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2009年5月20日 (水)

新型インフルエンザ、未だまん延期への移行は無く…

あっという間に新型インフルエンザの感染者数が鰻登りですが、この調子で行きますと下手をすれば近日中に世界トップクラスの患者数を誇る国ということにもなりかねません。
たまたま渦中の神戸市でこの時期開催予定だった麻酔科学会、精神神経学会はそろって中止となり、修学旅行も延期や中止が相次ぐなど社会的影響も無視できないレベルとなってきています。
しかしこういう状況になりますと既に多くの人々が感じている通り、確認されていなかったというだけで新型インフルエンザ自体はかなり以前から市中に広がっていたのではないかという気配が極めて濃厚になってきました。

新型インフルエンザ:「季節性」と混同? 流行長引き、見逃したまま治療(2009年5月18日毎日新聞)

 今年は季節性インフルエンザの流行が長引いている。専門家の間では「新型インフルエンザが季節性インフルエンザと混同され、見逃された可能性がある」との指摘が出ている。

 国立感染症研究所(東京都新宿区)は、全国5000カ所の小児科・内科を定点医療機関に指定し、そこで発生したインフルエンザは毎週集計している。日本の季節性インフルエンザは例年、12月から4月ごろまでが流行期間とされているが、今年は流行が長引いている。4月下旬(20~26日)の1定点あたりの発生は3・51件で、過去5年間の平均値を0・92件上回っている。

 元世界保健機関鳥インフルエンザ薬物治療ガイドライン委員長の菅谷憲夫・けいゆう病院小児科部長は「この時期にA型インフルエンザ患者が多いのは不思議だという声を、首都圏の医師から聞いた。ある病院には入院患者もいたという。しかしこれまでの監視システムでは、定点医療機関以外では患者に渡航歴がなければ遺伝子検査まではしない。精密に調べれば新型の感染者は首都圏でも見つかるだろうし、同様のケースはたくさんあるはずだ」と指摘する。

 インフルエンザに詳しい外岡立人・元小樽市保健所長は「新型の臨床症状は季節性と似ているため、新型と分からないまま一般の医院で治療された可能性がある」と言う。米国では、一般の医療機関から提出されたウイルスの株を検査機関が調べ、新型インフルエンザかどうか調べる仕組みがあるという。外岡元所長は「今回はたまたま、神戸の医師が提出した検体を調べたから新型と分かった。感染は関西だけの問題ではない」と話している。

「渡航歴」診断基準で新型見逃す 感染急拡大の原因(2009年5月19日朝日新聞)

 神戸市で新型の豚インフルエンザによる国内初感染が確認されたのは今月16日。わずか2日間で感染者は兵庫、大阪両府県で160人を超え、勢いは止まりそうもない。自治体側の対策が追いつかず、医療態勢はパンク寸前だ。国がつくった机上の想定が、「現実」に追い越された。

 政府の対策行動計画は、患者発生の段階に応じて対策を決めている。政府は16日、国内での感染確認を受け、「第1段階(海外発生期)」から「第2段階(国内発生早期)」にレベルを引き上げた。しかし、両府県の現実は、次の段階の「拡大期」も通り過ぎ、病床や薬が不足する「蔓延(まんえん)期」寸前の状態だ。

 原因は、最初の発見の「遅れ」にある。事態は発覚前に、水面下で進んでいた可能性がある。

 国内初の感染者の男子高校生でバレーボール部員は16日、遺伝子検査で感染が確認された。バレーボール部の試合などで交流があった複数の高校に感染が広がっていた。

 一方、40人近い感染者が確認された大阪府茨木市の関西大倉高校・中学。1日から16日までに143人がインフルエンザの症状などで欠席。学校側は13日に地元保健所にインフルエンザの集団発生を報告したが、保健所側は季節性インフルと思いこみ、検査すらしなかった。保健所が簡易検査などを始めたのは、国内初感染が報じられたからだ。

 保健所が新型を疑わなかった理由のひとつは、国の「診断基準」。今回の新型インフルの症状は季節性インフルとほとんど区別がつかない。新型インフルも、大きく分けて二つある季節性のインフルのひとつの「A型」に分類される。簡易検査でA型と診断された患者全員を「新型に感染の疑いあり」と報告されてしまうことを避けるため、厚生労働省は「米国など発生国への渡航歴があるかどうか」を基準に加えた。

 ところが、これまで新型インフル感染が確認された人たちの中に、感染を疑わせる海外渡航歴があった人はいない。関西大倉の生徒も、渡航歴がないという理由で、「季節性だ」と思われた。

 米国でも、最初に米疾病対策センター(CDC)における検査で新型インフルだと確定したのは4月15日だが、後から振り返ると3月末には感染者がいたことがわかった。

 とはいえ、5月初めから警告を発していた人たちも日本にはいた。全国の小児科医らの有志が、自分が診察した情報を報告しあい、インターネットで公開している。それによると、今年3月下旬以降、全国で小規模ながらインフルエンザの流行が続いているが、その9割程度がB型だった。そのため「A型の報告が増えた場合、新型インフルの可能性がある」と参加者に警戒を呼びかけていた。

神戸市などでは早くから独自に海外渡航歴の有無に関わらず疑わしい症例は確認検査に回すよう指導が出ていたということですが、この事が関西でこうまで一気に患者が確認されたことの一因となっていることは間違いなさそうです。
一方で首都圏などでは政府の方針通り海外渡航者等にしか確認検査はしない(東京都はようやく改めるようですが)ということですが、実際には「確認はしていないが従来型と思われる」インフルエンザで学級閉鎖という事例は関西圏に劣らず多いようですから、こうなりますと「もしや患者が見つからないよう隠蔽するつもりなのでは?」などと邪推する人間も出てきかねません。
実際に懲罰人事というわけでもないのでしょうが、新型インフルエンザ患者を見つけたお手柄の開業医が当分休業せよと言われたり、相変わらず医療従事者への休業補償制度を設けるつもりはないと公言してみたり、「うっかり新型など見つけてしまうと大損ですよ」という体制を維持することに執着しているようにも見えるのは気になるところです。
こうしたことからネット上では「厚労省はWHOが日本でのまん延を理由に警戒フェーズを引き上げることを避けたいのではないか」といった噂まで飛び出しています。

このあたり、あまり陰謀論に走っても仕方がありませんが、実際に人口稠密地域での感染拡大のモデルケースとしてWHOが日本での状況に格段の注意を払っていることは確かなようで、特にわざわざ「迅速な情報開示などの重要性を訴え」たといったあたりは何かしら裏があるのかと勘ぐりたくもなるところです。
先年のSARS騒動では中国が感染情報を隠蔽したと国際的にも大きな非難を浴びましたが、まさか今度は日本が同様の非難を浴びることになるのではないかと心配する向きもそれなりにあるようで…

新型インフル「関東に感染拡大も」 WHO医務官(2009年5月18日日経ネット)

【ジュネーブ=藤田剛】世界保健機関(WHO)の進藤奈邦子医務官は17日夕(日本時間18日未明)、WHO本部で「関西と関東は人の往来が激しいため、新型インフルエンザは関東に広がってもおかしくない」と語った。特に人口が過密な都市部では感染が広がりやすく、「注意が必要」という。「日本の対応を世界が注目している」と述べ、迅速な情報開示などの重要性を訴えた

 進藤氏は「基礎疾患を持つ人や若年者で重症者が目立つ」と指摘。特に発症してから4―5日目に重症化するケースが多く、速やかに適切な治療を受ける必要があるという。重症者にタミフルなどの治療薬を円滑に配布するため、「あらかじめ優先順位を決めておくべきだ」と述べた。

 さらに「季節性インフルエンザの流行する季節は終わっており、この時期の感染拡大は異常」と強調。空港の検疫などの水際対策は「限界がある」と明言した。

実際に国立感染症研究所の過去10年のデータを見てみますと、この時期例年であれば季節性インフルエンザは収束に向かっているはずが今年は僅かながら持ち直しているのか?とも思わせる兆候があるのは気になるところです。
都道府県別の流行状況を見ますと関西地区よりはむしろ日本の南北端に流行が偏在しているように見えて興味深いのですが、特に北海道は飛び抜けてインフルエンザ様症状を呈する患者数が多いというのは単に春の訪れの遅い北国だからという理解でよいのか気になるところです。
また先日もお伝えしましたように新型インフルエンザは高熱など典型的インフルエンザ様症状を呈さない患者の方がむしろ多いのではないかという話もありますから、何気ない風邪と思って見過ごしている感染者がどのくらい存在しているのかは何とも言いがたいものがあります。

いずれにしてもこうして感染が広がってきた状況になりますと自治体レベルのみならず、国が音頭を取って動かなければどうしようもない状況も多々あるかとも思うのですが、どうも厚労省の態度がここに来て及び腰なのかなという印象が拭えません。
現在国は「国内発生期」に位置付けていますが、この段階ですと感染拡大阻止のため疑い患者は全例発熱外来で対応し患者は入院加療を必要とするなど極めて厳しい対応を迫られることになっており、関西圏を中心に一般外来での外来診療が可能となる「まん延期」に引き上げるよう求める声が強まっています。
これに対して国はどうも引き上げには消極的な姿勢で、特に今になって「自治体が好きにしたらいい」などと言い出すようでは、それでは先日の横浜市長との喧嘩腰のやり取りはいったい何だったのかとも思うところですが…

守勢強いられる厚労省=自治体の判断追認-新型インフル(2009年5月19日時事ドットコム)

 新型インフルエンザの感染者が急増する中、舛添要一厚生労働相は今週中に対策を見直す方針を示している。検討課題の一つに挙げたのは、軽症者の自宅療養。しかし、病床不足に陥った神戸市は既に踏み切っており、国が自治体の判断を追認した形だ。ウイルスの感染力を前に、厚労省が守勢に回るケースが出始めている。
 第一例の確認から3日間で、感染者は100人を突破したが、政府の行動計画上は第二段階「国内発生早期」のまま。舛添厚労相は「全国にまん延している可能性を前提に」と訴えるが、第三段階「まん延期」への引き上げは見送られている。
 その理由について、同省は感染者の接触状況を調べる積極的疫学調査が続いているためと説明。「感染者同士のつながりを否定できなければ、まん延とは言えない」と二の足を踏むが、結果のめどは立っていないという
 医師が感染を疑う目安の「症例定義」も、留意する渡航先はメキシコ、米国、カナダだけ。大阪府や兵庫県との関連を探るのは事実上、医師頼みになっている。
 兵庫県内の感染者は、52人分の対応病床数を上回り、神戸市は18日から入院は重症者に限ると方針転換。軽症者は自宅療養とする第三段階の対策を先取りした。
 橋下徹大阪府知事は同日午後、マスク姿で大臣室を訪れ、強い口調で迫っていた。「7日間を超えた時は、通常のインフルエンザに近い対応にかじを切ってほしい」。約3時間半後、記者会見を開いて舛添厚労相が示した見直しまでの「猶予期間」は1週間だった。

【新型インフル】対策は「地方に相当任せてよい」と舛添厚労相(2009年5月19日産経新聞)

 新型インフルエンザ対策について、舛添要一厚生労働相は19日の閣議後会見で、「自治体によって状況は違うので、国が方向性を示した上で、相当地方に任せてよいのではないか」との見解を示した。

 その上で、「大きな落とし穴がある場合は国が介入する」と説明。ウイルスが「弱毒性」とされることから、政府はすでに行動計画などを弾力運用する方針を示しており、地方にもそれぞれの地域に合わせた対策を進めることを求めた

 感染ルートの特定や感染拡大防止のため実施している「積極的疫学調査」についても、「だれが日本に持ち込んだかを調べるよりも、感染防止策のための医学的な調査に力を入れるべきだ」との認識を示した。

 また、国内流入阻止のために行っている米国便などへの機内検疫を段階的に縮小していくことを明らかにした。

要するに、国はもう何もしないと、金も出さなければ方針も示しませんと言っているように聞こえないこともないのですが…

一応唯一評価すべき点としては、政府として財政支援を決定したことでしょうか。
しかしこれもあくまで自治体に対する対策費用ということですから、現場で赤字診療を強要される医療機関に対してどの程度の支援が行われるのかは自治体任せの丸投げである上に、相変わらず医療スタッフの感染リスクに対しては一切補償するつもりはないようなんですよね。
実際に医療従事者に感染者続出ということになるとどのような事態になるのか想像しきれませんが、現場では既に抗ウイルス薬や検査キットすら品切れ続出という状況なのですから、やれと言われても何もできないと手を挙げる医療機関もかなり出てきているようです。
政府は「全例に厳重な対応」から「軽症者は自宅療養」へと舵を切る方針を決めたというのであれば、トリアージされる側の国民が現場で医療従事者に噛みついたりしないよう、国の方針を広く啓蒙し混乱を回避する責任はあるかと思いますね。

発熱外来の整備など、自治体を財政支援へ…政府方針(2009年5月19日読売新聞)

 政府は18日、新型インフルエンザ対策で地方自治体が講じる感染防止措置などに対し、国の予備費や特別交付税を活用して財政支援する方針を固めた。

 大阪府や兵庫県での感染拡大を受け、医療体制整備のための自治体の財政負担が急増することが予想されるからだ。支援対象は、インフルエンザの簡易検査用品の購入費や発熱外来などの医師や看護師の人件費などを想定しており、自治体と協議した上で早急に実施に移す。

 河村官房長官は18日の記者会見で、「自治体として対応しなければならない経費の中に、国の支援の対象になるものや融資で対応できるものがある」と述べた。特に予備費は「まさに緊急で予定していなかった対応のためのものだ」として活用する方針を示した。

 2009年度当初予算で災害復旧費や経済緊急対応のために計上した予備費計1兆3500億円のうち、現時点では約5000億円が活用可能だという。

 特別交付税の活用については、滝野欣弥総務次官が同日の記者会見で、「(自治体には)色々な財政負担が生じる可能性があるので、特別交付税などの措置を当然検討していかないといけない」と述べた。特別交付税は地方交付税の一種で、災害など特別な財政需要が発生した際、自治体に配分される。09年度は約9500億円が計上されている。

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