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2009年2月 4日 (水)

医療費適正化計画が本格的に動いています

医療というものは本来個人個人に合わせたオーダーメイドで行われるべきで、単なる統計的数値に頼った顔の見えない医療は好ましくないという主張をされる人々もいます。
そのあたりは個々の症例に応じたバランスの問題かなという気もするのですが、こと話が医療行政ということになれば顔の見える医療行政というのもあまり聞いたことがないですよね。
昨年春から指導した厚労省の遠大な野望がいよいよ本格発動してきたという記事から紹介しましょう。

厚労省、医療費高額な109市町村に適正化求める(2009年1月30日日経ネット)

 厚生労働省は30日、国民健康保険の2007年度の医療給付費が高額だった24都道府県の109市町村を、来年度に医療費適正化が必要な自治体に指定した。市町村は3月末までに原因の分析や適正化目標などの計画を策定する必要がある。

 指定された市町村は北海道(23)が最も多く、福岡県(18)や徳島県(11)など九州や四国も目立った。今年度から引き続き指定された市町村は65あった。全市町村に占める指定市町村の割合は6.1%と前年度より1.4ポイント上昇した。

 同省は医療費が年齢構成などを勘案して決まる基準給付費を14%を超えて上回った場合、適正化が必要な自治体として指定している。

医療費の適正化って何のことかと思われた方もいるかと思いますが、これが老人保健法改正にともなって平成20年4月より施行された「医療費適正化計画」なるものの実態なんですね。
こちらの資料に目を通していただければおわかりいただけるかと思いますが、住民健康保持に関して各都道府県で医療費適正化計画を立てて実行し厚労省に評価していただく、それだけの話だけであれば「それどんな赤ペン先生?」で終わるところですが、天下の厚労省がそんな甘ったるいことを行うはずもありません。
厚労省が評価した結果「適切な医療を各都道府県間において公平に提供する観点から見て合理的であると認められる範囲で」都道府県の診療報酬の特例を設定することができるなんて権限まで与えられているんですね。

こうして改めて見てみますとさすが厚労省だけに、その気になれば幾らでも医療を恣に出来るという素晴らしいシステムだなと感じ入ります。
今回こうした話が出てくるまで今ひとつその実際の動きが判らなかった話ですが、一体どういう作業が行われているのかを記事から引用してみましょう。

医療費適正化計画(上) 減らせ生活習慣病患者(2006年11月22日熊本日日新聞)

 老人保健法を全面改正した高齢者医療確保法の2008年4月施行を念頭に、各都道府県が医療費の将来見通しなどを予測した医療費適正化計画の作成準備に追われている。計画には、生活習慣病の患者・予備群の減少率など、「医療の質」とも密接に絡む具体的な数値目標の設定が求められ、都道府県側には不慣れな分野だ。

 ■数字把握これから

 都道府県を指導する厚労省保険局は「最初に医療費の適正化があるのではなく、結果として医療費を適正化する」(総務課)と話す。しかし、この説明を信じる都道府県職員はほとんどいない。「各県を競わせ高齢者の医療費を削減させるのが真の狙い」(福岡県中堅職員)との受け止めが支配的だ。

 そんな中、熊本県医療政策総室は医療費適正化の大まかな対策を決めている。「一つはメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策を進めて生活習慣病の患者や予備群を減らす。もう一つは、医療保険が適用される療養型病床を、介護保険適用の老人保健施設に転換させる」。厚労省の大枠をそっくり採り入れている

 厚労省は生活習慣病の患者と予備群の数を、2015年度に08年度比25%減にする政策目標を掲げている。この“都道府県版”の数値目標を適正化計画に織り込むわけだが、熊本県の場合、基準になる患者と予備群の数字の把握はこれからという。

医療費適正化計画 (下)療養病床の大幅削減(2006年11月29日熊本日日新聞)

 国と都道府県が“二人三脚”で進める医療費適正化計画の柱の一つは入院患者の医療費削減だ。もう一つの柱が生活習慣病対策で外来患者の医療費を削るのに対し、入院患者の医療費は家庭の都合など病気に起因しない「社会的入院」も受け入れている療養病床の大幅削減で達成するという。

 ■先進国のトップ

 厚労省は「日本の平均在院日数は国際的に極めて長く、特に療養病床が重要な要因の一つ」(保険局)と指摘する。OECD(経済協力開発機構)が調べた、日、独、仏、英、米5カ国の平均在院日数と人口1000人当たり病床数の比較では、日本の平均在院日数36・4日は2位独の3・3倍、人口1000人当たり病床数14・3床は2位独の1・6倍で先進国のトップと強調。医療の必要性に見合った療養病床の再編を描く。

 今年4月現在、全国の病床は38万床。内訳は医療保険適用25万床、介護保険適用13万床。厚労省は2012年3月末までに、医療保険適用を10万床削り、介護保険適用の13万床を全廃。38万床から医療保険適用の15万床を差し引いた23万床を老人保健施設やケアハウス、有料老人ホームなどに転換させるという。

 ■経営難に政策誘導

 熊本県は10月1日現在、病床数1万1645床。内訳は医療保険適用7200床、介護保険適用4445床。全国ベースで換算した場合、老人保健施設などへの転換率を病床数の39・5%とするか、医療保険適用病床数の60・0%にするかで転換病床数は違う。県医療政策総室は現在、240の医療法人・個人を通じ入院患者の意向を聴いている。

 厚労省の目標は、2015年度に全病床平均の在院日数の全国平均値と、最短値の長野県の差を半分に短縮すること。04年度実績で全国平均は36・3日、長野県は27・1日、差は9・2日。この隔たりを15年度に4・6日に縮めるわけだ。

 今年4月、厚労省は療養病床に関する診療報酬をカット、療養病床を医療の必要性に応じて医療区分1、2、3とした。医療区分1の患者を長期入院させても、経営が難しくなるよう“政策誘導”している。

 これに対し日本医師会は7月、療養病床を持つ全国の医療施設6186カ所を対象に調査。療養病床のうち医療区分1の患者2万9392人の聴き取り結果をまとめた。患者の約2割は医師の指示で看護師が付き切りで看病し、退院を迫ると「医療難民」が生まれる。患者の約4割は症状面からは退院できるが、退院後の在宅・施設の介護サービスがなく、「介護難民」になる。

 医療費は4月の診療報酬改定後、調査に応じた医療施設の収入は約10%減少。今後も診療報酬が据え置かれるなら、「医療」「介護」難民がさらに発生すると予想しているのだが…。

ま、昔からの厚労省の持論に対して法的にその権限を与えたわけですから当然の結果と言えばその通りなんですが、色々と楽しいことになってきそうな未来図が容易に想像できる話ではありますよね。
省庁権益の確保という点で厚労省がなぜそんなに医療を縮小(あるいは崩壊)させようと頑張っているのか今ひとつそのモチベーションの根源が理解できなかったところがあるのですが、こうして見てみますとそんな浅い思案など到底及ぶところではない深慮遠謀があったのだなと理解できます。
今までは国会で議決を経て法律として行わなければならなかったことが単に省庁内部の話だけでどんどん実行に移していける。
しかも医療行政を通じて全国津々浦々の自治体に好き放題口出しできるわけですから、これは「損して得取れ」を地でいく素晴らしい話だなと感じ入るほかありません。

一つ明らかなのは、こうして医療に関する絶大な権限を得たからにはその結果起こる全ての事に関する責任もまた果たさなければならないということでしょうかね。
医療に関しては何か問題があっても今まで責任体制が明確でなかったのですが、これからは何であれ話がずいぶんとシンプルになりそうで良かったですよホント。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20090127
でも述べたことですが。。。

厚生労働省の行動指針に責任という言葉はありません。

自分の言葉なのでそのまま引用します。(下記)

素人なので、役割と任務の法的な違いはわかりません。

京都の小児科医 2009/01/27 10:37
この行動指針には責任という言葉がありません。

国民の視点から考えて、責任を取らない官僚の行動は有害無益と思うのですが

今後、厚生労働省は行動に関して一切責任をとらないと宣言されたわかりやすい行動指針と思います。

京都の小児科医 2009/01/27 10:56
通常はキャッチフレーズの趣旨である「現在だけでなく未来にわたって人や暮らしを守る」という役割(と責任)を果たすため

という感じで責任という言葉を入れるべきと思いますが、このあたりは、慎重に検討されたと思います。

もちろん、厚生労働省に責任を押し付けるなという意見もあるかも知れません。

ただ、厚生労働省設置法には
任務)
第三条 厚生労働省は、国民生活の保障及び向上を図り、並びに経済の発展に寄与するため、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進並びに労働条件その他の労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ることを任務とする。
2 厚生労働省は、前項のほか、引揚援護、戦傷病者、戦没者遺族、未帰還者留守家族等の援護及び旧陸海軍の残務の整理を行うことを任務とする。

となって任務となっていて役割とはなっていません。

通常はキャッチフレーズの趣旨である「現在だけでなく未来にわたって人や暮らしを守る」という任務を果たすため

ならわかります。


投稿: 京都の小児科医 | 2009年2月 5日 (木) 04時52分

こういった厚生労働省の行動指針は通常の国家体制では厚生労働大臣の名前が一部に必要であると思うのですが一切ありません。

たとえば、最後の 
◎投票、意見募集結果を踏まえ、(厚生労働大臣とも協議の上)キャッチフレーズ及び行動指針を策定。
(厚生労働大臣とも協議の上)という言葉があるほうが自然ですがありません。

長期的に考え、たとえば、10年たって振りかえってみると、昨年(2008年)の中央公論3月号 特集:厚生労働省という犯罪から元厚生省事務次官の暗殺までの流れから、この行動宣言(2009年)の裏の意味は、厚生労働省の政府からの独立宣言であったということも考えられます。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/01/h0105-1.html

行動指針
キャッチフレーズの趣旨である「現在だけでなく未来にわたって人や暮らしを守る」という役割を果たすため、私たちは、次の1から4に掲げる指針に基づき、行動します。

1.高い倫理観を持って公正・公平に職務を遂行します。
2.国民と時代の要請に応じた行政サービスを提供します。
3.国民一人ひとりの立場に立って考え、行動します。
4.わかりやすい言葉で広く情報を提供し、開かれた行政を目指します。

そして、以上の行動を実践するため、私たちは、日々、次に掲げることに心がけて職務に取り組み、活力溢れる組織となるよう努めます。

・ 誇りと使命感を持って職務に臨み、効率的かつ迅速に業務を遂行します。
・ 自ら進んで課題を見つけ、皆で協力しながら解決に向けて取り組みます。
・ 自己研鑽に励み、自らの向上心を高めます。

投稿: 京都の小児科医 | 2009年2月 5日 (木) 09時53分

近年の医療政策に関して、一部には厚労省も本当は医療のことを熱心に考えているのだが、財務上の要求が強く妥協せざるを得ないのだという好意的な観測もあったのですがね。
基本的に頭が良い(のだと思いますが)官僚の皆さんが集まってああしようこうしようとやっている訳ですから、方向性の是非はともかくとして単に状況に流されるだけの無為無策でいるとはちょっと考えがたいところです。
いろいろと毀誉褒貶激しいのは確かでしょうが、少なくとも彼らは決して単なる馬鹿などではないと思いますね。

投稿: 管理人nobu | 2009年2月 5日 (木) 11時29分

繰り返しますが、事実として、2009年の厚生労働省の行動指針には責任という言葉はありません。

この行動指針を名刺などに刷って配布、広く国民に周知徹底するということです。私も厚生労働官僚はたいへん頭のいい方々の集団であると思います。この行動指針は錦の御旗ですから誰も否定できない状況です。 管理人様は、責任という言葉を使用されていますが、行動指針にその言葉はないと理解していただければと思います。

わかりやすい比較として、
日本医師会の医の倫理綱領・医の倫理綱領注釈
http://www.med.or.jp/nichinews/n120320u.html
があります。
ぜひ、皆様、責任というキーワードで比較ご検討ください。


医学および医療は,病める人の治療はもとより,人びとの健康の維持もしくは増進を図るもので,医師は【責任】の重大性を認識し,人類愛を基にすべての人に奉仕するものである.

医師は生涯学習の精神を保ち,つねに医学の知識と技術の習得に努めるとともに,その進歩・発展に尽くす.
医師はこの職業の尊厳と【責任】を自覚し,教養を深め,人格を高めるように心掛ける.
医師は医療を受ける人びとの人格を尊重し,やさしい心で接するとともに,医療内容についてよく説明し,信頼を得るように努める.
医師は互いに尊敬し,医療関係者と協力して医療に尽くす.
医師は医療の公共性を重んじ,医療を通じて社会の発展に尽くすとともに,法規範の遵守および法秩序の形成に努める.
医師は医業にあたって営利を目的としない

投稿: 京都の小児科医 | 2009年2月 5日 (木) 13時33分

自分で出して今気づいたのですが。。。。

行動規範に日本医師会の医の倫理綱領・医の倫理綱領注釈のように「法規範の遵守および法秩序の形成に努める」という法という言葉もないのに気づきました。

平成期の厚生労働官僚ってすごい、すごすぎると思います。

投稿: 京都の小児科医 | 2009年2月 5日 (木) 14時02分

たぶん厚生労働省の官僚さまは日本国憲法第25条をご存じないんですよ。

投稿: Seisan | 2009年2月 6日 (金) 00時07分

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