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2009年4月 2日 (木)

医療業界冬の時代にあって改善すべき内部要因

昨日の続きとなりますが、医療現場を取り巻く環境の悪化と言う点で人為的な外圧というものがそれなりに大きな要因を占めている一方、医療業界内部においても改善すべき事柄は幾らでもあると言うことは認識しておかなければならないでしょう。
特に意識改革が必要なものとしては医療を支える経営面での努力なんだと思いますが、医療そのものと同じようにこちらも明確なエヴィデンスに基づく行動が求められる時代であって、「今までやってきたから」「何となく良さそうだから」が通用するような状況ではなくなっているわけです。
にも関わらず一部では相変わらず旧時代の遺物とも言うべき状況が放置されているのは、自助努力の欠如と非難されても仕方がないと思いますね。

例えば今の医療現場においては能力と熱意あるスタッフをどれだけ抱え込めるかということが経営を左右する最大の要因であることは常識となってきましたが、医者など捨て値で幾らでも使い捨てられるものだと旧態依然な考えを抱いている人々も未だに生き残っているようで、こういう生きる化石とも言うべき人々は何がどうなろうが同情に値するようには思えません。
世にモラール(志気)と言いますが、ことにこのモラールというものが重要視されるべき医療現場において、スタッフも守れないような施設が顧客によいサービスを提供できるはずがないと言うことはほとんど自明のことではないかとも思うのですが、そうした点を全く無視している医療機関も未だ数多く見られるのは残念なことですよね。

佐賀県立病院好生館と言えば以前にもモデルケースの一つとして取り上げさせていただいたほどにこのジャンルにおける「準メジャー級」の施設ですが、半ば以上は予想された通りに今や状況は末期的とも言える様相を呈してきたようで、これに対しては自業自得という以外の言葉を思いつきません。
今後は抜本的な収支改善に取り組むそうですが、彼らがこれ以上どんな斜め上への疾走を見せてくれるものかと今から期待しつつ続報を待っているところです。

県立病院好生館 08年度見通し 過去最高の赤字12億円 残業代の一括返済響く/佐賀(2009年4月1日西日本新聞)

 県立病院好生館(佐賀市)は、2008年度収支が12億4000万円の赤字になるとの見通しを明らかにした。産婦人科などの医師不足により、受け入れた患者数が前年度よりも約1割減ったことや、未払いが発覚した残業代を一括返済したことが響いた。赤字額は前年度の約6倍に膨らみ、過去最高となった。

 好生館によると、08年度の収入は96億6000万円で前年度よりも6.5%減少。一方で支出は109億円と前年度より3.9%増える。

 08年度の患者数は23万4000人と前年度より3万人減。産婦人科医が3人から1人に減ったことで外科手術が必要な高リスク出産に受け入れを限定したことや、眼科のベテラン医師が退職したことが影響した。

 昨年5月には、職員らに長期にわたって時間外手当の一部を支払っていなかったことが発覚。未払い額が確認できた05年5月から07年10月までの職員、研修医740人分の時間外手当4億4000万円を支払った。

 緊急的に計上した時間外手当の支払額を差し引いたとしても、赤字額はこれまで最悪だった3億4000万円(1998年度)の2倍近い8億円に上っており、好生館事務局は「抜本的な収支改善に取り組みたい」としている。

当然果たすべき義務を履行しないということも、職業人として批判されてしかるべき行為ではあるでしょう。
医療業界にある程度余裕があった時代であれば多少の齟齬には目をつぶっても何とかなっていたのかも知れませんが、今や他業界と同様に当たり前のコストダウンはわざわざ言わずとも行って当然のことであって、シリンジ一本、針一本をも無駄にすることは許されないことは言うまでもありません。
特に皆保険制度では「赤ひげ」のように金持ちから法外の金をむしり取るといった行為は決して行って良いことではありませんから、不要の無駄を省くと同時に法や制度内で許される正当な報酬を正しく得るという当たり前のことが何より必要とされるわけです。

ところが昨今では診療費未払い問題がことに各地の公立病院で問題化してきていますが、驚くことに多額の公費を投入されて維持されている公的施設職員でありながら徴収のための適切な行動を行っていないような場合もあるらしいのですね。
医療機関が患者から一部負担金の支払いを受けられない場合に保険者が医療機関への支払いと患者からの徴収を行う「保険者徴収制度」というものがありますが、この要件として国民健康保険法では次のように定められています。

「保険医療機関又は保険薬局は、前項の一部負担金の支払を受けるべきものとし、保険医療機関又は保険薬局が善良な管理者と同一の注意をもってその支払を受けることに努めたにもかかわらず、なお療養の給付を受けた者が当該一部負担金の全部又は一部を支払わないときは、保険者は、当該保健医療機関又は保険薬局の請求に基づき、この法律の規定による徴収金の例によりこれを処分することができる。」(健康保険法第74条2項)

特に公立病院における収支は最終的に税から賄われる補助金によって帳尻合わせを行っているのが現状ですから、「善良な管理者と同一の注意をもってその支払を受けることに努め」ないと言うことは公の金を無駄遣いしていることと同じく納税者に対する背信行為と言ってもいいかも知れません。
最近では市民オンブズマン等による行政監視もあちこちで実効性をあげているとも聞きますが、こうした当然に果たすべき義務の不履行、怠慢もまた厳しい批判の目を向けられるべき対象と言えるのではないでしょうか。

県立病院の診療費未払い、3億超す 裁判で徴収検討 /兵庫(2009年3月31日神戸新聞)

 兵庫県立の十二病院で診療費の未収額が、時効分を除き今月末で三億円を超える見込みであることが分かった。八年前の二倍以上で、県は「滞納は年々増えており、悪質なケースも目立つ」などとして、民事訴訟を起こすなど強制徴収に乗り出す方針を固めた。

 県によると、医療制度改革で患者の医療費負担が増え始めた二〇〇二年度、診療費の年間滞納額は八千万円台に。その後いったん減ったが、〇五年度には一億円を超え、〇七年度は一億三千万円に増えた。

 期限を二十日過ぎても診療費を収めなかった場合、県は督促状を送付。その上で、専門員五人が患者の自宅を訪れるなどして診療費の徴収に当たる。だが、さまざまな事情で住所が確認できないことも少なくなく、年間徴収率は〇一年度以降、40%以下にとどまっている。

 〇五年度からは、一年以上の滞納者への徴収を民間会社に委託したが、それでも徴収率は6%弱と低迷。生活に困窮していたり、支払う意思がなかったりする患者が目立つという。

診療費徴収には時効があり、昨年度末までの七年間で三億円以上が徴収不能に。〇五年度には時効が五年から三年へと短縮され、景気の悪化なども背景に今後さらに増えるとみられている。

 このため県は、滞納が一年以上の患者らを対象に提訴を検討。裁判結果によって財産を差し押さえた場合、徴収期限の時効が中断されるといったメリットもあるという。県病院局は「資産が把握できれば分割徴収などにも応じたい」としている。

 診療費未収は全国的にも増加傾向で、国立病院機構が運営する百四十六病院では計約十九億三千万円(〇六年度末)。大阪府立の五病院でも約三億七千万円(〇七年度末)に上るという。

 未払い診療費の徴収 医療機関は医師法に基づき、正当な理由がなければ所持金がない患者でも診療の求めを拒否できない。厚生労働省の未収金問題検討会は2008年、医療機関による訪問徴収▽保険者が督促や差し押さえをする「保険者通報制度」の実施-などを提言した。

あるいはまた、開業医が儲かる時代というのはすでに遠く過ぎ去ったという現実がありますが、未だにそうした幻想が一定の影響力を保持しているのも事実であるようです。
しかし初期投資を可能な限り低く抑える軽装開業か、あるいは先代からの引き継ぎ等で既存の施設を利用できる場合でなければ、借金分の返済もままならず結局は元の勤務医に逆戻りという話も多々あるようで、今の時代新規開業は多大な経済的リスクを抱えていると見るべきでしょう。
しかし最近では医療現場を取り巻く情勢は年々厳しさを増す一方ですから、やむにやまれぬ事情から勤務医から開業医へと転身する場合も少なからずあると思いますが、こうした新規開業組というのは一部業界の方々にとって非常に美味しいお得意様と見なされているらしいのですね。

他業界では日々当たり前に行われていることですが、「宣伝・広告」「業務内容の質的改善」「ディスカウント」など、同業者の間で差を付けようとした場合に行われる定番の手法と言うものがあるわけです。
ただ医療業界においては保険診療を行っている限り広告は打てない、価格は定額で変えられないと制限がきつい、そして肝心の医療の質の良悪もなかなか門外漢には理解しにくいという点があってか、従来はそれこそ世間知らずな殿様商売がまかり通っていたような状況がありました。
最近ではこうした点に目を付けて医療コンサルタントというものが盛んになってきているようですが、これも実態を聞いてみればなかなかに寒々しいものがあるようで、世間の荒波で鍛えられていない医者などあっという間にコロリなんだとか。
今どきうまい話などそうそう転がっているはずもないという当たり前の現実認識を持っていなければ、医者はやはり世間知らずだなと言われても仕方がないところでしょう。

コンサルに狙われる開業医(2009年03月30日JB PRESS)

急患のたらい回しや地域医療機関の閉鎖など、医療を巡る諸問題がメディアをにぎわしている。筆者は医療の専門知識は皆無だが、得意分野である「カネ」にまつわる切り口から取材を進めていたところ、医療界を舞台に新たなビジネスが展開されていることを知った。

 今回の主役はコンサルタント。そして彼らのターゲットになっているのは開業医だ。

 コンサルと開業医。一見ちぐはぐな組み合わせに映るが、現状では開業医がカネをむしり取られ、医療界の疲弊に拍車がかかろうとしているのだ。今回はその一端を紹介する。

こんなはずじゃなかった開業

 大病院での過酷な実地勤務を経てキャリアを積んだ医師の最終目標は何だろう。お叱りを承知で言えば、「病院内での出世」「学会での名声」、あるいは「開業」に大別されるのではないだろうか。

 筆者の友人医師らによれば、慢性的に人が足りない大病院での過酷な勤務に疲弊し、独立開業を志す向きが増加中とか。「特に眼科や皮膚科、内科、美容外科などで、首都圏や大都市圏を拠点に開業準備を進める医師が多い」という。

 これらの科目に共通するのは、産科や外科などと比べて訴訟リスクが低く、急患が少ないということ。だが、ここに落とし穴が待ち受けている。「訴訟リスクが低く、急患が少ない科目ほど医師が増え、競合する医療機関がどんどん増えてしまう」(関係筋)のだ。

 加えて、開業時には高額な医療機器を購入しなければならないほか、優秀な看護士や医療事務スタッフ確保のため、人件費もうなぎ上り状態にある。

 当然、開業時には自己資金のほか、金融機関からの融資が必要となるが、クリニック間の競合激化や初期投資の金利負担に苦しみ、「こんなはずじゃなかったとこぼす開業組が少なくない」(同)。

 こうした開業医の中には、「年利10~15%と高利の医療報酬(レセプト)担保融資を導入して自転車操業に陥っているところもある」(同)。ノンバンクや銀行の有力なローン商品に成長する兆しがあるとされるほどだ。

“経営カイゼン” の甘言

 競争が激しく、なかなか業績向上が見込めない業界にいち早く目をつけるのが、コンサルタントの仕事だ。新規開業組にも様々な経営指南のアドバイスが持ち込まれているようだ。

 具体的には、「マーケティング戦略」「内装リフォーム」「ネット利用のノウハウ」等々だ。「顧客(患者)満足度を上げ、ライバルに差をつける」というサービス業や流通業では昔からお馴染みの手法である。

 科目別で見ると、皮膚科ではアンチエイジング向けサプリメント、各種の機器販売など。他の科目でも、メタボ検診や訪問診察の積極化など、様々な売り上げ向上策がコンサルタントによって「プレゼン」されているという。

 従来、ほとんど競争原理が働いていなかった医療界だけに、一見すると、こうした経営改善はやって然るべきことのように映る。

 しかしコンサル側の目論見は別のところにある。「医療コンサルのキモは、借金(設備投資等)で患者を集め、経費・人件費を圧縮し、医師をできる限り酷使して売り上げを伸ばすことに尽きる」(コンサルタント筋)。そのため、提案する様々な施策を通じ、多額のコンサルフィー(報酬)を上乗せすることが可能だというのだ。

開業医はおいしいクライアント

 極論すると、「病院、医院の経営カイゼンは楽」なのだという。まず医療報酬という国の保証がついている点。患者が集まりさえすれば、診療報酬という日銭が必ず入る。これだけ安定的なキャッシュを見込める業界は、他にはなかなか見当たらない。

 そのほか、「本音と建前の使い分けや、ビジネスの裏表を知らない医師が大半」のため、他の業界よりもコンサルの提案が受け入れられやすいという。

 元来、競争原理が働いていなかった業界に新規開業が相次いでいるため、著名な外資系コンサルや飲食やサービス業専門のコンサルが、おいしいクライアントを求めて「医療コンサル」に転身する向きが増加中だとか。

 民間信用調査会社、帝国データバンクが発表した2008年2月のリポートによると、2007年の医療機関の倒産は48件に上り、2001年以降最多を記録したという。

 同社はその背景について、「患者とその家族の医療に対する関心・知識の高まりから大規模病院に患者が集中し、中小規模を中心に厳しい経営環境に置かれる施設が増加している」と分析。医療機関の倒産が今後も増加傾向をたどると見ている。

 競争激化に伴う厳しい経営環境の中、医療コンサルが活躍する余地はますます拡大していくだろう。ある関係者は筆者にこう言い切った。「安易な開業は医師の命を奪うに等しい。熟慮に熟慮が必要だ」──。

医療業界内部における改善すべき点と言うものは山のようにありますが、興味深いことに他業界で当たり前に行われているような常識が導入されれば自然と解消しそうな事も多々ありそうだという気がしています。
ごく卑近の一例をあげるなら接客業の基本は挨拶であるとされていますが、診察室に入ってきた患者に適切な態度で挨拶が出来ている医者というものは思いのほか少ないんですね(この「適切」ということの意味が理解できていない方も医療、非医療業界を問わず大多数のように見受けられますが…)。
もちろん医療に限らず専門性の高い業界においてはその内部だけで通用する特殊性というものは幾らでもありますから、何でもかんでも世間並みにやっていくことが良いというわけではもちろんありません。
しかしごく簡単な社会常識を身につけておくだけで大したお金や労力もかからず少なくない改善効果が得られるというものがあるのなら、金も人手も全く不足している業界としてはそうしたものを活用していかない手はありませんよね。

世間における「医療知らず」を評して「今どき白い巨塔?何十年前のフィクションじゃんw」などと言って冷笑する向きも一部にあるようですが、他人を笑えるほど医療業界の住人が外の世界を知っているのかと言えば決してそうとばかりも言えないんじゃないかなと思うのですよ。
色々なものを知っていて、その中から取捨選択して有用なものだけを用いると言う態度と、最初から何一つ知ることがないまま盲目的に旧例固守で突き進むだけという態度と、外から見れば一見同じようでもどちらが時代の変化に柔軟に対応し生き残っていく確率が高いのか。
そう考えるならば、今のような冬の時代であるからこそ医療従事者はもっと広く世間を知ることが必要なんだと思いますね。

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