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2009年4月 7日 (火)

医療危機の時代にあって最も意識改革が必要なのは誰か?

昨日は救急の話題でしたが、需給不均衡が問題となっているのは何も救急の現場にとどまりません。
「病院か診療所か」というのも古くて新しい話題ですが、まずはこちらの記事から紹介してみましょう。

軽い病気でも… 5割「病院に」 医師不足解消 患者の意識改革不可欠 /静岡(2009年4月3日読売新聞)

軽い病気の時でも、最寄りの診療所ではなく高度な設備のある病院で診てもらいたいと考える県民が半数を超えていることが、県の「保健医療に関する調査」でわかった。患者の「病院志向」は病院勤務医の過重負担をもたらし、医師が病院に定着しない大きな要因になっていると指摘されている。医師不足の緩和・解消には患者側の意識改革も欠かせないことが改めて浮き彫りになった。

 調査は県医療室が今年1~2月に、県内在住の20歳以上の男女2000人を対象に郵送で行い、1207人(60・3%)から有効回答があった。

 軽い病気にかかったと思う場合、「病院に行く」と答えた人が53・6%に上ったのに対し、「診療所」とした人は25・1%にとどまった。2003年度に行った前回調査では診療所と答えた県民が60%、1998年度の前々回も58・4%あったが、今回は半分以下に減った。

 20~40歳代で「病院に行く」と答えたのは4割程度だったが、高齢者で女性ほど、「病院に行く」と回答した割合が高かった。一方で、「医療機関には行かない」は前回、前々回はいずれも3%前後だったが、今回は18・6%に達し、特に男性の20~40歳代、女性の20歳代では3割近くに上った。

 病気になった際に決まって受診するかかりつけ医は、今回の調査では39・6%が「いない」と答え、前回に比べ12・5ポイント減少した。地域で入院できる医療機関の状況を把握しているかどうかについても、「わからない」が41・6%に上り、前回比27・6ポイントも増加した。

 県医療室は「診療科の休診が相次ぎ、近くに医療機関があっても、実際に入院できるか不安に思う人が多いようだ」と分析している。また、県医師会の篠原彰副会長は「『軽症は診療所、重症は病院』との呼びかけが思いの外浸透していない。医師不足や医療費の高騰などで医療への不信が高まっているのかもしれない」と懸念している。

長期療養が必要な場合、自宅での療養を望むかどうか尋ねたところ、「望まない」が49・2%(前回比8ポイント増)で、「望む」の46・9%(同8・1ポイント減)を上回った。望まない理由(複数回答)としては、「家族に負担がかかる」が87・5%で最も多く、次に多い「症状が急変した時の対応が不安」の53・2%を大きく引き離した。

「軽症は診療所、重症は病院」だとか「かかりつけ医を持ちましょう」などと言えば一昔前に盛んに言われたスローガンですが、近ごろでは医療問題の所轄官庁たる厚労省自身が地域の中小医療機関を統廃合して集約化を進めているせいか近ごろではあまり大きな声で言われなくなってしまいました。
このところ開業医に対する医療財政上の締め付けが年々厳しくなったりレセプトオンライン請求義務化など小技を絡めた開業医潰し政策が進行していたりで開業医の利権団体たる医師会との関係も非常に微妙なものになっていますから、厚労省としても敵に塩を送るようなことはしたくないのか?とも邪推してみたり…

邪推はともかくとしても、今や喫緊の話題になっている医療問題において利用者であり最大の受益者である患者自身の行動が大きな意味を占めることは言うまでもありません。
量的な需給不均衡が大きく取り上げられる昨今ですが、実は質的な需給不均衡も久しく前から進行しています。

医療が高度化してくると当然今までよりも病気は簡単に治るようになるだろうと思えますが、実際には患者一人当たりに要するマンパワーが鰻登りに増大していることが経験的に知られています(このあたり、年々PCは高性能化しているのに重くなる一方の某社性OSを連想します…)。
世に言うインフォームドコンセント(IC)など昔にはさほど手間取らなかった作業が劇的に増加していることも一つの理由ですが、何より患者の医療に対する要求度が極めて高騰してきていることも大きな原因なんだろうと思いますね。

去る4月1日(そう、世界的に色々とイベント盛りだくさんのあの日です)にはこんな話が出てちょっとしたネタとして好評を博していましたが、これなども「おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな」的なものを感じるところですよね。

2009-04-01 ドラクエが医療を崩壊させた

医療に対する要求水準が天井知らずに高くなっていきますと、やがてクレーマーと言われる状態と高率に結びついてくる訳ですが、このクレーマーという言葉自体が一部の方々の過剰反応を引き起こす要因ともなっているようです。
別にクレーマーではないのならネタはネタと笑って済ませればいい話ではないかと思うのですが、こういう話が出てくると早速に噛みついていらっしゃる方々もいるというわけで、なるほど年に一度のイベントであってもこうなんですから日常診療ではどれほどの手間暇がかかっているのかと誰でも容易に想像できるような話ではあります。

医療訴訟は医師の説明不足が原因。患者のせいではない。

何にしろ医療現場としてはこうした現実を前提とした対応をしなければならないのですが、接遇面ではまだまだ社会的水準に遠く及ばない医療現場の対応があるのもまた事実です。
世に「クレーマー」という言葉があり、一方で「クレーマーなどとケシカランことを言うな!」とお叱りの方々もいらっしゃるわけですが、実のところ当たり前の顧客とクレーマー(と呼ばれる方々)との間に明確な線引きは出来ません。
そうであるからこそクレーマーと断定する以前の初期からの適切な対応というものが重要であるし、最近では様々な書籍や相談サイトなども充実してきているのですが、全国の医療機関のうちでこうした面でしかるべきマニュアルなりに基づいて組織的に対応している施設はどれくらいの割合にあるのでしょうか。

クレーマー対処の基本は「窓口を一本化し専門的トレーニングを受けた担当者が対処する」こととされていますが、日経メディカルの記事によればクレーム処理の担当部署や担当者を決めている施設は41%だと言いますから、過半数の施設ではその場に居合わせた人間が行き当たりばったりで対応していることになるのでしょうね。
医療訴訟の当事者が決まって口にする「病院側の説明がころころ変わって信用できない」とはまさしくこういう事情に起因しているのでしょうが、組織としての対応の未熟さが自ら医療訴訟の種をまいているにも等しいということです。
例え善意の患者であってもこんなグダグダの状況ではすぐにトラブってしまうでしょうが、まして相手がプロフェッショナルな?クレーマーともなればいくらでも相手の矛盾点を突いていけるだろうことは想像に難くないですよね。

特に医療分野のような専門性の高い領域ですと変な意味で「何でも専門家に任せろ」といった風潮が蔓延しやすいのか、「先生の患者がご不満を述べていらっしゃるので対応お願いしますね」で医者に丸投げしてくるスタッフも多いようです。
顧客からクレームが来たときに「うちで一番の腕利きですから」と熟練組み立て工に対応させようとする自動車会社などあり得ないことを考えれば、こういう行為がどれほど的外れなものか誰にでも理解できそうな話ですが、何故かそれも理解できない人々が居座っているのも医療の抱える大きな問題の一つでしょう。
今の時代であれば「そんな病院に勤めている方が悪い」と言われそうな話でもありますけれども、顧客に対する組織的対応という点では以前にも取り上げましたように意外に?四国界隈で対策が進んでいるようですね。
しかしその背景をよくよく考えてみれば、これだけやらなければどうしようもないという現場の実態が見え隠れしているようで複雑ではあるのですが…

「コンビニ受診」に別料金(6)(2009年04月06日朝日新聞)

◇暴言・暴力 不払いも増加

  「時間外選定療養費徴収のお知らせ」――。 昨年4月、徳島赤十字病院(徳島県小松島市) のロビーにこんな看板が掲げられた。 休日や夜間の時間外に受診した患者のうち、入院の必要がなかった軽症者から一律3150円を別料金として徴収するという病院側の呼びかけだ。

  軽症にもかかわらず、重症者を扱う2次、3次救急病院を安易に利用する「コンビニ受診」 が全国で問題になっている。 脳卒中など生死にかかわる重篤な患者を診る3次救急に県から指定された徳島赤十字病院も例外ではない。 平日の夜間は多い時で100人、休日には300人を超す患者が相次いで来院した。 ところが、このうち入院した患者は1割に過ぎない。本来は、1次救急を担う地域の当番医や医師会などが運営する急患センターにかかるべき軽症者が大半だ。

  「医師の数が限られている中で、このままでは一刻を争う患者の治療に支障が出る」。 軽症者に対する別料金の徴収は、病院側の危機感の表明だった。

  同病院の実平政則・救急係長は「たとえ救急車で運ばれて来ても、軽症ならば別料金を徴収する。救急搬送は除外すべきか検討したが、『救急車に乗れば徴収されない』 と逆にコンビニ受診を助長させる恐れがある」 と話す。 別料金の徴収後、時間外に受診する患者数は徴収前と比べて4割ほど減った。

     ◇

  香川県は3月、病院を受診する患者に守ってほしいマナーをまとめた「地域医療を守るための宣言」 を発表し、「(医師への) 迷惑行為は慎もう」 「診療時間内に受診しよう」 などと呼びかけるポスター2千枚を県内の病院などに配った

  病院内で暴れたり、暴言を吐いたりする「モンスターペイシェント(患者)」 が近年目立つという医療関係者の声が県に寄せられたためだ。

  昨年12月には同県善通寺市の病院で深夜、患者の付き添いで来た40代の男が、担当医でなく当直医が応対したことに腹を立て、当直医らを暴行した事件も起きた。

     ◇

  「治療に納得がいかないから、料金は支払わない」。 そんな理不尽な言い訳をして、診療費を支払わない患者も増えている。

  四国4県の県立病院の07年度末までの診療費の滞納額(未収金) は、愛媛(5病院)が約3億500万円▽徳島(3病院) 約1億8200万円▽高知(3病院) 約1億6400万円▽香川(3病院、2施設) 約9千万円。

  各県は滞納額を減らそうと支払いの督促を強化しているが、病院側は診療に訪れた患者を「診療費の不払い」を理由に断ることは出来ない。

  愛媛県の担当者は「診療費を払えるのに意図的に支払わない悪質な問題を根本的に解決するには、一人ひとりのモラルに期待するしかないのが現実だ」 と話した。

モンスター患者に対策続々 対応指針、警察と連携も(2009年4月3日47ニュース)

 「待たせるなら金は払わない」「(自分で薬剤を指定し)これを注射しろ」。医師らに理不尽な要求をしたり、時には暴力を振るったりする「モンスター患者」への対応に各地の医療機関が乗り出している。

 徳島県阿南市の阿南共栄病院は1月、対応マニュアルを作成した。(1)暴言には3人以上のスタッフで対処(2)要求に応じて謝罪文や念書は提出しない(3)暴力行為は110番-などの内容だ。

 昨年12月には徳島県警の協力を得て研修会も実施。警察官がモンスター患者役を務めて実演を行い、「やりとりは必ず記録する」といった助言を受けた。2月からは、情報を共有するため具体的なケースを基にした事例検討会も開いている。

 全日本病院協会が2007年末から08年初めに加盟医療機関を対象に実施したアンケートでは、回答を寄せた1106機関のうち52%が、過去1年間に患者や家族から職員への暴力や暴言などがあったと答えた。

 兵庫県は09年度から、警察OBらを救急医療調整員として県立病院など17カ所に配置する。広島県医師会は県警と連携して昨年7月、「他の患者さんに迷惑をかけないで」と書いたポスター1万4000部を作製した。静岡県や大阪府の医療機関からも「送付してほしい」と問い合わせが寄せられるなど反響があったという。

崩壊する医療現場の志気を支えるためには最低限、医療機関が組織としてスタッフを守るという姿勢を明確に打ち出していかなければならないんだと思いますね。
院内の内輪の場所で「それはあなたの対応にも問題があったんじゃないの?」などと反省会をするのは幾らしてもいいでしょうが、外部に対して大きく手を広げて職員を守ってみせるべき組織が背中から銃を撃つような行為を平気で働いているようでは、それは誰も組織に対する忠誠心など発揮できるはずもありませんよね。

地域医療の行く末を大きく左右する問題の一つとして医療を支える地域住民の民度というものが大きく取り上げられるようにもなってきていますが、何より当の医療機関自身に医療と医療スタッフを守るという姿勢がどれほどあるのかということも問われる時代になっているということなのでしょう。

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