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2009年2月11日 (水)

医者は大事にしたほうがお徳なんですよ皆さん

お笑い芸人の知事さん誕生で昨今すっかり有名になった宮崎県に宮崎県立延岡病院という病院があります。
全国に先駆けて麻酔科医集団辞職が発生して今で言うところの医療崩壊の先駆けとして有名になった病院ですが、最近またこちらの病院から集団辞職の話が流れてきました。
こういうこと自体は今や全く珍しくないのですが、地元紙の記事自体が何とも面白いので紹介しておきます。

延岡病院医師確保問題 “患者不在”の派遣協議労働環境整備難航(2009年2月9日宮崎日々新聞)

 3月末までに医師6人が退職の意向を示している県立延岡病院(楠元志都生院長)の後任医師確保が難航している。背景には、同病院の過酷な労働環境に対する派遣元の医局の不満や、医局の複雑な内部事情がある。医師がいなくなれば最も困るのは患者だが、派遣協議は医師が働く環境整備に議論が集中し、“患者不在”のまま進んでいる

 医師が退職すれば、4月以降、同病院では腎臓内科と神経内科が休診に追い込まれる。腎臓内科の患者は、心臓、肝臓病などとの合併症患者がほとんど。年間の患者数約200人のおよそ7割が救急患者だが、休診になればこの受け入れが完全にストップする。

 県北地区にはほかに対応できる病院がないため、急患は宮崎市や県外の病院に約2時間かけて搬送されることになる。延岡市腎臓病患者会の岩田数馬会長(55)は「(医師不在で)どんな状況になるか非常に不安だ。万が一という事態があり得る」と懸念する。

 神経内科では、年間約250人に上る脳梗塞(こうそく)患者に対応できなくなる。このため、両内科に入院している患者約40人は、3月末までに宮崎市などの病院への転院を余儀なくされる。

 両内科には、延岡病院を関連病院と位置づける宮大医学部に4つある内科の医局が医師を派遣してきた。医師確保について、ある医局関係者は「内科全体で前向きに話し合っている。早く結論を出したい」と説明する。

 しかし、派遣協議は難航。延岡市内には深夜帯(午後11時―午前7時)に軽症患者を診る医療機関がなく、本来は重症の救急患者が対象の同病院の当直医が受け入れているため、夜間当直を輪番で担う医師の負担が重いことも一因だ。近年は新医師臨床研修制度の影響で同病院の医師総数が減っていることから、医師1人当たりの当番回数が増え、昨秋には、宮大が医局に戻す予定の腎臓内科医が過労で倒れた経緯もある。

 内科医局関係者は「延岡病院は労働環境が悪く、10年前から県や病院に待遇改善を求めてきた。が、聞き入れてもらえなかった。それでも医師を派遣してきたが、今は誰も行きたがらない」と明かす。

 ただ、当の内科医局が医師を相次いで引き揚げたことが労働環境悪化につながっている事実もある。同大は今回の6人中3人のほか、昨年4月以降だけでも消化器系内科医1人と腎臓内科医1人を大学に戻したため、消化器系内科は休診となった。

 後任医師が決まらない一方で、内科医局は民間病院には医師を派遣している。ある関係者は「大学内のほかの医局や、ほかの大学の医局なら、民間病院の医師を減らしてでも医師不足の公立病院に派遣させる」と内科医局の対応に納得がいかない様子だ。

 既にアルバイト医師の派遣、医療秘書採用などで医師の負担軽減策を図っている県病院局は「九州内の大学に独自に医師派遣を要請しているが、厳しい状況。あとは(宮崎)大学からの返事を待つだけだ」と同大の対応を見守っている。

ま、ネット社会で一番嫌われるのは自分では何一つしないくせに他人に要求するばかりのクレクレ厨だなんてことは言いますがね…
基本的にこういう労働環境問題は労働者である医師と病院との関係であって、地域住民に医療を提供する義務というのは医師個人が負うものではなく病院当局、あるいは設置管理者である県当局が負うべきものであると言う認識をはっきりさせておかなければなりません。
過酷な勤務に耐えかねて現場の医師が逃げ出していく、その結果として医療が成り立たなくなるという現実に対して、「派遣協議は医師が働く環境整備に議論が集中し、“患者不在”のまま進んでいる」というのもおかしな話で、病院当局が多少なりとも患者のことを考えているなら医師が戻ってくる環境を整備するのが義務でしょう。

さらに面白いのが「ある関係者」なる人物の発言で、「大学内のほかの医局や、ほかの大学の医局なら、民間病院の医師を減らしてでも医師不足の公立病院に派遣させる」と内科医局の対応に納得がいかない様子とは一体どういうことなのか首をひねらざるをえませんね。
今どき「誰も逝きたがらない」病院になど人を送り込むような医局はありませんし、そんなことをすればあっという間に医局自体から医者がいなくなりますって(苦笑)。
失礼ながら宮崎県ではこういう感覚で医療というものを捉えているのがデフォであると言うのであれば、今後県下の公立病院における状況は悪化する一方でこそあれ何一つ改善するなどあり得ない話だと思いますよ。

一昔前までは(今でも?)医者が労働環境を云々するなどとんでもないなんて教育をする人たちが(医者自身の中にも)大勢いたのは事実です。
ある意味ではそういう洗脳が行き渡っていたからこそ医療の現場が回っていたとも言えるわけですが、今は時代が違うのだと言う認識を持たない旧世代の人々が現場をコントロールしようとするとこういうことになりがちなのですね。
たとえば現代の製造業の現場で働く人々に向かって「ああ野麦峠」だの「蟹工船」だのを指し示しながら「見ろ!世の中にはこんなに頑張っている人たちもいるんだぞ!お前らもっと働け!」なんてハッパかける人間ってまず考えられないでしょう?
ところが医療現場においては何故か大昔と同じロジックが通用すると勘違いしているあり得ない時代錯誤な方々が大勢生き残っていらっしゃるから、当たり前の反応としてこういう逃散という現象が起こってくるだけのことなのです。

さすがに最近では当たり前のことを当たり前に対応しましょうよと言う声が下の世代を中心にして次第に大きくなっています。
残業代未払い問題なんてものも近ごろようやく記事になるようになってきましたが、「医者は管理職であり自分の労働は自分で管理しているのだから残業代など払う必要はない」なんてとっくに論破された妙な屁理屈で逃れられると思っている人間が今も結構いるようなんですね。
高度にトレーニングされた専門職をいかに多数確保するかが経営上最大の要点であるという今の時代の医療事情に通じているならば、医者を使い潰して逃散させるなんてもったいないことが出来るわけがないはずなんですが…

未払い残業代1億2000万 県立中央病院 予算計上へ、労基署に改善報告 /山梨(2009年2月8日山梨日々新聞)

 山梨県立中央病院が医師の残業代を支払っていなかったとして甲府労働基準監督署から是正勧告を受けた問題で、2006、07年度の未払い残業代が総額約1億2000万円に上ることが7日、分かった。常勤医や非常勤医の残業時間で2万時間以上に相当する。未払い分を支払うため、関係予算案を2月定例県議会に提出する。また同病院は同労基署に改善報告書を提出。規定がなく残業代を払っていなかった非常勤医や専修医に支給するよう、要綱を改定するなどの措置を取った。
 同病院は、06年3月26日から08年3月25日にかけての残業代の適正な支払いや、今後の再発防止策を講じるよう同労基署から是正勧告を受けていた。
 問題となっていたのは、医師が申告した残業時間を認めなかったり、労使協定で定められた残業時間(1日4時間)を上回る時間外手当を支払っていなかった点
 同病院は是正勧告を受けた後、06、07年度分の残業に関する医師の申告と、当直日誌や手術記録などとを照らし合わせながら、既に支払った残業代との差額を算出していた。
 関係者によると、追加の支払いが必要となる残業時間は06、07年度とも年間1万時間を超えた。追加支払額が100万円を超える医師もいるという。継続勤務している医師だけでなく、退職した医師にも連絡を取って年度内の支払い完了を目指す。

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