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2009年2月24日 (火)

事故調議論を主導?してきた座長の前田氏が解任

何気ない記事の中に見落としそうなネタですが、例の事故調に絡んだ「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」で座長として議論を主導?してきた前田雅英氏が解任されたそうです。

民主党:3機関7人の不同意を決定(2009年2月19日毎日新聞)

 民主党は19日の役員会で、政府が提示した8機関16人の国会同意人事案件のうち、人事官1人▽中央社会保険医療協議会委員1人▽再就職等監視委員会の委員長と委員4人--の3機関7人について同意しないと決めた。野党多数の参院では23日の本会議で不同意となる見通し。
(略)
 中央社会保険医療協議会委員として提示された首都大学東京の前田雅英・都市教養学部長(59)=刑法=については「医療問題全般を議論するのにバランス感覚の点で適格性を欠く」との理由。省庁による天下りあっせんを監視する再就職等監視委員会の委員長と委員計5人は「委員会の制度そのものに反対」としている。

前田雅英氏、中医協委員再任成らず(2009年2月23日CBニュース)

 参院は2月23日の本会議で、政府が提示した8機関16人の国会同意人事案を採決したが、中央社会保険医療協議会(中医協)委員の前田雅英・首都大学東京教授の再任案など3機関7人について、民主、共産、社民、国民新の野党4党などの反対多数で否決、不同意とした。
(略)
 厚生労働省によると、これまで中医協の公益委員が不同意となったことはない。前田氏の任期が切れる3月1日以降、このポストが1つ空白になる。

 前田氏再任案への反対について、民主党で不同意を提案した足立信也参院議員は、キャリアブレインの取材に対し、大きく2つの理由を挙げた。
 まず、前田氏が中医協公益委員就任後に開かれた会合について、43回中8回欠席しており、欠席回数が最も多かったとした。
 次に、前田氏は中医協公益委員就任後、厚労省が死因究明制度を創設するために設置した「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」座長にも就任したが、同検討会の進め方に問題があったと指摘。「原因究明と責任追及を連動させたこともあり、診療関連死に刑法の手法を持って来ようとしたことに問題がある。また、インターネット調査では、民主党案の方に多く支持を頂いており、厚労省案と評価が分かれているので、民主党案も同時に議論すべきという意見があるが、『地方説明会』と称して厚労省案に決まったかのように国内に周知したことも、座長の判断としてどうかと思う。議事録を見ると、座長として、決まった結論に導きたいという運営をしているように見えたことも問題」と話している。

 このほか、足立議員は前田氏に関する私見として、「中医協公益委員でありながら、多くの諮問機関に委員として名を連ね過ぎている。果たしてそれで公益性を保てるのだろうか。これが自分の中での最大の不同意の理由だと思う」と語った。

前田氏と言えば法学畑の権威として「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」の座長を務めてきたこともあって、過去に何度か当ぐり研での話題にも御登場いただいたことがありました。
特に印象に残るのが昨年10月、大野事件無罪判決を受けての同検討会第14回会合における「大野病院事件の判決は、法律家の間では重視されない。それはやはり、一審判決でしかない。地裁の判断でしかない。法律の世界は、そこが非常に厳しくて、原則として最高裁でなければ判例とは言わない」との言葉でしょうか。

一方で同検討会の座長としては基本的にまとめ役に徹すると言えば聞こえはよいですが、「決まった結論に導きたいという運営をしている」という民主党のみならず厚労省案に向けて議論を誘導する傾向が顕著に感じられた人は少なくなかったようです。
例えば第15回会合では「(議論に)大きな溝があるように見えて、ほとんど溝がないように思う」との発言を「毎回そうやって溝は埋まっていると言う。だからみんな駄目になっている」とストレートに批判されたりしますが、座長というのは損な役回りだと言うことを差し引いても「ちょっとこの人空気読めない?」と感じさせる部分が多いのではないかなという気がします。

しかし前田氏がこうまで色々なところから辟易、もとい、広範な支持を得られていなかったことが改めて認識される結果ですが、概ね医療業界からは解任に反対意見は出ないのではないかという印象を受けますね。
いつもお世話になっております「ロハスメディカル」さんではもっとストレートにこんなことを言ってしまっていますが、利権云々はともかくとしても医療業界からの人望はついに得られそうにない人ではあったなと言うところでしょうか?

前田座長、利権を1つ失う(2009年2月20日ロハスメディカル)

民主党が中医協に公益委員として入っている1人の再任を不同意とすることを決めたそうです。
今回のは誰でもかれでも不同意というものではなく、名指しで不適格とされています。ポストを失うことになったのが、誰あろう、医療事故調検討会の前田雅英座長。

医療事故調検討会での振る舞いが大いに影響したであろうことは想像に難くありません。ただ、今回は手前味噌ながら拙傍聴記によって、たまたま振る舞いが外に出ただけで、実は不適格とされておかしくない振る舞いの政府審議会・検討会委員は他にもいるんでないかと思っています。少しずつであっても、そういう所に光を当てていきたいと考えています。

まあこれだけであれば「仕方ないな」で済んでいた話ではあるんですが、今回の件で面白いのが医療業界の外側での反応なんですね。
例えばかねて医療事故調の早期設立を主張している「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会(患医連)」と言えば「医療過誤原告の会」や「陣痛促進剤による被害を考える会」といった有名諸団体ともつながっているところですが、ここが前田氏解任について熱心な反対論を展開しています。
視点が変わればこうまでものの見方も変わるのだなと非常に興味深い内容ですので、少し長いですが引用させていただきますね。

「中医協」再任人事反対に関する要望書(患医連HPより抜粋)

 中央社会保険医療協議会の前田雅英氏の国会同意人事案について、野党各党が再任を「不同意」としましたが、その理由が明確ではありません。
 新聞報道によれば、民主党は「刑法の専門家として医療関係者を委縮させる発言が目立つ」(共同通信)「刑法の専門家だが、医療事故対応は刑法的アプローチではあわない面もある」(読売新聞)「医療問題全般を議論するのにバランス感覚点で適性を欠く」(毎日新聞)と話したそうですが、公式の場での国民に対する説明が全くありません。
 今回の不同意は、実質的に「医療版事故調査機関」づくりへの攻撃を意図したものではないかと危惧するので、私たち医療事故被害者は見過しにはできません。

 現在、医療事故被害者たちの長年の願いを受けて始まった医療版事故調の議論が、被害者たちの声と、誠実な医療関係者たちとの真摯な議論によって前進しつつあります。前田氏は、医療版事故調の設立に関する厚生労働省検討会の座長をされており、中医協の人事であるにもかかわらず、医療版事故調に関する発言が不同意の原因であるように報じられています。
 前田氏の医療版事故調に関する発言が不同意理由なら、その具体的文言を厚労省検討会の議事録から指摘し、責任政党としてその判断理由をきちんと説明すべきです。わたしたちは、厚労省検討会における前田氏の発言は、医療者と患者・市民の双方に対してバランス感覚があり、また医療者を萎縮させるような発言をしたことはないと認識しています。医療と司法の関係が大きな課題となっている検討会の座長として公正・中立にまとめる姿勢があり、適格な判断をされています。

 なお、インターネットのメールマガジンやブログなど医療被害者や正論を発言する良識ある医療関係者たちに対する偏見や誹謗中傷が大量に流される中、前田氏は、忍耐強く議論を整理して進めてくれています。
 以上のことから、患医連は、反対をした各党に対して、以下の三点を強く要望します。

1)「前田氏は不適格な言動がある」と主張するのであれば、中医協委員として不適格であるとする具体的言動を指摘し、説明してください。もし、前田氏の医療版事故調に関する発言が不同意理由なら、その具体的文言を厚労省検討会の議事録から指摘し、その判断理由を説明してください。
2)どのように党内で審議し、機関決定をされたかを説明してください。
3)上記2点に関しまして、公式見解を公開してください。そして、ご回答などについて、私たちとの懇談の場を設定してくださいますようお願いいたします。

ちなみに患医連の主張するところの「私たちが求める医療版事故調」とはこのようなものだそうですが、これを見るとちょっと面白いかなという気がしますね。
組織の性格としては「医療事故の原因を究明して、再発防止を図り、医療事故にあった患者・家族への公正な対応を目的としたもの」であって、そのために備えるべき性格として「公正中立性」「透明性」「専門性」「独立性」「実効性」の五つを挙げています。
しかし特にこの独立性と言うものは「医療行政や行政処分・刑事処分を行う部署から独立していること」と定義しているのですが、これって民主党や医療側各委員がしばしば主張しているところの「原因究明と処罰とは切り離すべき」という論調に近い見解ですよね?
まさにその点を巡って紛糾が続いている議論を何とか厚労省案であるところの「司法に回すか回さないかを判断する機関」の方向へと誘導すべく努力してきたのが座長である前田氏という認識だったのですが、その前田氏を患医連として「医療者と患者・市民の双方に対してバランス感覚があり、また医療者を萎縮させるような発言をしたことはないと認識して」いると激賞しているのは何か奇妙な気がするのですが…

いずれにしても議論がすっかり煮詰まってしまった現状においては早々に皆が納得し得るような結論が出るとも思えませんが、むしろ厚労省がどのあたりで「意見を集約しました」と議論打ち切りにかかるのかの方が気になるところではありますよね。
そうした点で前田氏の後任としてどのような人物の名前が挙がってくるのかが、関係者それぞれの思惑を見極める上で極めて注目されるところではないでしょうか。

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コメント

いやー当然かと
中医協には刑法学者なんか不要ですよw

投稿: 元外科医 | 2009年2月24日 (火) 13時52分

敵の敵は味方っていう節操のない戦術でしょう。

投稿: 放置医 | 2009年2月24日 (火) 16時44分

まあ法律の専門家も色々といるでしょうから、後任を選ぶとすればもう少し的確な問題意識を共有できる人物であってくれればよいかなとも思ってますけど。

投稿: 管理人nobu | 2009年2月25日 (水) 12時17分

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