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2009年2月13日 (金)

新臨床研修制度が旧臨床研修制度になりそうです

実際のところはいざ知らず、マスコミ報道を筆頭に世間ではすっかり医療崩壊の主因は新臨床研修制度導入による医師不足ということでFAとなっているようです。
桝添厚相を中心として色々とシステムの変更を考えているらしいのですが、漏れ聞こえるところからすると二年の研修を一年に短縮するだとか、研修内容に弾力性を持たせる(と言えば聞こえは良いですが人手不足の診療科をより長く研修させるという話もあります)だとか、導入当初のタテマエはどうなったの?と言う話ばかりという気もしないでもありません。
まずは下の記事から紹介してみましょう。

臨床研修の必須科目削減 医師不足対策で厚労・文科省が骨子案(2009年2月3日産経ニュース)

 深刻化する医師不足の顕在化を招いた医師の臨床研修制度について、厚生労働、文部科学両省は2日、現行2年間の研修期間でこなす必修科目の7診療科を、最短10カ月で内科、救急など最低3診療科にすることなどを盛り込んだ骨子案をまとめ、両省専門家検討会に提示した。必修科目を減らし、研修期間の短縮で、実質的に現場で診療を行う医師を確保するのが狙い。早ければ平成21年度からの導入を目指す。

 現行では医師免許取得後2年間で7診療科の研修が必須となっているが、骨子案では最短10カ月で、基本的な診察ができる力を身につけるために最低限必要とされる内科、救急、地域医療の研修をこなす。

 残りの研修期間は、研修先の各医療機関の独自プログラムで研修を実施してもらうが、研修医が将来専門とする診療科につながるような研修内容にしてもらい、早い段階で現場で診療経験を積んでもらう。

 また、診療科の偏在化を避けるため、大学病院など一定規模の研修先医療機関には医師不足の深刻化が指摘されている小児科、産婦人科の研修プログラムを設置してもらうようにする。

 これにより、厚労省では「小児科、産婦人科を志す人は少なくない。その研修先をしっかりとつくることで、既存の小児科医らを別の医療機関の支援に回ってもらうことができるかもしれない」とし、医師の診療科目の偏在解消につなげたい考えだ。

まあ、その…医師として極めて早い段階で現場のナマの空気に濃厚接触しておくことは進路決定の上で大きな参考になるでしょうし、ぺーぺーのお客様研修医を今まで以上に大勢お相手しなければならないということで多忙な現場の医師にとっても何某かの人生の転機になるかも知れないしで、厚労省の狙った以上の劇的な効果は見込めるかも知れないところではあるでしょうけれども。
いずれにしても制度変更自体がまだ不透明である以上その結果何がどうなっていくのかも未だ語るべきところでもありませんが、大抵のことにおいてそうであるように世の中には変えること自体に反対を表明する人々というものも存在しているのです。

大幅見直しは「反対」 医師臨床研修で病院団体(2009年2月10日産経ニュース)
 日本病院会など4団体でつくる「四病院団体協議会」が10日、厚生労働省内で会見し、同省と文部科学省の専門家会合が検討する臨床研修制度見直しについて「(医師の)地域偏在、診療科偏在は制度が原因ではなく、基本理念や内容を大きく見直す必要はない」とする提言を公表した。

 専門家会合は、研修1年目は内科などの必修診療科、2年目は将来専門とする診療科に特化する案を検討。これに対し、提言は「基本的な診療能力を身に付けるための目標達成には2年が必要」と反対を示した。

 日本病院会の堺常雄副会長は「制度導入の目的だった臨床能力は確実に向上している。見直し案では、この理念が曲げられている」と話した。

臨床能力は確実に向上してますか…
四病院団体協議会と言えばかねてメディカルスクール創設論などで当欄でも過去に登場願ったなかなかに素敵な団体というイメージもあるところですが、彼らの主張とは別なところで現場においても軽々な制度変更には否定的な意見もないではありません。
そもそも厚労省の猫の目医療行政の結果毎回二階に上がってはハシゴを外されている医療業界においては「厚労省の言うことはまず疑ってかかれ」がデフォですが、こうした制度変更のたびにそれなりの手間暇とコストをかけて病院内のシステムも変更していかなければならないわけです。
特に臨床研修制度変更となりますと診療報酬の変更などと比べて医師による医師の教育という側面に関わってきますから、学生向けの勧誘資料の文言から研修スケジュールと研修内容の調整に至るまで各診療科の中核医師達にまたぞろ余計な書類仕事が回されてくるだろうことは想像に難くありません。

そうした現場負担の側面を抜きにしても、今回の骨子案には何かしら奇妙なところがあるらしいという記事まで登場しているようなのですね。

誰のための医学部教育か―文科省の奇妙な検討会(2009年2月12日CBニュース)

 「舛添要一厚生労働相に事前報告しないとは、担当の新木(一弘・文部科学省高等教育局医学教育)課長が一体何を考えているのか分からない」―。臨床研修制度の見直しに伴って医学部教育内容の改善を図るため、文科省の「医学教育カリキュラム検討会」の初会合が2月2日に開かれた。しかし、この会合は公開にもかかわらず開催についてはほとんど周知されておらず、会合発足のきっかけとなった「臨床研修制度のあり方に関する検討会」を主導する舛添要一厚労相にも事前に知らされていないなど、奇妙な点が目立つ。4月をめどに中間報告を取りまとめる予定だが、医学生からは「たった2か月の議論で、自分たちが受ける医学教育について、何の結論が出るのだろう」といぶかる声が上がっている。(熊田梨恵)

 初会合を傍聴した東大医学部3年の竹内麻里子さんは、「それぞれの委員がいろいろなことを言っていて、一体誰のための教育なのか、議論の共通目標が見えなかった。皆、議論の目標は分かっているのだろうか」と語る。

 この医学教育カリキュラム検討会は、現在厚労省と文部科学省が合同で進めている「臨床研修制度のあり方に関する検討会」報告書のたたき台を受けて発足した会合だ。医学部教育の見直しをめぐっては昨年、医師の養成数を将来的に1.5倍にまで増やす方針が、舛添厚労相が主導する検討会で決まったが、委員から「現状のまま数だけ増やしては意味がない」との指摘があり、医師養成の在り方自体を見直そうと、「臨床研修制度のあり方に関する検討会」が両省の合同開催で昨年に始まった。臨床研修検討会から、医学部教育の見直しを求める報告書のたたき台が出されたため、この会合が開催される運びになった。
 事務局は検討会の設置趣旨として、▽ 基本的な診療能力を確実に習得できる、卒前臨床実習など医学教育の強化▽医師不足解消の観点から、地域の診療科に必要な医師を確保するため、医学教育上で必要な方策の検討―の2点を示した。具体的な検討事項としては、▽臨床研修の見直しを踏まえた医学教育の改善・充実方策▽医師として必要な臨床能力の確実な習得を確保する方策▽地域や診療科に必要な医師を養成・確保するための方策―を挙げている。

■なぜこっそりと開催?
 しかし、同検討会にはいつくか奇妙な点がある。
 この日の初会合は、臨床研修検討会の第5回会合が終了して15分後に、同じ文科省内で開かれた。しかし、医学教育カリキュラム検討会発足のきっかけとなった臨床研修検討会では、この日の初会合についての報告は、事務局から一切なかった。また、通常は会合の開催案内が掲載されている文科省のホームページでも案内は出ておらず、厚労省関係の記者クラブにも開催案内は来ていなかった。このため、医学教育カリキュラム検討会の傍聴者は、臨床研修検討会に比べて約4 分の1程度と少なかった。

■舛添厚労相に報告なし
 通常、“親会”の臨床研修検討会の下に新たな検討会が発足するならば、“親会”を主導する厚労相に報告される。しかし、医学教育カリキュラム検討会を担当する文科省高等教育局医学教育課から、舛添厚労相へ事前に会合を開催するという報告はなかった。医学教育カリキュラム検討会が終了してから厚労相の耳に入ったため、翌日に医学教育カリキュラム検討会事務局の新木課長が厚労相に詳細を報告している。一方で、臨床研修検討会の事務局の厚労省医政局医事課には初会合の連絡が入っており、外口崇医政局長は「いつだったかはっきり思い出せないが、会合が開催されるということは事前に聞いていた。詳しい内容を知らされたのは当日」と話している。両省の関係者は、「こういう場合、通常なら舛添大臣に報告するのは当然。なぜ新木課長がこのような事をしているのかが全く分からない。大臣に上げるほどの話ではないから、医政局内で止めたというシナリオにしているのだろうか。新木課長は、医学部定員を増やさないように各大学に触れまわって大臣の逆鱗に触れてしまった三浦(公嗣・前医学教育課長、現医政局指導)課長と違ってまだ大臣からのペナルティがついていない状態だから、動きやすいのかもしれない」と話している。新木課長は、昨年7月の人事で厚労省医政局研究振興開発課長から、現職に就任している。

■報告書案の審議は非公開
 また、この会合は公開されているが、公開範囲が限定されている。初会合当日に配布された資料「医学教育カリキュラム検討会の公開について(案)」には次のような記載がある。「1.会議は、次に掲げる場合を除き、公開して行う。(1)座長の選任その他人事に関する事項を議決する場合(2)報告案その他の案を審議する場合」「5. 座長は、1. に掲げる場合を除き、会議において配布した資料の全部または一部を公開することができる」。このまま読むと、検討会がまとめる報告書案が議論される場には、傍聴者や報道関係者が入れないということだ。加えて、報告書案も公開されない。つまり、この検討会が出す医学部教育に関する報告書は、国民に見えない “密室”で決まっていくことになる。厚労省が開く通常の審議会や検討会は、行政処分について審議する医道審議会などを除いてほとんど公開されており、公開されている会議の中で報告書案の審議の場合だけ非公開にされるということはほとんどない。

■「医学教育を議論できる委員がいない」
 この検討会の委員は、2005-07年に医学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂や入学者選抜の改善など医学教育の見直しを行った「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」にかかわっていたメンバーが多い。17人の委員のうち、12人が協力者会議にかかわっていたという「顔なじみ」だ。委員の顔ぶれについて、臨床研修検討会の委員を務める嘉山孝正山形大医学部長は「カリキュラムについて検討できても、医学教育全体を見渡して議論できる人がいない。協力者会議の座長だった高久(史麿・自治医科大学長)先生が委員に入っていないのもおかしな話。わたしも呼ばれておらず、まるで、ビジョン会議のメンバーを外したようだ」と語る。高久氏は、舛添厚労相が主導した「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会の座長や、臨床研修検討会の座長も務め、嘉山氏も同様に委員を務めている。また、新医師臨床研修制度を創設した当時の篠崎英夫医政局長が院長を務める国立保健医療科学院から、石川雅彦委員が参加している。

 これらの点について、医学教育カリキュラム検討会事務局を担う文部科学省高等医学局医学教育課の担当者は、「時間的な余裕がなかったので、記者クラブへの案内やホームページでの周知ができなかった。舛添厚労相についても、内容の詳細が固まったのが直前だったので上げられない状態だった」と説明する。また、審議の公開状況については、「報告書の内容によって流動的だが、基本的には非公開と考えている。『歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議』でも同様のやり方で実施している」。高久氏については、「この医学教育カリキュラム検討会は作業部会のようなイメージ。高久先生は現在進行中の『モデル・コア・カリキュラムの改訂に関する連絡調整委員会』で委員をされているので、そちらに報告を上げていきたい」と話している。

■「たった2か月で議論できるか」
 初会合当日のフリーディスカッションでは、臨床実習やモデル・コア・カリキュラムの見直し、地域の医師不足に配慮した医学教育のあり方、医師の倫理教育、教員の待遇改善のほか、文科省の管轄ではない国家試験にまで話が及ぶなど、議論は多岐にわたった。中には、「協力者会議でいろんな話がされていたので、今回の会議については、にわかにはどういうことが焦点になるかあまりよく分からなかった。協力者会議をしていたころと比べて現状は改善した部分もあるだろうが、医療が社会でいまだ大問題という現状がある。これに対して医学教育の部分から対応していくと理解した」(南砂委員・読売新聞東京本社編集委員)と、会合の在り方に困惑を示す委員もいた

 この会合は、臨床研修検討会での検討内容が2010年度から始まることに歩調を合わせ、医学教育も同じタイミングで対応できるよう、4月をめどに中間取りまとめを行う予定だ。
 厚労省の「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班」のヒアリングにも参加するなど、医学生の立場から医学教育について提言している「医師のキャリアパスを考える医学生の会」事務局の森田知宏さん(東大医学部3年)はこの会合について、「医学部教育については、2年前(協力者会議)でも相当時間をかけて議論していたのに、たった2か月で中間まとめを出そうとするのはおかしいのでは。誰のための医学部教育かと思う」と話している。

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 医療崩壊が進む中、医師不足の現状を打開しようと決まった医学部定員増。ただ人数を増やすのではなく、充実した教育が必要だとの指摘を受け、いくつかの検討会が立ち上がっている。議論のプロセスを完全に公開している会合もある一方で、この医学教育カリキュラム検討会の報告書審議の過程については、われわれ一般国民は知ることができない。これでは、国民の意見を広く聞くことを目的に設置されている、行政の検討会の意味をなさないのではないだろうか。また、不十分な事前周知など、会設置に至る過程にも奇妙で不透明な点が多い。
 今後の医療界を担う医学生への教育方針が、こうした“密室議論”のようなプロセスで決定されていいのだろうか。

厚労省が何をどう考えているのかは定かではありませんが、一説によると厚労省に限らず中央省庁においては最近「どうせすぐに政権交代なんだし、今の大臣と関わり合っても仕方がない」と侮る風潮があるとも聞きます。
それならそれで現野党と関係を深めているのかと言えば、例の医療事故調案においても一貫して世論の支持する民主党案を無視していることにも現れているように全くつながりを持っているようには見えません。
医療行政が迷走しているとはしばしば言われてきたことではありますが、天下のエリート揃いの厚労省幹部が何一つ考えずに事を行っているとも考えにくいところですから、一見迷走を装って彼らがどこにこの国を導こうとしているのかにこそ注目していかなければならないのでしょうね。

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コメント

今回の短縮案、結局地方の崩壊過程の病院で、とっくの昔に産科も小児科も吹き飛んじゃった病院でも研修できるように(医師、厳密には医師免許取得者の頭数をそろえれるように)するためのものでしょうね。次世代の医師をしっかりと育てようという発想は見受けられません。

いまの余裕のない医療現場で、しんどい所を見れば見るほど志願者が減る、という現実を考えれば、あえて産科・小児科を見せずに罠を張って捕まえる、というのは理にかなってはいますが(笑)

投稿: Seisan | 2009年2月13日 (金) 14時28分

 官僚の「無定見とみせかけた追い打ち」という分析は、いつもながらお見事。
舛添氏のことをウィキペディアで調べたんですが、実母の介護体験があるそうで、この人、本気で医療/介護制度を改善したいと思っているのかも、と思いました。となると、文部にせよ厚労にせよ官僚からはやっぱり浮いているのかな、と。
 臨床研修は単独の施設で行う必要はなかったと思うので、Seisan様の分析の前半はどうなんでしょう?後半はその通りだと思います。

投稿: JSJ | 2009年2月14日 (土) 09時39分

あ~、舛添氏の介護体験なるものの実態についてはその、色々と毀誉褒貶も激しいようではありますけどね…
たとえどんな御仁であろうとも、結果さえ出してくれるのなら少なくとも大臣としては合格ですが。

http://mobile.seisyun.net/cgi/read.cgi/newsplus/news22_newsplus_1185572141/170
http://kuunuu.exblog.jp/9440448/
http://shadow-city.blogzine.jp/net/2007/12/post_8510.html

投稿: 管理人nobu | 2009年2月14日 (土) 12時18分

 なるほど。単にエエカッコしいだから浮いてるんですね。

投稿: JSJ | 2009年2月14日 (土) 14時29分

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