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2009年6月 3日 (水)

医療業界も不景気の嵐吹き荒れ

世の中未だに不景気真っ盛りですが、そうした社会情勢とあまり関わるところがないかのように思われていた医療業界においても不景気真っ盛りなのは同じことのようです。
もっともこの場合は世界恐慌がどうとかいう話ではなく政策誘導的な部分が主因である点だけが他業界とは趣を胃にするところなわけですが、まずは記事から紹介してみましょう。

医療機関の倒産、過去最悪と同水準-帝国データ(2009年5月29日CBニュース)

 帝国データバンクの調べによると、病院や診療所、歯科医院など医療機関の昨年度の倒産は、過去最悪を記録した2007年度と同じ40件だった。医師不足に伴う病院勤務医の労働環境の悪化などがクローズアップされる中、昨年4月の診療報酬改定では本体部分の改定率が8年ぶりに引き上げられたが、医療機関を取り巻く環境が依然として厳しいことを示す結果となった。

医療機関の倒産は02年度から増え始め、06年度以降は高水準で推移している。
 01年度以降に発生した252件を施設別に見ると、病院60件、診療所115件、歯科医院77件。病院の倒産が06年度の12件をピークに減少に転じたのに対し、診療所では07年度から2年連続で過去最悪の20件を記録した。歯科医院も昨年度は13件と、01年度の4件から3倍以上に増えている。
 全国の病院数が年々減少しているのに対し、診療所と歯科医院は増えており、帝国データでは、施設増に伴う競争激化が倒産増加の要因とみている。

 また、01年度以降の倒産形態を施設別に見ると、事業を継続する「民事再生法」が病院で34件(56.7%)と過半数を占めたのに対し、診療所は20件 (17.4%)、歯科医院は14件(18.2%)にとどまった。診療所の倒産は95件(82.6%)が「破産」によるもので、歯科医院でも63件 (81.8%)と8割を超えた。

 帝国データでは、事業規模が小さい診療所や歯科医院では資金調達が難しいほか、事業価値を見いだすスポンサーが現れにくく、破産を選択せざるを得ないのが現状だと分析している。

今どき新規開業などよほどの軽装開業でなければ黒字は無理というのが常識だと思っていたのですが、どうもこうして犠牲者相次ぐ背景には先日も少しばかり取り上げましたところの医療コンサルタントなるものの暗躍もあるやに聞きますね。
そしてそれに輪をかけて先日も少しばかり書きました政策誘導というものがあるわけですが、どうも人員配置を改めると報酬を切り下げても青息吐息の業界がうまく回るようになるというロジックは今ひとつ理解しがたいものがありますが…

<財政審建議>「診療報酬も抑制を」 民間賃金低下を考慮(2009年6月3日毎日新聞)

 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が10年度予算編成に向け、3日に与謝野馨財務・金融・経済財政担当相に提出する建議(意見書)の全容が2日分かった。10年度に改定予定の診療報酬について、「民間賃金や物価動向を十分に踏まえ検討する必要がある」と、景気悪化による賃金や物価の低下を反映させ、報酬も抑制すべきだとの提言を盛り込んだ。

 診療報酬は、医療機関などが診療などへの対価として受け取る報酬。医師の技術料などの「本体部分」と薬価に分けられ、2年に1度改定される。前回の08年度の改定では、本体部分を0.38%増と8年ぶりにプラスとした一方で、薬価は1.2%引き下げたため、診療報酬全体では0.82%減と4回連続のマイナスとなった。

 日本医師会などは、「医師不足などの医療危機は医療費の削減が原因」と、診療報酬の引き上げを求めている。これに対し建議は、「医師が真に必要とされる部門に適正に配置できていないことが大きな要因」と指摘し、地域や診療科ごとに開業医の定員を設けることなどにより、医師の偏在を是正することが医師不足の解消につながると訴えている。【平地修、谷川貴史】

ま、これに関しては結論ありきの財政審ですから、予定通りという感じであまり意外性はないところではありますけれども、結局のところ問題になるのはこの政策誘導が何を目的に行われているのかと言うことですよね。
関係ないですが前回の診療報酬改定で相も変わらず全体が切り下げられていたにも関わらず、本体部分のみがわずかばかりプラスに出たことをもって「診療報酬増!」なんてマスコミ諸紙が大騒ぎしていたのは記憶に新しいところなんですが、いつの間にかしれっとマイナス改訂だったなんてことを書いてるのもどうかと思いますが…

それはともかく、こうして入院診療を担う(当然それだけ重症患者を引き受けることになる)病院の数がどんどん減っていく、特に救急指定病院は(指定返上を含めて)年々大変な勢いで減少を続けている、そして残った施設も医師やスタッフの不足と救急患者激増に青息吐息で志気崩壊寸前となっているわけです。
新臨床研修制度導入によってあちこちの市中基幹病院(そのほとんどがこうした救急医療を担う地域の中核施設です)に頭の中が真っ新な研修医達がやってきた結果、彼らが何をみてどう感じたかということに多少の想像力さえ働かせてみれば、これはどうしたってこの国の医療の将来に明るい展望など見いだせるはずがありませんよね。
増大する一方の需要にもかかわらず、今や医療業界はあらゆる意味で斜陽化しつつあるという印象を受けるところです。

さて、こういう医療大不況の時代になってきますとどこの病院でも少しでも安上がりに、少しでも利益率向上をと血眼になってくるのは当然ですが、今や全国の公立病院を抱える自治体から注目を集めているのが例のPFI方式というものです。
近江八幡市市立総合医療センターのPFI解除問題に関しては以前にも取り上げましたが、この件に関して地元では「近江八幡市立総合医療センターを考える会」なるものが設立されたようです。
ちょうど記事にもなっているようですので引用してみますが、こちらの件ではどうも患者も医療もそろって蚊帳の外という印象を拭えないところではないでしょうか。

近江八幡市立総合医療センター:PFI問題 考える会「赤字は経営努力不足」 /滋賀

 ◇考える会が折り込み

 全国の公立病院で初めて本格的なPF1方式を導入した近江八幡市立総合医療センターが、開業後間もなく経営難に陥り、今春から市の直営方式に戻った問題で、その過程を検証する冊子を「近江八幡八幡市立総合医療センターを考える会」が発刊した。30日の新聞折り込みで、5万7700部が東近江の2市2町に配布される。市が3月に出した報告書に真っ向から反論する内容になっている。

 同会は、市のPF1方式解約の動きに合わせて昨年2月、同方式の良い点を伸ばそうとする医師や薬剤師、元市議、市民グループの代表者らで結成。これまで2回にわたって広報紙で反論を発表したり、集会を開いてきた。

 冊子はB3判16ページ。1ページ全面を使い、市と同会双方の主張を掲載したうえ、各論ごとに数字を挙げて反論。特に、市の「SPC(センターを運営する特別目的会社)に支払う運営費が固定化して高すぎる」「病院建築整備費の金利が高すぎる」などの主張に対し、「運営費は決して高くなく、赤字の原因は経営努力をしてこなかったから」としている。

 さらに、解約で市が支払った補償金20億円の根拠が不明▽市は「大規模修繕費は不要」と主張するが、きちんと修繕しなければ100年持つ建物も数十年でボロボロになってしまう▽「同方式解約ありき」で、市長の発言もコロコロ変わり、情報操作の疑いもある--といった疑問点を並べている。【斎藤和夫】

実際の文書の内容に関して入手できなかったので会の見解に関しては何とも言い難いものがあるのですが、同センターに関するこれまでの報道を見る限りではどうにも多少のことでは赤字解消などできそうもない公立病院体質そのままにPFI方式を導入すれば何とかなるさという何とも半端なものだった印象を受けます。
漏れ聞こえる地元の声によれば必ずしも必要とされている施設という感じではないようで、むしろ利用者の半数が他地域からと言いますから、果たしてこの規模の施設を公立で維持していく必要性があるのかどうかといった辺りから再検討してみる必要があるのではないでしょうかね?
全国の公立病院がほぼ例外なく赤字であり、全国のPFI導入施設がほぼ例外なく失敗しているという現状を見るにつけ、どちらにしても明るい見通しが立たないということであればせめて多少なりとも傷を小さくする方向で検討していくことが最終的には市民の利益に適うのでないかという気もしますが…

医療業界関係者であれば今の公立病院(の少なくとも大部分)が色々な意味で駄目だということは判っている、そうなるとまだしも民間導入を行った方がマトモになるのではという発想は当然あっていいと思うのですが、全国あちこちでPFI方式の病院が出来てきているにも関わらずあまりうまくいっているという話は聞こえてきません(その逆は多々あるようですが…)。
もともと何をどうやってもどうしようもないような施設が苦し紛れでPFIを導入しているのか、不採算部門数多を抱え込んだ公立病院だけに最善の状況にまで改善出来たとしても赤字垂れ流しは仕方がないのか、あるいは医療への民間資本参入制限という法制度上の問題が大きいのか、全国の事例を集めて詳細な検証が絶対に必要なんだとは思います。
ただ色々と見てみますと理念的部分で批判している医療業界の人であれ、経営的観点から批判している業界外の人であれ世に反対意見が根強く、実際問題として先行する事例がどれも(控えめな表現をしても)劇的な効果を上げているというわけでもない現時点でなお導入を検討している自治体が多いと聞けば、これは何かあるのかな…とも邪推してしまいたくなるところなんですがね。
万一にも自ら望んで貧乏を呼び込んでいるということであれば、それはいささかどうよ?と思われるところですが…

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コメント

診療所の倒産というのは、基本的に医療法人がカウントされるので、個人医院(非法人)はこの数にはおそらく入っていません。
もちろん、このままいったら借金まみれになる、という前に自主的法人解散や非法人の閉院などは全く入っておりませんので、実際に閉められる開業医の数はかなり多いと思います。

まあ、財政審のアレは、医療費の国庫負担を削減したい財務省と勤務医を逃がしたくない厚労省と、医療費の企業負担を減らしたい財界の三位一体の攻撃ですから。
ところで、財政審の委員リストをみると、大企業経営陣からの出席を除いた人たちのほとんどが元官僚の天下り大学教員なところがとってもアヤシくて、素敵ですよね。

投稿: Seisan | 2009年6月 3日 (水) 17時30分

帝国データバンク等の発表する倒産件数の統計に乗るのは、基本的に赤字が一千万円以上のものであり、歯科で4~5軒に一軒は年収2~300万円以下のワーキングプアといわれている様な零細診療所や、医科でも年収がそんなに大きくない個人立の無床診療所や有床診療所、小規模病院等では、そもそも与信がされないので赤字額が一千万を超える事自体が少なく、統計に乗って来ません。それに、高齢医師や将来に見切りを付けた場合の自主的閉院については、事実上倒産と同じ様な台所事情であっても、統計の俎上にすら乗って来ません。実態は、公開されているよりも、遥かに多いと思われます。

投稿: 貧乏町医者 | 2009年6月 4日 (木) 17時45分

いずれの方向にしても大きな改革をするにはちょうどよい機会なのかなとも思いますから、問題点は全部洗い出しておくべきでしょう。
「深く静かに潜行せよ」ではいつまでたっても「誤解」を受けかねませんから、このさいはっきりと誤解のしようのない現実を公に示しておくのもよろしいかと。

投稿: 管理人nobu | 2009年6月 5日 (金) 11時53分

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