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2009年6月30日 (火)

時には迷惑な方々というのもやはりいらっしゃいまして

今の時代のように医療資源が需要に対して供給過少であり、しかも当分その改善は望めないということになりますと、どうしても需要の側の抑制という話にならざるを得ません。
最近になってようやく不要不急の時間外受診は控えようといった動きが市民の間からも出てきていますが、相変わらずという現状も一方では未だに根強く残っているようなのですね。
最近の記事から幾つかを引用してみましょう。

県議会、「コンビニ受診」の現状 /富山(2009年06月25日KNB NEWS)

 緊急性がないのに夜間や休日の救急外来を受診するいわゆる「コンビニ受診」が、県内でも深刻な状況です。

 昨年度、重症患者を受け入れる救命救急センターを直接受診した人のうち、87パーセントの人が、外来のみの軽症患者だったことが県の調べでわかりました。

 これは25日開かれた県議会の厚生環境委員会で県が報告しました。

 「コンビニ受診」とは、緊急性の低い軽症患者が、夜間や休日の救急外来を気軽に受診することで、重症患者の治療が遅れたり医師の負担が増えたりなどの影響が指摘されています。

 県内では夜間や休日の救急医療は地域の急患センターなどが軽症患者をそして、県立中央病院と厚生連高岡病院に設けられた2つの救命救急センターが、重症患者の受け入れを担っています。

 しかし、昨年度1年間でこの2つの救命救急センターを直接訪れた患者はおよそ1万5600人で、このうち87パーセントにあたる1万3600人あまりの人が外来を受診して帰宅した軽症患者でした。

 25日の厚生環境委員会で県の河村医務課長は、「全てがコンビニ受診ではないが、相当数いると考えられる」と述べて、県内の救急現場でも深刻な状況になっているという認識を示しました。

67病院「患者が迷惑行為」 過去1年間、県内119院調査 /徳島(2009年6月2日徳島新聞)

 徳島県内にある全119病院の56%に当たる67病院で、過去1年間に患者側からの暴力行為や不当要求などがあったことが1日、県の調査で分かった。これらの迷惑行為は計218件に上り、患者のモラルの低さが浮き彫りになった。診療行為やほかの患者に影響を与える恐れもあり、病院は対策を迫られている。

 調査は、年1回行っている医療監視に合わせ、2008年11月中旬から09年3月末まで、各病院の院長や事務長との面談形式で、初めて実施した。

 主な迷惑行為(複数回答)は「大声で騒ぐなど粗暴な行為」が60件でトップ。「治療費の未払い」57件、「自分だけ特別扱いすることを要求」40件、「暴力行為」22件、「医療従事者や職員へのセクハラ」14件-と続いた。職員が少ない夜間や休日に増える傾向があった。

 悪質な事例は、「救急車で搬送された患者が帰りのタクシー代を要求」(県南部の民間病院)、「受付職員が患者に胸ぐらをつかまれた」(徳島市の民間病院)、「看護師がストーカー行為を受けた」(同)、「患者の家族が病室のドアガラスを割った」(徳島市の公立病院)-など。

 患者の迷惑行為に対して、81病院(68%)が院内の報告制度を設けており、88病院(74%)が担当部署などを決めていた。一方、対応マニュアルを策定していたのは45病院(38%)で、医療従事者や職員の研修を実施しているのも48病院(40%)にとどまった

 ほかの対策では、48病院(40%)がトラブル発生時の「所轄警察署との連携」を挙げ、警察官OBを警備員に採用している病院もあった

 県医療政策課は「迷惑行為は診療の妨げになり、院内の医療安全を脅かしかねない。迷惑行為を容認しない姿勢を職員に周知徹底してほしい」としている。

病院のクレーマー(2009年6月17日朝日新聞)

(略)
 「いつから患者さんを『患者様』と呼ぶようになったんだろう?」

 「私たちには上から通達がありました。患者様と呼びなさいって言われました」

 受付事務のYさんと午後の遅い時間におしゃべりしている。長い間この病院の受付業務をして、いろいろなことがわかっていて、とても上手に仕事をさばいてくれる人だ。彼女がここを辞めたがっていると聞いて驚いている。

 「先生、言葉って怖いですよ。患者様って言うようになってから、患者様が横柄になりました。それに、受付番号がはっきり出るようになると患者様にとってはその数字がすべてになりますからね」

 彼女の接遇が別段悪いわけではない。医師よりも看護師よりも患者さんの事をよく分かっているようなところもある。多少おしゃべりが長いのが玉に瑕(きず)だけれど、仕事に差しさわるような事はなかったし、話が長いお年寄りの話し相手にはもってこいだった。患者の受付流れと医師側のさばきと手間をみながら、効率よく診察順を入れ替えたりもしてくれていた。

 たとえばこんなこと。

 内科でいつもの点滴などをしてもらう場合。多少受付が前後しても、患者のカルテから同じような点滴処置をする人をまとめて処置室ベッドに並べて入れて(もちろん各ベッドはカーテンで仕切られている)、外来診察室から医師を呼び込む。呼ばれた医師は、点滴をやりつつ、診察する。終われば次のベッド、次のベッドと効率よく回る。診察室に戻って別の患者の診察を再開。医師からすれば、処置室仕事をまとめてもらえて効率がよく、全体の診察時間を短縮できる。つまり患者さんをお待たせする時間が減るのだ。これをとにかく受付順にこなすとなると処置室と診察室を往復するばかりで効率が悪く、時間ばかり取られたりする。外来が混んでいれば、他科受診を先に済ませるように手配をしてくれたりもした。受付の彼女はこの手の采配がとても上手だった。今までクレームなんて来たことがない。

 でも、受付順で後から来た人が先に呼ばれた、予約時間になっても呼ばれない、とこのところクレームが相次いだ。医師や看護師には言わないのに、医療職以外には暴言を吐くひともいる。その対応に心底疲れていた。

 「私が悪かったんです。診察順を入れ替えたことには違いありませんから」

 彼女はあきらめきったようにため息をついた。

 「え~!でもそれで効率よく診ることができていたし、順序を抜いた、待たせたっていっても1時間も待たせたわけじゃないんだし」

 「先生、もうそういうの通用しません。患者様なんです、お客様なんです」

 疲れきった彼女にかける言葉がなかった。

 来月から彼女のいない受付は番号札順に診察を行う。カルテの采配は不慣れな新人派遣社員が行うことになる。クレームをつけた患者さんは、今まで以上に待ち時間が長くなるはずだ。

ま、無知故の不適切受診くらいならまだしもかわいげもあるという考え方もあるのでしょうが、これがモンスターとかクレーマーとか言われるようになってくると大変です。
記事中にもあるように「患者様などと呼ぶようになってから迷惑な患者が増えた」とはどこの人間も実感しているところではないかと思いますが、ここに以前にも書いたことがある逆説というものがあります。
要するに本来なら高い金を払っている客ほど大きな態度に出る権利があるはずなんですがむしろ逆で、採算ぎりぎりの安い料金で頑張っているような店ほど横柄な客が増えてくるというものです。
そうした逆説から類推するところ、公定価格の混合診療禁止で先進国中最低の医療費を強要されている日本の医療において客層が悪くなってくるのも当然かなとも言えるのかも知れません。

もっとも昨今では医療業界に限らずどこでもこうした人々が増えてきているという話も聞きますが、これも長年続くデノミ傾向の影響もさることながら、現代人が妙な方向におかしな権利意識が膨張してしまった不幸な結果ということになるのでしょうかね?
一部では「今までの医療現場を思えばこれくらいあってちょうどいいくらいだ」という声をあげていらっしゃる方々もいるやに聞きますが、「これくらいは」などと我が儘を言っていられるのもある意味他の人々がその分我慢してくれているからなんですよね。
今は黙って耐えているその他大勢の人々が一度騒ぎ始めると一気にモラル崩壊ということになりかねないことは周知しておくべきでしょう(すでに一部救急などではそうなっているようですが…)。

さて、当然ながらただでさえ手が足りない現場でこんなことまで面倒をみなければならないという話になりますと大変ですから、あちこちでそれなりに対策が講じられ始めています。
興味深いのは一昔前までは「患者様の声に真摯に耳を傾け業務改善の機会としましょう」などといった毒にも薬にもならなさそうなお題目が唱えられるばかりだったのですが、このところ「警察との密接な連携を」なんて話が当たり前に出るようになってきたことです。
未だに古いセンセイなどになりますと患者が暴れ回ろうが警察を呼ぶと言えば躊躇するような方々が結構いらっしゃるようですが、同様に客商売をしている他業種であれば病院のような数百人以上の職員がいる職場でまともなトラブル担当者も決まっていないというのは問題ともなり得るわけで、ここでもようやく医療業界に世間並みの常識が通用するようになってきたということなんでしょうか。

モンスター患者の暴走ストップ にらみ利かす警察官OB(2009年06月26日河北新報)

 宮城県大河原、村田、柴田の3町と角田市による保健医療組合が運営するみやぎ県南中核病院(大河原町、300床)が、モンスターペイシェントなどに対応するため、4月に警察官OBの男性2人を「安全対策員」として採用した。着任から3カ月。職員から「安心感が違い、精神的に楽になった」(看護師)との声が聞かれるなど、病院の安心安全を担う頼もしい存在になっているようだ。

 安全対策員は、問題行動を起こした患者への対応、院内の巡回といった警備的な役割のほか、未収金の回収も支援する。救急医療に取り組んでいるため、平日の昼だけでなく、夜間や休日も呼び出しに応じて駆け付ける「オンコール態勢」で緊急事態に備える。

 2人は今年3月、宮城県警を定年退職した。県警では暴力団対策や防犯分野などの経験があるという。

 全国の病院では近年、モンスターペイシェントによるトラブルが増えている。
 夜間の救急外来なのに「専門医を連れてこい」と言って、治療が終わると「間違っていたら責任を取れよ」と捨てぜりふを吐く。昼の外来診察などで、病院側が理解を求めても、「こんなに待たせてお茶も出ないのか」「院長を出せ」と迫り、「税金泥棒」と叫ぶ―。

 みやぎ県南中核病院でも、実際にこんな例があり、暴力に発展して警察を呼ぶ事態も起きているという。

 特に自治体病院は、経営の一部に税金が充てられていることや、救急医療を手掛けていることなどから、クレームを受けやすい側面も。安全対策員の1人は「医療の現場は想像以上にひどい。まさに病院は社会の縮図」と感想を語る

 同病院では、医師や看護師らがトラブル対応に割かれる時間が増え、ストレスが大きく、意欲の低下も招いていることなどから、「もはや病院だけでは職員の安全を守れない」と判断。昨年、県警に相談して、安全対策員採用に踏み切った。

 内藤広郎院長は「職員がそれぞれの仕事に安心して専念できる環境が整いつつある。医療機能が向上することで、患者にとってもよりよい医療の提供につながる」と話している。

 宮城県内の自治体病院では、大崎市民病院が2005年度、警察官OBを採用している。大館市の市立総合病院では今年5月、「院内暴力」に備え、警察官を講師に招いた護身術などの講習会を開いた。

[モンスターペイシェント] 医療従事者に理不尽な要求をしたり、暴言を吐いたり、暴力を振るったりする患者やその家族を指す。全日本病院協会が2007年12月~08年1月、加盟医療機関に実施したアンケートでは、過去1年間に院内暴力などがあったとの回答が52.1%(576カ所)に上った。発生件数は計6882件で、主な内訳は暴言などの精神的暴力が49.9%、身体的暴力が33.6%、セクハラ13.6%。発生件数のうち警察への届け出は5.8%、弁護士への相談は2.1%にとどまる

もちろん関係者双方に反省すべき点があるならどちらも反省し改善すべきであるのは言うまでもないことですが、社会的な最大多数の最大幸福という観点からして今やより厳重に保護されるべき対象は何なのかという点について、ある程度世間のコンセンサスが出来上がりつつあるのかなという気もするところですね。
2009年3月28日に京都府医師会が主催した「今の医療、こんなんで委員会」シンポジウムなるものが面白いので併せて紹介しておきますが、一つ言えるのは「話せば判る」というのはこの世の絶対的真理などではないということを現場の人間はちゃんと理解しておかなければならないだろうと言うことでしょうか。

もちろん徹底的に話し合えばいずれ誰とでも理解し合うことが出来るのかも知れませんが、医療現場の最前線で働く医療専門職にそれだけの時間と労力を費やせるような余裕ある環境など今の日本の医療にはありませんし、何よりそうしたトラブル解決に当たるべきは医師や看護師といった「医療のプロ」ではなく「トラブル解決のプロ」であるべきだろうと言うことです。
こういう時代ですからデパートなどのこの種トラブル担当者のノウハウ本なんてものが世の中に結構出回ってきていますが、読んでみるとその大多数はごく当たり前のことをやっているに過ぎないわけで、逆に言えばその程度の社会常識すら満足に備わっていなかったことこそが医療業界において早急に改善されるべき最大のものであるのかも知れませんね。

「今の医療、こんなんで委員会」シンポジウム 妊婦のエチケット 医者のマナー

そうは言っても厳しい現実は現実として、あまり殺伐とした話ばかりでも医療というものはうまく回っていかないことも確かなので、世の中ムチもあればアメも必要だと言うことは言うまでもありません。
知らないから間違ってしまったということが一つの大きな要因になってしまっているのであれば、間違えないよう正しいことを知らせていくのが遠回りなようでも最終的な労を減らすに効果があるかも知れないということなんですが、まずはこうした顧客層が固定されているローカルな取り組みから始めてみるというのもいいんじゃないかと思いますね。

安心医療を求めて:連携のゆくえ/5止 住民対話 /和歌山(2009年6月28日毎日新聞)

 ◇出前講義で知識広め 「心のへき地」つくらぬ

 午後7時過ぎ、JR周参見駅を出た特急「オーシャンアロー」車内。東大阪市の自宅に帰る女性(57)は窓の外の夕闇に向かいハンカチを振った。水田の真ん中で母(79)が手ぬぐいを振っていた。

 母はすさみ町で27年間一人暮らし。女性は「何かあれば引き取れるように」と同市の4LDKマンションに住むが、母は残ったまま。母は02、03年、太ももの骨折で同町の国保すさみ病院に入院。今は「ぼけんといてね」が口癖になった。実家に帰る度、母と同世代の知り合いが亡くなったと聞き、帰りの電車で不安に駆られる。「何もない小さな町。病院だけはなくならないで」と心の中で祈る。

  □  □

 半世紀前の1960年、同町には1万人余りの町民がいた。高度経済成長以降、都市部への流出が続き、09年3月の人口は5079人。65歳以上の高齢化率は約40%で、全39地区中18地区で65歳以上が過半数だ。国が08年末にまとめた人口推計によると、同町は35年に人口2494人、高齢化率は62・9%で全国7位の高さとなる。

  □  □

 国保すさみ病院院長の高垣有作さん(50)は超高齢化に「住民との対話」で対峙(たいじ)する。05年に赴任し、08年春に院長になった。医師は4人。「仕事で来れなかった」と軽症患者の休日・時間外受診者が多く、疲れた医師らを見て、診察時間内の受診を呼び掛けた。05年に比べ、08年は約3割減った。

 住民に医学的知識を身に着けてもらおうと08年6月、集会所などで出前講義も始めた。講義は高垣さんが発熱をテーマに内科診断学の内容を解説し体温計の間違った使い方を実演するなど笑いを誘う。26地区で約630人が参加。町内を一巡し次は腹痛がテーマだ。

 医師は4人のままだが08年6月から訪問診療も始めた。高垣さんは言う。「『見捨てられた』と感じる『心のへき地』には医師も住民も集まらない。お年寄りが安心して暮らせるシステムを確立すれば、移住者も増える。すさみモデルを全国発信し日本が将来直面する問題の解決につなげたい」=おわり(この連載は加藤明子が担当しました)

意図してのものなのかどうか、医療界隈で言うところの「心の僻地」というものとは微妙に定義付けが異なっているのかなという印象がありますが、それはともかくとしても住民民度の向上が住民自身のみならず医療従事者にとっても利益になるということは今の時代ようやく周知されてきた感がありますね。
こういうのも言ってみれば大きなくくりで予防医学の範疇に含まれてもいいような気がしますが、医療費削減と言う点で国はもっとこういう院外の活動にお金を出すなり積極的に支援していくべきなんじゃないかという気がします。

ちなみに国民への周知徹底という点で言えばもう一方の雄ともなるべきマスコミはと言えば、「医師と患者のコミュニケーションを計るために我々に何が出来るか?」なんて独自調査までやっているようなんですが、失礼ながら現段階では相互理解と言うよりも相互反目の原因となっていることの方が多いようにも思いますね。
医療関連の記事で本当に純然たる速報性が要求される話なんてそうそう多くはないのですから、せめて最低限の勉強をし裏取りもしてから記事にするという程度のことはしっかりとやってもらいたいところではあるのですが、「マスコミの魔女狩報道」なんて言われた頃からこちら量的にはともかく質的には一向に改善したようにも見えないのは気のせいなんですかね?

医療に対する国民の関心も高まっているわけですから、きっちり医療記事を書けるというだけでも結構メディアの特色として売りになるんじゃないかという気はするのですが…
え?医療に強い読○があるって?まあ独自の世界に逝っちゃってる点でオリジナリティーは認めるところなんですけれども(苦笑)。

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