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2009年2月 2日 (月)

メディカルスクール導入は医療への特効薬たり得るのか?

医学部と歯学部というのは割合同じ敷地内に存在していることが多く外から見ると近いように見えて、中から見ると案外交流がないものです。
しかし同じ医療系技術専門職であり国家試験資格所持者であるからには、それなりに参考になる部分も多々あると思うのですね。

その歯科というところ、最近ではどこもかしこも経営的に難しいと言います。
医科と比べるとはるかに開業で診療している人間が多いというのも一因なのでしょうが、多くの関係者が口を揃えるのは「歯学部定員増やしすぎだろ」という問題です。
かつては歯科も国際水準と比べてずいぶんと不足していると言われていましたが、それなら世間並みに数を増やそうと定員を増やした結果がこうなった…と聞けば、さてどこかで聞いたような話とずいぶん似ているんじゃない?と思う人も多いのではないでしょうか。
まずは記事から紹介してみます。

歯科医師試験、合格率低い大学は定員削減…有識者会議提言(2009年1月30日14時35分  読売新聞)

 歯科医師の質の向上を目指すため、文部科学省の有識者会議は30日、歯科医師国家試験の合格率が低い大学などに対し、入学定員の削減を求めていくとする提言をまとめた。臨床実習の終了後に実技試験を必ず行うことも求めている。

 歯科医師を目指す学生が学ぶ大学は現在、27大学(29学部)あるが、昨年までの5年間に10大学で入学志願者がそれぞれ3分の2に減少。昨年入試では3大学が定員割れだった。学生が集まらない大学は歯科医師国家試験の合格率も低迷しており、昨年は合格率が40%台という大学も二つあった。

学生の歯学部離れが進んでいるのは、患者の数に対し、歯科医の数が多すぎるためだ。有識者会議は「志願者の減少で優れた学生が確保できなくなっている」と指摘したうえで、国家試験の合格率が毎年低い大学や臨床実習に必要な患者を確保できない大学について、定員削減を提言。これを受けて、文科省は各大学に対し、自主的な定員見直し計画を来年度中に提出するよう求める。

 また、有識者会議は、質の高い教育を実現するため、臨床実習に必要な単位数を国が明確化することや、臨床実習後に実技試験を行う必要性も指摘した。

こういう記事を見るとどうも何だかなという気がするのですが、その理由を考えてみるとこの手の国家試験の不透明性にあります。
少し前にロースクール設立後に司法試験合格率が低すぎるのはどうなのよという議論がありましたが、あの場合も受験者数が激増したはずなのに合格者はさして増えていないのは考えてみるとおかしな話ですよね。
司法試験にしろ歯科医師試験にしろ正解や合格点が公表されているわけではありませんから、合否を決めるのは担当者のさじ加減一つということになります。
医師国家試験なども昔から問題の難易度がずいぶんと違うのに合格数が同じ不思議が言われていましたが、要するに合格数を恣意的にコントロールしているというわけですね。

最近では医師数を増やせ増やせの大合唱であちこちの医学部が定員増を行っていますが、一方で無闇に医師数を増やしたところで質の低下を招くだけだという意見も根強くあります。
医師数を増やすだけなら定員を増やすより国試合格基準を切り下げた方がはるかに即効性があるし、定員を増やすのが問題なくて国試を緩くするのが問題ありというのもおかしな話だと思うのですが、そのあたりはあまり議論になった形跡がありません。
とすれば、今後大幅に増加した定員のもとで学生が国試を受験する頃になったとしても、劇的な合格者数増加は見込めない可能性もあるということになりませんか。

そこで昨今のメディカルスクール論に戻るわけですが、一部の方々の間ではなおメディカルスクール設立論が盛んなようです。
ちなみにこの山崎學氏の御略歴はこちらの通りですが、御実家の病院の院長職を継がれて以来ずいぶんと苦労されているようで、医学教育についてはかねて独特の持論をお持ちのようですね(苦笑)。
まずは氏の主張するところのメディカルスクール導入の必要性というものを拝聴してみましょう。

メディカルスクールで「早急に検討会を」(2009年1月31日CBニュース)

【第47回】山崎學さん(日本精神科病院協会副会長)

 一昨年夏、日本精神科病院協会などでつくる四病院団体協議会の総合部会で、メディカルスクール検討委員会の設立を提唱した日精協の山崎學副会長。その後は同検討委の委員長として報告書の作成に尽力し、今年1月22日、念願だった報告書発表会の開催にこぎ着けた。
 「厚生労働省と文部科学省、それに現場の人間が加わった合同検討会の設置が早急に必要だ」と訴える山崎副会長に、日本版メディカルスクールの創設に向けた今後の方向性などについて聞いた。(敦賀陽平)

―なぜメディカルスクール構想を提唱しようと考えたのですか。
 従来の6年制というのは、高校時の評定平均値(成績)が(5段階で)4.0前後の生徒じゃないと医学部に入れない。偏差値偏重みたいな形で医者をつくってきた。それが果たして良いのかというと、実際は医療崩壊を招いた一因になっているような気がするんですね。
 高校卒業時に確固たる信念を持って「医者になるぞ!」という子どもは、そんなに多くないような気がします。親に「医者になれ」と言われたり、学校の先生に「お前、この偏差値なら医学部に行けるから」みたいなことを言われたり…。その一方で、研修医の1割ぐらいがうつ状態だという報告もあります。全部が全部そうだとは思いませんが、単に偏差値が高いだけで医者という道を選択している気がするんですね。もう少し常識があって、はっきりとしたモチベーションのある人が医師になった方がよいのではないかと感じていました。
 個人の素質の問題かもしれませんが、素質と教育の両方が関係している気もします。また、コミュニケーションがうまく取れないのに、偏差値が高いから医学部に入ってしまう学生もいるように思います。本来、医者はコミュニケーションスキルが大切なはずなのに、そこが十分ではない人が医者になると、患者も大変です。だから実感として、もう少し違う形の教育制度というのがあっていいと思ったんです。

―四病協の検討委は、どのようにして始まったのですか。
 一昨年の8月、日精協の方から「メディカルスクールの検討をしたい」と提案しました。その後、各団体の了解を得て検討委がスタートしました。外部の委員には、中田力・新潟大脳研究所統合脳機能研究センター長、福井次矢・聖路加国際病院長、本田宏・済生会栗橋病院副院長、金村政輝・東北大病院総合診療部講師という4人の先生方に入っていただきました。
 中田先生は新潟大のほか、米カリフォルニア大でも教鞭(きょうべん)を執っていますから、両方の制度に精通しているということで、中田先生を中心に検討が始まりました。第3回会合では、厚労省の松谷有希雄前医政局長からも話を聞きました。
 そのころ、シンガポール政府が300億円を出資して、米デューク大のシンガポール分校をつくったので、中田先生と2人で視察にも出掛けました。以前はシンガポールも、定員250人ほどの6年制の医学部1つしかありませんでした。医師不足の中で、既存の医学部の定員を増やす動きもありましたが、むしろ4年制の新たな医育制度を考えた方がよいということで、政府がデューク大を招聘(しょうへい)したのです。

―報告書の中でも、諸外国のメディカルスクールについて触れていますね。
 日本の外を見ると、例えばオーストラリアは既存の医学部の半数以上をメディカルスクールに変えています。また韓国は、近い将来に6年制のすべての医学部をメディカルスクールに変えるそうです。
 ただわたしたちは、従来の6年制をいじるつもりはありません。要するに、国が今の医師不足の中で、医者の養成数を5割以上増やすと言っているわけですから、8000人定員のところで4000人増やすことになった場合、その4000人の半分ぐらいをメディカルスクールでやらせてほしいだけです。

―つまり一本化ではなく、並存ということですか。
 そうです。ただ並存の場合、6年制と4年制の2つの制度が混在してしまう「ダブルスタンダード」の問題があります。北米に倣えば、4年制の卒業時に医学博士とすべきでしたが、現在も4年制で学士入学できる制度があります。その学生も従来の6年制と同様、卒業した時点では医学士なんですね。だからメディカルスクールも、卒業生に医学士を与えることにすれば、ダブルスタンダードにはならないと思っています。
 それから、メディカルスクールという言葉にアレルギーを持つ人がいますが、この名称に別段こだわらなくても、全入制の新しい学士入学制度でも構いません。現在の学士入学制度では、100人の枠に 5-10人の学生が3年次に編入されます。だから全員を学士入学で取るという、既存の制度の変形であってもよいと考えています。

―この制度が実現する上で、問題点や課題はありますか。
 一番大きな問題は、トレーニングスタッフの研修です。というのは、例えば、現在の医学部の教官がメディカルスクールの教員をできるかといえば、できません。なぜなら、6年制の教育しか体験していないからです。従って、海外の既存のメディカルスクール教育システムを体験してもらい、その後、伝達講習などで教官の養成が必要になります。
 あるいは、現在、米国で働いている日本人の先生に教官になってもらうというやり方もあります。デューク大のシンガポール分校でも、米国からのスタッフが入っています。シンガポール分校の教官は現在、90%がシンガポール人ですが、臨床、教育スタッフは米国のデューク大で教育を受けて帰国しています。

―四病協の今後のタイムスケジュールを教えてください。
 まず国会議員の先生方に、メディカルスクールについて少しずつご理解いただき、最終的には、やはり厚労省と文科省、そしてわたしたち現場の人間が入った合同検討会をつくる必要があります。年度内は無理かもしれませんが、4月以降の新年度に実現できればと考えています。

ま、ロースクールの現状、歯科医師試験の現状を目の前で見ている上で、それでもなおメディカルスクール設立を目指すというのであれば、その有用性に対する検証は必要でしょうね。
単なる医学部定員増、医師国試受験者数増というのであれば既存医学部の定員を増やせばいいのですが、メディカルスクール設立推進論じゃが設立を求める根拠として「医師としての適性は高卒ストレート組より社会人経験者の方が優れている」といっている点には注目しなければなりません。
そう主張するなら現状で社会人入学、学士入学といった人々はそれなりの数がいるわけですから、彼らが素晴らしい医師として活躍し高卒組より社会貢献しているのだというデータをきっちりと出してこないと話にならないでしょうね。
特に山崎氏が院長職を務めるサンピエール病院のような民間病院に回ってくる志の高いドクターがどれほど大勢輩出しているのかといったあたりを明確にしていただければ、ずいぶんと説得力が出てくるというものですが如何でしょうか?

医学教育改革を主張するのであれば、例えば現在医学部の経費の大多数が大学病院赤字の穴埋めにつぎ込まれ「医師一人育てるのにウン千万」などという暴論がまかり通っている状況を改善するために大学病院廃止を主張するとか、法曹界や各種クレーム対応専門家とも協力して大々的に医学教育にリスクマネージメントの概念を取り入れるとか言った話の方がずっと受けが良さそうに思えますがね。
いずれにしても先行する類似のシステムがこれだけ見事にこけているわけですから、公の場で口から言葉を出して社会を巻き込もうとする以上、言いっぱなしではなくそれなりの責任が問われるのは当然だと思います。

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コメント

 山崎學氏、語るに落ちるというか、最後には「既存の制度の変形でもよい」とまでおっしゃっているのには涙を誘われました。それでもなお、既存の学士入学の定員増ではなく新しい学校にこだわる、というのは何かまだ隠している意図があるんじゃないかと、邪推してしまいます。諸外国のメディカルスクールなんて言っていますが、目くらましだと思います。規模が全然違うのだから同じものをつくろうとしているとは思えません。思いつくのは、1校の定員100人として20校のメディカルスクールを作りたいというのですから、地域枠みたいに卒業生全員の就労地域を制限するとか、あるいは診療科の選択に制限を加えるとかですが、どうなんでしょう?
 案外、フィジシャン・アシスタントの話に飲み込まれて終わりそうな気もします。

投稿: JSJ | 2009年2月 3日 (火) 11時48分

>現在の医学部の教官がメディカルスクールの教員をできるかといえば、できません。なぜなら、6年制の教育しか体験していないからです。

意味不明。
ほんと、しっかりしたデータを出してほしいものです。
話がポシャッても責任を問われないんでしょうね。

投稿: 放置医 | 2009年2月 3日 (火) 12時49分

何であれ、現場の感覚と全く乖離しているような話は眉に唾付けて聞くことにしています(苦笑)。

投稿: 管理人nobu | 2009年2月 4日 (水) 11時29分

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