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2009年4月30日 (木)

さらに豚インフルエンザ続報

いささかくどくなってきましたが、昨日に続いて今日も豚インフルエンザネタを取り上げたいと思います。
さて、メキシコ以外にアメリカでもついに小児の死者が発生したと言うことですが、こうした状況を受けてWHOでも警戒水準を「フェーズ5(相当数のヒト-ヒト感染の確証がある)」にまで高める一方、国内でも何とか水際での阻止を図っている状態です。

【豚インフル】メキシコ便、医師乗り込み検査の方針 厚労省(2009年4月27日産経新聞)

 豚インフルエンザ問題で厚生労働省は27日、感染が広がっているメキシコからの直行便が到着した際、機内に検疫官の医師らが乗り込み、診察などを行う方針を固めた。ウイルスを国内に入れない水際対策強化の一環で、他国からの乗客との接触を避けるねらいがある。次のメキシコからの直行便2便が予定されている29日から実施する。

 具体的には、到着便の乗客を留めたまま医師や看護師など5、6人が到着便に乗り込み、乗客全員に調査票を渡し、症状などがあれば記入してもらう。また、携帯型のサーモグラフィーを使った体温チェックを行い、乗員乗客の感染の有無を確認する。

 インフルエンザの症状を持つ乗客がいた場合は、他の乗客と分離。簡易検査などを行い、陽性反応が出たら指定医療機関で治療を行う。

 水際対策の強化では、厚労省はすでにメキシコからの入国者を対象に、一定期間、電話による健康調査を行う方針を示している。

こうやって一生懸命感染の洗い出しをするのはいいのですが、実際に感染者が見つかってしまった場合にどうしたらよいのでしょうか?
直ちに治療を…と言いたいところですが、感染者から更なる二次感染が発生する危険があるだけにどう扱ったらよいか迷うところですよね
このため厚労省は以前から新型インフルエンザ発生時のガイドラインを用意していますが、国民も医療機関も当面これに従って動くのがいいんだろうなと思いますね。

国民に対する行動指針としては以下の記事なども参考になりそうですが、いずれにしてもよく情報に耳を傾け公的な指示を遵守し、無用の混乱を巻き起こさないよう努めるべきなのは言うまでもありません。

新型インフル、もしも国内で発生したら…? (2009年4月28日中日新聞)

 政府は、新型インフルエンザ発生の警戒水準引き上げを受け、豚インフルエンザウイルスの国内侵入を阻止する水際対策に乗りだしたが、国内で感染者が出た場合には、感染拡大防止の観点から、市民生活は大幅に制限される。集会やコンサート、外出や公共交通機関利用自粛も求める。

 家庭では、最低限の食料や生活必需品の備蓄が必要になり、市区町村が食料配布などで住民生活を支援することが必要なケースも想定される。

 患者は感染症指定医療機関への入院措置がとられ、患者と接触した人には外出自粛を要請する。治療には有効とされる「タミフル」などの抗インフルエンザウイルス治療薬の投与が中心となる。

日本では政府が先頭に立ってマスクや手洗い、うがいの徹底といった一般的な防御対策を徹底するよう広報していますが、これに対して海外からはこういう声も出ているようです。

「マスクは感染防止効果乏しい」  英紙、交換必要と報道(2009年4月28日47ニュース)

 【ロンドン28日共同】新型インフルエンザをめぐり、28日付の英紙デーリー・エクスプレスは英健康保護局の専門家の話として、マスクを着用しても感染を防ぐ効果は乏しく、大量の使用済みマスクがかえって被害の拡大を招く恐れがあると報じた。

 マスクは一般的に感染リスクを減らすと期待されており、英国では、感染者の確認が報じられて以降、マスクが飛ぶように売れている。しかし、この専門家は「マスクはぬれるとウイルスが侵入しやすくなるので、1日に2度は交換する必要がある」と指摘。その上で「(ウイルス)感染の疑いがあるマスクの大量処分は、重大な公衆衛生上の危険を招く恐れがある」と警告し、マスクよりも「治療薬にお金を使うべきだ」とした。

 日本では、日常の予防策として厚労相がマスクや手洗いなどを求めているが、英保健相は「マスク着用を支持する科学的根拠はないが、感染者に接する介護員らのために、マスクの備蓄増強を急いでいる」と消極的な発言をしている。

何も知らない人が見ればマスクって無意味なの?!と短絡してしまいそうな記事ですが、いささか舌足らずな印象がありますね。
実はこの呼吸器感染症予防に対するマスクの効果と言うことは昔から議論のあるところで、例えばこちらの資料を参考にしていただければと思いますが、ざっと見ていただいて判るとおり「きっちりやろうとするとものすごく大変」なんです。

確かにマスクと言うものは正しく使用するならば一定の効果はある、ただし医療関係者の大部分でさえ実のところ正しく使用できていないという現実があって、本当であれば清潔操作などと同様に時間をかけて習熟させないといけないもののはずなのです(このあたりは医学教育カリキュラムの明らかな抜け穴だと思いますね)。
まして一般市民においては費用的な面からも集団感染防御として大々的に行うには効率が悪いのは確かですから、昔から「マスクの意味は感染防御ではなく感染者が周囲に汚染を広げないところにある」なんてことを言う人が多いのも無理ないところではあるかなと思います。
ただし誤解していただきたくないのはこうした費用対効果や実効性といった話は集団に対しての議論であって、個人が自分のお金を使ってやる分には個人の自由であるのもまた確かなのですね(ドックなどと同じことです)。

さて、一方で医療機関や行政に関してはどのような行動が求められているのでしょうか?
厚労省の「医療体制に関するガイドライン」では「患者数の増加に応じた医療体制の確保」をうたい文句に患者数に応じて段階を追った行動を取るよう定めていますが、現在のところ以下の第一段階に従うことになるでしょう。

第一段階:国外もしくは国内において新型インフルエンザ患者が発生したが、当該都道府県内にはまだ患者が発生していない段階

(1)発熱相談センターの設置
○ 都道府県・保健所を設置する市又は特別区(以下、「都道府県等」)は、保健所などに発熱を有する患者から相談を受ける体制(発熱相談センター)を整備するとともに、ポスターや広報誌等を活用して、発熱を有する患者はまず発熱相談センターへ電話等により問い合わせることを、地域住民へ周知させる。
○ 相談窓口は、患者の早期発見、患者が事前連絡せずに直接医療機関を受診することによる他の患者への感染の防止、地域住民への心理的サポート、特定の医療機関に集中しがちな負担の軽減等を目的とする。
○ 相談窓口では極力対面を避けて情報を交換し、本人の情報(症状、患者接触歴、渡航歴等)から新型インフルエンザを疑った場合、マスクを着用した上、感染症指定医療機関等を受診するよう指導を行う。新型インフルエンザの可能性がない患者に関しては、適切な情報を与え、必要に応じて近医を受診するよう指導を行う。
○ 発熱相談センターは、都道府県内に新型インフルエンザ患者が発生した後も継続する。

(2)新型インフルエンザの入院診療を行う医療機関(感染症指定医療機関等)の即応体制の整備
○ 新型インフルエンザ流行の初期には、当該患者は病状の程度にかかわらず入院勧告の対象となるため、都道府県等は新型インフルエンザ患者の入院可能病床数を事前に把握しておく必要がある。勧告にもとづく新型インフルエンザ患者の入院診療を担うのは、以下の医療機関である。

1.感染症指定医療機関1(特定、第一種、第二種)
2.結核病床をもつ医療機関など「新型インフルエンザ対策行動計画」に基づき都道府県等が病床の確保を要請した医療機関(以下、「協力医療機関」)
(上記1,2を併せて「感染症指定医療機関等」と略す)

○ 感染症指定医療機関等は、この段階から即応体制をとる必要がある。都道府県等は、これらの医療機関の準備状況を把握し、その準備を支援する(人材調整、感染対策用資材、抗インフルエンザウイルス薬等)。
○ 新型インフルエンザ患者が未発生でも、疑われる患者(当該疾患の可能性を訴え受診を希望する患者を含む)等が多数発生し、入院を必要とする例もあると予想される。このような場合も感染症指定医療機関等が患者を受け入れることになるが、新型インフルエンザが否定された時点で患者を退院もしくは一般病院に転送してよい。
○ 上記医療機関の職員に対するプレパンデミックワクチンの接種については、「新型インフルエンザワクチン接種に関するガイドライン」を参照。
○ なお、後述の第三段階に備えて全ての入院医療機関は、あらかじめ新型インフルエンザ患者を受け入れるための計画を策定しておく。

これを見ていただいても判るかと思いますが、患者が発生した場合に基本方針として「直接患者を病院に行かせない」で「適切な対応が可能な医療機関に誘導する」ということが強調されています(こうした発熱外来を設けること自体に意味がないという主張もあるのですが…)。
これは前述の二次感染被害を懸念したもので、当然病院と言うところは体調が悪い=抵抗力の弱い人が集中している場所ですから、無闇に感染した人々に押しかけてもらっては困るという理屈ですね。
「かかったかな?」と思ったらまず自治体に相談し指示を受ける、その上で指定された医療機関を受診するという流れを徹底するということですが、現状ではどうもこうした誘導が(後述のような理由もあって)適切になされているようには思えないのも気がかりなところです。

現実問題として日々発熱等の感冒症状を呈して一般外来を受診する患者は多数いるわけですし、それらに対して特別豚インフルエンザに罹患していると考えての対応が出来ているわけでもありませんから、ひとたび患者が発生すればあっという間に蔓延してしまう可能性がありますよね。
このあたりは「タミフルも効かない時期になってやっと病院に来る」メキシコあたりと違って、風邪でも引いたかと思ったら躊躇なく病院に受診する患者の多い日本の方が、当然元気よくウイルスをまき散らしている患者に病院内で遭遇する危険性ははるかに高いと見ておくべきなのでしょう。

そしてもう一点心配されることは、前述のように患者はどこでも好き勝手に受診してはいけませんよと言う割りに、自治体から受診するよう指示すべき病院の指定が全く進んでいないことです。。
これについては以下の記事を引用してみましょう。

新型インフル、「発熱外来」開設進まず…病院消極的(2009年4月29日読売新聞)

 豚インフルエンザの感染拡大を阻止するため、感染の疑いがある人を集中的に診察して患者かどうかを見極める「発熱外来」の開設準備が全国的に進んでいない。自治体から協力を求められた病院側は、二次感染の危惧(きぐ)や医師不足などを理由に開設に消極的。患者の殺到を心配する病院もあり、各自治体は「直接病院に向かわず、まず保健所に相談してほしい」と呼びかけている。

 「保健所を通じて医療機関に依頼中です」。28日、大阪府が開いた対策協議会に集まった医師に、担当職員が説明した。

 府は3月、府内の544医療機関に対し、国内で新型インフルエンザが発生した際に発熱外来を開設するかどうか確認したが、前向きな回答を示したのは36機関だけ。医師や看護師が慢性的に不足しているうえ、二次感染を心配する病院もあったという。

 発熱外来では、感染が疑われる患者を一般外来とは別室で診察。既存の病院が施設内に開くケースが多い。滋賀県は21機関に設置を要請し、28日までに開設したのは3機関。15機関の目標に対し、6機関が開設準備を進めている和歌山県は「病院側も人員や財政が厳しく、なかなか引き受けてもらえない」(難病・感染症対策課)とする。岡山県は「風評被害を気にする医療機関が多い」として、補助金交付も検討している。大阪府松原市のように、経営難の市立病院閉院で、発熱外来を設ける公立病院がなくなり、民間の総合病院などに依頼する自治体もある。

 東京都は28日、約60の医療機関に発熱外来の設置準備を要請。協力する医療機関には、治療薬のタミフルに加え、防護服やゴーグルなどを配る。都は「混乱を防ぐため」として病院名を公表しない方針。

 一方、京都府は予定通り10機関を確保済みで、「新型インフルエンザのマニュアル作成を始めた昨夏頃から、医療機関に熱心にお願いしてきた」としている。

 各自治体は「感染の疑いがある場合、病院に駆け込まず、最寄りの保健所に電話で相談してほしい。診察の必要があると判断すれば、保健所が近くの発熱外来を紹介する」としている。

基本的に新型インフルエンザと判ればそのまま入院加療ということになる場合が多いでしょうから、感染症専門家やそれなりの隔離設備などある程度施設の整った基幹病院に依頼するということになるだろうとは想像出来るところです。
しかしこうした病院は平素から入院、外来とも患者が集中して手一杯となっていることが一般的である上に、専用の別室と医師、スタッフを配置してとなると日常診療にも支障を来す可能性が極めて高いわけですね。
そうまでして協力したところで特別のメリットがあるわけでもなく、ましてや実際に罹患患者が来たともなれば院内挙げての対応を強いられることになりかねませんから、当然ながらどこの医療機関でも二の足を踏むことになるでしょう。

今ごろになって補助金交付を検討などと温いことを言っていても仕方がありませんから、特に長年の医療費削減政策で医療機関の「いざと言うときの余力」をすっかり奪い尽くしてしまった国は責任を持って適切な対応をしてもらわないといけませんよね。
はからずも積年の医療行政の歪みが、この重要な局面にいたって誰の目にも明らかなほどに露呈しつつあるといったところでしょうか。

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