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2009年3月23日 (月)

岩手県立病院再編問題、ついに無床化決定か?!

岩手県立病院の再編計画を巡って県下自治体から反対の声が続いていたり、県議会が混乱したりしていることは前回にもお伝えした通りですが、その一方で現場の状況もなお一層厳しいものとなってきています。
ただでさえ不足している県立病院のスタッフがさらに減少しているというニュースから紹介してみましょう。

常勤医減員12機関 27の県立病院・診療センター /岩手(2009年3月13日岩手日報)

 常勤医不足が深刻化している県立22病院と5地域診療センターのうち、12医療機関が退職や異動する常勤医の補充がなければ2009年度からの診療への影響を懸念していることが、岩手日報社の調べで分かった。中には病院の要となる内科医が不在に陥りそうな病院もある。県立病院は常勤医の不足で診療科が休診になったり、ほかの病院からの応援診療に依存するケースもあるため、地域の病院や開業医との「病診連携」など、地域一体となった取り組みも必要になりそうだ。

 年度途中での退職も含め常勤医が減るのは10病院、2診療センター。このうち病院は▽異動のため常勤内科医が不在となる山田病院▽2人が退職し常勤内科医が1人になる千厩病院▽20人前後が退職し常勤医の補充見込みが10人程度の中央病院-など。

岩手県の場合広い県土に多数の公立病院が分散配置され地域医療を支えているといういささか特殊な状況がありますが、それだけに公立病院をどうするかという話は県の医療をどうするかという話にも直結してきます。
県下の公立病院全体での医療資源も先細りの一方ですから、当然ながら今まで以上に医療資源を効率よく、無駄なく活用していかなければ県全体の医療が崩壊しかねない状況になってきているわけです。
県立病院再編問題ではともすれば県議会での喧噪や地域住民の無床化反対論といった声の大きな人たちの言葉ばかりが流布されているところもありますが、実際に崩壊が進んでいる医療現場がどういうことになっているのかを直視しなければまともな改革など行えるはずがないですよね。
朝日新聞の連載「地域医療はいま」の第一回からそんな現場の声を拾い上げてみましょう。

地域医療はいま 1 勤務医の激務 /岩手(2009年03月19日朝日新聞)

 「きょうは九戸で泊まりだから」。2月26日午後5時半、県立二戸病院の副院長、佐藤昌之医師(53)はそう断り、二つ目の打ち合わせをキャンセルして慌ただしく会議室を出た。白衣を脱いで自家用車のハンドルを握る。向かった先は九戸地域診療センター。二戸病院から約20キロ、30分間の道のりだ。

    ◇

 二戸病院には佐藤さんを含め4人の産婦人科医がいる。この日は木曜日、佐藤さんは「病棟当番」。午前8時半からの外来診察を1時間ほどで切り上げ、約40人の入院患者を一人で受け持った。

 慌ただしくなったのは、午後から。午後2時半から30分ほどかけて卵巣がんの患者に抗がん剤を注射。直後、切迫早産の患者から「破水したかもしれない」との訴えが飛び込んだ。検査し、「5時半ごろにもう一度チェックして」とカルテにペンを走らせ、看護師に指示を出す。会議まであと25分。出席を促す携帯電話の着信音にせかされながら駆け足で25人を回診した。

    ◇

 県立病院の新しい経営計画で無床化が決まった九戸地域診療センター(19床)。常勤医1人のセンターの夜間当直を支えるのは、佐藤さんら二戸病院からの応援医師たちだ。入院患者の体調急変と夜間の救急外来に備え、副院長や診療科長クラスのベテランが毎夜、交代で泊まり勤務に入る。夜間は医師1人、看護師2人の体制だ。

 「九戸で泊まること自体が大きな負担なわけではない」と佐藤さんは言う。「心配なのは二戸病院。九戸の当直に人を出すことで、全体の負担が増えてしまう

 医師不足がひときわ厳しい産婦人科では、他の診療科に先駆けて08年度から医師の集約化が始まった。県北は、二戸病院の4人に県立久慈病院の1人を加えた5人で、すべてのお産を診る。二戸には、久慈からもリスクの高い妊婦が運ばれてくる。

 急な出産などに対応するため、二戸病院の産婦人科は毎夜、交互に「お産当番」を組む。呼び出しに備え、病院にすぐ駆け付けられる範囲にいる必要がある。九戸で当直応援が入ったこの週、佐藤さんはお産当番から外れ、別の医師が入った。

 副院長でもあるベテランの佐藤さんが盛岡の自宅に帰れるのは月に1、2度だけ。そして若手ほど、勤務状況は厳しくなる。

    ◇

 常勤医30人の二戸病院が一戸、軽米の2病院と九戸地域診療センターに出す診療応援の回数は年800回。県立中央病院(盛岡市)に次いで多く、一人あたりの応援回数は県内最多だ。

 二戸病院の佐藤元昭院長は「医師不足による過剰負担は地域診療センターでなく、基幹病院で起きている」と言う。地域診療センターは人も機材も乏しく、重症の救急患者を受け入れる力はない。九戸村で出動する救急車の9割が、二戸病院に患者を運ぶ。「そのためにも、二戸でしっかりとした受け入れ態勢をつくりたい」と無床化の必要性を訴える。

 副院長の佐藤さんは九戸で当直を終えた金曜日の朝、応援のためにそのまま久慈病院へと向かった。日曜日までの3日間、久慈地域のお産は佐藤さんが責任を負う。働きづめのまま、月曜から再び二戸病院での勤務が待っている。

現場の医師はなにも田舎勤務が嫌だと言っているわけではないことに留意しておく必要があるでしょう。
一方では基幹病院での激務がある現状で、そこから不足している人手を割いて僻地へ応援当直に派遣されているという現状がある。
仕事もないのに馬鹿馬鹿しいとか肉体的にきついとか言う話も当然ありますが、それ以上に基幹病院すらも共倒れになってしまったら患者を送る先が消えてしまう、そうなってしまったら地元に病院があったところでどうしようもないでしょう?ということを言っているわけです。

近くに病院があれば何かあっても安心だとか、遠くに通わされるのは不便だとか、今やそういうレベルの話をしていられるような状況にないということを地域住民も県行政の当事者も理解してもらわないといけない状況に来ているのに県議会は相変わらず迷走しているわけで、いい加減にしてくれという声がここに来て現場から噴出してきているようです。

病院長「現場は限界」 無床化、4月実施訴え /岩手(2009年3月18日岩手日報)

 県立病院の代表病院長会議は17日、盛岡市内で開かれた。県立5地域診療センターの入院ベッドを廃止する無床化を盛り込んだ県医療局の新経営計画が県議会で迷走を続ける中、出席した病院長らは「過酷な勤務を続ける医師の現状を知らなすぎる」と勤務医の叫びを相次いで代弁、計画の4月実施を強く求めた。これまで、どちらかと言えば沈黙を守ってきた現場の医師らがこうした声を上げるのは異例。地域医療の崩壊が進む一方、県議会などで理解が進まない現状に、危機感をあらわにした形だ。

 会議には、広域基幹病院などの9病院長、田村均次医療局長ら約20人が出席。田村局長は「無床化は一刻の猶予もならないことを繰り返し説明してきたが、医師不足の現状は理解されていない。県議会では関連する当初予算案の修正動議も出された。25日の最終本会議まで結論が見えない」と報告した。

無床診療所計画案:「机上の空論」 代表病院長会議で猛反発 /岩手

◇4月から無床化求め

 県立病院・地域診療センターの無床化問題で、県議会予算特別委員会で編成組み替え動議が可決された。しかし、17日に盛岡市内で開かれた代表病院長会議では、昨年から続く地元民や議会の無床化議論に対し、県立病院長から「やり方が拙速だと批判するが、机上の空論だ」などと4月からの無床化を求めて猛反発する声が上がった。

 会議では、田村均次医療局長が予算委員会でのやり取りを説明したうえで、「25日の本会議まで結論は出ない」と話した。

 これに対し、ある病院長は「無床化したら医師の負担ははっきり軽減される」と断言。基幹病院の医師が診療センターへの当直派遣をやりくりする現状を挙げ、「無床化になれば、基幹病院の仕事ができる。現場をあまりにも知らなさ過ぎる」と声を荒らげた。

 別の院長は「医師不足は深刻。ベッドを残しても誰がカバーするか決まっていない。このままでは残っている医者もモチベーションが下がる」と指摘。ほかにも「当直の応援に入る若い医師は、(することがなく)行って寝て帰ってくる。地域のためというモチベーションもないままに何百回と当直している」と訴えた。

ここまでストレートなことを言われれば普通の人間であれば何かしら考えるところもあるだろうと思われるような話ですが、先に無床化を前提にした送迎バスの予算を蹴った県議会でもようやく流れが変わりつつあるようです。
四月まで残すところもあと僅かという状況になってようやくというのは今さらという感じもしますが、決断すべき人間が何一つ決断もしないまま現場により一層頑張ってもらいましょうなんて馬鹿げた話になるよりはよほどマトモではあると思いますね。

県病院無床化 動議可決 /岩手(2009年3月17日読売新聞)

予算特別委 歩みより模索へ

 県議会は16日、予算特別委員会を開き、県立6医療施設の無床化に関する2009年度予算案の集中審議を行った。無床化に反対する政和社民、自民クラブなどは、予算案の一部組み替えを求め、19日までに県側に可否を問う動議を提出し、賛成多数で可決された。

 動議は、無床化の4月実施延期の検討を求める一方、無床化に伴う支援策に関する予算を増額するよう要求。採決では、両会派など26議員が賛成した。

 動議を提出したのは、両会派のほか、共産、公明、無所属の5人。動議で予算増額を求めているのは、〈1〉市町村や住民代表を含めた協議機関の設置〈2〉地域からの提案の再検討と空きスペースの早期活用〈3〉医師の勤務環境の改善――の3点。

 賛成した26議員は、これまで無床化に反対し、今月6日には無床化関連予算案を否決した。だが、今回の動議は、入院ベッドの維持を前提にした予算案の大がかりな修正を求めたものではない。大幅な修正案では、県側が受け入れる可能性が低い上、「2009年度予算案自体の否決は考えていない」(自民県議)ためだ。無床化の延期についても「検討」の文言を添えており、歩み寄りの姿勢を示している

 一方の県側も、この日の審議で、地域医療について住民を交えて話し合う2次医療圏ごとの協議機関を設置する考えを表明するなど、19日の委員会採決に向け、落としどころを模索する動きを見せている。動議について、田村均医療局長は「コメントできない」とだけ述べた。

無床診療所計画案:無床化実施を容認 知事、補正案提出受け--県議会 /岩手(2009年3月20日毎日新聞)

 県立病院・地域診療センターの病床休止(無床化)問題を巡り、県は19日、修正動議で求められていた、地域との協議機関設置費用などを盛り込んだ来年度一般会計補正予算案などを県議会に提出した。予算案提出を受け、野党会派の大半は態度を軟化。同日の予算特別委では、無床化を前提とした来年度の一般会計予算案と県立病院等事業会計予算案が、「政策決定過程が拙速」と指摘する付帯意見を付けて賛成多数で可決された。無床化4月実施は事実上、容認された形だ。

 ◇「大局的判断で」賛成議員

 無床化対策を計上した来年度一般会計予算案などの見直しを求める動議を予算特別委が16日に可決、達増拓也知事の対応が注目されていた。補正予算案は23日からの常任委員会で審議する。

 19日提出された一般会計補正予算案では、地域医療に関する懇談会運営費の598万円など計約908万円を計上。県立病院等事業会計補正予算案は、無床化後の空きスペースを活用策を公募する約310万円を盛り込んだ。勤務医の退職防止を図る労働環境の整備や医師と協議し、追って補正予算などで対策を進めるとした。

 19日の予算特別委に出席した達増知事は「医師不足が危機的状況で、医療体制の崩壊を招きかねない」と従来通り理解を求めた。

 動議に賛成した自民クラブの千葉伝代表は「知事の回答で地域との協議や医師の勤務環境改善などが担保された」と説明。政和・社民クの田村誠代表は「一刻の猶予もない事業会計であり、大局的判断で賛成せざるを得なかった」と述べた。一方、民主・県民会議の佐々木順一代表は「可決され、勤務医の離職を防ぎ、県立病院の体制が守られる」と歓迎した。

 無床化問題を巡っては、4月実施の「凍結」を求めてきた県議も「予算案の否決は混乱を招くだけ」などと、態度を軟化。第1会派の民主・県民会議を除く野党4会派と無所属の5議員が提出した動議では「無床化の延期を検討」を求めるよう表現を抑えていた。

 動議では、(1)協議機関設置(2)無床化後の空きスペースを活用する医療・福祉関係者の公募(3)勤務医の退職防止--を進めるため関連予算を増額、来年度の一般会計予算案や県立病院等事業会計予算案を見直すよう求めていた。

来月無床化確実 県議会特別委新年度予算案を可決 /岩手(2009年3月20日読売新聞)

 県議会予算特別委員会は19日、県立6医療施設の入院ベッド廃止を前提にした新年度一般会計及び県立病院等事業会計の新年度予算案を賛成多数で可決した。これにより、沼宮内病院を除く5地域診療センターの入院ベッドは4月から廃止されることが確実になった。採決では、斉藤信議員(共産)が反対したほかは全員が賛成した。新年度予算案は25日の本会議で採決され、可決される見通し。
(略)

■住民へ配慮欠く

昨年11月の計画案公表以来、論争を巻き起こしてきた無床化問題は、県の計画通りに実施されることがほぼ決まった

 この問題を巡っては、地元住民との間でも、県議会でも、終始、激しい対立が続いた。その最大の要因となったのが、県側の初動対応のまずさにあった。計画案公表から実施までの期間があまりに短かったことに加え、県内の医師不足が危機的な状況にあることを強調するあまり、地元住民への配慮を欠いていたと言わざるを得ない。もっと早く、丁寧に説明していれば、展開は違っていただろう。

 一方、自民、政和社民両クラブなど野党側は当初、無床化計画の「撤回」を主張したが、その後、「凍結」、「延期の検討」へと態度を軟化させていった。県側が無床化を前提にした人事を公表するなど、既成事実を積み上げていくのに対し、野党側は病院の運営自体をマヒさせかねない新年度予算案を否決することはできず、押し切られた形だ。

 県民の生活に直接かかわる深刻な問題だけに、県側には今後、今回の教訓を踏まえた対応を期待したい。

県側の対応にも幾らでも突っ込み所はあるんだと思いますが、それ以前に現場が危機的な状況に追い込まれていることは昨日今日の話でもないのに関係者一同が今まで知らぬ存ぜぬという態度で無視を決め込んでいたことや、そうした状況を知った後も何ら県民への啓蒙に努めるでもなく県批判に終始した自称社会の木鐸が存在していたことなどもそれ以上に批判されるべきだと思いますけれどもね。
社会の木鐸と言えばこういう記事とも言えぬ独語が片隅にひっそりと掲載されていました。

散歩みち:「岩手」に鼓舞された私 /岩手(2009年3月22日毎日新聞)

 「県議会が早朝4時半まで続いたので、そのまま神子田の朝市に行ってラーメンを食べた」。県外の知人に何気なく話したところ、絶句された。「県議会が朝まで続く? あり得ない」

 県立病院・地域診療センターの無床化問題で、6日に始まった議会は日付をまたいで約15時間に及んだ。他県の常識では理解し難いかもしれない。「岩手県議会の無床化問題に対する真摯(しんし)な姿勢を見れば大いにあり得る話だ」と返しつつ、内心その岩手に住んでいる自分が誇らしかった。

朝まで議論する岩手県議会の真摯な姿勢を誇るのも結構ですが、日常的にそれ以上の激務を行い長年にわたって県の医療を支えてきた声なき医療従事者に対してもほんの少しでも敬意を払っていたなら、あるいは今のような状況はなかったのかも知れませんよね。
岩手県の医療が最終的にどうなっていくのかはもう少し経過を見ていかなければならないと思いますが、現場で身を削りながら頑張っている人間に対して報いない社会は結局のところ現場から支持されなくなっていくだろうということだけは確かなんだと思います。

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コメント

無床化は決定しましたが、それからぱったりと地域医療の記事が途絶えた岩手日報をみて…悲しくなりました。

以前マイクロバスの予算案の議論が延期されたことは管理人様もご存じだと思いますが、マイクロバスを運行する予算案が否決されました。

現場のスタッフを見ると無床化実施という結果でよかったと思っていますが、地域の方からは「完全に見捨てられた」との声が聞こえてきます。

投稿: みや | 2009年3月24日 (火) 23時51分

医療の需給不均衡是正のためには需要の切り下げすなわち要求水準の低下が必須であると思っていますが、同時に見捨てない為の方策というものを探っていくことが今後の県政の課題ではあるのでしょうね。

投稿: 管理人nobu | 2009年3月25日 (水) 10時23分

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