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2009年4月29日 (水)

豚インフルエンザ続報

豚インフルエンザの感染が急速に広がっています。
お隣韓国でも「疑い濃厚」という症例が出たそうですが、噂によれば中国でも「インフルエンザ様症状を呈する患者の大量発生」が見られているとかいないとか。
中国だけにそうした情報の流出も遅れている可能性がありますが、一方ではアメリカでも既に死者が出たという噂もあるようで、いずれも明確なソースは確認できておりません。
ともあれ判明している分に限っても既に相当なものとなっているのは確かで、更には国内においてもそろそろ危険かと思わせるような兆候もあるようで…

【豚インフル】感染、疑い例15カ国に(2009年4月28日産経ニュース)

 世界保健機関(WHO)が警戒水準(フェーズ)を引き上げた新型インフルエンザの感染か感染の疑い例が確認された国は28日午前現在、15カ国に上っている。

 WHOなどの発表や各地の報道によれば、感染源となったメキシコは感染疑い例を含め1995人が感染し149人が死亡。感染確認数は米国48人、英国2人、カナダ6人、スペイン1人。

 疑い例があるのは、韓国のほかニュージーランド、グアテマラ、ベルギー、ペルー、オーストラリア、イタリア、スイス、イスラエル、フランスの10カ国。

発熱疑いの外国人女性が検疫ゲート突破…成田空港(2009年4月27日ZAKZAK)

 メキシコを中心に豚インフルエンザの感染者が広がる中、成田、関西両空港では水際での防止に躍起だ。成田空港のゲートでは、検疫所が体温を測定するサーモグラフィーを設置、検疫所の医師らが機内から降りる旅客に異常がないか呼び掛け、任意で体温などのチェックを行っている。

 ただ、あくまで任意のため、ゲートをすり抜ける人も。成田空港に25日に到着したメキシコ発バンクーバー(カナダ)経由の航空機から降りた外国人女性は、サーモグラフィーの画面で顔が赤く表示されたが、関係者が体温の確認を要請しても、その場を立ち去ってしまったという。任意の壁が立ちはだかっているようだ。

こうして豚インフルエンザ絡みの報道が増えているのは情報の蓄積と言う面でいいのですが、一方ではどうも実体と違う報道もあるんじゃないかという噂があります。
すでに幾つかのサイトでは取り上げられているようですが、豚インフルエンザの脅威にさらされるメキシコの当事者からの書き込みが「ヤバイんじゃないか」と話題を呼んでいるんですね。
このあたりは国内大手メディアもようやく注目し始めているようですが、あるいはネットウォッチャーや報道の方でも正しい理解が出来ていないのかあるいは…といった微妙な部分もあるようです。

【豚インフル】「未報告の死者がいる」英BBCにメキシコ医師らが告発(2009年4月27日産経ニュース)

 「報告されていない若者の死者がいる」「状況はコントロールされていると言うにはほど遠い」-。英BBC放送は27日までに、豚インフルエンザ感染の震源地メキシコの医師らが生々しい被害実態を“告発”した投稿をウェブサイトやラジオ番組で公開した。

 メキシコ市の呼吸器系疾患専門医アントニオ・チャベス氏は「1日に3人から4人が死亡する事態が2週間以上前から続いている」として、感染者の死亡率は「メキシコ当局の報告より高いのが真実だ」と指摘。20歳から30歳までの若い世代が「望みを失った医師らの目の前で」次々と亡くなっていくことに、深い悲しみに襲われると吐露した。

 さらにメキシコ市の医師グアダルーペさんによると、必要な検査が実施されなかったため豚インフルエンザとは報告されていない若者の死亡ケースが数例あるという。

BBCの告発というのは下記の書き込みのことだと思うのですが、確かにざっと見るだけでも幾つかそれらしいものが散見されます。
怪しい訳で内容を歪曲したと言われてもいけませんので幾つか目についたものをそのままを転載しますが、パニック寸前という現場の状況が見え隠れしてくるようですね。

Swine flu: Your experiences (BBC news)より抜粋

I'm a specialist doctor in respiratory diseases and intensive care at the Mexican National Institute of Health. There is a severe emergency over the swine flu here. More and more patients are being admitted to the intensive care unit. Despite the heroic efforts of all staff (doctors, nurses, specialists, etc) patients continue to inevitably die. The truth is that anti-viral treatments and vaccines are not expected to have any effect, even at high doses. It is a great fear among the staff. The infection risk is very high among the doctors and health staff.

There is a sense of chaos in the other hospitals and we do not know what to do. Staff are starting to leave and many are opting to retire or apply for holidays. The truth is that mortality is even higher than what is being reported by the authorities, at least in the hospital where I work it. It is killing three to four patients daily, and it has been going on for more than three weeks. It is a shame and there is great fear here. Increasingly younger patients aged 20 to 30 years are dying before our helpless eyes and there is great sadness among health professionals here.
 Antonio Chavez, Mexico City

I am a doctor and I work in the State of Mexico. I don't work in the shock team; I am in the echocardiography team, but I do get some news from my colleagues in the hospital. There have been some cases of young people dying from respiratory infections, but this happened before the alert and they were not reported because the necessary tests weren't done. We doctors knew this was happening a week before the alert was issued and were told to get vaccinated. I went to buy some anti-virals for my husband, who is also a doctor, because he had contact with a young patient who presented influenza symptoms and died. I don't think pharmacies stock enough anti-virals.
(略)
 Guadalupe, Mexico City

I think there is a real lack of information and sadly, preventative action. In the capital of my state, Oaxaca, there is a hospital closed because of a death related to the porcine influenza. In the papers they recognise only two people dead for that cause. Many friends working in hospitals or related fields say that the situation is really bad, they are talking about 19 people dead in Oaxaca, including a doctor and a nurse. They say they got shots but they were told not to talk about the real situation. Our authorities say nothing. Life goes on as usual here.
(略)
 Alvaro Ricardez, Oaxaca City, Oaxaca, Mexico

I work as a resident doctor in one of the biggest hospitals in Mexico City and sadly, the situation is far from "under control". As a doctor, I realise that the media does not report the truth. Authorities distributed vaccines among all the medical personnel with no results, because two of my partners who worked in this hospital (interns) were killed by this new virus in less than six days even though they were vaccinated as all of us were. The official number of deaths is 20, nevertheless, the true number of victims are more than 200. I understand that we must avoid to panic, but telling the truth it might be better now to prevent and avoid more deaths.
 Yeny Gregorio D?vila, Mexico City

特に気になるのは従来のワクチンが無効であることは予想されたことなのですが、産経の記事にも登場するAntonio Chavez氏が言うところの下記の一節ですよね。

”The truth is that anti-viral treatments and vaccines are not expected to have any effect, even at high doses. It is a great fear among the staff.”

他の書き込みを見てみる限りでは向こうでは抗ウイルス薬としてタミフルを主体に治療を行っているようですが、もし実際にこれが無効と言うことであるのなら大きな問題です。
薬剤耐性ということに関しては今年の日本でもタミフル耐性ウイルスが高率に出現してちょっとした問題になりましたが、これについては後述するような日本とは異なる現地の受診状況もあることを考慮にいれるべきなのかも知れませんね。
また第一次大戦下で大流行し数千万の死者を出したというスペイン風邪も特に塹壕戦で疲弊した兵士の間で蔓延したと言いますから、あるいはアメリカなど他国に比べてメキシコに重症者が多いのも衛生環境など公衆衛生学的側面が大いに関連しているとも推測されるところです。
そして他方ではAlvaro Ricardez氏もこんなことを言っています。

”Many friends working in hospitals or related fields say that the situation is really bad, they are talking about 19 people dead in Oaxaca, including a doctor and a nurse. They say they got shots but they were told not to talk about the real situation. Our authorities say nothing. Life goes on as usual here.”

本当のことを言わないように口止めしたのが誰かといったあたりも気になるところですが、そういう目線で産経の記事を見返してみますと元発言にあった「抗ウイルス薬もワクチンもまるで効かない」云々といった記述がすっぽり抜け落ちていることに気がつくわけですが、さて…
もし意図してのものであるとするなら報道管制は単にメキシコ国内だけの話にとどまらないことになってしまいますが、医療報道に関しては常にアレな産経新聞だけにこの抜け落ちが意図的なものなのかどうなのかもはっきりしません(苦笑)。
いずれにしてもかつて中国がSARS情報を隠蔽しようと画策して大失敗をやらかしたことは未だ記憶に新しいところですが、どこの国であれ万一にも今回同様なことが企図しているのだとすれば歴史に学ぶべきだとは言えるでしょうね。

あまり陰謀論めいたことばかり書いても仕方がないのでこのあたりにしておきますが、実際に現地では情報が錯綜して何が正しいのやら判らないという状況に陥りつつあるようですね。
その一方でインフルエンザや治療というものに対するあまりに初歩的な誤解というものも混乱に拍車をかけているようなのですが、そのあたりの状況についてこちら「科学ニュースあらかると」さんから引用してみましょう。

メキシコ単身者の「豚インフルエンザ」罹患体験記 +  (2009年04月27日記事)より抜粋

豚インフルエンザが原因と見られるメキシコの死者は149人
WHOが豚インフルエンザ用のワクチン製造に向けて作業を開始した

'I couldn't get out of bed'
BBC News 4/27

「鳥インフルエンザによってパンデミックが発生した場合、罹患した単身者はどうなるのか?」、という事を何度か繰り返して問いかけてきました。

この記事は、「メキシコでswine flu(豚インフルエンザ)かもしれない疾患を発症した女性の体験記」です。

昼に、「症状が進んでから病院に駆け込まれても …」という話をメモしました。現場の人のコメントなのですが「風邪で医者に駆け込み、感染初期にタミフルの処方を受けられる」日本の状態が、「世界のどこでも普通の状態」では無い、という話です。

「お金が無いから、悪くなるまで病院にいかずに回復する事を祈ってじっと部屋ですごす」という人達がメキシコに多数暮らしている事を、 APの記者は淡々とつづります … 
(略)
「タミフルはインフルエンザを治さない」
何度説明すれば、それが理解されるのだろうか、と頭を抱えます。

タミフルは「ウイルスが増殖するのを抑え込む」だけです。身体の免疫系がウイルスを制圧する為の抗体によってそれを押さえ込み、好中球などがそれを異物として食べてしまって撃退するまで、ウイルスの数を少ない状態にしておく事しか出来ないのです。
(略)
「タミフルが効いて無いじゃないか!」 … 「症状が進んでから病院に駆け込まれても …」というのが、昼間のAPが伝えていた現地の医療関係者の言葉です。それは、普通のインフルエンザでも「症状が出た直後(48時間程度)でないと、タミフルの投薬は無意味です」、という話の変形なのです。

タミフルが実際に何をしているのか、という事を理解しないなら、ウイルスが膨大な数に増加した後に(感染から長い時間が経過した後に)  … 増殖力の強い鳥インフルエンザ・ウイルスで、発症から投薬までの間に猛烈にウイルスが増加しているのと同様に、タミフルを投薬しても致死率が高くなってしまう、という事実の意味を間違えてしまいます。
(略)
「ウイルスが増えてからでは、身体が作り出す抗体ではウイルスによる破壊の速度に対応できずに、命が失われてしまう」という当たり前の事を理解できない場合には、「タミフルは効かない」という間違った情報が生み出され、一人歩きしてしまいます。

「タミフル」も「リレンザ」も … ウイルスを倒す魔法の薬などでは無いのです … それらは「泥棒を押さえていますから、早く捕まえてください」という働きしか出来ないのです。あなたの身体をウイルスから守るのは、あなたの身体の免疫系が作り出す「抗体」だけなのです。

「豚インフルエンザ・ウイルスにはタミフルは効いていない」、という薬の性質を理解しない人間の発言には、早急に対抗する必要があります。「無知な人間の扇動で起きるパニック」は、病気そのものよりも危険な事がありますから。
(略)
この体験を語っている女性が、「豚インフルエンザ」を体験したのかどうかは不明です。実際に症状が出てから「タミフルを処方される」までの時間が、かなり長い(日曜日に発症。友人からの電話が金曜日。病院に出かけたのは土曜日)ですから。

インフルエンザで「タミフル」が有効性を発揮するのは、実際には初期段階で「ウイルスの増殖を抑え込む」為ですので、気分が良くなったのは、「免疫系によって疾患から自力回復した」結果、とも考えられます。

一見正しそうに見える話を、自分の持っている情報で切り取ってみる事が、自分と大切な人の命を守る為に、必要です。

今さらですが意外にご存じない方もいらっしゃるかも知れませんので、ここで簡単にインフルエンザ感染症とタミフルというものに関して(ごく漫画的に)おさらいをしておきましょう。

インフルエンザウイルスの表面には二種類の棘が出ていて、片方はウイルスが細胞にとりついて中に潜り込むために働き、片方は細胞の中で増えたウイルスが細胞から飛び出す時に働くとされています。
タミフルという薬は後者の棘の働きを妨害することでウイルスが外に出ないようにする、その結果として周囲の細胞に感染が広がって重症化するのを防ぐという仕事をしているわけですね。

ところでインフルエンザと言うものが人間の身体に入ってから症状が出るまでの期間(潜伏期)は1~3日くらい、この間にウイルスは誰にも妨害されることなく増え放題に増えて周囲の細胞にも蔓延していくわけです。
そして症状が出る、すなわち身体の免疫が増えたウイルスを攻撃し始める時期からはむしろウイルスの量は減っていきますが、減りながらも症状が消えた後も一週間くらいはウイルスが検出されるとも言われています。
上記のような経過のどこからどこまで他人に感染力を及ぼすほどのウイルスが体外に排出されているのかはっきりしませんが、少なくとも風邪症状を呈している時期の前後にもウイルスを周囲にまき散らしている可能性があることには留意すべきでしょうね。

そしてタミフルが有効な(使うことで使わない場合よりも治りが早くなる)期間というのはこの「症状が出てから2日(48時間)以内」に限られ、それ以降では使用してもしなくても結果は変わらないとされています。
理屈の上では症状が出る前の潜伏期における予防投薬というものも効果があるのではと思われるでしょうが、「日本の保険診療上は」予防投薬という行為は認められていないことも周知しておく必要があるでしょう。

いずれにしても抗ウイルス薬が豚インフルエンザに対してきちんと効くのかどうか、耐性であるとしてもどの程度の耐性を持つのかといった情報は早期に検証して正確な情報を流してもらう必要があると思いますね。
今のところ遺伝子的にはタミフル、リレンザに対する耐性遺伝子はないということですが、今年のインフルエンザに見られた高度耐性化のように何とかの一つ覚えが如き処方は容易に新たな耐性をもたらすでしょうから、感染防御面も含めて臨床家の皆さんはそれなりに気を使いながら診療に当たる必要があるでしょうね。
そうした臨床面での情報も含めて、今後も随時フォローアップ出来ればいいかなと思います。

豚インフル、ワクチン切り替え「科学的な議論必要」―感染研(2009年4月28日CBニュース)

 世界的に広がっている豚インフルエンザについて、国立感染症研究所感染症情報センターの岡部信彦センター長は4月27日に開いた勉強会で、「人にとって新しいウイルスではないかと言われている」と指摘した。豚インフルエンザに対する既存のワクチンの有効性については、「理論的には期待できない」とした。ただ、製造するワクチンを切り替えると、通常の季節性インフルエンザワクチンの製造に影響が出るため、「科学的な議論が必要」と述べた。

 岡部センター長は、「確認されたウイルスは、これまでに人で見られたA-H1N1型ウイルスや、豚で見られたA-H1N1型ウイルスとは異なった遺伝子構造で、人にとって新しいウイルスではないかと言われている」と述べた。

 今回の豚インフルエンザウイルスの「起源」については、「よく分からない」と前置きした上で、「遺伝子の構造からすると、2つの地域にあった豚インフルエンザウイルスが、どこかの豚の体内で、あるいはどのようなタイミングか分からないが、遺伝子が混じり合って、人に感染しやすい新しいインフルエンザウイルスが生まれたのだろうと考えられている」と述べた。
 また、今シーズン日本で流行したA-H1N1型は、ほぼ100%がタミフル耐性の遺伝子を有していたが、現在広がっている豚インフルエンザウイルスでは、「オセルタミビル(タミフル)とザナミビル(リレンザ)耐性遺伝子はない」と説明。「臨床的には使ってみないと分からないが、治療としての可能性はかなり期待できるのではないか」と述べた。一方、アマンタジンとリマンタジンは耐性だと説明した。

 豚が豚インフルエンザにかかった場合の症状については、食欲減退や元気不良、鼻汁、咳、発熱などがあり、平均的には約1週間程度で回復すると指摘。致命率について、「1%前後。ただし、数%との報告もある」とした。
 人が豚インフルエンザにかかった場合の症状については、「米国での例などを見ても、通常のインフルエンザ様症状。ほとんどの人が軽快し、自宅だけで治っているといったこともある」と指摘。ただ、特にメキシコで重症患者の報告がある点については、「どうしてだろうと、わたしたちも思っている。情報を集めなければいけない」と述べた。重症化した患者の家族構成や年齢、ほかの病気の有無など患者自身の特徴が影響したのか、ウイルス自体に違いがあるのかなど、「まだ十分な情報がないためすべてを語れない」とした。

 既存のワクチンの豚インフルエンザウイルスに対する効果については、「不明だ。ただ、抗原が違うため、理論的にはあまり期待はできない」とした。新たなワクチンの製造については、「ウイルスが手に入れば製造は可能」と指摘。ただ、「次年度のワクチンの製造を断念して新ワクチンの作成に取り掛かるかどうかは、現在の流行状況と病原性などを見ての判断が必要だ」と発言。「もう少し様子を見て、科学的な議論が必要だ」との見方を示した。一方で、「決めるのを先送りにして、何も決めないのはいけない。その準備は必要だろう」と述べた。

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