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2009年2月 6日 (金)

時間外の番人

昨日もお伝えした「大学教授が逃散してしまった」鳥大救急の件ですが、また別ソースで一件紹介します。

救急科専門医、全員退職へ 鳥大病院救急センター(2009年02月05日日本海新聞)

 鳥取大学医学部付属病院(鳥取県米子市西町、豊島良太院長)は四日、救命救急センターの八木啓一センター長(54)ら救急科専門医四人全員が三月末で退職すると発表した。八木センター長は人員体制や設備の不備などを挙げて「救急に夢が持てなくなった」と理由を説明。同病院は四月以降のセンターの運営に支障が出ないよう後任の医師の確保を急いでいる。
退職理由を語る八木センター長(右)と豊島院長=4日、米子市西町の鳥取大学医学部付属病院

 退職するのは、センター開設時からセンター長を務める八木教授と准教授ら四人。センターは現在、他診療科の常勤医師三人の応援を得て運営している。

 八木教授は退職理由について「魅力ある救急ができていない現状では、若い医師を引き止められない。夢が持てなくなった」と語り、「スタッフと設備の充実度は二、三十点。理想を言えば二十人くらいほしい」と指摘した。

 さらに「救急医を時間外の番人としか思っていない人がたくさんいる。プライドを踏みにじられるような状況が続いてきた」と悔しさをにじませた。

夢やプライドでもないとやっていけない職場なんだなと取るか、夢やプライドを追いながら仕事が出来る分まだまだこいつら恵まれてるなと取るかは人それぞれだと思いますが、客観的にスタッフ4人+応援3人で救急センターを維持するのはなかなかきついんだろうなとは思いますね。
鳥取でもそうですが、最近地方ではドクターヘリ運用と言うのがちょっとしたブームになって来ているようで、あちらこちらで導入のニュースが流れています。
スタッフ数人を何時間か拘束して一人の尊い命をお救いするというのも一つの大切な医療でしょうし、そのマンパワーがあればもっと簡単に大勢の命を救えたかも知れないと考えてしまうのは貧乏性と言うべきことなのかも知れませんけれどね(苦笑)。
いずれにせよ二兎を追うような余裕が医療現場にはないだけに限られた医療リソースでどこを優先し何を死守すべきか、そろそろ当事者である国民自身が本気で考えていかなければならないはずなんですが、未だにこんな感じの認識ってのが正直なところなのかも知れません。

日本の小児死亡率「ワースト3」 「問題が知られていない」(2009年2月5日テレビウォッチ)

重傷の子供をどこでも、いつでも、素早く治療できる体制が整っているかというと実はそうでないという。

   PICU(小児集中治療室)があるのは全国で18か所、その中で24時間専門医が常駐し対応できるのはわずか4~5か所というお寒い体制だという。
   そんな中で番組は、昨2008年末から年始にかけて、24時間PICUで対応できる『静岡県立こども病院』(静岡市)を密着取材した。題して「命の瀬戸際にいる子供たちの最後の砦」。
   同病院のPICUは専門に14人と看護師30人。ドクターヘリなどで県内全域から送られてくる患者を24時間いつでも受け入れ、治療にあたっている。
   指揮をとるのは、アメリカPICUで4年間小児治療をマスターしてきた植田育也センター長(41)。

   元旦午前4時、脳内出血の女児が送られてきた。さっそく検査した結果、腫瘍らしいものが内側から脳を圧迫しているのを発見。緊急手術したところ直径5センチの血の塊(血腫)があり、頭痛や意識障害を起こしていることが分かった。長時間の手術が終わった時は日付が変わっていた。

   日本の年代別死亡率の中で最も多いのが1~4歳までの小児。WHO(世界保健機関)によると、主要先進国の同年代平均死亡率100%に対し、日本は120%と大幅に上回り、ワースト3という。
   お寒い現状に、植田センター長は「PICUが最低でも全国50か所ぐらいに増えれば、年間500人近い子供の命が救えるのですが……。それが実現できてないために治療が遅れる。ここが非常に大きな問題だということが知られていない」と訴える。

   それにしても、交通事故で重傷を負った男性(69)が1月20日、大阪府内を含む6市14病院で受け入れを断られ、3時間後に出血ショックで死亡していたことが明らかになったばかり。
   日本の『医療体制』はこのままでいいのか。早急に精密検査し、大手術する必要がと思うのだが……
   司会の加藤浩次は「少ないですよね~」、テリー伊藤は「知識がないと、戸惑うだけですからね~」と、お座成りのコメントを。

日本の場合周産期・新生児死亡率は低いですから一概に救急医療体制だけの問題かとも言い切れないところがありますが、少なくとも救急の現場は常にキャパシティーを越える労働を強いられオーバーワークとなっているのは確かでしょうね。
本来「非常時」用の備えというものは非常持ち出し袋や防災用備蓄なんてものと同じで、普段は全く使わないで済むくらいに余裕がなければ何かあった時にまともな対応が出来るはずもないんですが、日本の場合何故か24時間フル稼働状態ですから、それはもっと頑張れと言われても無理でしょう。
当然ながらその負担をどうやって軽減していくかという議論がまず必要だと思うのですが、どうも消防庁あたりが主体でこういう対策ばかり練られているところを見ると不安が募るばかりなのは自分一人でしょうか?

消防庁、救急搬送先リスト策定 受け入れ拒否で法改正へ(2009年2月5日47ニュース)

 医療機関による救急搬送患者の受け入れ拒否問題の改善に向け、総務省消防庁は5日開かれた有識者検討会で、患者の容体に応じた搬送先の医療機関リストなどを盛り込んだ「搬送・受け入れ基準」の策定を都道府県に義務付ける方針を示し、了承された。

 9日の消防審議会答申を経て、消防法改正案に盛り込み、今国会への提出を目指す。改正法が成立すれば年内にも施行、2009年度中に各都道府県に基準策定を促す

搬送先リストをあらかじめ定めておくことで、救急隊員が円滑に搬送先を選定できるほか、救命救急センターなど一部医療機関への急患の集中を分散させ、「たらい回し」の発生を抑制する。また遅延傾向が続く搬送時間の短縮にもつなげる

 搬送先リストには、例えば(1)心肺停止状態なら救命救急センター(2)重症の脳疾患はA病院(3)軽症の心疾患はB病院-など、症状の種類と程度に応じた具体的な医療機関名を載せる

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コメント

 鳥大の救急は、ssd先生のブログttp://ssd.dyndns.info/Diary/?p=3090のコメント欄によれば、ちょっと信じられないような扱いを受けていたそうです。本当だとすれば確かに夢もプライドもあったもんじゃない。学内のマネジメントの問題が大きいといえるかと思います。
 PICUの話は、「PICUが50あれば、年間500人の子供の命が救える」って本当ですかね?一施設あたり10人の医師として、計500人だから、医師一人につき救える子供が年に一人ってことになりますが。救える子供の数が今よりそれだけ増えるって意味だとしても随分贅沢な話です。更に、仮にその必要性を認めたとしてもPICUという箱の話をしている点でバツです。するなら、重傷小児救急をやれる医師(コメディカルについても)をあと何人増やさねば、っていうマンパワーの話にしてくれればいいのにと思います。箱だと1年でもできるって幻想をいだくけど、マンパワーは育てるのに何年かかるって現実を無視できなくなりますから。
 消防庁の件は、長くなったので一言だけ、総務省は医療に対する刺客だ、と。

投稿: JSJ | 2009年2月 7日 (土) 12時48分

こういう扱いということですね。
プライド云々以前にこの教授には院内業務分担に全く影響力がなかったのかと疑問に思う話ですが…
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とおりすがり2 月 6th, 2009 at 11:37 AM

経営改善のため各科当直を中止しオンコールとすることで僅かの当直代をカット。そして病棟からのファーストコールは救急災害科が担当(もちろん3次救急も含む通常の救急業務に並行して)、各科のオンコールに救急医から連絡しても「それくらい救急で診ろよ」という医師もいる・・・・、などなどローカル新聞の特集記事に出てました。ネットでは見れませんが、内容的にかなりのプレミア記事です。「救急が病院全体の下請けとして使われていた」といった八木教授のコメント。


とおりすがり2 月 6th, 2009 at 2:07 PM

雪の夜道さま

さすがに最初からこんな状況では赴任しないでしょう。
赴任後の独法化、スーパーローテなどの変化に伴いどんどん変なことになっていった(押し付けられていった)ようです。記事の内容を見ただけでも、ここ数年でどんどんありえないことになってました。総合診療科の外来担当も数年前から救急災害科がさせられていたようです。「1日数人だが診療科の受付時間に間に合わなかった患者や、診察日ではない日に来た患者などを診察していた」といったことも地元新聞に書いてありました。
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500人云々は例によってマスコミが切り貼りしているのでなければ、何かの勘違いでしょうか。
今の日本で50カ所のPICUなど新設した日には他の施設での小児救急は崩壊するでしょうし。

投稿: 管理人nobu | 2009年2月 7日 (土) 14時41分

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