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2009年4月21日 (火)

医療と行政との至って小さな関わりあい

最初にお断りしておきますが、今日の話題は天下国家のことなど縁遠い至って小さな話です。
さて、先日もお伝えしましたように、市立病院の休止問題を巡って住民投票が行われ市長が失職した銚子市で出直し市長選が行われることになりました。
この候補者というのが元市民病院医師あり、失職した前市長あり、リコール推進団体擁立の候補者ありでなかなか面白そうな顔ぶれになっているようなのですね。

候補者乱立の様相 失職の岡野氏ら出馬へ 銚子市長出直し選/千葉(2009年4月17日東京新聞)

 銚子市立総合病院の休止問題でリコール(解職請求)が成立し、岡野俊昭前市長(63)が失職したことに伴う出直し市長選は、十七日で投開票まで一カ月となる。岡野氏と元市長の野平匡邦氏(61)は十六日、相次いで立候補を正式表明。両氏は前回市長選で、市議の石上允康氏(63)を交え、三つどもえの選挙戦を展開した因縁の関係だが、互いに病院再開に努力すると明言した。

 市長選には両氏に加え、石上氏も立候補する見通し。リコール運動を進めた市民団体「『何とかしよう銚子市政』市民の会」代表の茂木薫氏(58)、元同病院医師松井稔氏(45)も既に立候補を表明している。ほかにも立候補を目指す動きがあり、五人前後の候補者が乱立する激しい選挙戦となりそうだ。

 岡野氏は市役所で記者会見し、「リコール運動で混乱だけが残り市は大変なダメージを受けた。市が進める公設民営での病院再開は私の下でしかできない」と述べた。

 約二万人が解職に賛成したことには「一番病院を残そうと努力したのに、『つぶした』と言われたことはショックだった。過去どれだけ誠実なことをやってきたか見てほしい」と力を込めた。

 一方、野平氏は市内の後援会事務所で会見し、「全力で対応できる自信がなければ前回の雪辱戦というだけになってしまう。病院の再開は困難だが、不可能ではないと感じたから立候補を決意した」と語った。

 経営協力の可能性がある医療組織の代表と話し合い、再開協力に好意的な感触を得たという。経営形態などは協力先の希望に合わせ、医師中心の委員会を設置して協議するとした。

しかしほんとに、市政の舵取り役を決めるべき選挙がこんな病院の話ばっかりでいいのかと思うくらいに病院一色な選挙戦になりそうですよね。
まあ実際のところ誰が市長になったところで元のような形での病院再開というのはほぼ不可能ではないかと思われるところではありますから、むしろどのレベルまで縮小し、それをどう市民に納得させられるのかといったあたりが当選後の課題になりそうな気もしますけれどもね。
しかし下手をすると、当選早々また公約違反で再選挙なんてことになるんじゃないかという気もしないでもないのですが…

それはさておき、同じく病院問題と市長選絡みの話題と言うことで、このところ県立病院に残業代不払いでお上の捜査の手が伸びたとか、市立病院の診療制限には根拠がないと患者から訴訟を起こされたとかで何かと話題の滋賀県からも記事を紹介してみましょう。
こちらも今や地方自治体において医療問題が重要な政策上の争点となっていることを示す話ですが、今回は記事そのものの内容よりも、下の方の市民の皆様方のコメントにご注目いただけると幸いです。

’09市長選:城下町・彦根は今/中 診療制限18科中5科の市立病院 /滋賀(2009年4月16日毎日新聞)

 ◇赤字体質、脱却は多難

 「(湖東医療圏は)県内で最も受け入れ態勢が整っていない。やめた方がいい」。湖南地域の総合病院で受診していた30歳代後半の初産を控えた女性が彦根市での里帰り出産を医師に相談したところ、こんな助言を受けた。彦根市立病院は02年に移転新築したばかりだ。女性は「なぜ、そんなに評判が悪いの」と耳を疑った。

 市立病院では、3人いた産婦人科医が1人になった07年4月から分娩(ぶんべん)を休止。昨年2月、県内初の院内助産所を開設し、2人目以上のお産で通常分娩が可能なケースに限って出産に対応することにした。医師1人と助産師16人の体制だ。その後、県から医師2人を派遣してもらい、常勤医師1、非常勤医師2人になったものの、医師による分娩は休止のままだ。

 同病院では、常勤医師1人の神経内科が06年9月から、非常勤医師1人の心療内科が07年7月から、それぞれ予約患者のみを診療。常勤医師5人と非常勤医師2人の整形外科は昨年1月から、紹介状持参の初診患者と過去5年以内に受診した再診患者に限って診療し、常勤医師2人の歯科口腔(こうくう)外科は紹介状持参か院内他科からの紹介に限定して医療を施している。18科中5科が何らかの診療制限をしている状態だ。

 歯科口腔外科で紹介状がないことを理由に診療を断られた男性は「診療制限は根拠がない」などとして、病院と市長を相手に訴訟を起こしている。

 患者も減った。03年度には延べ患者数が入院14万3823人、外来33万9730人だったのが、07年度は入院13万4815人、外来28万6592人に減った。470床ある病床の利用率も、03年度の89%が07年度には78%になった。収支も、03年度は9億3690万円だった赤字が07年度には12億2000万円に拡大し、累積赤字は約85億円に膨らんだ。

 病院は一定基準の高度医療を有すると認められる「日本医療機能評価機構」の認定を受けるなど特色作りと、市民に必要な医療供給体制の持続、3年後の赤字体質脱却を目指す改革プランを作成したが、前途は不透明だ。

 ■彦根市民の声

◆城町2、無職、門脇信雄さん(61)

開業医の紹介状がないと受診できない市立病院では心もとない。市民は仕方なく他の医療機関にかかり、市立病院の患者は減る一方と聞く。こんな状況が続けば、赤字は増え、市民の負担はかさむばかり。根本的な立て直しが急務だ。

 ◆日夏町、主婦、成宮聡子さん(34)

ばく大な投資をして改築した市立病院で5科も診療制限とは信じられない。「医師不足だから仕方がない」と言うだけでなく、医師や看護師を確保し、患者や医師にも魅力ある病院にしてほしい。

◆大藪町、蒔絵師、舟越丈二さん(38)

 市立病院は設備は一流だが、使いこなせる医師がいないとよく聞く。他の行政サービスの低下に市民が我慢できるのなら、予算をもっと病院に回し、志のある医者を集めてはどうか。

いや、志のある医者を集めることには大いに賛成なんですけどね(苦笑)。
ちなみに彦根市民病院といえばあの掲示板が炎上したことで一躍名を馳せた「彦根市民病院での安心なお産を願う会」でも有名なところです。
同会の掲示板の内容は「勤務医 開業つれづれ日記」さんでもご紹介いただいておりますが、釣りでも何でもなくこんな感じであるということにご留意ください。

■彦根の方々のご意見 「彦根市立病院での安心なお産を願う会」 掲示板(2007年1月31日記事)より抜粋

「一彦根市民ですが、彦根市民病院での安心なお産を願う会が、医者におもねり全国で多発している殺人にも等しい医療ミスを促進するのではないかと危惧しています。
彦根市民は日本の医者のほとんどを占めている金儲け主義のヤブはいらないのだ
という当初の設立の気持ちを失わないでいてほしいです。」

「一彦根市民です。儲けようと思ったら給料の安い公立病院には来ませんよ。 私から見れば
今の市民病院でも医者に給料を払い過ぎです。半分以下にすれば私たちの医療費も安くなっていつでも気軽 にかかれるようになるので、
この会の方々もぜひそういう方向で運動して下さい。
それと私はこれまで勤務していた産婦人科医も、今勤務している医者も全く信用していません。
私の周囲の女性達も皆そのように言っています。私たちの市民病院はもっと一流の医者を雇うべきだと思います。これも会の皆さんに強く訴えてほしいと思っています。」

「私も彦根の人間だけど、
市民病院の医者が信用できないのは市民の誰もが思っていることというのは事実です。
産婦人科も同じ。もっと金や自分のことを考えずに腕のいい医者を求めることはそんなにおかしいことなのですか? ここには自分たちの利益ばかり主張する医者の書き込みだかりで悲しみと怒りがわいてくるばかりです。会の皆さんはこういう自己中の医者連中とこれからも戦い続けて彦根市民の健康を守る役割をはたしていってください。応援しています。」

「彦根市民病院のひどさは本当に市民でないとわからない。
私はいったん今いる医者を全員首にして、
改めて新たに私たち市民の目線で雇った医者で新市民病院を立ち上げるべきだと考えています。
今残っている産科医を一刻も早く首にすればむしろしがらみのない施設として医者も雇いやすくなる。
会社と同じです。」

「皆さん冷静になってください。忘れてはいけないのは
これまで居た医者達はどうやら京大の医師の中でも底辺層だという事です。
彦根の住みやすさや医師を取り巻く環境を向上させて、本当に能力と人間性の優れた医師を派遣して頂けるよう歩み寄りをする必要があるのではないでしょうか? 医者が憎いだけ、という運動ではないのです。
さもないと大津の低レベルな私立大学から能力、人間性ともにさらに劣った医者が派遣されて彦根の医療が壊滅してしまう恐れがありますよ。」

「医者が憎いわけではないが、患者を殺しておいて反省のかけらもない医者、自分が楽をしたくて逃げ出す医者の罪を不問にふしてはいけないと思います。
反省を求め、謝罪させ、そのうえで彦根の医療に貢献したいという医師なら歓迎ですが。」

彦根で働かして欲しいなら、きちんと地元の人に挨拶して己の分限を弁えて欲しい。
自分が仕事をもらう立場であり、雇用主は地元住民であることを理解できることが必要。彦根の人々に生かされていること、自分が余所者であり、新参者であることが理解できること。つまり、地元の人々の意向が最優先されること、余所者のくせに自己主張をしないこと。このような最低限度のモラルが求められる。いままでの医者はこの程度すら出来なかった。」

まあ、私としても「勤務医 開業つれづれ日記」さんにならってコメントは差し控えたいと思いますが…
外野からの素朴な疑問として考えましてもそうまで市民病院に不満があり、なおかつ赤字がかさむのは嫌だと言うならさっさと潰してしまった方がそれこそ話が早いのではないでしょうか?
現実問題として他にかかれる医療機関もあるわけですから、何も善良なる大多数の市民にとって市民病院の存在が絶対必要不可欠というものでもありますまい。
まあそれこそよほどレベルが低くて他の医療機関においては使い物にならないようなスタッフばかり抱え込んでいると言うことであれば、何も少なからぬ市民の血税を投じて彼らの雇用安定を図る義務もないのではないかなと思うのですよね。

彦根市の問題は市長選における市民の選択によっていずれ明確な結論が示されるのではないかと愚考いたしますが、確かにこのところ地方行政における医療問題の比重は増す一方とも感じられます。
これについて最近こんな記事が載っていましたが、まずはこの記事をそのまま一読ください。

伊藤忠商事会長・丹羽宇一郎 医療難民は政治の貧困(2009年4月15日Business-i)

 ■病院勤務医の待遇改善が急務

 厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」によれば、2006年末現在の日本の総医師数は約27万8000人。2年前に比べて2.8%増加し、過去最高を更新した。しかし、国際レベルでみれば、人口10万人当たりの医師数は217.5人にすぎず、OECD(経済協力開発機構)加盟30カ国のうち下から4番目で、きわめて少ないというのが現状だ。

 ◆根源は「医療費亡国論」

現在の医師不足の根源は、厚生労働省が打ち出した「医療費亡国論」にその一端がある。また1986年、「95年を目標に医師の新規参入を最小限10%削減する必要がある」とする検討委員会の意見書が出され、これに基づいて文部科学省は医学部定員の削減を進めた。

 “医療亡国”ともいえる現在の医療問題は、患者や国民への配慮を欠いた政治の貧困に根ざしている。

 現在の重要な問題の一つは、診療科や地域によって医師の数に大きな偏在が生じていることだ。

 例えば2006年実績で、産科・産婦人科は1996年比12.1%の減少、小児科も10.8%減った。内科はほぼ横ばいだが02年と比べると3.6%減少した。アレルギー科や美容外科の医師数が1.3~3倍強の伸びを示す一方で、直接命にかかわる恐れのある小児科、産婦人科・産科、内科医の医師不足が深刻化している。

 医師の偏在をもたらす大きな要因の一つが、日本医師会の医師賠償責任保険の問題だ。2003年末現在で139億円の累積赤字を抱えているうえ、高額の賠償訴訟を念頭においた設計がされていない。一方で、医療過誤の損害賠償請求は1億円を超えるケースが増えており、このままでは同保険はいずれ破綻(はたん)する。このため保険料の値上げは差し迫った課題だが、その場合、今度は医療訴訟リスクの低い医師が加入(現在の加入率約4割)を辞退することが予想され、保障制度の不備から、訴訟リスクの高い医療に従事する医師のなり手がますますいなくなるという事態に直面する。

 それによって生まれるのは、医療難民だ。医療難民は、政治の貧困が生み出す、ということを政治家はしっかりと自覚しなければならない。

 ◆長時間勤務を余儀なく

 医師のなかでも、とりわけ一般病院の勤務医の多くは、医師不足から連続して30時間を超えるような長時間勤務を余儀なくされるなど、過酷な状況で働いている。平均年収(約1400万円)も個人開業医の半分程度という。労働環境、収入、医療訴訟対応への不安から、一般病院の勤務医が、よりリスクの少ない、安定した職場へと移っていくことは避けられない。そうした事態を回避するためにどう対策を講じるかを考えるのが、政治の責任だ。

 政府は緊急医師確保対策として、09年度までに国公私立合わせた医学部の定員を年間最大約700人増やす方針を打ち出した。長期的な対策も大事だが、政治として取り組まなければならない喫緊の対策はまず小児科、産科・産婦人科、内科、外科などの医療現場で働く病院勤務医の待遇をよくし、過酷な労働環境の改善を図ることだ。

 ◆地域に応じたきめ細かな対策

 地域においても、過疎地などで、助産師や看護師が患者に応急措置などを施すことが可能になれば、これらの経験を積んだ人が故郷に帰り、地元の医療相談も含め、仕事をすることができる。それが医師不足や地域住民の不安の解消にもつながる。

 地域の状況に応じたきめ細かな対策は、地元の各都道府県に責任をもたせる形で任せるべきである。地域によって実情が異なるのに、地方を信頼せず厚労省が全国一律に指図するところに問題の根源がある。具体的な取り組みは自治体に委ね、その費用を国が保障する。地方分権を、もっと強力に進めないといけない。

一見すると「医療の現状は国政の失敗に基づくものであり、政府は直ちにこれに対処しなければならない」といった内容に思える記事です。
しかし何故か末尾の丹羽宇一郎氏のプロフィールを見ますと、「経済財政諮問会議」の議員であったという前歴が省略されているようなのですね。
経済財政諮問会議と言えば例の「骨太の方針」なるものに示されるように、「聖域無き構造改革」を旗印に医療費抑制政策を強硬に主導し現在の医療現場の状況を創出してきた主役格とも言える方々ですよね。
何と言いますか、かの朝日新聞社が珊瑚保全を訴えるくらいに素晴らしいものを感じてしまうのは自分だけでしょうか。

と言うわけで今日の結論: お前が言うな。

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