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2009年2月19日 (木)

医療崩壊の原因は何かと問われれば

最初にお断りしておきますが「日本最南端の新聞社」八重山毎日新聞は石垣市に本社のある沖縄の地方紙であって、全国紙であるいわゆる「毎日新聞」とは全くの別物です。
地方紙と言いますと第二次大戦中に一県一紙が原則とされて以来地域によってはかなり整理されていますが、沖縄と言う県では歴史的経緯なのか地理的状況故か人口の割に多彩な新聞社が共存しているようですね。

さて、近ごろでは沖縄でもご多分に漏れず公立病院独法化をという話が進んで色々と紛糾しているようですが、その独法化の件に関する八重山毎日新聞の社説がこちらの記事です。

「絶対安心の担保」示せ 八重山病院の“独法化”には賛成できぬ/沖縄(2009年2月18日八重山毎日新聞)

■説明不足と不信感
 県が2012年度をめどに八重山病院など県内6つの県立病院を地方独立行政法人にするという「県立病院のあり方に関する基本構想」が大きな波紋を広げている。各地域で説明会も開かれたが、住民側からは疑問、反発、不安が相次ぎ、八重山市町会(会長・大浜長照石垣市長)は、離島医療の崩壊につながるとして来月7日に独法化反対の郡民総決起大会開催も決めた。

確かにこれまでの報道などを見る限り、県の説明は年々膨れ上がる「赤字解消」のために初めから「独法化ありき」で、それでは肝心の独法化すると県立病院がどのように良くなるのか、ただでさえ“医療格差”があり難しい状況に置かれている離島の医療はどのようになるのか具体的な“姿”が示されず、説明不足の感は否めない。
 3月には知事に答申が出され、同基本構想が具体的に動き出すが、独法化で八重山の医療が良くなるとの「絶対安心の担保」が県から示されない限り八重山郡民は断固反対を貫き、独法化を決して許してはならないだろう。

■どうなる離島医療
 200億円超の累積赤字を抱え、毎年運営資金に100億円超の不足額を生じる県立病院の経営はまさに危機的であり、その経営のあり方が思い切って見直されなければならない待ったなしの状況にあることは十分に理解できる。しかしだからといってすべての県立病院が一律に独法化に移行は納得しがたい。沖縄本島と離島は医療環境が違うし離島は切り離し検討すべきだ。

県は独法化の利点として▽経営の自律性▽迅速な意思決定と効率的な業務運営▽事務部門の強化等経営企画力の向上▽財務面の健全性回復を挙げているが、しかし離島は独法化によって逆に、現在でも休療科があり、ただでさえ厳しい医師や看護師の確保がさらに困難となり、病院の存立そのものが危うくなる可能性は否定できない。
 しかも陸続きで代わりの病院がいくらでもある沖縄本島地区と違って、離島の八重山郡民は県立病院が頼りであり、「独法化は残念ながら失敗しました」などの話は絶対に許されない郡民の“命”の問題なのである。

■見切り発車の恐れも
 確かに県は「独法化後も不採算部門には県が必要な費用を負担するし医療はこれまでと変わらない」と強調するが、そこが説明では見えてこない。
 県は説明会で、離島の中の離島の竹富町長らから示された診療所の医師確保の不安などに、担当が違うからと即答を避けたようだが、こういう対応では郡民の理解は得られないだろう。
 財政難に悩む県は、現在とにかく支出の切り詰めに必至だ。八重山支庁の廃止問題も支庁長ら職員減のわずかの費用を浮かすため、しゃにむに懐柔策なども弄し 4月からの廃止にこぎつけた。今回の問題も、県の使命である公的医療充実の問題はそっちのけで、いかに赤字部門を切り離すかに主眼が置かれているかにしか見えない。
 それだけに反対の住民意見を無視しての見切り発車も否定できない。危機的状況にある県立病院の改革はぜひ必要だ。しかしだからといって離島医療を切り捨てることが許されていいわけがない。独法化によって八重山の医療が良くなるという「絶対安心の保証」が具体的に示されるなら、むしろみんな積極的に賛成し歓迎するだろう。
 しかし残念ながら今はそれがない。八重山郡民の命の問題であり、県からそれが示されるまで反対を貫き、県も見切り発車はやめていただきたい。

記事中にもあります通り、沖縄というところは僻地かつ離島の集合体というべき状況ですから、医療行政もそれなりの難しさがあることは誰しも理解できるところです。
独法化に関する説明会が既に開かれ話が進んでいる状況で県内市町長が反対の意思を表明しているということですから、今後も十分に議論をして落としどころを探すべきという点は全くその通りでしょう。

しかしこの場で指摘しておきたいことは、どんな方法・手段を選択しようがこと医療と言うものに関する限り「絶対安心の担保」「絶対安心の保証」などと言うものはあり得ないことであるという当たり前の事実です。
医療崩壊という現象の原因の一つに国民が医療に過度のゼロリスク保証を求めたことにあるとも言われていますが、過去においてのみならず未だにそんな幻想をもって市民を先導しているマスメディアが存在しているということですよね。

医療とマスコミの関わり合いに関しては(全国紙の)毎日新聞に限らず当「ぐり研」で過去にも色々と取り上げて来ましたが、医療業界に関わる人間の多くがひと言ならず言いたいことがあるのではないかと思います。
実際にこうした素朴な感情の存在を示す興味深いデータがありますので紹介してみましょう。

医療崩壊の責任、「小泉内閣」に―ML幹事グループが調査(2009年2月17日CBニュース)

 全国で深刻化している医療崩壊に責任がある内閣は「小泉内閣」と考える人の割合が「医師」「コメディカル」「患者」「一般」のいずれについても最も多いことが、複数のメーリングリスト(ML)で構成する「有志のオフ会幹事グループ」が実施したアンケート調査で分かった。
 調査は、インターネットと郵便により実施。ネットによる調査では、医療について話し合う「cminc(シーミンク)」など8つのMLと17医療機関にアンケートを送付した。また郵便による調査は、都道府県医師会や主要政党、報道機関など117団体に依頼した。
 両調査には計322人が回答。回答者の職業別の内訳は、「医師」(123人)、「コメディカル」(43人)、「患者」(85人)、「一般」(41人)が中心で、「医師会」(9人)、「マスコミ」(15人)などは少なかった。

 調査結果によると、中曽根内閣以降の歴代内閣を列挙し、医療崩壊に責任があるのはどの内閣かを聞いた質問(複数回答)には、263人が「小泉内閣」を選び、2位の「安倍内閣」(117人)を大きく引き離した。小泉内閣を選んだ割合を職業別に見ると、医師(94.3%)とコメディカル(90.7%)で9割を超えたほか、患者(81.4%)でも8割台に達した。一般は68.3%だった。

医療崩壊の主因を聞いた質問(複数回答)に対しては、「無責任な官僚の施策やマスコミの論調(官僚・マスコミ)」を挙げる回答が196人で最多。これに、「患者の権利意識・医療訴訟の急増・医療への刑事介入」の149人が続いた。「官僚・マスコミ」を選んだ人の割合を職業別に見ると、医師74.0%、コメディカル67.4%、患者65.1%、一般 43.9%などで、これら4職種ではいずれも最も高かった

 また、「医療崩壊の阻止に有効なもの」(複数回答)としては、「医療コスト見直し等による医療従事者の待遇改善」を挙げた割合が、医師65.9%、コメディカル76.7%、患者57.0%、一般41.5%で、これら4職種でそろって最高になった。

敢えて「官僚・マスコミ」とひとくくりにするところに何かしら意図でもあったのかと勘ぐりたくもなりますが(苦笑)、いずれにしても医療従事者・被医療者側を問わず責任の所在についての認識に関してはまさに圧倒的と言っても良い結果ではないでしょうか。
風の噂に聞くところによるとマスコミに関しては一部で「我々はまず国民に問題の存在を知らせることが第一の仕事であって、素人の門外漢なのだから間違えたと一々言われても困る」という開き直りもあるようです。
しかし奈良・大淀病院事件の事例などに見られるように、単なるミスではなく意図的なミスリードの気配が見られることは非常に大きな問題であって、「要するにあんた達は医療を潰して喜びたい愉快犯なのか?」という声が上がっても当然でしょう。

幸いにしてと思うのは、こうしたメディアの姿勢に対して「何かおかしいんじゃないの?」と感じ始めた人が次第に増えてきている、そして徐々に意思表示を行動にも移し始めているということです。
先日紹介しました毎日新聞・平野記者のすばらしい記事に関してもひと言なかるべからずと考えたのは医療業界の人間に限らなかったようで、実際に新聞社に抗議を行った人たちもいらっしゃるようですね。
他からの掣肘を受けないメディアが一方的に社会に影響力をふるってきた時代から、メディアに対するチェック機構として国民がメディアに対する影響力を持ち得る時代になってきたのだとすれば、これも彼の業界における一つの正常化と言ってもいいことなのかも知れません。

【電凸】記者日記:医師の説明の件で電凸してみました(2009年02月13日のブログ「ADON-K@戯れ言」さん記事より引用)

いつもなら東京本社に凸撃するところですが…ちょっと矛先を変えて、さいたま支局へ凸撃。
毎日新聞社・さいたま支局 048-829-2961
受付の女性に用件を告げると、30代後半くらいの男性が出てきて会話スタート(何処の部署か聞き忘れた…orz)。

俺:6日付けの平野記者のコラムを拝読しました。これについて、伺いたい事がありまして。

毎:どのような事でしょうか。

俺:まず、平野記者ですが…医療に従事した経験はおありなんですか?

毎:えーとですね…個人的に平野を存じてますが、そういった経験は無いです。

俺:そうですか。だとすると…平野記者はコラムの中の記述通り『ガイドライン本』で得た知識をもとに、医師に質問を連発したことになりますね?

毎:はい、そうなりますね。

俺:それなら、この医師が怒り出すのも無理はないですよ。
専門知識を修め、さらに経験も積んだ医師に対して…ガイドライン本だけで得た知識を振りかざして質問攻めにして、苛立たせた上に怒らせるなんて…医師にしてみれば「素人考えだけで医療を語るな!」と言いたくなるでしょう。

毎:平野にしてみれば、お兄さんの身を心配しての事だと思いますけど…失礼ですが、そちら様は医療関係の方ですか?

俺:医師免許では無く「溶接士」の国家資格を持ってます。私はそれで飯食ってるわけですが…これも専門知識と経験が要求されるものでして。教本読んだだけの輩にあーだこーだと言われると、「実務経験も無い奴が、偉そうに語るな」という気分になるんですよ。
本読んで得た知識だけで喋る人と、専門知識と経験を基に喋る人、どっちの言葉が信用できるか…想像つきますよね?

毎:は…はい、そうですね。

俺:で、最後の文章『医師はその後も献身的に兄を診てくれた』って、何ですか?
医師を怒らせた失礼な態度を詫びるでもなく、この医師の悪口を書いた挙句にこの一言で誤魔化そうという浅ましさが見えて、白々しい限りなんですが。

毎:失礼な態度をとったのに、お兄さんの治療に当たってくれた医師への感謝――だと思いますが。

(呆れ果てるあまり、ハイパーモード発動…失敗orz)

俺:なら先に、それを詫びる言葉があってしかるべきでしょう。
平野記者が、お兄さんの身を案じるのは理解しますよ。でもその気持ちが昂じるあまり、結果として相手を怒らせたんです。悪気はないかも知れませんが、大人の礼儀として謝罪すべきでしょう。違いますか?

毎:そ、そうですね…仰る通りです。平野の文章に下手なところがあったようで、大変申し訳ありません。

俺:どんな職業だろうが、「その道のプロ」が下手を打つようじゃ困るんですよ。平野記者に、技術職というものについてよく考えるようにお伝えください。
『耳学問だけで世の中が回れば、技術職は飯の食い上げだ』という言葉を添えて。

毎:はい、伝えさせていただきます(声が萎む)。

…なんか、今回は説教くさくなっちゃいましたね。年食った証拠かな??

では本日の結論。
【平野幸治よ、技術屋を舐めるな】

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