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2009年2月14日 (土)

「救急?喜んでやります!」という医者はダイヤモンドより貴重かも?

最近では救急関連でも搬送遅れだのたらい回しだのといった話題は珍しくもなくなったのかひと頃ほど報道されることがなくなりましたが、相変わらず現場の状況は改善には程遠いのも確かです。
奈良県と言えばかの有名な大淀病院事件であったり、あるいは妊婦たらい回し事件であったりとひと頃産科救急ですっかり話題になった県ですが、こうした事件の影響もあって救急搬送をどげんかせんといかんとばかり、全国に先駆けて医師コーディネーターなるシステムを導入したことで知られています。
救急隊が搬送先を見つけられないなら医師に探させろと言う意味不明…もとい、素晴らしく実効性が期待できそうな斜め上なアイデアだったのですが、全国に先駆けて突っ走った結果全国に先駆けて思いっきりコケてしまったと言う予想通りのニュースがこちらです。

県コーディネーター制度廃止/奈良(2009年2月12日NHKオンライン)

救急車を呼んだ妊婦が12の病院に受け入れを断られた問題を受け、奈良県が導入していた救急隊などに代わって専門家が妊婦の受け入れ先を探すコーディネーターの制度は、コーディネーターをつとめる医師がいないなどの理由でほとんど利用されないため、3月で廃止されることになりました。
奈良県では、救急車を呼んだ妊娠中の女性が12の病院に次々に受け入れを断られた問題をきっかけに、救急隊や医療機関に代わって医師や看護師など周産期医療の専門家が搬送先の病院を探す「コーディネーター」の制度をおととし11月から導入しています。

しかし、コーディネーターに応募する医師がいないことや制度の運用が土曜と日曜に限られているため、救急隊や産婦人科の医師によるこの制度の利用率は去年1年間で重症の妊婦の救急搬送の3%にとどまっているということです。

しかもコーディネーター役の医師を新たに確保できるメドはまったく立たないということで、この制度を3月末で廃止することを決めました。

コーディネーターの制度は大阪府などで導入されていますが、奈良県によりますと、制度の廃止は全国で初めてではないかということです。

奈良県は「コーディネーター制度をはじめるにあたり、医師不足からうまくいかないという指摘を受けていたが、救急車を呼んだ妊婦が病院に断られるケースが相次ぎ、県として何かせざるをえなかった。新たな仕組みを早急に検討したい。」としています。

ひと頃「救急受け入れ問題FAQ」なんてものが話題になってよく出来ているなと感心したものですが、救急受け入れが何故こうまで難航するかと言えば根本的に医療のリソース不足がある、そして何より救急を受け入れることが医療現場にとってはデメリットしか存在しないという現状があるからです。
救急などやればやるだけ赤字、まして今の時代は訴訟リスクもある、そして救急を担当する現場スタッフはますます疲弊し最終的には逃散すら招きかねないず、実際今どき「救急やってます」なんて看板を掲げているだけで当直バイト医の集まりも違うというくらいですからね。
近ごろでは消防庁が中心になっていかに病院に患者を置いてくるかを検討していると言いますが、こうした根本的要因を放置したままの議論は単なる「ババ抜きのババをいかにして引かせるか」という詐術に終始してしまう恐れが極めて濃厚であるように思いますね。

国がいかにも実効性に乏しいと予想されるコーディネーター制度なるものを全国的に広げようとする意味もよく判りませんが、意味不明の指示によって右往左往させられる現場こそ良い面の皮というものです。
奈良のお隣京都の消防局では近ごろこんなことを言いだしているようですが、この場合の「有益な情報」って一体何の目的に対して有益な情報と言う意味なのか様々な想像が広がる話ではありますよね。

救急搬送され死亡、遺族に情報公開へ 京都市消防局 4月から(2009年2月14日京都新聞)

 京都市消防局は、救急搬送された人が死亡した場合、搬送状況や病院に到着するまでの時間などの記録を4月から、遺族に対して公開する。遺族が、故人の死亡時の状況に心を寄せることができるのに加え、社会問題になっている「たらい回し搬送」の有無を確認できることになる。

 市消防局によると、これまでは個人情報保護条例が開示対象を本人のみとしていたため、遺族が情報公開請求などで故人の搬送状況を知りたくても、詳しい内容は提供できなかったという。今回、故人の配偶者か第二親等までの血族(法定代理人も含む)に限り同条例の目的外使用とすることで、市個人情報保護審議会で了承された。

 遺族に公開されるのは、「救急活動記録書」に記載されている事故の概要や原因▽病名や搬送時の状況▽応急処置の有無▽搬送先の病院の紹介状況や病院に搬送された時間-など。
 市消防局は「故人の最後の様子を知ることができるため、遺族にとっては有益な情報を提供でき、しっかりとした説明責任も果たすことができるようになる」としている。

その昔は「百姓は生かさず殺さず」なんてことを標榜していた為政者もあったと聞きますが、あまりぎりぎりまで絞り過ぎると丈夫な雑巾ですらボロボロにちぎれて用を為さなくなるリスクと言うものを当局も少しは考えてみた方がよいかも知れません。
しかし医療行政で一番偉いはずの厚相が「インセンティブがないと人は動かないよ」と言っているのに、どこの誰がその真反対の医療行政を実施し続けようとしているのでしょうか。
一見迷走して見える医療行政の背後にも、姿の見えない司令塔役が存在しているような気がする近ごろですが…

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県立延岡病院:医師確保求め、街頭で署名活動−−延岡JC /宮崎(毎日) 3月末までに6人の医師が辞め、腎臓内科と神経内科の休診が見込まれる県立延岡病院の医師確保を求め、延岡JC(平林宏一理事長、74人)がこのほど、延岡市旭町のジャスコ延岡ニューシティー店前で署名活動をした。「救急医療を担う県立延岡病院はパンク状態です。安易な夜間・休日受診は控えましょう」と買い物客に訴えた。  同JCは、県北の民間団体などで作る「地域医療を守る県北ネットワークの会」の構成メンバー。  現在、同ネットワー... [続きを読む]

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