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2009年5月19日 (火)

最近の医療崩壊関連ネタ

何かしらこのところインフルエンザ関連の話題ばかりでこういう話はすっかり報道からも埋もれてしまっている感もありますが、実際には何一つ改善する要因などないまま更なる深みへと迷走中といったところのようです。
今日は最近のニュースから幾つか関連しそうな話を取り上げてみましょう。

先日以来注目されてきた銚子市長選ですが、リコールで失職した前市長にかわって元(前々)市長が再登板という形になったようです。
リコール派が分裂したという事情もありますが、こうなりますと結局のところリコールとは何だったのか、鳶に油揚げをさらわれたように感じている支持者の人々もいるのではないでしょうか?
いずれにしても民意の結果は示されたわけですから、市当局は公約実現に向けて今まで以上に鋭意努力していってもらいたいものですね。

野平氏、病院「公設民営」で再開掲げ返り咲き…銚子市長選(2009年5月17日読売新聞)

 市立総合病院の休止を巡り、市長が失職したことに伴う千葉県銚子市の出直し市長選は17日、元市長の野平匡邦(のひらまさくに)さん(61)が返り咲いた。

 野平さんはかつて病院改革を目指したが、挫折。病院は休止から1年以内に再開できなければ廃院となる。再生に向けた取り組みは待ったなしだ。

 野平さんは当選確実となり、銚子市本城町の事務所で午後10時25分頃、「ありがとうございます。うれしいが、身を引き締めている。銚子は今、緊急事態だ。いさかいはやめる。(病院再開を)きっちりやる」と語り、支持者らと万歳した。

 選挙戦は、3月に行われた解職請求(リコール)の住民投票で失職した前市長の岡野俊昭さん(63)も出馬するなど6人が乱立。リコール派は住民投票で2万余りの解職への賛成票を得たが、4分裂して力を結集できなかった。

 また、リコール派の候補者が「公設公営」「独立行政法人」などでの病院運営をそれぞれ主張したのに対し、野平さんは診療と経営を分ける「公設民営」での再開を掲げた

 さらに、後援会長に地元の医師会長を迎え入れ、県医師連盟の推薦を得るなど「医療界の支援」を前面に出し、早期の病院再開を望む市民の支持を得た

 野平さんは市長時代、病院の赤字体質改善のために専門家を呼んで経営改革に着手しようとした。しかし、医師らに反発された苦い経験がある。医療法では1年以内に再開できないと廃院となるため、タイムリミットは9月末。野平さんは、「実績のある医療法人と交渉中。早期再開は可能だ」としている。

「銚子がモデルとなり、安心を提供」病院再開で新市長(2009年5月18日産経新聞)

 前市長のリコール成立に伴う出直し市長選で当選した千葉県銚子市の野平匡邦市長(61)は18日記者会見し、休止した市立総合病院の再開について「全国の市民が『自分たちの病院も大丈夫か』という不安を抱く大きな課題。銚子がモデルとなり安心を提供したい」と抱負を語った。

 選挙戦で野平氏は、経営を民間に委託する公設民営での再開を主張。病院は財政難と医師不足が理由で休止したが、野平氏は「医科大と公益法人から応援の約束はもらっている」と述べ、来年4月の再開を目指すと説明。大学名などは「6月議会までに明らかにする」と話した。

 財源については「国が補正予算の中で地域医療崩壊に対する手当を議論しているという話があり、銚子に使えるのかどうか検討したい」とした。

しかし公設民営と言いますが、どこぞの医療法人に丸投げするというならまだしもここでもPFI方式だなんて言うんじゃないでしょうね…
ちなみに前述の記事中でも少しばかり触れていますが、市立病院再建に関してはこういう事情もあって必ずしも悠長には出来ないようです。
千葉といえば救急医療最後の砦などとも言われた成田日赤が例の新型インフルエンザ騒動で結構話題になっていましたが、今後患者続出でどこも手一杯と言うことになりますと予定通りに医師が来てくれるかも微妙なところですよね。

病院休止 救急医療に影響 /千葉(2009年5月18日読売新聞)

 休止した銚子市立総合病院は休止期間が1年を超えた場合、医療法に基づき、廃院となり、割り当て病床を取り消される。休止を延長するには、指定管理者の決定など病院再開の具体的な見通しを9月末までに県に伝える必要がある。

 現在は夜間小児急病診療所を銚子市医師会の医師が輪番で運営するほか、千葉大付属病院から医師が派遣される精神科診療所が設置されている。残務処理の事務職員数人も残っている。

 市内には入院病床を持つ病院など約50の病医院があるが、市立病院に通院していた患者の中には、鹿島労災病院(茨城県)のほか、旭市にある国保旭中央病院など市外の病院に通う患者が多い。

 通院患者にとどまらず、休止の影響は救急医療にも出ている。

 銚子市消防本部によると、市内の救急搬送の約3割の患者が運ばれていた市立病院の休止の影響で、休止以前の昨年4~6月に33・9%だった救急患者の市外搬送の割合は、7~9月は45・7%に増加。入院対応が可能な市内の民間の2次救急病院への搬送も32・3%から45・4%に跳ね上がった。

ここも話も変わって、沖縄といえばこのところの新臨床研修制度導入以来どこの自治体も医者集めに苦戦している中で意外に医者の受けが良いところだとは以前にも少しばかり書きました通りです。
日本で一番医師が集まる東京都が日本で一番公立病院医師給与の低いところだということはよく知られていますが、経済原則に従って沖縄でもこのところ医師の待遇切り下げが計られているということで行方が注目されていました。
その沖縄もご多分に漏れずといったところでしょうか、例によって例の如く救急医療の面ではあまり他府県と事情は変わらないようです。

救急休止相次ぐ 民間病院/医師不足で 県内“黄信号” /沖縄(2009年05月12日沖縄タイムス)

 民間病院で救急診療の休止が相次いでいる。今年4月から5月にかけて4病院が医師不足を理由に救急診療の一部や全部を休止した。各病院は「新たに医師を募集しても集まらない」と窮状を訴える。救急診療については県立北部病院が産科救急の再休止を発表したばかり。今回休止した病院の中には、救急病院として県の認可を受ける「救急告示病院」2カ所も含まれており、県内の救急医療に黄信号がともっている。

 内科、外科、心臓血管外科など5診療科で救急を受け入れていた北部地区医師会病院(名護市)は今月1日から、医師1人の退職に伴い、救急のうち脳神経外科の診療を休止した。

 同病院は、NPO法人が運営する民間救急ヘリを支援しており、「現在休止中の救急ヘリが近々活動を再開する予定で、ヘリ活動への医師派遣も必要になってくる」と説明。「後任の募集をかけたがなかなか集まらない」とも話す。

 海邦病院(宜野湾市)と嶺井第一病院(浦添市)は時間外の救急診療をすべて休止した。

 内科と小児科を受け付けていた海邦病院は地域のニーズに応える形で20年間救急外来を行ってきた。休止理由を「時間外診療の減少と、医師の負担軽減のため」と説明した。

 脳神経外科の救急を受け付けていた嶺井第一病院も「救急体制に必要なマンパワーの確保が厳しい」と医師不足を指摘した。

 那覇市の小禄病院も医師1人の退職で、これまで実施していた内科と整形外科の救急診療のうち、4月30日から整形外科の救急診療を休止している。

 病院の救急体制は、一定の医療機器を備えるなどの条件をクリアして県が認可する救急告示病院(2009年4月現在、県内で26カ所)と、任意で救急を行う病院の2種類ある。

ちなみに医療業界事情を知らない方々はよく誤解することですが、医者がいるということと救急医療が出来るということは必ずしもイコールではありません(救急の程度にもよりますが)。
医者が大勢いれば救急も出来る医者が含まれている確率も高くなるという意味では大きな病院ほど救急への対応力はあるという言い方も出来ますが、どんな病院であれ救急が出来ない医者というものはそれなりの比率で存在します。
問題は救急が出来ない医者ばかりのくせに何故か妙に救急車をたくさん引き受けているような救急医療に対する志の高い?病院の場合、数少ない救急の出来る医者に全てが丸投げされる傾向が出やすいということです。
昨今そうした病院では救急で疲弊しやすい外科系や小児科といった診療科から相次いで逃散が進んでいますが、そうなると残った救急の出来ない医者も「バックアップもないのに救急車なんて受けられるか」とばかり一緒になって逃散してしまいがちなわけですね。

今も「救急は儲かる」などという妙な幻想を抱いている経営陣がやっている病院ですと、こういう現場の空気を読まずに「先生方、最近救急受け入れが減っていますからもう少し頑張ってもらわないと」なんて頓珍漢なことを言いだして更なる集団脱走を招くという話がこのところ本当に多くなりました。
病院としては医者が逃げ出していくリスクと救急受け入れの利益とを天秤にかけて判断していかないといけないわけですが、診療報酬的にも訴訟リスク的にも今や救急など病院の持ち出しでやるボランティアとでも考えていなければやっていられないという時代ですから、まともな経営者であるほど「それじゃ救急指定は返上しましょうか」という話になるのが当然ということなのですね。

さて、またもや話は変わりますが、先日労基法違反で問題となった滋賀県立成人病センターの続報が入りましたので紹介しておきます。

残業上限延長、組合が逆提案  滋賀県立成人病センター(2009年5月15日)

 滋賀県立成人病センター(守山市)と、同病院医師らでつくる労働組合が本年度、労働基準法に基づく労使間の残業ルールを作った。繁忙時の特例として、病院側が医師に限り月80時間を上限とする残業時間(年6回のみ)を示したのに対し、組合側は上限を120時間とする修正案を逆提案し、合意した。原則「残業ゼロ」を目指す組合だが「医師不足の中、80時間では現場が回らない」として、組合員から残業枠の延長を申し出る異例の経緯をたどった。

 同病院は昨年、「名ばかり管理職」の医師の残業代が不払いになっているとして、大津労働基準監督署から是正勧告を受けた。勤務条件を見直す中、労使協定の労基法三六条(36協定)締結に向け、自治労県職員労働組合と交渉を始めた。

 医師の通常の残業時間は、月45時間を上限とした。しかし、同病院医師の月平均残業は50時間を超えることから、患者の集中など「特別な事情」がある場合の残業時間についても定めた。

 病院側は当初、過労死の認定基準となる月80時間を上限とする案を提案した。一方、組合側は、脳神経外科など月の残業が百数十時間に達する科もあることから「医師の増員がない現状では協定違反が多発する」として、病院側提案より40時間多い修正案を提示。今後、残業削減に取り組むことを条件に合意した。労組職場代表の大西裕之医師は「医師の使命で患者がいれば診察する。違法残業が続くと協定の意味がなくなる。医師の多くが残業枠延長を支持した」と話す。病院事業庁の谷口日出夫庁長は「現場からの提案はありがたいが、労基法の理念上、80時間以内にとどめたい思いもある。今後、削減に向け話し合いたい」としている。

現場の事情が判らない以上は何ともコメントがしにくい話ですが、なかなか妙な具合になってるなとは誰しも感じるところではないでしょうか?
そもそも医師側が組合云々と言っている時点で少し変わった施設なのかなと思うところですが、HPを見る限りではそのあたりの状況がはっきりしません。

一般論としてこれは全く個人的考えですが、一時的な措置といったものでなく永続的業務として捉えてみた場合に、現場スタッフの使命感などといった一般化しにくいものに頼っていてはいずれ必ず破綻することは避けられないのではないかなという印象を持っています。
たまたま「よっしゃ!やったるぜ!」とばかりに祭りの興奮に巻き込まれた人間は一時的に能力以上のものを発揮して頑張ってしまうものですが、それは決して永続するものではありません。
そうした人々もいずれは疲弊し、あるいは引退していくものですし、何より多くの勤務医にはある程度の入れ替わりがある以上はいずれ外部から冷めた人々を受け入れざるを得ないわけで、そんな人々に「皆が御輿を担いでるんだ!お前も死ぬ気で担げ!」と言ったところで、誰しもが輪の中に躊躇無く加われるものでもないですよね。
永続的なシステムとして成立させるためには個人個人の能力や力量、あるいは常識を越えた頑張りに頼るのではなく、ごく平凡で平均的な人間が当たり前にやっていけるようにしていかなければならないと思いますね。

経営的な面で厳しいのは昨今どこの病院でも同じだと思いますが、厚労省がこんなことを言いだしています。
しかし、資金繰りを安定させたところで自転車操業かつ赤字垂れ流しという実態に何ら変わりがない以上は単に結論を先延ばしにし負債総額をふくらませるだけにしかならないのではないかとも思うのですが…

病院への融資条件緩和、厚労省が資金繰り支援強化(2009年5月11日日経ネット)

 厚生労働省は追加経済対策の一環として、病院に対する資金繰り支援を強化する。所管の独立行政法人による融資条件を緩和し、病院1施設当たりの融資上限をこれまでの1億円から7億2000万円に引き上げ、返済期間も従来の7年以内から10年以内に延ばした。世界的な金融危機のあおりで、民間金融機関の融資姿勢が厳しくなりかねないことに備える狙いだ。

 条件を緩和したのは、医療機関などの施設整備などを支援する福祉医療機構が昨年秋に設けた「経営環境変化に伴う経営安定化資金」。運転資金の不足感を強く訴えていた病院向けの融資条件を緩め、資金繰りの安定につなげる。同資金の適用期間は2010年3月末まで。

何かをやることによって何らかのメリットがない限りはやる人間は増えてこないというのは医療に限らずどこの世界でも共通の話だと思いますが、人手不足と言いながら医療業界では未だにそのあたりの認識がずいぶんと甘いのかなとも感じられるところです。
前述の救急指定返上の話もそうですが、本来であれば救急をやることによるメリットはこれこれ、やめることによるメリットはこれこれと詳細に検討し結論を出すのは一般の企業であれば当たり前の話ですが、「救急をやるのは医者として当然」などと赤字を垂れ流しながら漫然と続けている、そしてスタッフの逃散を招き更なる大赤字に転落する病院がどれほど多いことでしょう。
どうも医療業界の場合は経営陣ですらコストベネフィット等の評価もないまま盲目的に突き進んでしまう傾向があるようで、そのあたりのいい加減さも病院経営状態が悪化する一方であるということの原因の一つになっているようにも感じます。

経営を安定させようとすればなるべくスタッフの待遇を良く、一方で収入は出来るだけ多くという方向になるわけで、非効率な部分はさっさと切り捨てて需要が大きい部分に特化した方が経営者もスタッフも幸せというのは当然の話ですよね。
一昔前の田舎公立病院によくある「とりあえず一通りの診療科も機材も揃えてみました」といったことを今の時代にやっていたら、それは幾らでも赤字垂れ流しにもなればスタッフのモチベーションも低下するのは当たり前ですよ。
このあたり往々にして医療人としてのまともな考え方というものと経営者としてのまともな考え方というものは相反するものですから、「まじめに医療をやるほど潰れていく」という今の医療業界事情そのものが格好の淘汰圧力になって業界内の意識改革が進んでいるという一面もあるわけですが、それこそまさに国が求めてきた「医療改革」の戦略通りに話が進んでいるということですよね。

今の医療事情は国にとって決して「計算外」ではないどころか「予定通り」だと考えてみた場合に、既定の路線に素直に乗って行く道は楽でしょうし、流れに逆らってあがいてみるのはずいぶんと苦労するだろうなとは容易に予想できることで、いずれの道を辿るべきかそろそろ腹をくくって決めていかなければならない程度にはどこの病院も追い詰められてきているようには思うのです。
その結果医療がどうなるか?なんて難しいことを考えるのが国の仕事と言うものなのですから、国の方針通りで困るようなら方針を変える責任は国にあるわけであって、逆に妙に現場が頑張りすぎて辻褄を合わせてしまう方が誤ったメッセージを送ることになりかねないのではないかと危惧するところです。
追い詰められるとバンザイアタックを敢行して玉砕というのは旧軍の悪しき伝統というものですが、圧倒的戦力を誇る赤軍に国土を蹂躙されながら粘り強く抗戦したフィンランドなどと比較するとこれも民族性なのかなと言う気がしないでもありません。
しかし流れも空気も読まずに盲目的に突っ走ってしまうことが果たして本当に称讚されるべき行為なのかどうか、足許の地面が消えていたことに気がつく前に一度立ち止まって考えてみることも必要でしょう。

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