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2009年2月 9日 (月)

求められる医療事故調=厚労省案通りではないはずですが…

先日もお伝えしました医療事故調絡みの公開シンポジウムがこれから各地で開かれていくということですが、ぼちぼちと関連記事が載るようになってきました。
まずは関連記事から幾つかを拾ってみましょう。

医療安全調、捜査機関への通知めぐり両論(2009年2月3日CBニュース)

 関東甲信越厚生局が1月31日に開いた「医療安全調査委員会(仮称)に関するシンポジウム」には、病院団体幹部や医療事故の遺族、法律の専門家らが参加し、それぞれの立場から私見を交えて見解を述べた。厚生労働省が昨年6月に公表した医療安全調の大綱案に盛り込まれた調査委から捜査機関への通知規定などが焦点になり、医療関係者と医療事故の遺族らの間で意見が分かれた

■「医療現場が一層、委縮」/「遺族が独自の判断で警察に」
 日本病院会の大井利夫副会長は、医療事故の再発防止を「医療界の社会的責務」に位置付けた上で、「医療安全調査委員会の創設は喫緊の課題だ」と強調した。一方で、調査委の役割については「医療安全文化」の構築に重点を置き、事故に関連する法的責任や賠償問題の判断とは一線を画すよう提案。医療関連死に関する医学的見解を、司直の介入に対して優先実施することも求めた。
 安全調から捜査機関への通知については、故意による事故や関係物件の隠滅・偽造・変造が疑われる場合などの事例に限定し、「標準的な医療からの著しい逸脱」や「リピーター医師による事故」は通知対象から除外すべきだと主張した。また、医療法を一部改正し、医療機関から安全調への届け出基準を明文化することも提案した。

 一方、全日本病院協会の西澤寛俊会長は、厚労省の大綱案で示されている調査委の役割を「再発防止」と「有責判断・被害者補償」-に大別し、これら2つの役割を同じ組織が担うのは困難だと指摘。警察などによる捜査を犯罪による死亡などに限定する一方、原因究明や再発防止策の検討は「日本医療機能評価機構」に委ねる形を提案した。
 大綱案については、主として有責判断と被害者補償を目的にしていると指摘。その上で、捜査機関に通知する場合の基準が明確にされないまま新制度が実現すれば、医療現場の委縮や医療崩壊が一層、深刻になりかねないとの懸念を示した。

 これに対して、大学病院の医療事故で家族を亡くした小室義幸氏(医療の良心を守る市民の会)は、調査委から警察への通知について、「こうした規定が盛り込まれなければ、遺族が独自の判断で警察に話を持って行ってしまうことも多くなるのではないか」との見方を示した。
 小室氏は「医療事故の真相究明をしっかりするために、新制度の創設はぜひ必要だ」と主張。安全調が公表する報告書を全国の医療機関が共有することで、医療の質向上に役立つとの見方を示した。
 また、医療関係者以外の「有識者」が安全調に加わる方向が示された点に対しては、「医療界の閉ざされたドアを社会に開くきっかけになるのではないか」と期待感を示した。

■「刑事過失は高度な専門的判断」/「通知規定、警察介入の防波堤に」
 神谷法律事務所の神谷惠子弁護士は、医療事故をめぐるこれまでの議論を、「刑事や民事の法的過失論や誰の責任かの視点でなされ、根本的な原因究明の議論には及ばない」と総括。「医療安全の向上」や「事故の再発防止」を目的とする調査委の設置は、国民的な課題を解決できる事業だと評価した。
 ただ、調査委が捜査機関に通知する事例として「標準的な医療からの著しい逸脱」が掲げられた点に対しては、「標準的な医療が定まっていない分野も多い」などと否定的な見方を示した。さらに、「刑事過失は高度に専門的な判断で、地方の一委員会が判断することには適さない」とも指摘した。
 また、医療機関から調査委への届け出範囲が「誤った医療に起因した死亡」などに限定された点については、「医療安全の目的を半減することになる」と指摘。届け出があった事故を無過失補償の対象にするなど、医療機関からの届け出を促す仕組みづくりを求めた。

 このほか、コーディネーターを務めた樋口範雄・東大大学院教授は、調査委と捜査機関の関係について、「医療の話でなくなった時にだけ警察に通知する形を残すことで、警察が入ってこられなくなる」と述べ、捜査機関による介入を防ぐには、調査委から捜査機関への通知規定がむしろ必要だとの考えを示した。

「医療版事故調」設置…警察介入めぐり見えぬ着地点(2009年2月6日産経ニュース)

 広尾病院の事件を契機に、中立的な医療版事故調査委員会の設置を求める声が医療界と被害者遺族ら双方から上がり、厚生労働省は昨年6月、事故調実現に向けた設置法案の大綱案を公表している。しかし、「警察の介入」をめぐって医師法21条の扱いや、医療界との議論が暗礁に乗り上げ、着地点が見えないのが現状だ。

 「殺人事件を調べる警察官が、犯意のない人を調べることはありえない」。1月25日、仙台市内で行われた事故調についてのシンポジウムでパネリストとして参加した大学病院の医学部長はこう主張した。

 厚労省が昨年6月に発表した大綱案では、医師に異状死を警察に届けることを義務づけた医師法21条を改正することを明記し、刑事処分については、事故調が警察へ通報する対象を「故意や隠蔽(いんぺい)、標準的な医療から著しく逸脱した行為」と定義。医師法そのものを改正することで、捜査当局の介入が限定的になるよう配慮した。

 それでも、医療界の一部は「警察に通報する事例の定義がはっきりしない」「医師が困難な治療を萎縮(いしゅく)しかねない」などと反発しており、日本救急医学会など5学会が反対している。

 昨年9月には、帝王切開手術で母親が死亡した福島県立大野病院の事件で、業務上過失致死などの疑いで逮捕・起訴された担当医師の無罪が確定するなど、医師の過失をめぐって判断が難しいケースもあった。

 シンポジウムには、永井さんもパネリストとして参加。「原因の究明、事故の再発防止のためには、事故調が必要不可欠。小さくてもいい。まずはつくってみて、大きく育てればいい」と訴えたが、法案の中身はまだ固まっていない。

 東京HIV訴訟弁護団事務局長の鈴木利廣弁護士は「警察は素人が分かりやすい事例を立件する傾向があり、医療の専門家が見れば著しく逸脱した医療行為であるのに、警察の立件が難しいケースもある。まずは医学専門家の判断が重要である」と指摘。

 さらに、「これまで医療界のかばい合い体質が医療不信を招いてきた。一般の人や医療事故被害者からみても公平で中立的な事故調をつくらなければ、医療者と患者の信頼関係は構築できない」と話している。

概ね議論も無限ループに入ってきているように思いますが、結局のところ一番のネックとなっているのが警察・検察といった司法との関わり方であるように思います。
流れを見てみると特に現場に近い医療側は責任追及を前提としたシステムでは結局原因追及には結びつかない、医療の萎縮を招くと反対している。
一方で患者側と言われる関係者もまず第一は原因究明と再発防止であって警察への通報は二の次という話になっている。
ところが厚労省案では文言を微妙に変えながら終始一貫して警察への通報ということをうたっている、となれば誰がそういう話に持っていこうとしているのかと考えざるを得ません。

例えば上の記事中で「捜査機関による介入を防ぐには、調査委から捜査機関への通知規定がむしろ必要」と主張している樋口範雄氏などは、経歴を拝見しますと英米法が御専門の法学畑の人物のようです。
また風の噂に聞くところでは司法関係の筋から「これだけ医療訴訟が面倒なことになっているんだから、明確な基準でもさっさと作ってもらわないと困る」といった意見が強く、関係省庁間のやり取りなどもあった結果こういう制度にしましょうと言う話になったとか(あくまで根拠レスの噂話ですが)。
そういうところを見ていきますと、一番の当事者である患者と医療関係者からずいぶんと遠いところで大枠が決められている、その結果まとまるべきものもまとまらなくなっているのだとすれば、これはずいぶんと困った話だなと言う気もしてくるわけですが。

厚労省としては全国でこうしたシンポジウムを順次開いていくという意向で、この通り当事者の意見はちゃんと聞きました、後はシステムを立ち上げてからまた考えましょうと言う話に持っていきたい様子なのは見え見えですがどうでしょうか。
事故調に関してはかねて民主党は原因究明と責任追及は分離すべきだといった意見から厚労省案に反対を立場を取っており、政府与党内でも必ずしも拙速を求めているといった感じでもなさそうです。
厚労省側はやること自体はもう決定していて、後は範囲の微調整だけだという態度を崩していませんが、こういう態度でいる限りはまとまるものもまとまらずに終わるか、あるいは当事者の声を無視して強行するかの二つに一つという気がしないでもないのですが。

医療安全調設置法案「今国会提出は慎重に判断」(2009年2月2日CBニュース)

 厚生労働省の榮畑潤大臣官房審議官(医療保険、医政担当)は1月31日、茨城県つくば市内で開かれた「医療安全調査委員会(仮称)に関するシンポジウム」(同省関東信越厚生局主催)で講演し、医療事故死の原因究明や再発防止策を検討する安全調の設置法案について、一般国民や関係者の合意形成ができているかを踏まえ、今通常国会に提出するかどうかを慎重に判断する考えを表明。また、仮に法案が成立したとしても、新制度の本格施行までに最低3年は必要だとの認識を示した。

 榮畑氏は「医療事故死が起きた場合、医療関連の情報を十分に持たない遺族が真相を究明してほしいと願うのは、当然のことだろうと思う」と述べる一方で、真相究明を望んだとしても裁判制度を活用するしかない現状では、「必ずしも原因究明につながらない」と指摘。医療に対する国民からの信頼回復や、医師など医療従事者が委縮せずに医療を行える環境整備の観点からも、専門家らによる安全調の設置が必要だとの認識を示した。
 また、「設置法案を今国会に提出するには、医療界を含む国民のコンセンサスを得なければならない」と強調。法案成立後、新制度の本格施行までには「少なくとも3年」の準備期間が必要との認識も示した。

新制度をめぐって、合意形成できていない点としては、▽安全調の設置場所▽医療機関から安全調に届け出る死亡事故の範囲▽安全調が捜査機関に通知する「標準的な医療から著しく逸脱した医療に起因する死亡」の具体的中身-などを挙げた。
 このうち安全調の設置場所については、「コンセンサスを踏まえて決める」と述べた。また、医療機関から安全調への適切な届け出を促すため、届け出範囲に関する基準を公表する方針をあらためて強調。さらに、医療機関から届け出のあった事故が「標準的な医療から著しく逸脱」していたかどうかの判断基準として、指針案を公表する考えも示した。

 榮畑氏は「医療事故が刑事手続きに掛かるかは、安全調による専門的な判断を尊重し、安全調からの通知の有無を踏まえて対応することになる」と述べ、安全調の設置が捜査機関による謙抑的な対応につながるとの見方を示した。また、こうした方向について捜査当局と合意済みであることも繰り返し強調した。

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コメント

またここでも医療機能評価機構ですか。
どんどんここの利権がたまっていきますね。
病院評価で審査料という守代を吸い上げ、無過失保証制度で患者(=保険料から)からカツアゲして、ここで医療安全調査という形で警察とイケイケになる。
(ここまで書いて、ヤ〇ザとおんなじメカニズムだと気付きました)

おいしい天下り先を作ってウハウハですな。

投稿: Seisan | 2009年2月 9日 (月) 14時47分

おっしゃるとおり利権だと思います。
医療現場にもようやくおいしい利権を構築しつつあるということでしょう。

ちなみに部外者の方にはほとんど知られていないこの医療機能評価機構という組織ですが、こんな素晴らしい仕事をやっていただいている組織です。
ちなみに私、久しく前から運転免許更新時には交通安全協会費は支払っておりません(笑)。

日本医療機能評価機構の真実
http://nuttycellist.blog77.fc2.com/blog-entry-135.html

厚労省元局長の天下り先 無給ポストを有給に
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik3/2004-07-27/15_01.html

日本医療評価機構~保険会社と天下りのための法人~
http://www.sizen-kankyo.net/bbs/bbs.php?i=200&c=400&m=191200

投稿: 管理人nobu | 2009年2月10日 (火) 10時49分

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