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2009年3月27日 (金)

愛育病院続報、そして日赤にも是正勧告が

昨日は周産期総合センター指定病院である東京都は愛育病院に労基署の是正勧告、そしてセンター指定返上というニュースをお伝えしました。
本日もその続報を幾つか取り上げてみたいと思いますが、まずはこちらの院長会見から。

愛育病院:「行政が対策を」指定返上で院長会見(2009年3月26日毎日新聞)

 東京都の総合周産期母子医療センターの指定を受けている愛育病院(東京都港区)が指定返上を都に打診した問題で、中林正雄病院長が26日、記者会見し、「人を増やして過重労働をなくすような対策のロードマップ(道筋)を行政がつくってほしい」と訴えた。

 愛育病院は夜間、常勤医と非常勤医の2人体制で対応している。だが、勤務実態の改善を求めた三田労働基準監督署の是正勧告に基づく対応を取ると、常勤医が足らないケースが生じる。同病院には救命救急センターがなく、総合周産期母子医療センターの継続は難しいと判断した。同病院は、都や都周産期医療協議会の回答を待って、今後の対応を検討するという。

 中林院長は「産婦人科医療が赤字の中、国の援助がないと病院も産科医の待遇を改善できないし、過酷な条件では産科医も集まらない。悪条件が改善されないのに、労働基準法だけを守れと言うのは現実的でない」と説明した。

いや、あの、世間で法律違反を指摘されて責任者がこういう会見を開こうものなら、一般常識的には「開き直り」と非難されてしかるべき事態だと思うんですけどね。
人が集まらず過酷な勤務条件となっているならスタッフの能力に併せて適正な規模に業務を縮小していくのも病院長の重要な決断だと思うんですけれども、どうもそうした考えは微塵も存在してなさどうですね。

センターと言う名目があろうがなかろうが救急などと言うものは受ける施設は受けるし、受けない施設は受けないという現実がある以上、視線はセンター返上の是非ではなく労働環境の方に向けられていなければならないのは当然です(ちなみに愛育は何が何でも受けるという類の病院ではありません)。
いずれにしても雇用している労働者の労働環境を守るのは職場責任者の仕事なんですから、他人が悪い何とかしろではなく自分が悪い何とかしなければという気持ちがないのでは当事者意識の欠如を問われても仕方がないところでしょう。
こういう人任せな態度を見る限りどうもこの中林院長さんもかなり主体性のない方なのかなと疑っておりましたら、早速その偏見を強化するようなニュースですよ。

総合周産期センター指定、愛育病院が返上の打診を撤回(2009年3月26日日経ネット)

 東京都港区の愛育病院が「総合周産期母子医療センター」の指定返上を都に打診した問題で、同病院の中林正雄院長は26日、報道陣に「都から返上の必要はないと言われた。その判断に従う」などと話し、センターとして指定を受け続ける考えを示した。事実上、返上の打診を撤回したことになる。

 中林院長の説明によると、労働基準法に基づく労使協定(三六協定)を結ばず、医師に長時間労働をさせていたとして、労働基準監督署から是正を勧告された。

 病院は労使協定を結ぶことや、非常勤の医師を新たに4人確保する改善策を4月20日までに労基署に報告する予定だが、それでも常勤医師だけでは国が総合センターの指針として示している「24時間、複数の産科医が勤務」という条件が満たせないことから、都に返上を打診したという。

さっそく返上を撤回、しかもその理由が「東京都に言われたから」って、判断まで他人任せかい!大丈夫かこの院長は?と他人事ながら心配になってくるような話です。
この記事だけ見ますと東京都も違法行為を指摘されているのにこんなこと言ったんなら後でトラブるんじゃないかなとも感じるところがあるわけですが、別ソースで見ますと少し異なった印象を受けます。

愛育病院、一転して総合周産期センター継続を検討へ(2009年3月26日朝日新聞)

 リスクの高いお産を診る「総合周産期母子医療センター」の指定返上を東京都に申し出た愛育病院(港区)は26日、再考を求める都の意向を受け入れ、総合センターの継続を検討することを決めた。

 同病院は、医師の勤務条件に関する労働基準監督署の是正勧告を受け、総合センターとして望ましいとされる産科医の当直2人以上の態勢を常勤医だけでは維持できないと判断し、返上を申し出た。

 同病院によると、26日に病院を訪れた都の担当者から、周産期医療の提供体制を守るために必要だとして継続を要請された。都側は非常勤の医師だけの当直を認める姿勢を示したという。

 一方、厚生労働省の担当者からは25日、労働基準法に関する告示で時間外勤務時間の上限と定められた年360時間について、「労使協定に特別条項を作れば、基準を超えて勤務させることができる」と説明されたという。

 中林正雄院長は26日の記者会見で、「非常勤医2人の当直という日があってもいいのか。特別条項で基準を超える時間外労働をさせても法違反にならないのか。都や厚労省に文書で保証してもらいたい」と話した。

 中林院長は、非常勤医だけで当直をすることの是非について、周産期医療の関係機関でつくる協議会に検討を求めたことも明らかにした。

いや、お上に文書で保証を求める、ですか…今どき珍しいくらいの天然かと思っていましたが、とことん他人任せの姿勢と見せておいて、実は意外としたたかなんですかね?>中林院長。
しかし厚労省担当者が「労使協定に特別条項を作れば、基準を超えて勤務させることができる」と説明したと言いますが、そもそも普通の産科勤務医であれば時間外が年間360時間(月30時間)なんてレベルにとどまるとも思えないところですけれども。
ちなみに36協定における特別条項とは決算期や大規模トラブルなどでたまたま上限時間を超えてしまった場合の一時的な措置であって、こうした勤務医の過重労働のように日常的な超過勤務状態に対応したものではないと思いますが、当の所轄官庁である厚労省の担当者が事実こんな発言をしたのであれば問題になりそうですね。

いずれにしても厚労省にしても都にしても病院側にしても法律本来の趣旨である現場スタッフの過重労働防止、権利保護という観点は全く存在しなさそうですし、そもそも現場医師の労働環境を改善しようなどという姿勢は全く見られないところが何とも素敵ではあります。
そしてもう一つ、そもそも愛育病院のような(比較的)労働環境の良い病院ですら労基署から突っ込まれるのであれば、他のほとんどの病院が指摘されてしかるべきだろうとは容易に想像できるところではあるし、実際他の施設も調査中であるという話がありましたが、早速にもこんなニュースが来ているようです。

(速報)日赤医療センターにも是正勧告(2009年3月26日ロハスメディカル)

 東京都渋谷区の日赤医療センター(幕内雅敏院長)が、渋谷労働基準監督署から、36協定を締結していないことなどを理由に、労働基準法違反で是正勧告を受けていたことが分かった。同センターは、心臓病など緊急の救命処置が必要な妊婦を必ず受け入れることを目的に、東京都から指定を受けた3つの「スーパー総合周産期センター」の1つで、今月25日から稼働が始まったところだ。愛育病院が是正勧告を受けたことに続き、全国的にも注目を集めている「スーパーセンター」にも同様の指摘が入ったことで、都の周産期医療体制の維持を危ぶむ声も上がっている。

 同センターは今月13日、36協定を締結していなかったことや職員の休憩時間が短かったこと、昨年10月に研修医の宿直業務について時間外労働時間に対する割増賃金を払っていなかったことの3点について労基署から指摘を受けており、改善を求められていた。同センターはこの指摘について、36協定については職員代表と既に合意できているとして4月中に締結し、休憩時間についても就業規則を改定して対応するとしている。また、研修医の時間外労働時間の割増賃金については4月の給料日に振込みを予定しているという。労基署への改善報告の期日は特に指定されていないが、病院側の対応が整い次第順次報告し、4月半ばには対応を終えるとしている。
 今回の是正勧告については、「『スーパー総合』が始まるのに、労基法を遵守できるような体制が取れるのか」と危惧を示す病院関係者もいるものの、同センターの竹下修管理局長は、「今回の勧告についてはすべて対応できる。(同センターに)医師が多過ぎるということはないが、潤沢に働いていただいていると思うので、『スーパー総合周産期センター』としてやっていくことに、今回の件が影響するとは思わない」と話している。同院の産科医は研修医を含めて24人

昨日も書きました通りこの25日から運用が始まったばかりの東京都ご自慢の「スーパー総合」ですが、早速指定病院の一つがこういう指摘を受けるようではずいぶんとケチがついたなというところでしょうか。
さすがに指定を受ける日赤医療センターだけに産科医24人と絶大なマンパワーを誇ることから今回の指摘にも対応可能ということですが、他の同種施設でこのレベルのスタッフを擁しているところがどれくらいあるのかと言うことですよね。
そして産科に限らずこうして一定の基準が今回大々的に公になってしまった以上、東京だけに限らず全国的な問題として対応を迫られるということになりそうです。

マスコミは未だにセンター返上センター返上と何とかの一つ覚えのように連呼しているばかりですが、単にセンター施設認定の話にとどまらないこうした問題の本質というものを見誤ってはならないと思いますね。
労基署と厚労省、都の見解がそれぞれ異なっているのは興味深いところですが、労基署にはこの際ですから妙に社会的背景などに遠慮したりせず、労働者の保護に関する監督をしっかりと行っていっていただきたいところです。

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コメント

>産科医24人と絶大なマンパワーを誇ることから今回の指摘にも対応可能ということですが

半分くらいが5年目未満の研修医だそうですwww

投稿: 326 | 2009年3月27日 (金) 12時39分

いやいや、今の時代それだけの産科研修医が集まるだけでも十分勝ち組ですよ(苦笑)。
件の病院に関してはこんな便所の落書きも見つけましたが、何やら楽しい未来絵図が描き出されそうな悪寒…

176 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2009/03/27(金) 12:11:27 ID:u59P5bapO
愛育関係者に聞いたんだけど。

病院内で、「このままでは、医療事故が起きかねない。そもそも、労働基準法違反じゃないか」
と、複数医師から抗議が出たらしい。
(その医師達が労基署にたれ込んだのかどうかは、情報無し)

その後、病院側と勤務医側で何度か話し合いがあったらしいよ。

それだけ。


これ以下は推測。
病院経営側が、「労働基準法の問題については解決済み」としたいがために、
都に確認の手続きを取ったのかもね。

177 名前:お増健さん ◆0ZOKENdh0E [] 投稿日:2009/03/27(金) 12:13:00 ID:h2V1c/IH0
>>176
んで労基法違反は無視して良い、と言質を病院側が取ったのならば、
医師の逃散必至じゃんw

178 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2009/03/27(金) 12:18:01 ID:WevKPl6t0
>>177
ですね。

元々は「労働条件を何とかしてくれ」って言ってんのに、
奴隷労働にお墨付きなんか出た日にゃ・・・

投稿: 管理人nobu | 2009年3月28日 (土) 10時28分

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