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2009年4月11日 (土)

新聞週間に寄せて マスメディアに求められる資質

先日4月6日は「新聞をヨム日(日本新聞協会販売委員会)」なんだそうで、同日から12日までが「春の新聞週間」と位置付けられています。
最近では地盤沈下著しいとも言われるだけに各紙合同でここぞとばかりに新聞を売り込もうと頑張っているようですが、幾つか記事から取り上げてみましょう。

ネット社会での新聞の意義語る 「新聞をヨム日」でイベント(2009年4月7日日経ネット)

 日本新聞協会は「新聞をヨム日」の6日、トークライブ「時代を笑え」を東京都内で開いた。新聞に連載を持つ人気漫画家3人がインターネット社会での新聞のあり方について話した。

 3人は新聞記事から漫画のネタを探す話などを披露。しりあがり寿さんは「ネットも見るが、どのニュースが大切かは新聞で確認しないと不安になるので手放せない」。やくみつるさんは「新聞はどのニュースが重大か記事の大きさで分かる。紙をめくれば色々なページにすぐ飛べる新聞はネットより便利」と強調した。

 西原理恵子さんは若者の新聞離れについて「ネットのせいではない」と指摘。「新聞は形を長い間変えていない。もっとおもしろいことを分かりやすい言葉で伝えられるはず」と話した。

「新聞読んで」 販売店がPR/宮城(2009年4月7日読売新聞)

 「新聞をヨム日(4月6日)」にちなんだ「春の新聞週間」(12日まで)にあわせ、仙台新聞販売店主会の会員らが6日、仙台市青葉区の「藤崎」前で、買い物客らに購読を呼びかけた。

 読売新聞社など6新聞社の販売店で作る同会の会員らは、「新聞週間です」「新聞を読んで」などと呼びかけながら、日本新聞協会が発行する「HAPPY新聞」2000部を配布した。「HAPPY新聞」は、読んで幸せになれる記事として、読者が選んだ19本を掲載している。新聞を受け取った同市太白区の大宮みつこさん(72)は「新聞を読まないと忘れ物をしたような気がする。若者にも新聞を読む習慣が広がるといい」と話していた。

春の新聞週間:3カ所で広報活動 /岡山(2009年4月7日毎日新聞)

 4月6日の「新聞を読む日」から始まる新聞週間(12日まで)に合わせて、県内3カ所で新聞の広報活動が行われた。

 同日、JR岡山駅前では新聞販売店主ら約10人が、心温まるニュースを掲載した「HAPPY新聞」(日本新聞協会発行)と花の種を配った。新聞公正取引協議会県支部の若藤純也事務局長は、「普段読まない人に、ぜひ新聞を読んでほしい」と呼びかけた。

 新聞4紙を購読しているという岡山市の学生、小林由果さん(20)は「写真がたくさん載っていると読みたくなる。事件や事故の記事は詳しく書いてあるので、記憶に残りやすい」と話した。

しかし今の時代ネットと比較しないではいられない気持ちも理解はできますが、何故こうもネットリテラシーの低そうな人たちのコメントばかり取り上げるのかとも思うわけですが…
ネットのつき合い方すらろくに知っていなさそうな人々に「ネットより新聞」なんて言わせたところで、時代に取り残されつつある人々とメディアが同類相哀れんでいるように見えて仕方がないんですがね。
こうして必死に営業活動を行っている新聞各社ですが、その先行きは果たしてどうなのでしょうか?

gooリサーチと毎日新聞社とが20代を対象に行った共同企画調査によれば、そもそも新聞を読まないという人々が4割、家庭や職場などに置いてあれば読む消極的読者が4割で、自分で金を出して新聞を読んでいるという層は全体の1/4だったそうです。
ではテレビが人気かと言えば、ヤフーバリューインサイトの調査では新聞、テレビといった既存メディアへの依存度が高かったものが20代以降にはこれらが急減し、以後ネット上のコンテンツに依存するという傾向が30代に至るまで続き、ようやく旧メディア復権の兆しが見られるのが40代以降という結果が出ています。
文化庁の調査でも新聞・テレビといった旧来のメディアに依存している人々はすでに社会的高年齢層に偏在しつつあり、しかもその年限は今後ますます上昇していくだろうという予測が成り立つという状況ですから、当然ながら今後その社会的影響力がこれから下落一方であろうということが見えているわけです。

大統領選の行方すらネット上の人気が左右するなどと言われるお隣韓国と比べれば日本のネットユーザーの社会的影響力は未だそこまで強力ではないのも事実でしょうが、同時に無視できるほど小さな勢力でもないのは確かですよね。
時を経る毎にますます一般大衆のネット利用が滲透する、あるいはネット利用者の一般大衆化が進んでいくとなれば、これはもう従来型メディアに対するもう一つの極を形成していると考えてよさそうです。
そして双方向性、大衆への解放といったネットの特性を顧みた場合に、既存の新聞、テレビと言った中央集権型メディアに対置してネットは分散・民主主義型メディアであるべきだろうし、そうならざるを得ないのではないかなという気がしています。

つまるところそれは自称「社会の木鐸」として、他者から攻撃されることなく自らは一方的に攻撃し得るという特権的ポジションに安住してきた既存メディアに対して、ようやく明確な批判勢力が出現してきたということです。
このあたりのネットと既存メディアとの相互関係の一例として、「ロハス・メディカル・ブログ」さんの大野病院事件に関する一連の報道への検証を取り上げてみましょう。

大野病院事件の報道をふりかえる。(2009年03月24日ロハス・メディカル・ブログ)より抜粋

2006年、福島県立大野病院事件に際し、当時は連日のように、様々な報道が相次ぎました。内容的には、被害者感情の救済、医療制度の問題点の指摘、医療関係者・行政関係者に対する批判も入り混じり、また、時の経過とともにその論調には徐々に変化が現れました。
(略)
まずは、第一報当時の様子です。

●逮捕時の2月18日の新聞マスメディアの第一報の見出しは、「『医療過誤』『手術ミス』で医師逮捕」であった。
●テレビニュースでは加藤医師が手錠をかけられ連行される映像が繰り返し流れた。
●記事は「・・・医師が癒着胎盤を無理に剥がして妊婦を失血死させ、・・・容疑を否認している」と報じ、これを読んだ医師を含む多くの国民は、医師には専門的知識がなく技術が未熟で、判断や処置に過誤があったという印象を受けた

しかし、世論には徐々に変化が出てきます。きっかけはインターネットでした。

●逮捕報道直後より、医師達がインターネット(so-net m3の医師限定掲示
板や、医師のブログ等)上で、事故調査委員会報告書等から実際の症例の経過や処置を検討し議論が開始された。
●それにより、実情は報道内容とは異なり、医師個人に対する刑事罰の追求は不当と判断するようになった。

さらに、くい止める会の署名の活動も始まります。

●3月17日、(くい止める会は)厚生労働大臣に陳情書・署名を提出し、記者会見を行った。
●これ以外にも、医師を支援するグループ、日本産科婦人科学会・医会、地域の医師会、病院会などからも多数の声明が発表された。
産科医療の問題点がクローズ・アップされ、多数のメディアに取り上げられた。

そして、マスコミの論調もしだいに変わりました。

●2006年3月~5月に主要三紙で産科関係の記事は108以上にのぼる。
●3月の新聞見出しは「医療過誤」「医療ミス」であったが、5月には「医
療事故」「妊婦死亡事故」「医師逮捕起訴事件」に変わっている

最後に、まとめとして、以下の3点が挙げられています。

①第一報の情報ソースは患者側家族や警察であり、公平に報道されたとはいい難かった。さらに翌日から第一報の情報を根拠に“加害者”被告側の非を責める「識者」コメントが報道され、これにより、一般人の医療不信を過度に煽ったことは否定できない。

②メディアにより産科問題が多数取りあげられたが、センセーショナルな内容が目立った。マスメディアには、地域医療の問題解決のための、堅実な情報提供と議論が乏しかった。

③医師はインターネットを通じて情報を共有し、活発な意見交換を行った。これまで勤務医がまとまって意見を発言する場がなかったが、インターネットによる署名呼びかけに対して、短期間に多数の賛同署名が集まり、厚生労働省はじめ関係機関に提言を行うことができた。

以上から、県立大野病院事件の報道には、医療報道の難しさや問題点が凝縮されていることがわかります。

①の指摘するとおり、第一報の論調は大事です。そして使用する用語(医療ミスか、医療事故か、等)も大事です。それにも増して、“識者”と呼ばれる人のコメントが一般読者に与えるインパクトは大きいのです。しかし、この“識者”と呼ばれる人はどうやって選ばれるどんな人なのでしょうか。おそらく「記者(もっといえばデスク)のほしいコメントをくれる、それらしい肩書きの備わった人」という、報道側の都合に沿って選ばれているのでしょう。

報道側がほしいコメントがどういうものかは、上で振り返ったとおり。一般的に見ても、報道が被害者側寄りになるのは致し方ないことなのでしょうか?ただ、本当に国民の利益につながるのは、②でも指摘されている「堅実な情報提供と議論」です。ニュース性、話題性を追うのはマスコミの性だとしても、その分析内容は堅実であってほしいのです。そうでなければ、そもそも報道の信頼性に関わると思うのですが・・・。

ネットの発達によって既存メディアにどのような影響が現れるものかと考えてみた場合に、上記の経過は非常に示唆に富むものではないかと思いますね。
確かにネットが今ほど発達していない時代であっても、主要メディアの読み合わせを行うことで既存メディアの「偏向報道」に関しては検証することが可能であったし、「あそこの報道は信用できない」といった情報も半ば常識的に(苦笑)流布されていたのは確かでしょう。
しかし問題はそうした検証の結果が広まるのは少なくともリアルタイムにおいては行った個人、あるいはその周囲の小さなコミュニティーに共有されていたに過ぎないということで、そうであればこそ既存メディアは自らの思うところを自由に吹聴できていたということです。

社会的には取るに足りないような個人であってもメディアの偏向に対して広く世間に警鐘を鳴らし得る時代になったということがよく判るものとして、例えば以下のようなサイトがその一つの実例になるんじゃないかと思いますね。

 

証言の「断片」のみ放映―台湾の被取材者が怒る反日番組「NHKスペシャル/シリーズ・JAPANデビュー」

 

昨今では例えば毎日新聞捏造問題などに見られるように、今やネットからの力が既存メディアに与える影響力というものは彼らにとっても無視できないものとなってきています。
一面で既存メディアの罪は罪としてそれなりの社会的報いを受けるべきは当然でしょうが、他方では彼ら既存メディアが歴史的に果たしてきた「ジャーナリスト」としての功績も功績として認めなければ公平ではないでしょうね。
彼らが「社会の木鐸」足るにふさわしい良識をもって正しく本業に従事するということであれば誰にとっても歓迎すべきことではないかと思いますし、その一助となるべくネットもまた健全な批判勢力としてますます成長し熟成していかなければならないのでしょう。

しかし、まあ…既存メディアにも色々と早急に改善すべき点は多いわけですが、せめて当たり前の社会常識くらいはさっさと身につけておいてもらわなければ困るんですけどね…
昔は「勉強のために新聞を読め」なんてことを教えられた時代もあったようですが、これからの時代の子供は「マスコミ関係者みたいな真似はしないように」と教育されて育つんでしょうか。

朝日放送番組でコカの葉噛むシーン 近畿厚生局麻薬取締部が注意(2009年4月10日産経新聞)

 朝日放送(ABC、大阪市)のテレビ番組で出演したタレントがコカインの原料のコカの葉をかむ場面があり、近畿厚生局麻薬取締部が、薬物犯罪をあおることを禁じた麻薬特例法に抵触する恐れがあるとして、同社に口頭で注意していたことがわかった。

 麻取部によると、番組のタイトルは「世界の村で発見!こんなところに日本人」。同社が制作し、今年1月2日に全国放送された。この中に男性タレントが南米・ボリビアを訪れ、露店でコカの葉をかんだシーンがあったという。

 コカの葉はコカインと同様に麻薬に指定されており、栽培や使用は処罰の対象になる。一方、麻薬特例法では、薬物犯罪や規制薬物の乱用をあおったり、使用をそそのかしたりすることを禁じている。

 朝日放送によると、1月5日に近畿厚生局から指摘があり、担当者が事情を説明。今後、このシーンの再放送は控えるという。同広報部は「なじみのない外国の風習を伝えたいとの意図だった。放送に際してはより慎重を期すべきだった」とコメントしている。

対局中の羽生名人に記者がサイン求める 厳重注意(2009年4月10日産経新聞)

 将棋の羽生善治名人(38)に郷田真隆九段(38)が挑戦する「第67期名人戦」(朝日新聞社など主催)で10日、朝日新聞の委託を受けて観戦記者として立ち会っていたフリー記者(75)が、対局中の羽生名人にサインを求めるトラブルがあった。同社は記者に口頭で厳重注意するとともに、対局終了を待って羽生、郷田両氏や共催の毎日新聞社など関係者に陳謝する。

 同社によると、トラブルがあったのは名人戦第1局2日目の10日午前9時45分ごろ、羽生名人が自らの手番で44手目を考慮中、記録係と並んでいた記者が白い扇子とペンを取り出し、羽生名人にサインをするよう求めた

 羽生名人は対局を中断する形でサインに応じ、頭をかく仕草をしながら盤面に目を戻した。この間、郷田9段は水を飲むなどして様子を見守った。

 この様子はNHKが中継しており、実況担当者が「今、何か書いているようですけれども…」と当惑しながらその様子を伝えた

 問題の記者は昭和51年から平成11年まで、朝日新聞社の嘱託記者として取材活動を行い、この日は同社の委託を受けて取材にあたっていた。

 休憩時間に担当者が、問題の記者に「対局中に声をかけるような行動は慎んでほしい」と注意したところ「郷田さんの手番だと思っていた。うかつだった」と釈明したという。朝日新聞社は「両対局者はもちろんのこと、主催する名人戦実行委員会のほか、関係者にご迷惑をおかけしたことを深くお詫びします」とコメントしている。

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コメント

4月20日は珊瑚記念日
http://asahilog.hp.infoseek.co.jp/
みんな忘れないでね。

投稿: アルゴン金 | 2009年4月13日 (月) 17時57分

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