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2009年3月17日 (火)

産科医療補償制度 ますます問題は山積している?

いよいよ今年から産科医療補償制度が始まり、未だ限定的ながら無過失補償制度への道筋をつけることになるかなと注目しています。
一般マスメディアの注目もそれなりに集まっているようですが、まずはテレビ報道分から引用してみましょう。

特集/「医師不足解消につながるか?産科医療補償制度」(2009年3月12日放送ニューススーパーアンカー)

全国的に進む深刻な産科医不足。その原因は、過酷な勤務に加えて、訴訟リスクの高さだと言われています。その対策として、ことしから「産科医療補償制度」という制度がスタートしました。
新しい制度はお産の現場の立て直しにつながるのでしょうか?

東京都内に住む、鹿野詩乃ちゃん(6)。出産の際の医療事故で、重い脳性まひの障害が残りました。
「ミルク飲む?ミルク飲む人?」(母・乃里子さん)
頻繁に吸引が必要で、自力で食事を取ることもできません。入退院を繰り返す日々の中で、少しずつ成長してきました。
「くじけそうになる時もあったんですけど、こんなに小さい娘が一生懸命頑張っているのに、落ち込んでばかりもいられないなと思って」(母・乃里子さん)
詩乃ちゃんのような子どもを手助けするため、ことしから始まった新しい制度があります。

「1月1日以降、ことしから始まったんです。赤ちゃんが脳性まひになったら補償金がおりますよという制度なんで。この制度ご存知でした?」(助産師)
「全然知らないです」(妊婦さん)
産科医療補償制度。こどもが重い脳性まひと診断された場合、3000万円の補償金が支払われる制度です。1人3万円の掛け金は病院を通じて集められます。これにともなって、妊婦個人の負担が増えないよう、出産育児一時金が増額されています。
「生まれたときは多分頭が真っ白になって、どうしたらいいか分からないと思うので、補償していただけるのであればそれが一番ありがたいと思います」(妊婦さん)
「以前、医療事務をしてたので、産科がいま大変だということはすごくわかっていたので、こういう制度ができたことは産むほうもいいと思うし、先生方もいいんじゃないかなと」(妊婦さん)

制度を運営するのは、厚生労働省の外郭団体である「日本医療機能評価機構」。大学の医師でもある後技監は、いち早く制度を設立するため、準備に追われてきました。
「こういう制度をとにかく始めて、そして見直しながらもいいものとして定着させて、医療に対する信頼が再び大きなものになっていくように」(日本医療機能評価機構・後信技監)

なぜ産科だけを対象に、制度の設立を急いだのか――?
お医者さんたちが仕事に専念できるように、極端に言ったら訴訟リスクをゼロにする。特に産科のお医者さん、訴訟という事を考えるのが嫌だから辞めるのはやめてください」(舛添要一厚労相・去年1月)
産婦人科は、他の科に比べて訴訟を起こされる割合が高く、産科医の不足につながっているとされています。この制度の特徴は、医師に過失がなくても、補償が行なわれる点。そうすることで、患者側は早い段階で補償を受けられ、医師の訴訟リスクも減るというのです。
「過失の有無というのがですね、法律上の判断がとても難しい領域だけれども、どうしても一定の割合で起きてしまう、避けられないというようなことがあって、医療者も患者さん側も紛争で時間も気持ちもすり減らして疲れていくような領域には適用するのがいい制度じゃないか」(日本医療機能評価機構・後信技監)

しかし、脳性まひの子ども全員が救済されるわけではありません。未熟児や先天性の障害は対象から外れているのです。対象となる子どもは年間500~800人と試算されていて、必要に応じて対象範囲の見直しも行なうとしています。
今回の産科医療補償制度というのは、非常に限定的で狭いし、対象も限られているという点で、たくさんの限界はあると思います。限界はあるかもしれないんですが、そういう制度は今までどこにもなかった。この国の中ではどこにもなかったものを新しく、何とか上手く作って、それを育てていけないか」(制度設計に携わった北里大・海野信也教授)

この制度で、本当に医療裁判は減るのでしょうか?
出産の日に何が起きたのか知りたいと思った鹿野さん夫婦は、子育てに追われるなか、裁判の道を選ぶしかありませんでした。
「結果が悪かったから病院にどうこうと言ってるんじゃなくて、何が起きてこういう事になったのかちゃんと知りたかったというのが一番」(鹿野乃里子さん)
病院側は監視義務を怠ったことを認め、和解が成立しました。しかし、使われた薬などについては争点とならず、真相は分からないままです。

医療裁判の限界に直面した鹿野さんの元を、ある女性が訪れました。新葛飾病院の職員・豊田郁子さん。6年前に医療事故で長男を亡くした豊田さんは、自ら患者と医師の架け橋になろうと、病院の患者支援室で働いています。
「看護師さんは来るんですけど、薬を置きにくるだけで、お腹をさすって様子を診たりとか内診や検査とかもなかった」(鹿野さん)
「様子を見にきたけど…」(豊田さん)
「お薬置いていくだけ、次の薬ですみたいな感じで」「5個目を投与しようと思って看護師が来たときに私の異常に気付いて」(鹿野さん)

医療裁判の限界を乗り越えたい――
その思いから豊田さんは、産科医療補償制度の委員を引き受けました。担当するのは「原因の分析」。補償対象となるケースについて、医療事故の原因を分析し、再発防止に向けてフィードバックしようという仕組みです。第三者の医師や看護師、弁護士などで構成された委員会に、豊田さんは患者を代表する立場として選ばれたのです。
「患者さんが知りたいところにちゃんと言及されているかとかですね、わかりやすいものであるかとかですね。普段の病院での経験も生かしたご意見をいただければと思っております」(日本医療機能評価機構・後信技監)
「お子さんを育てながら裁判を起こすというのは、私には想像できないくらいすごい心労だと思います。患者の意見を取り入れられるような体制であれば、いつの日か患者さんにとって良い仕組みではないかと評価できる日が来るんじゃないかなと思いますけど」(豊田郁子さん)

大きな課題を背負ってスタートした、産科医療補償制度。産科医療の危機に歯止めをかけられるのか――
日本初の試みが実を結ぶかどうかは、これからの運営にかかっています。

産科医療補償制度については以前にも取り上げてきた経緯がありますが、今のところこの制度で救済される脳性麻痺はせいぜい半分くらいなんじゃないかとも予想されます。
この点でテレビの報道というのはこういうものだとは思いますが、実際に現場で「赤ちゃんが脳性まひになったら補償金がおりますよという制度なんで」なんて説明をしているんだとしたら後々大きなトラブルの元になりそうな話ではありますけれどね。
舛添大臣も「お医者さんたちが仕事に専念できるように、極端に言ったら訴訟リスクをゼロにする」などと景気の良いことを言っていますが、そうであるなら何故こうまで極端に対象を限定した制度でスタートするなんて話になったのかという疑問も残るところではあります。

そもそも補償対象外となるだろう患者家族の感情や現場での説明の混乱、あるいは認定手続き等の手間を考えても、多少保険料を上げてでも脳性麻痺と診断がついたら一律幾らというシンプルな制度にしておいた方がよほど話は簡単だろうにと誰しも思うのではないでしょうか?
ちなみにこの制度を運用するのが、かねて病院機能評価などでも悪名高い厚労省の天下り団体であるところの「日本医療機能評価機構」であるというのも胡散臭いところですよね。
まさか余計な手間暇をわざとかけさせるような面倒くさい制度設計にすることでマンパワーが必要なことをアピールし、新たな天下り先利権でも狙っているのかなどと邪推してしまうような妙な制度ですが、どうもあながちそんな邪推も間違いじゃないのかなと思わされるような話も漏れ聞こえてくるから露骨すぎて呆れてしまいます。

情報収集、「内容の整理を」―産科補償制度(2009年3月16日CBニュース)

 分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児を対象とした「産科医療補償制度」で、脳性麻痺発症の原因分析などを行う日本医療機能評価機構の「産科医療補償制度原因分析委員会」は3月16日、分娩機関や保護者からの情報収集などについて意見交換した。この中で、分娩機関からの情報収集について委員から「出産から補償の申請まで、半年や1年たっている場合、その時の勤務医の状況など、およそ分からない話」などとして、収集する情報内容の整理を求める声が上がった。

 同制度で脳性麻痺児の分娩を扱った医療機関が同委員会に提出する書類には、病院の病床数や設置主体、医療安全体制などの診療体制や、事例に立ち会った医療従事者の当直日数、オンコール日数などについて記載を求める
 一方、脳性麻痺児の保護者からの情報収集に使用する意見書では、妊娠から出産後に退院するまでの間に、実施された検査や処置、それらに関して受けた説明などについて記載してもらう。

 分娩機関からの提出書類について、委員からは「何を目的にした書類なのか、よく分からない。出産から補償の申請まで、半年や1年がたっている場合、当時の勤務医の状況など、およそ分からない話。もっと整理した方がいいのではないか」との声が上がった。

 また、保護者からの意見書に対しては、「カルテや母子手帳など、情報がないと記憶をたどるのは難しい。分娩機関から得た情報を家族に渡して、それを基に書いてもらうことなどを検討してほしい」「会話から初めて出てくる情報はたくさんある。丁寧な聞き取りは、(同委員会の)報告書が出た際の保護者の納得への道にもつながるので、聞き取りの仕組みや体制づくりも検討してほしい」などの意見が出た。

 同委員会の部会が、分娩機関から提出された診療録などや、脳性麻痺児の保護者からの情報に基づいて医学的観点から検証・分析を行い、原因分析報告書を作成。その後、同委員会で報告書の承認の可否を決定する。報告書は、保護者と分娩機関に提出するとともに、一般にも情報公開する。

初期の段階での脳性麻痺の診断というのはなかなかに難しいということもあってか産科補償制度に補償を請求できるのは出生後1~5年後と定められていますが、これも現場での運用を考えてみるとなかなか難しいことになりそうだなとは予想できるところですよね。
後々の検討のために情報を集めておきたいから何でも記録しておいてくれというなら補償と別件で集めればいいわけで、うちの子は脳性麻痺だとパニクっているだろう家族にこういう事細かな尋問まがいの行為をしなければ申請も出来ないということであれば、ただでさえ微妙な関係に陥りつつあるだろう患者-医療関係がどういうことになるか。
舛添大臣の言う「訴訟リスクをゼロにする」ために一番大事なのは患者-医療関係がこじれきってしまう前に補償するからこそ意味があるのであって、さんざん待たされた挙げ句では補償が出た場合でもどうかと思われるのに、まして「残念ですがお宅のお子さんは認定されませんでした」ともなればどういうことになるのか想像するのも恐ろしいことです。

だからこういう馬鹿馬鹿しいことに余計な手間暇をかけてわざわざトラブルのネタを仕込むくらいなら、最初から全例補償を大原則にしておいた方がよほど話が早いだろと言いたくなってくるわけです。
コスト的な面でも民間保険会社のために十分な儲けを確保すべくたっぷりマージンは取ってあるわけですから、高く見積もっても今の3万が5万くらいですむんじゃないかと考えれば、少子化対策の一環とでもして十分にお金を出す名目は立つレベルなんじゃないでしょうか。
実際の訴訟件数が増えるのか減るのかは今後数年を経てみないと判りませんが、制度設計を見る限りでも現場ではますますややこしいことになりそうだなとは容易に想像できる話ですし、しかもその苦労が厚労省の天下り利権のための苦労だとすれば産科医の逃散に歯止めがかかるなどと考える方がどうかしているんじゃないかと思えてなりません。

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