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2009年5月14日 (木)

新型インフルエンザ続報 ここにも牟田口後継者の足音が…?

今日も新型インフルエンザ関連の話ですが、このところ非常に興味深いデータが出てきていますので、まずはこちらから紹介させていただきます。

新型インフルの致死率0・4%  国際チームが分析(2009年5月12日47ニュース)

 【ワシントン11日共同】世界に広がっている新型インフルエンザの致死率は1957年のアジア風邪並みの約0・4%で、感染力は季節性インフルエンザよりも強いとする初期データの分析結果を、国際チームが11日、米科学誌サイエンス(電子版)に発表した。

 チームは、世界保健機関(WHO)の世界的大流行(パンデミック)評価に携わる英ロンドン大インペリアルカレッジなどで「20世紀に起きたパンデミックに匹敵する大流行になる可能性がある」と指摘している。

 チームは、旅行者を通じた世界各国への感染拡大の状況などから、4月末にメキシコで感染者は2万3000人いたと推計。当時の死者数から、感染後の致死率は約0・4%で、1918年出現のスペイン風邪(約2%)よりは低いが、アジア風邪(約0・5%)に匹敵するとした。

 1人から何人に感染するかを示す感染力は、1・4-1・6人と推計。季節性のインフルエンザよりは強く、1・4-2人だった過去のパンデミックの低い方に近いという。

 メキシコでは、1月12日ごろに最初の1人に感染し、4月末までに人から人への感染が14-73回繰り返されたと推定されるという。今回の解析では、最も早く感染が確認され、住民の半数以上が発症したベラクルス州ラグロリアが発生地になったとの説を支持する結果が得られたとしている。

この記事だけでは見る人によってずいぶんと評価の分かれそうなデータですが、やはり決して侮れるようなものではないというのが正直なところではないでしょうか。
ちなみにアジアかぜの流行は1957年のことで、発生したのは中国からだと推定されていますが、全世界で300万人が罹患して死亡者数は5,700人(当時は現在のような迅速診断などなかったことには注意が必要で、実際の数字はもっと大きかった可能性があります)と言われ、相当な猛威をふるったウイルス(とは言え、これでもスペインかぜの約1/10程度)です。
アジア風邪の場合は抗生物質が登場して以降の話で二次性の細菌性肺炎合併による死亡者はスペイン風邪と比べて激減しただろうと予想され、ウイルス自体の危険性というものは必ずしもスペイン風邪より弱いと単純に比較できませんから、今回の新型は決して「軽症型だから大したことないよ」などと楽観できるような状況ではないと思いますね。

特に気になるのは通常ならインフルエンザであまりひどいことになりにくい健常若年者に重症化する例が多いということで、こうなると例のサイトカインストームの話が信憑性を帯びてきます。
現在も季節性のインフルエンザがかなり流行していて、厚労省統計によれば季節性のインフルエンザの致死率は0.05%、年間死亡者数が合併症による死亡込みで1万人前後のレベルと言いますが、この場合の死亡者数というのは流行がなかったと想定した時より増えたと予想される分(超過死亡)であって、その多くが身体の弱い高齢者等に合併症(細菌性肺炎など)を起こしたものと思われます。
通常のインフルエンザより感染力が強く致死率も一桁高い、しかも普通なら寝ていれば治っていたはずの健常若年者にとっても命に関わりかねないということになりますと、本格的にまん延されてしまった場合には社会活動に対する影響も含めてかなりきついのではないかなと思えます。

こうしたことを受けてか、WHOも従来の見解をさっそく修正する必要に迫られたようで、各国の対応にも微妙な軌道修正が必要となりそうではありますよね。
検疫による水際阻止作戦の是非に関しては色々と見解も分かれていますが、これに限らずどんな対策であれやるにしろやらないにしろ「軽症型で大したことがないからやらなくてもいいんだ」といった類のものではなく、それぞれ根拠を元に最善のことをやっていかなければならないのだということは理解しておく必要があるでしょう。

新型インフル「症状穏やか」一転 WHOが見解を修正(2009年5月12日朝日新聞)

 【ジュネーブ=玉川透】世界保健機関(WHO)のフクダ事務局長補は11日の記者会見で、新型の豚インフルエンザの症状について「現段階で穏やかだと決めつけるのは早すぎる」と述べ、穏やかな症状が多いとしてきたWHOの見解を事実上修正した。

 WHOはこれまで、重症者が多く出ているメキシコを除き、穏やかな症状が多いとの見方を示す一方で、新型ウイルスへの感染が若年層に集中しているのは「メキシコなど感染地域に若者が旅行に行きがちなことの反映」と説明していた。

 しかし、関係筋によると、最近になって米国の症例が多く集まり、分析の結果、季節性のインフルエンザでは重症化しにくい若い世代に、肺炎などの重症者が一定数、メキシコ以外でも見られることが分かってきたという。

 WHOは「感染が広がれば若い世代に重症者が増える可能性があり、社会的なインパクトが大きい」(同筋)と判断、軌道修正を余儀なくされた格好だ。フクダ氏はこの日「(症状は穏やかだという)当初の見方は変わりつつある」と発言。特にこれからインフルエンザの流行しやすい冬を迎える南半球では、若者の人口比率が高い途上国が多いことから、一層の警戒が必要だとの認識を示した。

実のところ対応が微妙になってきているのは空港での水際防衛線に限らず、今後患者がやってくるだろう臨床の現場でも同様のことだと思われます。
この点で気になっているのが先日も色々と揉めた経緯のある感染疑い患者の受診に関する問題ですが、やはり国民には周知徹底されていないようで、しかもあってはならない妙な方向に飛び火してしまっているような気配も出てきています。
知っていてもやらざることをやってしまう人間というものはある意味仕方がないところですが、知らないが故にやるべきでないことをやってしまう人が出るというのは当局の職務怠慢と言われても仕方のないところだと思いますね。

新型インフル、受診手順36%は知らず 日経ネット調査(2009年5月13日日経ネット)

 日本経済新聞社が個人を対象にインターネットで実施した調査で、医療機関で二次感染を引き起こさないために政府が求めている受診手順について 36.5%が「知らなかった」と答えた。医療体制への疑問や不満について複数回答で聞いたところ、医療機関の受け入れ態勢とワクチン・治療薬の供給に不安があるとの回答がそれぞれ5割を超えた。

 アンケートは調査会社マクロミルを通じ5月8、9日にインターネットで実施。全国の20歳以上の男女1030人が回答した。

新型インフル感染の高校に「帰ってくるな!」(2009年5月13日スポーツ報知)

 大阪府寝屋川市の府立高校で、男子生徒3人と教員1人が新型インフルエンザに感染したことを受け「なにをしているんだ」など、行政・学校の対応を批判する内容の電話が9日以降に計約50件、寝屋川市に寄せられていたことが12日、分かった。なかには「なんであんな高校が研修に…」などと、生徒を中傷する内容の電話も出てきており、市では対策に頭を悩ませている。

 市によると、内容で最も多いのは感染者が出た高校を特定するための問い合わせだという。市内には3つの府立高校があり、感染の拡大を不安視する市民が「どこの高校か教えてほしい」と聞いてくるケースが多数を占めるという。

 市側の対応だが、感染者の人権やプライバシーに配慮して、「どんな高校がありますか」と問われた場合だけ、3つの高校名を列挙する回答にとどめている。

 しかし感染確認から日がたつにつれ、かかってくる電話の内容は次第にエスカレート。感染が明らかになった当初は「なぜ早く帰国させなかったのか」などと学校や府教委の対応に向けられた批判が多かったが、ただ単に市職員を「バカヤロー」とののしったり、生徒に矛先を向ける過剰反応も増えてきた

 極端なケースでは「成田(空港)から帰ってくるな!」と、感染者の永久的な隔離を求める声や、高校を勝手に特定したと思われる人から「なんであんな高校の生徒が、カナダに研修なんか行くんや」と、根拠のない中傷も出ているという。

 電話はほとんどが市内からだが、中には愛知など他府県からのものもあり、神奈川からは「教師は何をしてたのか」との声が寄せられている。

 市の危機管理室では、今後も生徒の人権に最大限配慮。感染と無関係の生徒にまで及ぶ批判が続くようなら「精神的なケアなど、大阪府教育委員会に協力を仰いでいく必要がある」としており、今後もピリピリムードが続きそうだ。

このあたり、本来であればマスコミが国民に対して広く正確な情報を知らせていくべきなんでしょうが、むしろ率先してデタラメを広めているような状況でもありますから仕方がないとも言える事態なのかも知れません。
しかしアメリカあたりではどうせ弱毒型だからと「さっさと感染して自由になろう!」なんてことを言い出す人たちも出ているようですが、前述の通り決して侮れないものであって「なあに、かえって免疫力がつく」などと間抜けなことを言っている場合ではないんですよね。
今後殺気立っていくだろう現場で余計なトラブルを招かないためにも、是非とも早急にきちんとした広報を行っていってもらいたいものだと思いますね。

さて、実際に国内発生例が多発し患者が大挙してやってきた場合に、末端医療機関ではどう対応すべきなのでしょうか?
診断キットや抗ウイルス薬の供給が何とか行われるとしても、例えば外来患者の症状からインフルエンザを疑い迅速検査でA型陽性となった場合、全例PCRで新型かどうか確認するのは時間的にも手間的にも非現実的と思われますよね。

ちょうど現在季節性のインフルエンザも流行しているわけですが、こちらについでも昨年辺りからA型に関してはタミフル耐性株が大きな問題となっている一方で、新型インフルエンザは消化管症状が出やすいとも言われていることなどからも、抗ウイルス薬を使うなら吸入薬のリレンザよりもタミフルの方が第一選択になるんじゃないかという気がしています。
そうしますと「A型が出たらとりあえずタミフル」という対応では耐性株の多い在来型には無効ということになりかねず難しいところですが、このあたりは薬の在庫も有限ですからどういった症例に抗ウイルス薬を用いるべきなのかも含めて、ある程度明確な方針が出てくるまでは現場の判断でやっていくしかなさそうです。

これとは別に気になるのが、先日も書きました新型対策に要するコスト負担の問題です。
新型に対応するとしても国が言うようなことを馬鹿正直に行っていくとすればとんでもない大赤字になってしまうわけですから、ただでさえ経営厳しい医療機関にとっては今後大流行にでもなれば大変だろうなとは想像できることです。
公の要請に応えて発熱外来を開設するのは仕方ないとしても、病院にとっては少しでも出費が減るならそれに越したことはないのが本音でしょうが、この点で非常に良さそうなやり方だなと思ったのがこちらの「ドライブスルー方式」というものです。

「発熱外来」ドライブスルーで 栃木・小山市(2009年5月12日産経新聞)

 新型インフルエンザの国内流行に備え、栃木県南健康福祉センターや小山市などは11日、感染の疑いのある患者を診察する「発熱外来」のシミュレーションを同市外城の市総合公園で行った。

 発熱外来の形態の一つとして、患者が車内にいながら、検温や問診、医師の診察、治療薬を受け取ることのできるドライブスルー方式がある。同市は、約600台分の駐車場がある同公園で、発熱外来の準備段階としてシミュレーションを実施することにした。

 この日は小山地区医師会の医師や、同センターの保健師ら約80人が参加。防護服を着用して、患者役の関係者に問診用紙を配ったり、簡易検査を行ったりするなど、受診作業の流れを確認した。

経費削減に加えて感染拡大阻止という点でもなかなかうまいことを考えたなと思いますが、しかしこれも本筋から言えば国が十分な予算をつけるのが本筋だと思える話ですよね。
ところが実際のところは予算をつけるどころか、「金がかかる?現場が身銭を切って勝手にやればいいんじゃないの?」と受け取られかねない(実際のところ本音はその通りなんでしょうが…)発言が政府筋から出ていることは非常に気になるところです。

新型インフル、予算面で新しい措置講じなくても対応可=杉本財務次官(2009年05月11日プレジデントロイター)

[東京 11日 ロイター] 財務省の杉本和行次官は11日、定例の記者会見で、国内で感染が確認された新型インフルエンザについて、予算面で新しい措置を講じなくても対応が可能だとの認識を示した。

 杉本次官は、新型インフルエンザ対策について、1)抗ウイルス薬「タミフル」「リレンザ」は十分な備蓄を確保、2)十分な医療体制も整備、3)仮にワクチンを製造する必要が出てきたとしても、2009年度当初予算と補正予算で対応可能──などとして「現在のところ、特に予算面で新しい措置を講じなくても対応が可能だ」との認識を示した。

 一方、新型インフルエンザが日本経済に与える影響については、海外旅行の減少や海外経済の落ち込みによる輸出の減少、医療費の増加などを挙げ「今後も注意深く見守っていきたい」と語った。

まあ財務省ですから実際のところこういう認識なんだろうなとは思いますが、現場医療機関や自治体からは何とかしてくれと実際に声が上がってきている一方、一部自治体では国が動かないからと独自の予算まで組もうとしているような状況下で、国の官僚がこういうことを言うというのはどうなんでしょうかね?
別に「人の命は何よりも重い」などと言うつもりもありませんが、国民に対して責任を負うべき政府の高官が現場に丸投げでバックアップはしませんと公の場で口にしちゃうのはどうなのよと言うことです。
あるいはこんなところにも牟田口氏の末裔がいらっしゃるということなんでしょうか…正直勘弁してもらいたいところなんですが。

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