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2009年3月 2日 (月)

年度末に大騒ぎしているのはどこの業界も同じこと?

世の中相変わらず不景気だ不景気だと大騒ぎですが、年度末で収支が明らかになってくるとさらにヤバいことになるのではないかと囁かれているところも少なからずあるとか。
一方であまり景気の善し悪しに左右されなさそうな(万年不景気という話はさておき)医療業界ですが、こちらも年度末に色々なものが噴出してあちこち大変なことになっているようです。
まずは最近よくある医師集団離職の話題から二つばかり。

明石市民病院 消化器系の入院休止へ 医師大量退職で/兵庫(2009年2月26日神戸新聞)

 明石市立市民病院(鷹匠町)は二十六日、消化器科の医師十一人のうち八人が三月末までに退職すると発表した。医師不足のため後任医師が確保できず、病院は三月以降、消化器系の入院、救急患者の受け入れを休止。新しい外来患者の受け入れを見合わせるなど、診療体制を大幅に縮小する。

 病院によると、消化器科の吉田俊一部長(59)が三月から市内の民間病院院長に就くため、部下に当たる女性医長とともに二月末で退職。さらに研修医三人を含む医師六人が三月末で退職する。吉田部長は同科唯一の消化器系指導医で、技術指導を受ける立場の研修医らが退職する結果になったという。

 消化器科は食道、胃、腸などの消化管などが専門。外来患者は二〇〇七年度で延べ約二万六千人、入院患者は同約千五百人に上り、市内の消化器系医療の基幹病院だった。

 四月以降は、残る医師三人体制で現在通院中の外来患者を診察する方針で、治療内容によってはほかの病院を紹介する。

 同病院事務局は「慰留に努めたが残念。患者や市民には迷惑をかけて申し訳ない」としている。

<焼津市立総合病院>来月末で内科医9人退職 診療体制を縮小 /静岡 (2009年2月28日毎日jp)

 焼津市立総合病院(同市道原、太田信隆院長)は27日、3月末までに呼吸器科など内科4科の医師計9人が退職するため、4月から内科全6科の診療を大幅に縮小することを決めた。

 6科の外来診療は継続するが、原則として紹介状のある患者の診察のみ行う。同病院は「地域の基幹病院として、重症患者や専門的治療が必要な患者への対応に専念するため。利用者にはご理解いただきたい」と話している。

 同病院によると、退職する医師は、代謝内分泌科=4人中3人▽呼吸器科=4人中3人▽消化器科=6人中2人▽神経内科=3人中1人。派遣元大学の引き揚げなどによるもので、特に、代謝内分泌、呼吸器課は4月以降医師が1人になる。今夏には、総合診療内科の医師4人中数人も退職する予定だ。

 この体制では従来通りの一般外来診療はできないため、腎臓内科(医師1人)を含む内科全6科の診療体制を4月から変更する。医師が1~2人の科は、週数回の診療とする。

 志太・榛原地域では、榛原総合病院(牧之原市)の循環器科が4月から非常勤医師による週3日の外来診療になるなど、医師不足が深刻になっている。

最近ほんとにこういうまとめて離職というパターンが多いですよね。
病院の管理当局に「医師減員=仕事の総量を減らす」という感覚がない以上、一人欠けるだけでも今まで以上の過重労働を強いられるのは確定ですから我も我もと一緒に立ち去ることになるのでしょうが、そう考えると元々この手の医療機関の勤務状況というのもあまり好ましいものでもなさそうです。
既存医療機関からの集団離職はもとより、新規開院の病院ももちろん人集めには苦労していますが、こちらの方はこのご時世にハコモノなどという先の見通しの甘い公的病院のことですから、あまり同情の余地はないと言いますか…

北秋田市民病院 医師不足 常勤医半数のみ 全科一斉開業は絶望的/秋田(2009年2月27日読売新聞)

 2009年10月1日の開業に向け建設が進む北秋田市の北秋田市民病院が、医師不足の影響で、開業時に必要としていた31人の常勤医のうち半数しか確保できていないことがわかった。今後、新たに医師を確保できる見込みは低く、全診療科の一斉開業はほぼ絶望的だ。総事業費約91億円をかけた拠点病院はオープン時からつまずくことになる。

 岸部陞(すすむ)市長は26日の市議会定例会で、議員からの一般質問に対し、秋田大や弘前大(青森県弘前市)、都内の病院などに医師を派遣してもらうよう依頼に出向いたが、「条件が合わない」などの理由で医師確保が思うように進んでいない状況を説明した。議員が「構想を再度見直しては」と質問すると、4月に退任を決めている岸部市長は「新しい市長がもう一度考えるのではないか」と答えた

 市民病院は、県内を8医療圏に区分した二次医療圏の中で拠点病院がなかった北秋田医療圏(北秋田市、上小阿仁村)の拠点病院として整備することを岸部市長が公約に掲げていた。
 病院の運営は、指定管理者に決まっているJA秋田厚生連が担い、現在、北秋田市で経営している北秋中央病院を廃止し、医師らスタッフを市民病院に移す
 市医療推進課によると、確保できる医師は、北秋中央病院に勤務する15人しかめどが立っていないという。赤石利法課長は「診療科によっては、医師が集まり次第、順次開業するかたちになるだろう」と話している。

 市民病院は地上4階、地下1階、延べ床面積約2万5000平方メートル、320床。21の診療科を設け、地域がん診療拠点病院や地域救命救急センターとなる計画だ。
 しかし、医師が集まらなければ、こうした高度医療を担う中核病院の機能が果たせなくなる。大学卒業後の研修医を受け入れる臨床研修病院の指定も目指していたが、指導環境も整えられず、若手医師を確保できる見込みも立たない

 北秋中央を含め県内で9病院を経営する厚生連の関係者は「ほかの厚生連病院も医師が足りず困っている。新しくて立派な病院だが、医師不足の病院では、医師一人の負担が大きくなり、今後も敬遠されてしまうだろう」と打ち明ける。

「新しい市長がもう一度考えるのではないか」は傑作でしたが、スタッフも集められないくせにとりあえず大きな新病院だけ作ってしまおうという感覚がよく判らないですね。
91億円という小さくない額が動く土建プロジェクトですから、やはりこういう大きなハコモノともなりますと、地方では色々と関連産業に潤いもあるということなんでしょうかね。

ちなみに320床で91億円と言いますと単純計算で一床あたり建設費が約2850万円、民間病院の平均額は1600万円くらいと言われていますから、これもずいぶんと高い買い物についた計算です。
一応当局を擁護するならこの種の高度医療機関ほど建設費が割高になるのは仕方がないところではあるんですが、まともに稼働できないのであれば丸々無駄になるのですから見通しが甘すぎると非難されても仕方ないところですね。
しかし母胎となる北秋中央病院は199床でスタッフそのまま病床数1.6倍になるとすれば、人手不足で今まで以上に過酷な労働を強いられるだろう医師達がまたぞろ集団離職しかねない勢いですかね…

民間病院の過半数「運転資金が不足」 153病院回答(2009年2月28日朝日新聞)

 民間の病院団体が加盟病院を対象に実施した緊急の経営状況調査で、54%の病院が運転資金は不足していると回答したことがわかった。日本病院会などは「経済状況の悪化が悪影響を及ぼしている」として国に対策を求めている。

 同会が全日本病院協会、東京都病院協会と合同で1月に調べた。対象とした全国670病院のうち153病院から回答を得た。

 運転資金に関する質問では、「大幅に不足」が18%、「不足気味」が36%だった。不足と答えた病院に運転資金の使途を尋ねたところ、人件費が半分を占めていた。「新規借り入れが難しくなっている」と答えたのは48%。63%が資金繰りに苦しんだ経験があった。ただ、患者数は1年前とほぼ同じだった。

 東京都に限ると、62%が運転資金の不足を訴えた。都病院協会の河北博文会長は「診療報酬が全国一律なのに対し、東京は人件費などが高額で経営を圧迫する。地域医療に悪影響を与えかねない」としている。

統計の取り方にもよりますが、最近の記事によれば民間病院の1/3、東京に限っては半数が赤字と言いますから、医療機関を取り巻く経営環境がますます悪化していることは確かでしょう。
政府与党も医療費抑制政策を継続することは確定的ということですから今後もこうした状況が改善する見込みは乏しい、そしてどこも人手不足でスタッフは過重労働にあえいで逃散が相次いでいる、どこかおかしいという気がしてきませんか。

民間企業があちこち倒産する騒ぎになっていますが、公的機関でもない私企業が「地域に悪影響を与えかねないから」と身銭を切って操業を続けるなんてことはあまりないわけで、医療機関だけが妙な使命感に駆られて余計な苦労を背負い込むこともないという考えもあります。
各地でこれだけ医療スタッフが不足していると人集めに躍起になっているのですから、職場が破綻しようが(少なくともまともな)スタッフは再就職先探しにも苦労するようには思えませんから、従業員に対する責任という点でも大きな問題がありそうにもない。
となれば経営が苦しい医療機関は無理のない規模に経営縮小するか素直に廃業いただいて、その分の浮いたマンパワーをやる気と医療需要はあっても人手が足りない病院に回すのが妥当…これこそ厚労省の画策している病院再編・医師再配置計画そのものですよね。

今や事態がまさしくお上の狙ったとおりの道程をたどっているわけですから今さら下々がジタバタしても仕方がないと言う考え方も十分ありだと思うのですが、長くなりましたので次回に続けることにしましょう。

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コメント

昨年2月27日の毎日新聞では、こんな記事がありました。

>新病院は市が建設し、県内で九つの厚生連病院を運営しノウハウがある県JA厚生連に経営委託する公設民営方式を予定。計画では320床に診療科目が21科、医師を31人と見込む。産科や小児科を中心に医師確保が困難な状況は変わらないが、岸部管理者は「最新の医療施設を完備すれば医師は集まる」と自信を見せる。

このご時勢にこんな甘い見通しだったわけですから、この管理者殿の知性を疑ってしまいます。それとも、タブロイド紙の勝手な編集でしょうか?

投稿: とおりすがり | 2009年3月 2日 (月) 15時26分

焼津ですが、ウェブサイトの
速報:
焼津市立総合病院のインフルエンザ検出状況を掲載しました(3/1現在)「インフルエンザB型が優性になってきました
1/19血液浄化療法室をリニューアルオープンしました
最新鋭「結石破砕装置(ESWL)」を導入しました
と院長のお膝元である泌尿器科はそれなりに注力されていますね(ここの透析は腎臓内科でなく泌尿器がやっているようです)

投稿: * | 2009年3月 2日 (月) 16時18分

「最新の医療施設を完備すれば医師は集まる」は良かったですね(苦笑)。
医師不足の全国末端医療機関はひたすら借金をしてでも病院新築しまくっていれば医者が集まってくるってことですか。
誰か儲けになる人間がこういうこと言って煽ってるんですかね。

投稿: 管理人nobu | 2009年3月 3日 (火) 12時16分

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