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2009年5月18日 (月)

国内での広がりがようやく確認された新型インフルエンザ、そして崩壊の足音が…

引き続いて今日も新型インフルエンザの話題ですが、この週末に大きな動きがありました。
皆さん既に御存知の通り、関西地区で国内初の人ー人感染例と思われる症例が確認され、国内でのインフルエンザ対策が新たな段階に踏み出すことににありました。
しかもいきなり大勢が新型と確認されているんですが、これも海外渡航歴のない患者にたまたま調べてみたら見つかったという非常に偶発的な事例が発見の契機だったんですね。
こうした実態が明らかになってしまうと誰しも「実はとっくに国内にもまん延していたんじゃないか?」と考えるのが自然な反応でしょうが、恐らく限りなく正解に近いという気がしています。

国内感染者、40人に=大阪、兵庫の高校生ら-地域へ拡大の恐れ・新型インフル(2009年5月17日時事通信)

 厚生労働省は17日、大阪府と兵庫県内の高校に通う生徒ら計32人について、新型インフルエンザへの感染が新たに確認されたと発表した。水際の検疫でなく国内で感染が確認されたのは、16日に判明した神戸市内の2高校の8人と合わせ、計40人となった。
 40人はほぼ全員が高校生か高校の関係者。一方で同省は「感染者の家族が通う別の学校、職場に広がっている可能性もある」との見方を示した。大規模な調査を行い、感染の範囲が限定されているか、地域全体に広がっているかを把握する。
 同省は神戸市に国立感染症研究所の研究員らを派遣、市職員を合わせた計11人態勢で感染ルートなどを調べる「積極的疫学調査」を本格化させた。高校生らが学校や家庭で接し、感染の恐れのある「濃厚接触者」をリストアップ。外出自粛を求めるとともに、面会調査を始める。大阪府にも同様に4人を派遣した。
 新たに感染が確認されたのは、兵庫県内では、16日にバレー部員らの感染が判明した神戸高校(神戸市)、同校と交流試合をしていた県立高砂高校(高砂市)バレー部の生徒、県立八鹿高校(養父市)の生徒、教諭と大阪府の私立大学に通う男子大学生ら計23人。
 大阪府では私立関西大倉高校(茨木市)の男女生徒9人の感染を確認した。
 同校の生徒は13日から15日にかけて発熱などを訴えた。神戸高の生徒は10日から13日に症状が出た。ほかに、関西大倉高の別の男子2人と女性講師1人、生徒の妹の女子中学生1人も感染が疑われ、同研究所で検体の検査中。
 同校では併設の中学校を含め約135人がインフルエンザで欠席したり、体調不良を訴えたりしており、感染者がさらに増える可能性もある。 

【新型インフル】生徒の検体を放置 渡航歴なく「予想外」(2009年5月16日産経新聞)

 新型インフルエンザに感染した疑いがある神戸市の男子生徒の検体は、診察した医師が市に提出してから詳細(PCR)検査するまで3日間かかっていた。生徒に渡航歴がなく「予想外」の事態だったが、結果的に対応に課題を残した。

 神戸市によると、生徒は11日に悪寒を訴え、翌12日には37・4度の発熱があり、開業医の診察を受けた。簡易検査の結果、A型陽性となったため、医師は市に検体を提出。医師が求めたのは新型インフルエンザの検査ではなく、ソ連型か香港型かの季節性インフルエンザとしての識別だった。医師は「忙しい時期だが、保健所をあけてほしい」と検査依頼した。

 市には、感染の疑いがある患者を診療する「発熱外来」からの検体も提出されており、市の担当者は「発熱外来の検査を優先していた。医師にも遅くなっていいかと了解を取った」と後回しになった事情を釈明した。

この記事を見てみますと、医師としては「新型ではないことを確認する」というつもりで出したところが、結果として新型だったという思いがけない経過を辿ったことが判りますが、非常に示唆に富む内容なのではないかと思いますね。
一つにはこの段階でどこまで新型か否かの確認検査が求められるのかということ、そしてもう一つは季節性インフルエンザも未だ流行している現状で、一斉に各地の医療機関が確認検査を求めた場合に果たして対応できる検査態勢があるのかということです。
特に気になるのが、メキシコでの知見によれば今回の新型インフルエンザでは患者の多くが発熱していないということで、これは疑い患者の洗い出しが極めて難しくなるのではないかと思われる話ですし、無制限に検査に回せば回しただけ確認患者が増えてきそうな予感すら漂っていますよね。

「渡航歴なし」に保健所も困惑(2009年5月17日読売新聞)

 新型インフルエンザかどうか詳しい検査をする目安になっていた海外への渡航歴。16日、渡航歴のない高校生の感染が判明したことで、全国の自治体からは困惑の声があがっている。

 これまで全国のほとんどの保健所では、本人や家族などがメキシコや米国、カナダなどの発生国を最近訪問したことがあるかどうかを新型インフルエンザを疑う目安にしていた。インフルエンザの簡易検査だけでは、季節性のインフルエンザ(A香港型とAソ連型)と区別ができないためだ。

 しかし今回の事態を受け、神戸市の周辺の自治体はこの日、相次いで遺伝子検査の実施基準を改め、奈良県は簡易検査で「A型陽性」の場合、過去7日以内に神戸市内に足を踏み入れたかどうかを条件に加えた。大阪府や京都市では、渡航歴の有無に関係なく、A型陽性なら全員に遺伝子検査をすることにした。

 ただし、どの保健所もコストや人員の問題から、検査の限界を口にする。1日平均100人超がインフルエンザと診断されている千葉県の担当者は「人員や機器の余裕がない。渡航歴のない人の検査で機器を占有すると、一番警戒すべき渡航歴のある人の検査に支障が出る」と指摘。東京都の担当者も「発熱患者すべてに遺伝子検査をするには、時間的、人員的に困難」と話した。

豚インフルエンザ患者の多くは発熱しない(2009年5月13日ニューヨークタイムズ)

 先週メキシコで調査を行ったアメリカの感染症専門家によれば、豚インフルエンザにかかった多くの人たちが、重症化した人でさえあまり発熱しなかった。新型ウイルスのもつこの奇妙な性質は、病気の流行を防ぐことをより難しくする可能性がある。
 発熱はインフルエンザの大きな特徴である。発症直後に体温が華氏104度(摂氏40度)まで一気にあがることがよくある。多くの感染症専門家は発熱がインフルエンザの重要な兆候だと考えているので、発熱症状の有無は患者を診察するうえで重要なポイントである。
 アメリカの専門家Richard P. Wenzel博士は先週四日間にわたって調査したが、メキシコシティの2つの病院で診察を受けた患者の3分の1は発熱症状がなかったと述べた。
 「私もメキシコ人の同僚も驚いた。教科書どおりならインフルエンザの流行時は発熱と咳の症状が90パーセントは認められるはずだ」とWenzel博士はバージニア福祉大学からの電話で述べた。
 同氏によれば重症化した人々が後に発熱することはあったが、軽症患者の半数は発熱しなかった。ほとんどの患者に咳と不快感(倦怠感?)が見られた。
 メキシコの2つの病院の患者のおよそ12パーセントは咳や呼吸困難といった呼吸器症状に加えて重い下痢症状を呈した、とWenzel博士は述べた。そのような患者は三日間にわたって一日当たり6回の便通が見られた。
 Wenzel博士はメキシコ人の同僚たちに、患者の便にA(H1N1)ウイルスが存在するかどうか調べるよう求めた。「もしもA(H1N1)ウイルスが人人感染を起こし、便中にもウイルスが認められるとしたら感染抑制はより難しくなる。貧しい国々で感染が広がる場合は特に。」と同氏は述べた。
 また、同博士は同僚に無症状の感染者がいないかどうか調査するよう強く求めた。
 同時にメキシコの国家的ワクチン計画の指揮をとっているSamuel Ponce de Leon博士の調査データや患者を検討した。
 Wenzel博士はメキシコでの大流行の理解しがたい奇妙な特徴は「5種類の違ったインフルエンザウイルスがここ数ヶ月間同時にメキシコに蔓延していた」ということだと述べた。 
 Wenzel博士が訪れた国立呼吸器疾患研究所での肺炎発症数は、過去2年間は週に20例だったが、最近では週に120例にのぼった。豚インフルエンザとの関連性が示唆される。
 豚インフルエンザ感染者が併発した肺炎は、1918-1919年のインフルエンザパンデミックで良く見られた合併症であるブドウ球菌性肺炎とは似ていない、とWenzel博士は語った。
 メキシコの2病院は呼吸器疾患の流行に対して良く準備が出来ていたと同氏は述べた。メキシコ人の医師たちは医療スタッフの不安を取り除くためのプログラムとして、スタッフへの情報提供を行い、ホットラインを設置し、心理的なサポートや健康診断などを行っていた。
 「流行時対応のこの側面(医療スタッフ支援)は、私が推測するかぎり米国ではあまり重要視されていない。これは流行時対応を成功させるためにはきわめて重要なことである。医療従事者間の不安感の管理(不安感へのきちんとした対応を行うこと?)はまだ不十分である。」とWenzel博士は語った。

ま、新型インフルエンザ対策予算など必要ないという官僚のいる国ではなかなかスタッフへの対策なども難しいのかなとも思いますが、政府も少しは腰を上げたという態度は示そうとしているようです。
しかし現実問題としてこういう状況になってきますと、末端医療機関に至るまで新型インフルエンザが滲透してくるのは避けられない(あるいは、既に来ている?)と思うのですが、これは下手をすると新型と診断されることもなく医療機関内部での感染が蔓延しているということになりかねませんね。

新型インフル「国内発生早期」、政府が対策レベル引き上げへ(2009年5月16日読売新聞)

 神戸市内の高校生から採取したウイルスが、新型インフルエンザと確認されたのを受け、政府は16日午後に対策本部幹事会を開き、行動計画の対策レベルを「海外発生期」から「国内発生早期」へと引き上げる見通しだ。

 今後の調査で、同高校以外でも複数の患者が見つかり始めた場合、対策はもう1段階引き上げられ、「感染拡大期」へと進む。

 「国内発生早期」の対策は、国内での感染拡大を出来る限り抑えることが狙いだ。現行の行動計画によれば、患者に接触した人の追跡調査や水際対策の継続に加え、〈1〉医療機関での発熱外来整備〈2〉学校などの休校要請〈3〉不要不急の外出自粛要請〈4〉集会などの自粛要請〈5〉企業への業務縮小要請--などの厳しい対策が実行に移される。

 しかし、今回の新型ウイルスの病原性は、通常の季節性インフルエンザ並みと見られている。強毒性の鳥インフルエンザを想定した行動計画を実施すれば、経済・社会への影響が必要以上に大きくなる恐れがあるため、政府の対策本部は、新型ウイルスの特徴に合わせた弾力的な対処方針を決める見通しだ。

厚労省、水際検疫縮小へ 医療体制の強化に重点(2009年5月17日日経ネット)

 厚生労働省は16日、新型インフルエンザ対策で先月25日から強化している水際の検疫体制について、段階的に通常の検疫体制に戻す方針を決めた。 16日に国内で人から人への感染が初めて確認されたため、国内の医療体制の強化に重点を移す。同省は「ウイルスの侵入をできるだけ遅らせる水際対策は効果があった」としている。

 同省によると、成田空港、関西国際空港、中部空港の3空港で、通常153人の検疫官を16日時点で計214人増員している。いずれも国立病院や大学病院などから医師や看護師などの応援で対応していたが、こうした医師らを医療現場に戻す。

実のところこの段階になると、一般人にとって事態はかなりシンプルになってきます。
かかったかなと思ったら直接病院に行かずまず電話で指示を仰ぐ、感染が確認されたら周りにうつさないよう大人しくして適切な治療を受ける、基本的にこの程度のことでしかありません。
一方で困ってくるのが医療従事者で、検査キットや治療薬の数すら限られている現状でどこまで手を広げて患者を見つけてしまっていいものか、そしてその場合他の患者に対する診療が出来なくなるのではないかといった懸念が多々出てくるわけです。

ちなみに感染者発生で先行している欧米では既にもう少し先の段階に進んでいて、既に米国などでは症状の軽重による患者の選別なども行われていますが、感染者がある程度以上増えてくるなら「手をかけずとも自力で治る者には手をかけず、その分のマンパワーを重症者に回す」ということは極めて常識的な判断ではないかと思いますね。
翻って日本を見ればずいぶんとお寒い医療体制なのは相変わらずですから、我が国の医療における基本的大前提である「平等主義」がここでも文字通りに発揮された場合にはあっという間に医療態勢が崩壊してしまう危険性すらあると思うのですがね。
季節になると時折ある話ですが、夜間外来に風邪をひいたと言う患者が殺到し、「心配だからインフルエンザの検査をしろ!」「タミフルを出せ!」と要求しまくった結果朝になるまでには検査キットも治療薬も品切れといったことになりかねません。
このあたり政府が音頭を取って早急に基本方針を立て周知徹底しておかないと皆が共倒れで大変なことになると思うのですが、先日以来の厚労省あたりの動きを見ている限りではこのまま無為無策に自然の経過を観てしまう可能性が極めて高いのではないかなと言う気がして仕方がありません。

米は重症者の治療に重点、欧は薬の積極投与で増大鈍化(2009年5月16日読売新聞)

 【ワシントン=山田哲朗、ロンドン=大内佐紀】新型インフルエンザ感染者が全土に広がる米国では、軽症者の遺伝子検査が省かれるなど、重症者の検査と治療に重点が移っている。

 米疾病対策センター(CDC)の公式発表では、米国で感染が確認されたり濃厚とされた人の数は4700人台だが、CDCのダニエル・ジャーニガン博士は15日、感染者の実数は「10万人以上」との推計を示した。把握されていない軽症者が多数いると見られるからだ。CDCが14日から、感染「確認」数を単独でなく、「濃厚」数とひとくくりに発表しているのも、ウイルスの遺伝子検査が省略され、最終確認されない軽症者が増えたためだ。

 一方、重症者のウイルスは詳細に分析される。慢性疾患がある人などに加え、抵抗力が強い若い世代にも重症者が目立つ理由が「謎」で、CDCは世界保健機関(WHO)と協力し、重症者のウイルスに、毒性を強める未知の変異がないか徹底究明している。

 英国やスペインでは、人から人への感染が一時、急速に拡大する様相を示したが、ここ何日間は感染者の増大が鈍化している。欧州各国では、感染者と接触機会がある人にタミフルなど抗インフルエンザ薬を積極投与する対応が取られており、この「予防投与」が奏功している模様だ。

 英国では感染者が出た南部デボン州などの6校で休校措置が取られたが、感染者がいない学校を休校にした例はない。

感染症医療機関の16%で担当医1人、夜間対応できぬ恐れ(2009年5月15日読売新聞)

 新型インフルエンザの診療拠点である全国の感染症指定医療機関の16%で診療に当たる医師が1人で、夜間などに十分な診療体制が組めず、患者の受け入れができない病院も6施設あることが、読売新聞の調査でわかった。

 調査は今月、全国の感染症病床がある指定医療機関325施設に行い、279施設から回答を得た(回収率86%)。

 新型インフルエンザ患者の「治療を担当する医師数」を尋ねると、238施設が回答。このうち106施設(45%)は5人以上の体制を取っていたが、39施設(16%)は1人だった。医師1人では、夜間や休日での診療に対応できない可能性がある。

 1人体制の医療機関からは、「内科の常勤医がいないため、重症患者を診る自信がない」「医師不足のため、県から派遣される医師で対応する」などの意見が寄せられ、医師不足の影響が出ていた。

 また、患者の受け入れができないと回答した6施設は、「医師や看護スタッフが足りない」「ウイルスが病室外に出ないようにする陰圧室がない」と理由を挙げた。

 厚生労働省は「感染症指定医療機関でも呼吸器内科医など専門の医師が不足している。感染が広がった場合は、地域のほかの医療機関とも協力し、対応してほしい」としている。

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