急な対策を講ずることが必要である」とした。

 医師の適正配置については、「医師の職業選択の自由を制約するといった議論もある」としながらも、国民医療費のほとんどが公費負担であり、「医師の養成には多額の税金が投入されており、医師が地域や診療科を選ぶこと等について、完全に自由であることは必然ではない」として、規制的手法の必要性を訴えた。

 また建議では、病院勤務医の負担軽減に確実につながるよう、病院に対する診療報酬を手厚くするような診療報酬配分の見直しや、看護師ら医療従事者間の役割分担の見直しを掲げた。

診療報酬改定プロセスの見直しを-財政審(2009年6月3日CBニュース)

 財務相の諮問機関である財政制度等審議会(財政審、西室泰三会長)は6月3日、診療報酬の改定プロセスや配分などの見直しを求めた「2010年度予算編成の基本的考え方について」(春の建議)をまとめ、与謝野馨財務・金融・経済財政相に提出した。医師不足解消に向け、「経済財政改革の基本方針2008」や昨年11月にまとめた建議も踏まえ、医療政策における本質的な課題に対し、早急に取り組む必要があると指摘している。

 春の建議では、特定の地域や診療科などの医師不足、救急医療での患者の”たらい回し”など、医療提供体制をめぐるさまざまな問題が起こる要因として、▽医師の偏在▽病院勤務医の厳しい勤務環境およびそれを背景とした医師の病院離れ(開業医志向)―を挙げた上で、「医師が真に必要とされる部門に適正かつ効率的に配置できていない」と指摘。医師の偏在是正に向けた方策として、医療費配分の見直しを示した。

 具体的には、「現在の診療報酬には、医師の経験や専門性が全く反映されていない」として、「医師の能力などに応じた配分が可能となるような見直しを行うこと」が必要だと指摘。診療報酬の点数の改定率を内閣が決め、具体的な診療報酬は中央社会保険医療協議会(中医協)で決定する現在のプロセスを改める必要があるとした。
 また建議では、中医協の機能が医療費の適正な配分には重要だとしながらも、中医協以外の場でも医療費の配分について幅広く議論し、「それが中医協の議論・決定にも適切に反映される必要がある」とした。さらに、「委員の構成も含め、中医協の在り方そのものの見直しも検討する必要がある」とも指摘した。

 このほか、医師が行っている業務や事務の役割分担の見直しを進め、勤務医の就労環境の改善を図ることや、地域の医療機関の役割分担・機能分化も推進すべきとした。

 建議は医療費負担の見直しにも言及。将来世代へツケを回さず、医療保険制度を持続可能なものとするために、自己負担や民間保険によるものなど「私的医療支出」を増やす選択肢も視野に入れる必要があるとした。その上で、▽混合診療の解禁を含む、患者による選択の自由度を高める方策の拡大▽少額の医療費の患者負担の在り方を検討する、いわゆる保険免責制の導入―など、「以前から財政審で指摘されてきたさまざまな課題が論点となるだろう」との見方を示した。

しかし、今どき「医師の養成には多額の税金が投入されており」ですか…ホラも吹き続けるといつの間にか真実となってしまうということなんですかね。

診療報酬決定の手順を改めろ云々に関しても要するに「俺らにやらせろ」という意思があからさますぎていっそ清々しいほどですが、個人的には面白そうですからこれ全部来年度あたりから実現してみたらどうかなとも思っているところなんですけど(苦笑)。
ちなみに診療科制限なるものを一足先に防衛医大で言いだしていますが、どうせ医者なんてせいぜいネット界隈で大騒ぎするだけで実際には何も出来やしない連中ばっかりだともっぱらの噂ですから、お上としては「生かさず殺さず」でいいようにあしらっておくのがよろしいかも知れませんよ(苦笑)。

ところでこれは余談ながら、記事の末尾ではちょろっと「看護師ら医療従業者間の役割分担の見直し」なんて話が出てますよね。
先日書きました財政審の経緯では全く相手にもされずに鼻で笑われて終わったという印象が強い日本医師会ですが、この件に関してコメントを出しているようですので取り上げておきます。

NP導入より医師不足解消を―日医(2009年6月3日CBニュース)

 日本医師会の中川俊男常任理事は6月3日の定例記者会見で、医師と連携・協働して慢性疾患などを持つ患者に初期診察や薬剤処方を行うことができるナースプラクティショナー(NP)の導入について、「医師不足に名を借りて、役割分担だけを先行させるべきではない」などと述べ、反対する姿勢を示した。

 中川氏はNP導入の問題点について、「国民皆保険」「医療の質」「業務分担」の3つの視点から説明。
 中川氏は「NPの導入が最も進んでいるのは米国」とした上で、その理由について「支払い能力によって受けられる医療に差があり、医療の質よりも医療費の安さが優先されることもあるため、医療費が安く済むNPへのニーズがある」などと指摘。これに対して、日本では「米国のようなニーズがあるかどうかは明らかではない」とした上で、低い医療費で医療行為を提供できる資格者を導入した場合、「所得の高低にかかわらず同じ質の医療を受けられる現在の国民皆保険制度が揺るぎかねない」と強調した。

 また、診察や診療について、「人体に侵襲を及ぼす行為で、軽症の場合でも常に、急変して重症化するリスクがある」と指摘。このため、高度な医学的判断や技術を担保する資格の保有者でなければ、「患者にとって不幸な結果をもたらすだけでなく、生命をも脅かすことになりかねない」とした。

 さらに中川氏は、医師と看護師の業務分担について、「現行の医師法、保健師助産師看護師法(保助看法)で十分に対応できる」と指摘し、日医として現行法の下で実情に即した業務分担の在り方を検討する考えを示した。

 その上で、「医師不足に名を借りて、役割分担だけを先行させるべきではない」と述べ、医師不足の解消が最優先課題と強調。医療の安全と質の確保の観点からも「NPの導入は容認できない」と述べた。

このNPに関しては以前にも少しばかり取り上げましたが、今のところ現場では賛否両論といった感じではないかと思っていたのですが、今回こうして医師会の方では明確に反対の意思表示をしてきたことに関して会員の諸先生方はどう感じておられるものでしょうかね?
こういうものの議論に関しては先行する同様な「権限移譲」の制度である助産所の現状が一つのモデルケースになるのかなとも思うのですが、データ的には医師会の言うところの「患者にとって不幸な結果をもたらすだけでなく、生命をも脅かすことになりかねない」というのも否定しかねるのは確かなようです。

問題なのはこうした制度では本来軽症だけを任せようと言っていたはずが扱うべきでない症例を扱ってしまう場合が多いことで、例えば助産所の場合は正常分娩だけを扱うことが法的に許されているにも関わらず異常妊娠を引っ張る、その結果助産所からの搬送例は死亡率が高いというありがたくない結果を来してしまうことになるわけです。
そして往々にしてそうした場合の責任は法的にも道義的にもやってはならないことをやってしまった助産所ではなく、思いがけない重症例をいきなり渡されて力及ばなかった産科医が背負わされていることを考えれば、現場の医師達が「他人の責任まで負わされるなんてやってられるか!」と考えるのも無理のない話ではありますよね。

しかし一方で助産師問題といえば年間出生数日本一を誇る横浜の堀病院が、助産師資格のない看護師に助産行為をさせていたと大騒ぎになった一件があり、「これではお産が出来なくなる」と産科業界を震撼させる大問題になったことは記憶に新しいところです。
急性期の野戦病院で奴隷労働をしたことのある医師であれば誰であれ、目が回るような忙しさで処置にかけずり回っている最中に「先生!○○さんのお薬なくなってますからすぐ処方してくださいね!」などと病棟からお声掛かりがあってガックリ…という経験はお持ちでしょうから、「それくらい誰か出してくれればいいのに」と思わないはずはないとも思うのですね。
堀病院の件でも「現場では資格のあるなしよりも何よりも能力があるかどうかが問題なのだ」と自ら看護師教育を行って助産行為を行わせてきたという現場産科医からの擁護の声が一つならずあったように記憶しておりますが、患者団体などからすると「技能の有無よりも資格の有無が問題」ということらしいですから無視するわけにもいかないですよね。
実を優先すべきか名を優先すべきか、置かれた立場によっても医療業界関係者の中でも賛否両論ある問題だと思いますが、今回医師会が公に態度表明をしてしまったことで現場がどう考えるかには要注目だと思います。

さて、今や医療行政の根幹すらも財務省に奪い取られかねない勢いの厚労省ですが、一応幾つか独自色を打ち出すべく努力はしているようです。
しかしこれがよくよく見てみますとどうもいささかピント外れと言いますか、突っ込み所を用意しているかにも見える話なんですが…

産科医などの分娩手当を補助―厚労省(2009年6月2日CBニュース)

 厚生労働省は今年度、医師確保対策の一環として、産科医などに分娩手当を支給する医療機関に都道府県を通じて補助を行う「産科医等確保支援事業」を実施する。基準額は、1分娩当たり1万円。補助率は3分の1。

 同事業は、分娩を取り扱う病院や診療所、助産所、産科・産婦人科医師が減少する中、地域でお産を支える産科医などに対し、分娩手当などを支給することにより、産科医療機関や産科医などの確保を図るのが目的。
 対象となる経費は、分娩を取り扱う産科・産婦人科医や助産師に対して、処遇改善を目的に分娩取扱件数に応じて支給される手当(分娩手当など)。
 対象施設は、▽就業規則やこれに類するものに、分娩を取り扱う産科・産婦人科医師および助産師に対して、分娩取扱件数に応じて支給される手当について明記している分娩施設。なお個人が開設する分娩施設においては、開設者本人への手当の計上が会計処理上困難なため、雇用する産科医などに対する手当の支給について雇用契約などに明記しているなど、各都道府県知事が適当と認める場合は開設者本人についても対象とする▽1分娩当たり、一般的に入院から退院までの分娩費用として徴収する額が50万円未満の分娩施設。ただし、妊産婦が任意で選択できる付加サービス料などについては含めない―の2つの要件をいずれも満たすもの。またはこれに準ずるものと都道府県知事が判断し、厚生労働相が適当と認めたものとなっている。
 予算額は約28億円で、厚労省は今後、都道府県から事業計画書の申請を受け付ける。

一分娩あたり1万円という額はともかくとして、そのうち補助率1/3とは残りは都道府県に出させるのかといったあたりも実際問題この財政状況下でどうなのかと思われるところですが、それよりも対象施設の必須条件である「1分娩当たり、一般的に入院から退院までの分娩費用として徴収する額が50万円未満の分娩施設」という一文が気になるところですね。
かつてとある産科の先生から聞いた話に「今の時代求められる水準で本当にきっちりやると分娩の経費だけで40万以上はかかる」ということでしたが、別にお産に限らず医療に求められる標準的な水準が年々上がるほどにそれに要するコストも上がっていくということは誰でも判ることだと思うのです。
バブル崩壊以降安さのみを追求した結果毒餃子事件に至った食品業界においては今ようやく消費者の目も「少し高くても安心なものを」という方向に変わってきているとも側聞いたしますが、医療においてもやはり安全はタダで買えるというものではないという当たり前の認識が必要ではないかと思いますね。

実際のところ公立病院では分娩費用の改定にも議会の同意が必要ということであり得ないような原価割れ価格を強要されているところも未だあるように聞きますが、そうした過度のコスト削減を強いられている現場でどういうことが行われているのか議員センセイ方はどなたも興味がおありでないようですよね(苦笑)。
一生にそう何度もないような(一昔前ならそれこそ命がけの!)大事業においてもなおディスカウントを求める、それも金勘定が仕事の財務省ではなく国民の健康を守るのが仕事の厚労省がと言うことになれば、いったいこの国で国民の命を気にかけるのは誰かと気になってくるところではありますが…

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