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2009年2月 3日 (火)

インフルエンザにはご用心!(色々な意味で)

今年も猛威を振るっているインフルエンザですが、ここ数年のインフルエンザ=抗ウイルス薬と言う定番処方がにわかに面倒なことになっているようです。
そもそも昨年頃から耐性化ウイルスの出現が報じられていましたが、今年は厚労省がこんな通知を出すくらいになっているのですね。

感染症発生動向調査における薬剤耐性インフルエンザウイルスについて(2009年1月16日厚労省)

○ 今シーズンにおけるインフルエンザウイルスの薬剤耐性状況について

・わが国では下記の(参考)のとおり、都道府県においてインフルエンザウイルスの分離・検出を行っているが、そのうち、国立感染症研究所において今シーズンのインフルエンザウイルス(A/H1N1)について35株を検査し、34株からオセルタミビル(商品名:タミフル)耐性ウイルスが検出された。(2009年1月8日現在)

・ 確認されたオセルタミビル耐性ウイルス(A/H1N1)については、昨シーズンからヨーロッパを中心に出現しているオセルタミビル耐性ウイルスと同じ北欧系統となっている。

○ インフルエンザウイルス(A/H1N1)とワクチンについて

・ 検査されたインフルエンザウイルス(A/H1N1)については、今シーズンのワクチン株A/ブリスベン/59/2007の類似株であったことから、これらの耐性株に対して今シーズンのワクチンは有効であることが推測される。

○ インフルエンザウイルス(A/H1N1)とオセルタミビル以外の抗インフルエンザウイルス薬について

・ 今シーズンに検査されたオセルタミビル耐性ウイルス(A/H1N1)について、現在のところ、ザナミビル(商品名:リレンザ)に対する耐性は確認されていない

○ インフルエンザウイルス(A/H1N1)以外のインフルエンザウイルスにおける薬剤耐性について

・ 今シーズンに分離されたインフルエンザウイルスのうち、A/H3N2ウイルス、B型ウイルスについては、現在のところ、オセルタミビル耐性は確認されていない。

○ オセルタミビル耐性のインフルエンザウイルスにおける病原性について

・ WHOによると、病原性や臨床経過において、オセルタミビル耐性ウイルス(A/H1N1)が通常のインフルエンザウイルスに比較して重篤な症状を引き起こす等の違いは確認されていない。

(参考)全国のインフルエンザウイルス分離・検出状況(平成21年1月15日時点)
A型     H1N1     243件
H3N2     303件
B型     125件

つまり今シーズンのA/B型インフルエンザのうちH1N1型(Aソ連型)が36%を占め、そのうち97%(全体の35%)が代表的な抗ウイルス薬であるタミフルが効かない耐性株だと言うのですね。
さいわい別の抗ウイルス薬であるリレンザは有効とのことですが、こちらは吸入薬であることもあって今までどちらかというと日陰者扱いされてきた薬であるだけに在庫が少ない。
この発表を受けて医療機関でもわっとリレンザに飛びついたものですから、厚労省も何とかせいと製薬会社をつつくわ、さっそく製造元が緊急輸入するわというさわぎになっているようです。

タミフル耐性インフルエンザ、厚労省が対策徹底呼びかけ(2009年1月28日朝日新聞)

 治療薬タミフルが効かないインフルエンザの耐性ウイルスが国内で流行していることを受け、厚生労働省は28日、都道府県や政令指定都市などに感染防止対策や監視の徹底を求める通知を出した。同省は別の吸入タイプの治療薬リレンザを追加供給することが可能かどうかメーカーと調整を始めた。

 国立感染症研究所によると、12~18日の1医療機関当たり患者報告数は20.84人に達し、前年同期(9.35人)を大きく上回った。地域別では沖縄(65.3人)、宮崎(36.3人)、岡山県(31.8人)など。今シーズンに入って18日までに検出されたウイルスはAソ連型が45%、A香港型41%。12月以降はAソ連型が半数を超えた。これまでに解析したAソ連型の98%はタミフル耐性をもっていた。

 リレンザは耐性が確認されていないので、今後、医療現場で使用が増える可能性もある。厚労省は「現時点ではリレンザの供給不足の心配はない」としているが、需要の伸びに対応して増産が可能かどうかメーカーに検討を要請している。

グラクソ日本法人、インフル薬緊急輸入 「タミフル耐性」流行で(2009年2月1日日経ネット)

 英製薬大手の日本法人、グラクソ・スミスクライン(GSK、東京・渋谷)はインフルエンザ治療薬「リレンザ」を緊急輸入する準備に入った。輸入量は数十万人分の規模になる見通し。同分野の治療薬で8割程度のシェアを持つロシュ(スイス)製の「タミフル」が効かない耐性ウイルスが流行し、代替薬として医療機関から注文が急増しているのに対応する。

 リレンザは英本社がフランスに持つ工場で生産、2000年から日本に輸入している。GSKは今冬の流行期用に300万人分を準備していた。タミフルの耐性を持つAソ連型(H1N1型)ウイルスの感染が広がり、リレンザを選択する医師や患者が増加した。

ま、日本は特にインフルエンザとくれば猫も杓子もタミフルという傾向が強くて、全世界の処方量の7割を日本で使っているなんてデータもあるくらいですから、その意味では処方が分散するのは悪いことではないという見方も出来るかも知れません。
それではこれからはタミフルに代わってリレンザでやっていけばいいのかという話なんですが、良いタイミングでそこに冷水を浴びせるようなニュースまで出ちゃったんですね。

抗インフル薬「リレンザ」処方後に転落死、厚労省が注意喚起(2009年1月29日読売新聞)

 長野県松本市で27日に団地から転落死したとみられる高校2年生の男子生徒(17)について、厚生労働省は29日、事前に抗インフルエンザ薬「リレンザ」が処方されていたと発表した。
 同薬を販売するグラクソ・スミスクライン社の報告で明らかになった。実際に服用したかどうかを含め、異常行動と薬との因果関係は不明としている。

 この事故を受け、厚労省は同日、リレンザのほか、アマンタジンやタミフルといった抗インフルエンザ薬の服用者と、インフルエンザに感染した未成年者について、少なくとも発症から2日間は1人にしないよう改めて注意喚起するよう製薬企業に通知した。

 今冬は全国でタミフルが効きにくいウイルスが流行しており、代わりにリレンザを処方されるケースが増えている。薬剤を服用していなくてもインフルエンザ脳症によって異常行動が起こるケースもあるが、厚労省は同様の事故が起こるのを防ぐため、注意喚起の徹底を決めた。

少し前にはタミフルで異常行動か?!なんて話が賑やかに騒がれていて、結局今に至るもはっきりした結論が出ていないながら子供には使わないようにという厚労省の通達だけが生き残っている状態です。
もともと抗ウイルス薬を使おうが使わなかろうがインフルエンザ自体で異常行動というものはあるわけでもあるし、データ上もあまり服薬とは大きな関係はなさそうだという印象を持っている医療従事者が多いんだと思いますが、世間が騒ぎ出せば今のご時世それなりの対応をせざるを得ません。
実のところずっと以前からリレンザを使っても異常行動はあるよとは言われていたんですが、何しろ今までは処方例が圧倒的に少ないだけに大きな騒ぎにはなってきませんでした。
しかし今シーズンは上記のようにリレンザ処方急増ということになりそうですから、特に小児患者はどうするか…こうなれば麻○湯でも使っていくしかないですかね(別にツ○ラの回し者ではありませんが)。

インフルエンザ薬「リレンザ」にタミフル以上の異常発生率(2007年11月09日週刊ダイヤモンド)

 インフルエンザ治療薬「タミフル」は早く熱が下がるとあってか、日本では昨年冬に860万錠も投与された。ところが、服用した10代の患者に、窓から飛び降りるなどの異常行動が相次ぎ、厚生労働省は今年3月、10代へのタミフルの投与を原則禁止。厚労省の審議会では、全年代で211人が異常行動を起こしたと報告されている。

 そこで、注目が集まるのが、同じく高い効果のある「リレンザ」など他の治療薬だ。しかし、じつは厚労省の審議会では、リレンザでの異常行動も10 件報告されている。タミフルに比べ20分の1程度だが、タミフルのシェアが90%以上で、リレンザが1%程度といわれていることを考えれば、むしろ発生率はリレンザのほうが高い

 ところが、タミフルと違い、リレンザなどの異常行動はあまり知られておらず、医師ですら知らない場合もある。

 審議会での報告がインフルエンザのシーズンではなく、メディアの注目度が低かったこともある。また、投薬と異常行動との科学的因果関係が解明されておらず、そもそも投薬とは無関係の高熱による異常行動もある。タミフルの使用禁止でも専門家からは科学的根拠を疑問視する指摘があった。現状では、厚労省もタミフル以外の治療薬に関しての異常行動への注意を喚起しにくいのだ。

 海外では、子どものインフルエンザに対して重篤な場合を除き、投薬しない親も多い。タミフルの全世界の処方件数のうち、日本が75%を占めるというデータもある。日本でも親の判断で、安静にさせるだけのケースが増えるかもしれない。

インフルエンザに関しては他にも色々と香ばしい話題があって、例えばここ数年来騒がれている新型インフルエンザウイルスの脅威というものがあります。
昨春のことですが桝添厚労相が「新型インフルエンザ用ワクチン(プレパンデミックワクチン)を臨床研究として医師ら6000人に接種し、効果が確認されれば対象を1000万人に拡大する」なんてことを発表して、色々な意味で(苦笑)ちょっとした騒ぎになったことがありました。
このプレパンデミックワクチンというものがなかなか判りにくいんじゃないかと思いますが、今まで発生したことのあるH5N1型ウイルスから作られたワクチンというだけのもので、来るべき大流行に効くかどうかなんてことは全く判らないものなんですね。
それ以前にこのワクチン自体が非常に特殊なもので、少なくとも今まで毎年用いられて安全性などが比較的確立している旧来のインフルエンザワクチンなどとは全く別物なのに臨床の現場ではあまり知られているようには見えないことにも問題があります。

ところで以下は全くの聞きかじりであって、内容の正確性は何一つ保証するものではありませんので念のため。
過日とあるインフルエンザが御専門の大先生と会食した折にもたまたまこの話題が出ましたが、何しろ副作用の危険性などという以前に抗体価が全く上がらない、普通のインフルエンザワクチンに比較すれば抗体価上昇が二桁くらいも低いと言うんですね。
それでも動物実験では何とか多少は効果があるのかな?と言う程度のデータは出たにしても、肝心の人間になるとどうもあまり効きそうにないという悲観的なシロモノなのだとか(もう少し率直な言葉で批評されていましたが)。
そんなわけですからウイルス学会でもインフルエンザの専門家が顔を合わせれば「いったいなんだってこんなものを大規模臨床試験なんかに回そうって気になったんだ?」と言う話で持ちきりだったと言うのですが、不思議なことにそれじゃあ誰が厚労省にこんなことをさせようと話を持ちかけたのかが全く判らない、突然のことで皆困惑していると言うんですね。

う~む、インフルエンザって身近なようでいて色々と謎に満ちているものですね(苦笑)。

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