« 今日のぐり「麺屋哲」 | トップページ | 「専門家」の定義とは何なのか »

2009年5月11日 (月)

新型インフルエンザ、国内でのまん延も間近?

国内で初の患者が見つかったという先日の記事に引き続いて、本日も新型インフルエンザの続報をお送りします。
しかしWHOを初め各国では感染拡大阻止にある程度の目処が立ったと感じているようですが、一方で検査態勢の整った先進国に感染が広がると一気に確認感染者数が増えるものだなと感じさせる話題が下記のニュースです。
このあたりも現場の実感と統計的データが必ずしもパラレルではないということの一つの例証ということになるのでしょうかね?

新型インフル感染、世界で4000人超す(2009年5月10日読売新聞)

 【ワシントン=山田哲朗】米疾病対策センター(CDC)は9日、米国の新型インフルエンザ感染者が615人増加し、44州で2254人になったと発表した。

 メキシコ保健省も9日、確認された感染者数が262人増の1626人となり、このうち死者は48人と発表。世界の感染者数は、日本を含め、29か国・地域で計4353人となった。

全世界の死者50人超す=コスタリカでも犠牲者-新型インフル(2009年5月10日時事通信)

 【サンパウロ9日時事】コスタリカのアビラ保健相は9日、新型インフルエンザに感染した男性(53)が同日死亡したことを明らかにした。感染者の死亡は同国では初めてで、メキシコ、米国、カナダに続いて4カ国目。また、新たにノルウェーでも感染者を確認、全世界の感染者は日本を含む30カ国・地域で 4300人を超え、死者は52人に達した。
 コスタリカで死亡した男性は、サンホセ市内の病院に1週間以上入院していた。糖尿病などの持病もあったという。 

アメリカもあっという間に患者数が激増しましたが、検査をすればこれだけ見つかってくるわけですから、おそらくメキシコでは本来もっと感染者が多かったはずですが今となっては実数把握も困難ですよね。
これに対して国内では四例目の患者が発見されており、厚労省では水際阻止態勢の成果と考えているようですが、しかしそうなると先日出ていた検疫縮小の話はどうなるのかといったあたりも気になるところです。

【新型インフル】「よく見つけた」検疫発見で厚労省やや安堵(2009年5月9日産経新聞)

 「現場(成田空港検疫所)はよく見つけてくれた。あとは3人が回復してくれるのを祈るのみ」

 検疫所でのウイルス国内侵入阻止に、厚生労働省大臣官房の塚原太郎参事官(医薬食品担当)は、乱れた髪をかき上げ、国内侵入という“最悪の事態”をとりあえず防いだことへの安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 感染疑いの一報がもたらされたのは8日夕。検疫所業務管理室の職員十数人らが徹夜で対応に追われた。

 同室に成田検疫所から、「新型陽性」の連絡が入ったのは午前4時前。その約1時間後、国立感染症研究所からも確定診断が届いた。

 同室の職員は「陽性が出たときはみな驚いた。でもきょうも多くの便が到着する。気を引き締めていきたい」と話した。

ま、実際に少ないスタッフで現場は精一杯やっていることでしょうし、ほっとしたというのも正直なところなんだとは思います。
誰がどう見ても時間の問題だったわけですから、一応こうして第一例が出たというのは一つの区切りにはなるんでしょうね。
しかしこの一連の患者発見の経緯が詳しく報道されてくると、どうもそうそういい話ばかりでもないようなんですね。

【新型インフル】別の生徒1人、新たに感染確認 国内4人目 厚労省(2009年5月10日産経新聞)

 カナダから帰国した大阪の男子高校生ら3人が新型インフルエンザに感染していた問題で、厚生労働省は10日早朝、感染者3人と同じ航空機に乗り、疑い濃厚となっていた別の男子生徒が、国立感染症研究所の確定検査の結果、新たに新型に感染していたことが確認されたと発表した。これで国内感染者は4人目。同じ便に搭乗していた他の帰国者の中で、感染者が発生する恐れも出てきた。

 厚労省によると、新たに感染確認された男子生徒は、感染者3人の近くにいた「濃厚接触者」であったため、感染の可能性があるとして、宿泊施設に留め置く「停留」措置の対象になった49人のうちの1人。8日、感染者3人と同じ米デトロイト発ノースウエスト航空25便で成田空港に到着。検疫前の健康状態などを確認する質問票には「症状なし」と回答していた。

 しかし、停留中の9日午後、38度台の発熱などの症状を訴え、同様に足止めされていた6人の生徒とともに、千葉県内の病院に救急搬送された。

病院による新型感染の簡易検査は、ウイルスが未検出で陰性だったが、県衛生研究所の詳しい遺伝子診断(PCR)で新型の陽性反応が出た。そのため、感染研で最終的な確定検査を行っていた。

 6人は遺伝子診断の結果、新型感染は否定された。

特に注目していただきたいのは、簡易検査(おそらく迅速診断キットと思われますが)で陰性だったが、PCRで確認したところ新型の陽性反応が出たという下りです。
元々未発症の時期から発症早期にかけては迅速診断キットの感度が低いことは常識であるのに、何故か迅速検査の結果によるふるい分けが錦の御旗のように扱われているように見えることには違和感を感じています。
迅速キットを用いて言えるのは「陽性に出ればほぼ確実にインフルエンザ」と言うことだけで、これを除外診断的に用いるのは妥当ではないと思いますね。

もちろん実際にこうしてPCRにまで回しているということは現場のスタッフはそうした勘違いはしていないのかも知れませんが、素人の国民に誤ったメッセージを伝えないようマスコミはきちんと事実を報道しないといけないはずですよね。
「インフルエンザにかかっているかどうか、15分ですぐに判ります」などという言葉だけが一人歩きした結果、あっちでもこっちでも意味もなく「心配だからインフルエンザの検査をしてくれ」と市民が押し寄せてくれば、どこの医療機関でもあっという間に検査キットなど底をついてしまいます。
マスコミの方にも一応は妙な方向に突っ走っているという自覚はあるのかも知れませんが、冷静になれといいつつ冷静になって何をどうすればいいのかも提示できないようでは単なる対案なき批判勢力としか見られないわけで、パニック映画で言うところの「口だけ達者で一人で暴走してさっさと死ぬ雑魚キャラ」扱いもやむなしというところでしょうか。

新型インフルエンザ「海外でマスクをしているのは日本人だけ」(2009年5月7日日刊ゲンダイ)

●戦前から変わらぬ国民性、メディアの狂騒

 ゴールデンウイーク中、テレビをつけると朝から晩まで新型インフルエンザ報道のオンパレードだった。それも「バカ」がつく騒ぎぶり。目に余る過熱報道に、朝日新聞の投書欄にはこんな声が紹介されていた。

「(横浜市の)高校生が入院している病院の前で、マスクをつけたリポーターが絶叫口調で伝えていたが、これではまるで犯罪者扱いだ」「映像メディアは、場合によってはインフルエンザより恐ろしい」(6日朝刊)

 実際、世界を見てもこんなに大騒ぎしているのは日本くらいだ。帰国ラッシュの6日の成田国際空港。感染者が出た米国や、お隣の韓国からの帰国客は「現地でマスクをしているのは日本人だけ。恥ずかしかった」と口をそろえていた。

「ニューヨークやシカゴはもちろん、感染源のメキシコでさえ、マスクをしている人はほとんどいません。おカミから、手の洗い方やマスクまで強要されるいわれはないと考えているし、欧米人はそもそもマスクをするくらいなら外出しない。テレビが政府の伝達係となって不安をあおっている日本のパニックぶりは、奇異な目で見られています」(在米ジャーナリスト)

 そんな大マスコミをそそのかしているのが麻生政権。「冷静な対応を」と会見で呼びかけた舛添大臣の興奮ぶりもひどかった。「国民が一丸となれば、見えない敵であるウイルスとの戦いに勝てる。オールジャパンで力を合わせて戦いたい」と目を血走らせ、まるで戦争にでも突入するかのような口ぶりだ。これでは感染の疑いがあった高校生が犯罪者扱いされるのも仕方ない。政治評論家の森田実氏が言う。

「政府が“有事”をあおり、テレビや新聞など大マスコミがそれに乗っかって、ひとつのことだけを興奮気味に画一的に報じる。北朝鮮のテポドンのときもそうでしたが、これは非常に危険な事態です。大本営から与えられた情報だけを垂れ流した戦前戦中と変わらない。大マスコミはその反省を忘れ、自主的な判断や、バランスよく報じる任務を放棄しています」

 国民を守る強い政府をアピールして支持率を上げたい麻生政権に、踊らされ利用されている大マスコミは目を覚ますべきだ。冷静すぎるほどでないと、いざ国内感染が出たとき、この国は本当にパニック全体主義になってしまう。

ま、確かに思いきり踊らされて(あるいは勝手に踊り狂って?)恥ずかしい思いをしたばかりのマスコミとなれば、こうした自戒の念を抱くのも無理からぬところかとも思いますが(苦笑)。
いずれにしてもいたずらに実態以上の危機感を煽るばかりでも仕方がないのと同様、根拠もなくただ「心配しなくてもいいはずだ」といった楽観論も同等以上に有害無益であることは言うまでもありません。
一方で事前の計画といささか乖離を始めた現状をどう修正するかという点で、関係者の誰しもが頭を悩ませている部分もあるのは確かです。

【新型インフル】厳しい「行動計画」現実と隔たり(2009年5月10日産経新聞)

 新型インフルエンザ対策で、政府が事前に定めた「行動計画」と、現実との隔たりをどう埋めるかが課題として浮上している。行動計画が、猛毒性のウイルス(H5型)の流行を想定していたのに対し、今回の新型ウイルス(H1型)が弱毒性である可能性が高いためだ。「検疫」「学校閉鎖」「ワクチン製造」などでは行動計画と大きく異なる対応が取られる可能性もある。

 ■手探り状態

 政府は1日に開いた「新型インフルエンザ対策本部(本部長・麻生太郎首相)」で、行動計画の運用を「弾力的」に行うことを決めた。ただ、どう弾力性を持たせるかは「手探り」(厚労省幹部)の状態だ。

 行動計画では、現時点での対応は「第1段階・海外発生期」。検疫強化策などが取られている。

 今後も行動計画を忠実に実行すると仮定すると、国内で発生が確認され次第、「第2段階・国内発生早期」で定められる対策が取られる。検疫強化に加え、学校閉鎖、企業に不要不急の業務縮小が要請される。

 さらに流行が広がると、「第3段階」に移る。検疫強化などの水際対策は縮小される。対応できる患者数の限界を考慮し、病院での治療も重症者に限定。死者の増加に対応するため、遺体安置所を確保することも想定されている。

 その後、感染者が小康状態となる「第4段階」で対策が緩められ、次の流行第2波に備えることになっている。

 ■既に「隔たり」

 現時点で「隔たり」が指摘されているのは「検疫」だ。行動計画では「第2段階」までは強化態勢が取られることになっているが、すでに手いっぱい。

 「病院医師や看護師、医大教授クラスも検疫の応援に入っており、医療現場の態勢がおかしくなる」(国立感染研の岡部信彦・感染症情報センター長)。「感染が広がっている英国、スペインからの検疫がすでにできていない」(与党の申し入れを政府にした坂口力元厚労相)などの懸念が出ている。

 麻生首相も「アジア便で検疫強化する事態になると、人の絶対量が不足する」と懸念。場合によっては、検疫などの水際対策は、行動計画を前倒しして縮小される事態もでてきそうだ。

 ■割れる意見

 「第2段階」で学校閉鎖をどうするかという議論も出てきた。行動計画では感染者がでた地域では、都道府県単位で学校が閉鎖される。だが、米国ではウイルスの弱毒性を理由に「休校は必要ない」という方針が打ち出され、波紋を広げている。舛添要一厚労相は「専門家の間でも意見が分かれている」と日本での難しさを話す。

 ワクチン製造も行動計画とは異なる対応が迫られそうだ。行動計画では、全国民を接種対象に、「製造ラインを直ちに新型ワクチン製造に切り替える」という記述がある。

 だが、インフルエンザは季節性でも多い年では国内で1万人以上の死因に影響を与えている。新型ワクチンの製造見通しが立ったとしても、製造能力をどこまで振り分けるか、難しい判断を迫られそうだ。

態勢のシフトといった各論についてはともかく感染防御の一般論として考えると、新型対応のワクチン製造もようやく実行に移され始めたばかり、現場には検査キットも治療薬も届かずというこの段階で、ただ弱毒であるからと感染拡大の手をゆるめてしまえばどういうことになるのかという疑問はありますよね。
後述するように新型に対しては特別に手厚い医療体制が要求されているわけで、在来型の季節性流行も収束していない段階で新型の感染拡大が起こればあっという間に医療機関のキャパシティーを超過する危険性が少なからずあるように思います。
このあたりは前述のマスコミ論調にならって例えて言えば、銃弾飛び交う戦場の真っ直中で「武器があるから戦争が起こるんです!憲法9条の理念を世界に広げましょう!」とプラカードを掲げて練り歩くが如き空気の読めない行為をしてもらっても、実際問題として現場は対処に困るといったところでしょうか。
ロジックとして正しいかどうかと現場の現実に適合しているかどうかはまた別問題であって、そういう点では「治した者勝ち」という現場に慣れている医者という人種はひどく冷めた現実的な部分があるのも確かですから、いずれにしても机上の空論ではなく現場がついていける方針というものを打ち出していただかなければならないでしょうね。

さて、国内で患者が出たこともあって情報だけは幾らでも入ってきますが、そうした中で現状を改めて見直してみると、色々と素朴な疑問も湧いて出るわけです。
特にかつてないほど国が主導して強権的態勢を取っているだけに補償問題といったあたりも気になるところだと思いますが、こちらもようやくある程度の情報が出てくるようになりました。

【新型インフル】食事や休業補償…停留措置での生活は?(2009年5月9日産経新聞)

 感染防止と健康観察のため、空港近くの宿泊施設に10日間の「停留」措置を受けることになったのは、乗員乗客計49人。潜伏期間が過ぎる18日まで一時待機する。厚労省によると、空港での検疫で大規模な停留が行われるのは、「SARS(新型肺炎)のときもなかった。初めてではないか」としている。

 停留は検疫法に基づく措置で、違反すれば懲役1年以下又は罰金100万円以下の罰則がある。

 厚労省によると、停留措置対象者は、新型インフルエンザに感染した男子高校生ら3人に同行した33人と、感染者の近くに座っていた乗客と乗員計16人の合わせて49人。それぞれ個室を用意。食事は、室内や広間など特定の場所で取ってもらう。室外に出るときは、マスク着用が必要になるが、施設の外には出れない。他の停留者と会話をすることはできる。

 停留中は、1日3回の体温の自己測定に加え、医師らによる健康状態の確認が行われる。希望者には発症予防のため、インフルエンザ治療薬「タミフル」などが投与される。

 宿泊・食費、生活必需品は、国が補償する一方で、電話代や酒、たばこなど嗜好品は、自己負担になるという。家族などからの日常品の差し入れはOKだ。

 停留中の学校や会社での休業補償などの処遇について、厚労省は「法的に休業補償などは盛り込まれていない。個人で学校や会社と相談し、調整してもらうことになる」としている。

発熱外来の医師ら県嘱託職員扱いに…新型インフル 国内発生時、補償問題解消へ /群馬(2009年5月9日読売新聞)

国内発生時、補償問題解消へ

 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の国内発生時に、感染の疑いのある患者を一元的に診察する「発熱外来」について、県は8日、診察にあたる医師や看護師らを県の嘱託職員として採用する方針を明らかにした。すでに県医師会に示した。診察中に医師らが感染・発症した場合の補償問題がネックになり、発熱外来の設置準備が順調に進んでいないため、県は、公務員を対象にした補償制度を活用する。

 県医師会は取材に対し、「新たな提案で、解決の方向に向かう」と答えた。

 感染時の補償問題は、他県でも取りざたされてはいるが、問題を棚上げして設置準備を急ぐケースが少なくない。ただ、県医師会は「継続的に発熱外来を運営するには、一番最初に解決しなければいけない」(感染症担当理事)と、人員不足と並び、設置準備上の大きな課題にしていた。

厚生労働省は、補償問題の解決策を都道府県が独自に打ち出した例は「聞いたことがない」としている

 県は、流行初期段階で36か所の発熱外来設置を計画しているが、設置のめどが立っているのは今月6日時点で15か所にとどまっている。これまでは、医師らの補償は「国の制度で行うべき」との姿勢だったが、感染が疑われる事例が相次いでいるため、国への要望と並行して独自策も打ち出し、設置準備を急ぐことにした。

しかしまあ…もちろん補償も無いよりはあった方がよいのは当然ですが、この問題が全く棚上げのままに態勢構築のかけ声だけが盛んな中での「補償問題の解決策を都道府県が独自に打ち出した例は「聞いたことがない」」という他人事のような厚労省のコメントは良かったですね。
まさかとは思いますが実際に他人事という認識であって、今どき「ありがたくもお国が声をかけてやってるんだから率先して手を挙げるものなど幾らでも出てくるのが当然」といった考えなんでしょうか?
このあたりの国の現場対策の遅れは直接に各医療機関と掛け合う自治体レベルでの方が強い危機感を抱いているようで、各地からこんな声も上がっているということです。

新型インフルエンザ:拡大に備える自治体や病院 対策、保険診療に批判 /京都(2009年5月9日毎日新聞)

 ◇「特別な財政的措置を」

 新型インフルエンザ対策で発熱外来や病床確保などの準備を進める自治体や病院の間で、国の対応に不満が強まっている。国内感染が拡大して病院が混乱する場合でも保険診療が原則とされる点を府は「非現実的で論外」と批判。国に特別な財政措置を求める声が強まりそうだ。【太田裕之】

 府、京都市と両自治体が発熱外来設置を要請する25病院などで構成する「新型インフルエンザ対策医療機関連絡会議」が先月20日に開かれ、「対策に努力する病院が損をしないようにして」などの声が相次いでいた。

 特に懸念されたのは、国内で拡大して多数の感染者が病院に殺到する場合だ。発熱外来は病院駐車場など建物外に設置される可能性があり、保険診療の会計手続きは通常と同じようにはできない。病院側も欠勤者が出て人手不足となる可能性が高く、会合では「軽症であれば無料でタミフルを渡すような対応ができないか」との声も上がった。

 医師らが感染した場合の補償が不透明な点にも不満は強い。府は昨年6月に近畿ブロック知事会、同7月に全国知事会を通じて「十分な財政措置」「医療従事者への補償制度創設」などを国に求めているが、国の対応に変化はない。先月28日に府が病院関係者を集めた会合でも「財政手当が一切ない」と国への不満が続出したという。

 府内では03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)や04年の鳥インフルエンザの経験から感染症対策への関心が高く、全国に比べても医療機関の協力が進んでいる。府は「病院にはボランティア的にお願いしているのが実情で、国にもきちんとした措置を求めたい」としている。

記事を見ていただいても判るかなと思いますが、国などの指針に従って真面目にやろうとすればするほど医療機関にとっては収入につながらない支出ばかりが増えていくことになるわけです。
例えば厚労省の用意した「医療施設等における感染対策ガイドライン」を見てみると、こんな感じで対策の数々がずらりと並んでいます。

・新型インフルエンザが疑われる患者にはできるだけ速やかにサージカルマスクを着用させ、患者に対応するスタッフはサージカルマスクを着用して問診する。
・新型インフルエンザ患者、あるいはそれに準じた患者に対しては、医療従事者自身の衣服が患者・環境表面・病室の物品と接触しそうな際にも、ガウン(長袖ガウンがのぞましい)を着用する。(略)使用したガウンは、使用後直ちに脱いで適切に廃棄する。
・新型インフルエンザ患者、あるいはそれに準じた患者に対して使用した 聴診器・血圧計・体温計などの患者用器具は、それらの器具に対して通常実施している適切な方法で洗浄・消毒あるいは滅菌したのちに次の患者に使用する。

もちろんこれらの対策に要するコストのどれ一つとして、保険診療でやっている限りは患者に転嫁できるわけでもない病院の持ち出しとなるわけです。
ただちに廃棄される物品のコスト、消毒や滅菌に要するコスト、これらすべてで幾らかかるのかということ、そして明らかにこれは患者一人一人に対して要求されるコストであるということにも注意が必要です。

風邪引いたかな?と感じて医療機関を受診しインフルエンザと診断されて治療された経験のある方であれば何となく感覚的にお分かりかと思いますが、インフルエンザの外来診療で得られる診療報酬など知れたものです。
日常外来診療レベルの収入しか見込めない患者さん一人一人に対してこれだけのコストを要する、そして今後そうした患者さんが山ほど病院に押しかけてくるとなれば、どういうことになるでしょうね?
下手すると発熱外来などやっている病院は今後「外来が繁盛しすぎて倒産した病院」などという不名誉な事態に陥るかも知れないですね。

|

« 今日のぐり「麺屋哲」 | トップページ | 「専門家」の定義とは何なのか »

心と体」カテゴリの記事

コメント

■部屋に缶詰「パソコンほしい」 ホテルでの「停留生活」―このような場合への備えは万全か?
こんにちは。新型インフルエンザの罹患の疑いで停留生活を余儀なくされている方、大変だと思います。特に罹患の疑いだけで、実際に罹患してない人の場合、生活にかなり制限を受けるのでその辛さは想像以上だと思います。私のブログでは、インフルエンザ罹患ではないですが、長時間病院に入院せざるを得なかった時の経験からインターネットの出来る環境、読み応えのある本など用意しておくのとそうでないのでは雲泥の差があることを掲載しました。詳細は、是非私のブログをご覧になってください。

投稿: yutakarlson | 2009年5月11日 (月) 13時14分

 現場を褒めるのは、上司として当然の態度です(し、実際、現場はがんばっていらっしゃると思います)。が、立案した本省が本気で、自分たちの考えた対策が奏功したなんて思っていたら、次の戦では負けますね。
 今回は予行演習と論評する方もいますが、こんなの予行演習にもなっていないと思います。仮に今回このまま終息したとしても、やみくもに手を振り回していたら、たまたま相手の顎をかすってKOしちゃったって話に近いと思います。

 今回のインフルエンザが弱毒と分かった時点で、厚労省は侵入阻止から、積極移入(免疫を付けさせるために)に密かに方針転換していた、とかでなければ、かれらの振る舞いは「無能」「日和見」としか言いようがありません。

投稿: JSJ | 2009年5月11日 (月) 14時23分

いつもお世話になっておりますo(^-^)o!
ありがとうございます。

発熱外来や感染症指定病院などはまだ物品があるのかと思っていたら、
発熱外来設置は、診療所崩壊への片道切符でござるの巻
あかがまΨ 2009年05月11日
http://blogs.myspace.com/index.cfm?fuseaction=blog.view&friendId=1004383336&blogId=488402367

を読んでコーヒー噴き出してしまいました(>▽<)!
なんだ、どこも一緒なのかと。

発熱外来の意味がわからないです。

投稿: 僻地の産科医 | 2009年5月11日 (月) 18時05分

まあ今どきボランティア的医療が出来るほど財政的に余裕のある医療機関といえば公立くらいしか残ってないんでしょうが、その公立も今度はスタッフ的な余裕はなさそうですしねえ。
もうしばらく流行が続けばそろそろ場末の医療機関でキットもなくなるでしょうから、そうなるとまた患者の大移動が起こりそうで影響がどの程度あるものなのか注目しています。

投稿: 管理人nobu | 2009年5月12日 (火) 10時05分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/44977065

この記事へのトラックバック一覧です: 新型インフルエンザ、国内でのまん延も間近?:

« 今日のぐり「麺屋哲」 | トップページ | 「専門家」の定義とは何なのか »