« 産科無過失補償制度の奇妙な迷走 | トップページ | いちいち見苦しい人たち »

2009年6月12日 (金)

新型インフルエンザ、ついにフェーズ6へ

新型インフルエンザ国内発生からおよそ一ヶ月が経過しました。
いつからか問題が新聞の一面に載らなくなって早久しいですが、その間にも着実に状況は進んできたようで、とうとう表題の通りの事態になってしまいました。
しかしこのところ「一家中でよく判らない感染症で難渋している」というような話が多いだけに、どうもいわゆるインフルエンザ様症状を呈さない非典型例が広くまん延しているんじゃないかという気がして仕方がないこの頃なんですが…

【新型インフル】警戒水準引き上げ勧告 「パンデミック」を宣言(2009年6月11日産経新聞)

【ロンドン=木村正人】世界保健機関(WHO、本部ジュネーブ)のマーガレット・チャン事務局長は11日午後(日本時間同日夜)、緊急委員会の電話会合を行い、新型インフルエンザ(H1N1)の警戒水準(フェーズ)を現行の「5」から最高の「6」へ引き上げることを決定、新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)を宣言した。
 パンデミック宣言は、死者約100万人を出したとされる1968年の香港風邪の流行以来、41年ぶり。
 チャン事務局長は10日、米国やメキシコ、オーストラリア、日本、欧州など感染者が多い8カ国の保健当局者と電話会議を行い、11日の緊急委員会で状況を報告した。
 WHOによると、新型インフルエンザは同日現在、世界74カ国に拡大、感染者2万7737人、死者141人を確認。オーストラリアでは今月1日に297人だった感染者は10日までに4倍超の1224人に増加し、重症者は5人にのぼっている。
 WHOは、これからインフルエンザが本格的に流行する冬に入る南半球で人から人への感染が拡大していることを重視。北半球と南半球の2つ以上の大陸で、地域社会レベルの流行を確認するというパンデミック宣言の条件は満たしたと判断した。
 新型インフルエンザは感染力は強いが、強毒性の鳥インフルエンザや毎年50万人の死者を出している季節性インフルエンザに比べ、致死率は低い。
 英国や日本からは「地理的な感染拡大だけで警戒水準を判断するのは適切ではない」との指摘もあり、WHOは症状の重さも考慮に入れることを決め、新型インフルエンザの症状を「中度」と判定した。

宮城で初の感染者=国内患者500人超-初確認から1カ月・新型インフル(2009年6月10日時事ドットコム)

 宮城県と鳥取県は10日、それぞれ県内初の新型インフルエンザ感染者を確認したと発表した。千葉県や東京都、福岡県などでも新たに確認され、国内感染者は20都府県で計518人となった。5月9日に国内で初めて確認されてから約1カ月間で、感染者は500人を超えた
 宮城県によると、感染したのは盛岡市在住のバスガイド女性(22)で、千葉県船橋市の市立七林中学校の生徒が修学旅行で乗ったバスに、3日と5日に添乗。別の小学校の修学旅行で滞在中だった宮城県内のホテルで9日に発症した。
 一方、船橋市によると、10日に感染が確認された7人のうち2人は七林中とは別の市立小中学校に通う兄妹だったため、両校など3校を新たに休校とした。
 千葉県ではほかに、七林中生徒が参加したテニス大会に出た旭市の中学3年女子生徒(14)や、東京都内の私立高校に通う市川市の男子生徒(18)らの感染も判明。その後の都の検査で、同じ高校の別の男子生徒(18)も確認された。

WHOのフェーズ引き上げも今さらと言いますか、おそらくこれ以上大きな動きは出てこないと見極めた状況での現状追認という感じのする話ではありますよね。
今後の主な関心はこのまま流行がいつの間にか収束し忘れ去られていくのか、それともどこかで強毒型でも出現しまたぞろ大騒ぎになるのかといったあたりでしょうか。

個人的に面白いなと思ったのは先日阪大微研が発表した培養細胞でのワクチン製造のニュースなんですが、これまでの有精卵では1シーズンに500万人が限度だったものが半年で6000万人用意できるというのですから半端ありません。
その昔このあたりの関係者と雑談したことがあるのですが、今までの使用数を考えますと有精卵の業者にとってはこの不景気の折に非常に大きなダメージになりかねないのかなと少しばかり心配しているところではあります(一同在来型向けのワクチンは当面従来法で継続するそうですが)。

さて、先日も少しばかり書きました通り、最近では各マスコミでも今回の一連の騒動に対する総括めいた記事が載るようになってきていますが(もはや終わったことにしているのでしょうか?)、その後登場したものも紹介してみましょう。

新型インフル、混乱の1か月(2009年6月8日読売新聞)

他の医療後回し、発熱相談パンク…

 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の感染者が国内で確認されてから、あす9日で1か月。

 兵庫、大阪を中心とした発症は下火になり、落ち着きを取り戻した一方、関東や九州など感染者が見つかる地域は広がりつつある。今回の新型は当初の想定と違った弱毒性であるうえ、感染者が急増する時期に発熱外来で限定して患者を診る方式の限界など、医療現場の課題も見えてきた。(大阪科学部・萩原隆史、医療情報部・館林牧子、藤田勝、科学部・本間雅江)

 感染拡大が一段落し、医療機関も落ち着きを取り戻した神戸市。当初市内に三つしかなかった発熱外来のひとつ、市立西市民病院(長田区)の藤井宏医師は「ピーク時には近隣の市からも患者は来るし、小児科医は2人なのに、子どもも多かった。内科以外の医師も総動員してフル回転で診察を続けた」と、振り返る。

 1日最大の受診数は西市民病院69人、中央市民病院が70人。限界を超える人数が押し寄せたわけではない。それでも中央市民で救急を一部ストップするなど、他の医療は後回しになった。結局、市医師会も協力して一般医療機関など約500か所で受け入れる体制に変えた。

 完全にパンクしたのは、最初に電話を受ける「発熱相談センター」だ。同市ではピークの19日には3640件も殺到。半数以上は「体調が悪い」「どこで診てもらえるか」といった受診を望む内容で、兵庫県内で1日1万件を超えた。

 発熱相談、発熱外来という名称も混乱を広げた。「熱中症など別の症状の人も交じってしまった」と同県医師会の西村亮一会長は話す。患者を限られた施設に集約する発熱外来方式は今回、兵庫と大阪で300人台という「中規模」の感染拡大でもたちまち許容量を超えた。しかも患者は局地的に急増する。

 発熱外来を経由したため、治療が遅れてしまった例も。関西地方で先月、発熱した4歳の子どもは、発症間もない段階では陽性と出ない可能性を考慮し、2日間、簡易検査を繰り返した。陰性と確定した後で、小児科開業医を受診するよう勧められたが、待っている間に別の細菌感染による肺炎を発症した。抗生物質を服用して幸い大事には至らなかったものの、診察した開業医は「最初から受診してくれれば、こじらせることはなかった」と話す。

 日本小児科学会会長の横田俊平・横浜市立大小児科教授は「小児科を受診する患者のほとんどは熱を出しており、新型だけを特別扱いしていては現場はかえって混乱する」と話す。同学会は今月1日、新型と季節性インフルエンザを区別せず、すべての小児科施設が診療に参加し、軽症なら診療所で、肺炎などを起こした重症患者は高度な医療ができる病院で診る体制を取るよう、提言をまとめた。

 そもそも今回の新型インフルエンザは弱毒性で、通常は薬なしでも治る。国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は「秋までまだ時間はある。患者の多くが軽症であることも考え合わせ、従来の対応の切り替えを考えていくべきだ」と話す。

感染地域は拡大

 日本で確認された新型インフルエンザの感染者は432人(8日午前1時現在)。5月9日に成田空港の検疫で初の感染が確認され、同月半ばには神戸市や大阪府の高校生を中心に、国内での感染拡大が判明した。ただし厚労省は今月4日、最も早い発症者は神戸市の高校生で5月5日だったと発表。この高校生に渡航歴はなく、別の感染者からうつったとみられる。

 発症者は17日をピークに減少しており、兵庫県や大阪府では下火になっている。一方、東京、神奈川、愛知、福岡など、少数ではあるものの新たな感染者が連日確認されており、地域的にはむしろ広がっている。結婚式の三次会や家族内での感染も起きている。

 国立感染症研究所によると、国内患者の症状は、発熱やせき、悪寒など季節性インフルエンザと違いはない。同研究所は「感染力は季節性と同等か、やや弱い」とみている。

 季節性インフルエンザは一般的に夏でも局地的な流行はあり、今年は5月末でも一定のレベルを超えて流行がみられる。岡部センター長は「国内に入った新型ウイルスも人から人へと受け継がれ、おそらく消えることはない。これに加え秋に第2波が起きる際は、南半球から持ち込まれるウイルスの割合が多くなるのではないか」とみている。(医療情報部 高橋圭史)

高校にも監視網●簡易検査時間短縮
第2波に備え

 秋以降に流行する可能性がある第2波の襲来にどう対処するか。政府は、監視システムの強化、新型用ワクチン、検査キットの開発を対策の3本柱に掲げる。

 高校生を中心に感染が拡大したことから、従来は中学生以下が対象だった学級閉鎖の監視網を高校生にも広げる。前週の情報を毎週火曜日にまとめて公開するよう速報性も改めた。患者の症状や治療内容に関する情報を医師らで共有するシステムも新たに作る。

 また、今秋以降に使えるようになるとみられる新型用ワクチンについて、副反応の情報を集めるシステムも構築する。発熱や倦怠(けんたい)感などの副反応を迅速に把握する狙いがあり、手足のまひなどの重い副反応が見つかった場合、必要に応じて接種の見直しをする。

 一方、今回の流行で問題になったのが、簡易検査の信頼性だ。新型を含むA型インフルエンザかどうかを調べるものだが、国立感染症研究所と神戸市が43人の患者を調べた結果では、20人(47%)が簡易検査では陰性だった。発症当日などウイルスの排出が少ないと検出できず、米疾病対策センター(CDC)でも、あくまで補助的な診断法にすぎないとしている。そこで期待がかかるのが、理化学研究所などが先月下旬に開発に着手した新型ウイルスの簡易検査法だ。特殊な酵素を使ってウイルスの遺伝子を増やす。遅くても半年後には試薬が完成する見通しだ。30分~1時間で結果が出るため、約6時間かかる現在のPCR法よりも大幅に検査時間を短縮できるという。

読売新聞では他にも「関西の教訓」という特集記事を出していますのでご一読いただければと思います。

関西の教訓(上)…医療

関西の教訓(下)…影響

これらの記事全編を通じて読み取れるのが、関係者それぞれの間での認識の相違でしょうか。
よく言われるように「皆が一斉にマスクをしたのは日本だけ」と言うくらい「何かヤバイものが流行ってるらしい」という危機意識は国民の間で広くまん延していた、ところがその一方で実際に症状が出たときどういう行動を取ればいいのか知らない、「発熱外来?なにそれ食べられるの?」な人が相当な割合でいたという現実もある。
医療関係者の間でも従来型よりずっと強い感染力に注目して少なくとも感染防御に関しては強毒型に準じた厳重な対応を是とする者がいる一方で、強毒型を想定した既定の方針では到底現場が回らないという現実もあってもっと広く一般の施設で診てくれないと困るという発熱外来担当者の声もある。
結局のところ国の定めた方針があまりに画一的すぎたのだという結論でまとめておくのは確かに簡単なのですが、むしろここで問われるべきなのはリスクをどの程度まで許容するのかという国民的合意の問題ではないでしょうかね?

今回の教訓として明らかなのはいくら島国であろうが感染リスクをゼロにするのは不可能であるということ、そして在来型インフルエンザですらまん延すれば相応の超過死亡が出ることを思えば、恐らく新型大流行という状況で病原性の如何を問わず死亡に至るリスクをゼロにすることもまずもって不可能だろうと予想されるところです。
軽症型だから普通のインフルエンザと同じでいい、強毒型だから徹底した隔離をしなければならないといったところで、おそらくその数倍の感染者がコントロールを離れて自由に街を歩き、好きな医療機関にやってきているというのが今回学んだ現実であるわけですから、どうやっても想定外の感染者、予想外の犠牲というのは早晩避けられないと思いますね。
そうなった場合に「ほら見ろ!政府の方針は間違っていた!責任を取れ!」といたずらに政局に結びつけてみたところでずいぶんと空しい話で、それ以前に人は必ず病気になるし重症になれば死ぬ人だっているんだよという当たり前の事実を、この機会にもう一度国民が再認識しておく必要があるでしょう。
その上でどこまでなら許せる範囲なのか、そのためにどの程度のコストと生活の制限を受容できるのかといったコンセンサスを固めておく方が、よほどパニックを避けられる道なのではないかなという気がしていますが、このあたりは厚労省が改訂作業中の新たな指針の行方にも注目していきたいところですね。

新型インフル第2波に備え、厚労省が素案(2009年6月11日読売新聞)

毒性に応じ3段階区分

 今秋以降に予想される第2波の新型インフルエンザ流行に備える厚生労働省の医療体制素案が10日、明らかになった。

 比較的症状が軽い現在のウイルスでも、ワクチンがない場合は国内だけで一冬に約5万人が死亡すると想定。ウイルスの毒性に応じて被害を3段階に分け、毒性が比較的弱い場合は、発熱外来は原則として設けない。同省内でさらに検討し、専門家の意見も踏まえて最終決定する。

 素案では、ウイルスの毒性を〈1〉現在流行している新型と同等(軽度)〈2〉アジアかぜと同等(中等度)〈3〉スペインかぜと同等(重度)――の3段階に区分。被害が最も少ない「軽度」でも、米国での流行状況からみて、国内ではワクチンがなければ3200万人が感染して23万人が入院し、感染者の0・15%にあたる約5万人が死亡すると試算している。

さて、そうは言っても世の中先立つものがなければ何事も回らないというご時世ですから、そちら方面でのバックアップも政府には求められているところです。
この点では発熱外来設置・維持に関わるコストや診療に従事し感染したスタッフの休業補償といったものも含めてまとめて面倒みるという方向で話が進んでいる気配なのはよろしいのですが、やはり例によって気の長い話だなという印象も拭えないところですよね。

新型インフル、2次感染医師に休業補償(2009年6月7日読売新聞)

政府、秋以降に交付

 政府は新型インフルエンザの感染者の診察で医療従事者に二次感染が発生した場合、医療従事者や勤務先の医療機関に、今年度補正予算で新設された総額1兆円の「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」を使って休業中の損失を補償することを決めた。

今秋以降、希望する自治体を通じて交付する。

 6日現在で、医療従事者の二次感染例は報告されていないが、国内での患者発生が本格化した5月から、医療従事者が自宅療養などを余儀なくされた場合の休業補償の要請が自治体から厚生労働省に相次いだ。

 とくに、5月22日から国の新方針で、新型インフルエンザの患者が急増した地域では専門に診る発熱外来だけでなく一般の医療機関でも患者を受け入れられるようになり、医療従事者への二次感染の可能性が高くなったとの見方も出ている。このため、厚労省は地方支援策の一環と位置づけ、同交付金による休業補償を検討していた。

 同交付金は経済危機対策が主眼だが、厚労省は医師らへの休業補償が使途で認められた「安全・安心確保等」に当たると解釈した。発熱外来の非常勤医師らの人件費や、発熱相談センターの電話回線費用などでも同交付金の活用を認める。

 同交付金を巡っては既に、修学旅行のキャンセル料発生の場合も使えるようにするなど、新型インフルエンザ対策での柔軟運用の実績がある。

医療機関対策もさることながら、このところの不況に加えてのインフルエンザショックで各方面の零細業者も相当な痛手を被っているという話がありますから、そちらの方の対策もかなり急を要するのではないかという気がしています。
しかしまあ、世界的不景気に新型インフルエンザ対策と、どこの国でも財政当局者は頭を抱えるような思いなんじゃないかと思いますが、この分の帳尻を今後どこで合わせていくのかといったあたりも気になってくるところではありますよね。

|

« 産科無過失補償制度の奇妙な迷走 | トップページ | いちいち見苦しい人たち »

心と体」カテゴリの記事

コメント

これおすすめですo(^-^)o!!

ハイレベル協議の要約:新型インフルエンザA (H1N1)ジュネーブ
国立感染症研究所
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009who/WHO_High_Level_Consultatio.html

投稿: 僻地の産科医 | 2009年6月12日 (金) 14時45分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/45314451

この記事へのトラックバック一覧です: 新型インフルエンザ、ついにフェーズ6へ:

« 産科無過失補償制度の奇妙な迷走 | トップページ | いちいち見苦しい人たち »