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2009年1月 8日 (木)

医療行政最近の話題

昨年一年に限っても医療関連の話題は色々なものがありましたが、総じて明るい話題には全くと言っていいほど乏しかったことは認めざるを得ないでしょう。
このように抜き差しならぬ状況になっている医療の現状について、ようやく国民世論に訴える道具として使えると各党も認識してきているのか、近ごろでは医療関連の政策があちこちから聞こえてくるようになりました。
本年頭の東京新聞の記事からこれらの概観を拾い上げてみましょう。

医療再生、各党は? 自民 研修見直し主張 民主 医学部1.5倍増員(2009年1月5日東京新聞)

 国民の生命と健康を最前線で守る医療。安心して治療を受けられるようにするのは、政治の重要な役割だ。「医療崩壊」が叫ばれる中、各党はどんな取り組みをしているのだろうか。昨年には自民、民主、公明各党などの有力議員ら約百五十人が参加して、医療再生を目指す議連が発足するなど、与野党が足並みをそろえた動きもあるが、ここではできる限り各党の違いにスポットを当てたい。

 新人医師が自由に研修先の病院を選び、短期間ずつ各科を巡回する現行の臨床研修制度は、結果として外科、産婦人科、小児科などへの敬遠を招いた。このため政府は二〇〇九年度、全国の四十大学で不人気科目に限り、専門性を高めた研修が受けられる特別コースを設け、二百十二人を受け入れる。

 さらに、厚生労働省と文部科学省は、臨床研修の大幅な見直しも視野に、専門家の検討会で議論を進めている。特定科目の研修専門化に加え、研修医が集中しがちな都市部の定員に上限を設けることも検討している。

 政府に歩調をあわせるように、自民党側も、臨床研修を見直すべきだとの意見は強い。元厚労相の尾辻秀久参院議員会長は「科目、地域の偏りを大きくしたのは事実。何らかの方法で、無理やりにでも医師を配置する方法を考えなければ」と主張する。

 これに対し、民主党も臨床研修制度の見直しを提唱。都市部の研修人数を調整し、別の研修先に振り向ける必要性を指摘している。

 ただ、研修の抜本見直しは、職業選択の自由を奪われかねない医師にとっては好ましい話ではない。医療問題に詳しい同党の鈴木寛参院議員は「単純に昔に戻すことはできない。戻したら、医学部を希望する高校生が減る」と、規制再強化には否定的だ。民主党は解決策として、大学医学部の大幅定員増と、不人気科目の待遇改善を打ち出している。

 大学医学部の定員は、現在は七千人台後半。政府は〇九年度は約七百人増やし、過去最高の八千四百八十六人を受け入れる予定。だが同党は現状の一・五倍にあたる一万二千人程度まで増やすことを念頭に置いている。

 不人気科目の勤務医の待遇も「サービス残業が多すぎる現状を是正し、休みと適正な給料をあげれば、少しは立ち直る」(鈴木氏)という考えだ。

 自民、民主両党の最大の争点は、医療費を賄う財源論だろう。

 自民党は、年間の社会保障費の自然増を二千二百億円圧縮することを義務づけた「骨太方針」に縛られ、〇九年度予算案でも転換を踏みとどまった。医療費は、ぎりぎりやりくりしているとの意識が強く、根本的な打開策は消費増税しかないとの見方が支配的だ。

 民主党は当面、特別会計や公共事業費の削減などで、国民負担を増やさずに医療費を確保する考え。消費税をどうするかは、まだ明示していない。ただ民主党の政策をすべて実現すると、大幅な歳出増になるだけに、財源について一層の説明責任が求められる。

 共産党は、医師数の増加や国の責任による産科や小児科の支援を提言。社民党は、医療費の国庫負担割合引き上げ、地方の病院で臨床研修を受ける医師への奨励金制度の創設などを求めている。

このところテレビの討論番組などを見ていても医師不足問題でやり合っているのを見かける機会が増えたと思いますが、各党の提案を見ていて何か気がつきますでしょうか?
各党の政策主張から桝添厚相が言うところの現場に立つ医師にとってのインセンティブとなるべきアメの部分について見ていきますと、例えばこの記事から拾うとこんな感じでしょうか。

自民党
なし

民主党
不人気科目の待遇改善

共産党
国の責任による産科や小児科の支援

社民党
地方の病院で臨床研修を受ける医師への奨励金制度の創設

もちろん主張の全てを網羅しているものではないでしょうが、テレビ討論や他の報道を見ていてもどこの政党案でも目立ったインセンティブというものはなさそうなんですよね。
かねて医師強制配置を主張している自民党はともかく、野党各党の言うところの不人気診療科への支援といったところで、例えば診療報酬面で多少優遇したところで医療機関の収入となるだけで現場の医師にとってのメリットは全くと言って良いほどなさそうです。
社民党に至っては今や各地の自治体で行われている奨学金制度そのままといったものであって、借金漬けにして個人の将来を縛り付けるという「一体今はいつの時代ですか?」なシステムでしかありません。
何もないよりは何かあった方が良いだろうと言う言い方も出来るかも知れませんが、崩壊しかかっている現場の志気をこうした政策でどれだけ引き上げられると思っているのか、あるいはそもそも引き上げる必要性など認めていないのか、いずれにしても日頃お互いの政策を非難し合っている与野党各党が興味深い一致ではありますよね。

各党の政策案はともかくとして実際の医療行政は厚労省が主体になって動いているわけですが、こちらの方での動きはどうでしょうか。
最近では何でも識者を集めて会議というのが流行のようですが、問題はその集められたメンツかなと思うのがこちらのニュースです。

救急・周産期医療対策室を新設―厚労省(2009年1月5日CBニュース)

 救急医療と周産期医療に関する厚生労働行政の縦割りを解消するため、厚生労働省は1月1日付で、省内に救急・周産期医療等対策室を設置したと発表した。これまで救急医療を担当していた医政局指導課と、周産期医療を担当していた雇用均等・児童家庭局母子保健課の職員のうち14人が担当。室長は三浦公嗣医政局指導課長が併任している。

 周産期医療と救急医療に関する行政は、旧厚生省側の医政局と、旧労働省側の雇用均等・児童家庭局で担当が分かれていた。このため、現場からは行政の縦割りを解消するよう求める声が上がり、妊婦の救急受け入れ不能が相次いだことを受けて昨年省内で開かれた懇談会でも、日本産科婦人科学会と日本救急医学会が共同で、国や都道府県などに母体救急の担当部署や責任の所在を明確化するよう求める要望を出していた。また、舛添要一厚生労働相も懇談会で、行政の縦割りを解消する必要性を指摘していた。

 同室は指導課内に設置され、指導課から11人、母子保健課から3人が入った。これまで両課がそれぞれ担ってきた救命救急センターや周産期母子医療センターに関連する業務を引き継いだ。室長補佐を併任する中谷祐貴子指導課課長補佐は、「周産期医療と救急医療の担当が同じ室となったので、今まで以上に省内の連携を取って進めていきたい」と話している。

 三浦、中谷氏以外の同室の職員は次の通り。かっこ内は前職。

 救急医療専門官(会津中央病院救急救命センター)中野公介▽災害医療対策専門官(指導課災害医療対策専門官)道上幸彦▽救急医療係長(同課救急医療係長)田鍋一樹▽助成係長(同課助成係長)星紀幸▽小児・周産期医療係長併任 母子保健課予算係長・村本利成▽主査、救急医療係(指導課主査、救急医療係)猪瀬久和▽主査、助成係(同課主査、助成係)工藤好宏▽救急医療係(同課救急医療係)石原寛人▽同(同)六波羅隆▽助成係(同課助成係)寺島隆浩▽併任 母子保健課長補佐・小林秀幸▽同 国立武蔵野学院・林潤一郎

一応口では「行政の縦割りを解消」なんて言っていますが、これを見る限りあくまで厚労省内での縦割り解消にしか過ぎないようです。
本気で取り組むつもりなら最低限、各地で実際の周産期・救急医療を担っている公立病院を担当する総務省も巻き込まないと駄目じゃないですかね?
どうもこのあたりは全くのお役所仕事だなとしか思えないような非効率な話で、どうせやるならもうちょっと頑張ってくれよと思うところです。

ところで周産期医療行政と言えばこのところ一番の話題は、この1月1日から例の産科医療補償制度が始まったことでしょう。
とりあえず厚労省の政策的誘導もあって最終的にはほとんどの分娩取り扱い施設が加入となったようですが、名前と裏腹に補償の対象が極めて限られるという問題に加え、それ以前に色々と疑惑めいたことが言われていることについては以前にも少しばかり書きました。
結局のところそれら諸問題のほとんどがそのままに見切り発車となったようですが、この話題は例によって長くなりそうなので明日以降に回すことにします。

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コメント

 インセンティブとしては、鈴木寛氏の言っている通り「サービス残業が多すぎる現状を是正し、休みと適正な給料をあげれば、少しは立ち直る」が正論だと思います。が、実施するとなると現状ではベッド数の削減=病院を廃止するしか手はありませんから、誰も口に出さないのでしょう。わざわざ言う必要がないからなのか、やぶ蛇をつつきたくないからなのか。nobu様も以前から指摘されている通りベッドの削減は20年(くらいかな?)も前から国が粛々とすすめてきたことであって、この期に及んでも、今日救急病院の休止や赤字病院の廃院が相次いでいるのは国がそのように政策誘導してきた結果である、と誰も国民に説明しないのはどうした訳でしょう。
 たとえばNICUについて、こんな凶暴な妄想を抱きました。NICUのベッド数を現在NICUに常勤している医師数の1.5〜2倍くらいに減らしてスタッフをそこに集める。年俸は1000〜1500万でいいでしょう。医者も交代勤務が可能になります。そうすれば新生児をやってみようという若手は必ず現れます。ベッド数と医師数が1:1になったら次の施設を作って独立させる。案外このやり方のほうが、NICUの増床も速くないかしら。
 私は、国は縦割り行政だとか失策だとか、おバカのふりをして医療崩壊を粛々とすすめていきたいんだと思っています(理由はそのほうが面白いからというのと、そうしないと政策の意図を考える気にならないからです)。

投稿: JSJ | 2009年1月 8日 (木) 13時55分

一応どんな政策であれ建前上は状況を改善することを目的に行っているわけですから、単なる無知や無能によるものであれば良くなった場合もあれば悪くなった場合もあるといった結果になりそうなんですがね。
厚労省のやってきた事がどういうことになってきたかを見ていくと、ある方向性にむけて極めて効率的かつ首尾一貫した結果をもたらしているように思えるのは単なる気のせいでしょうか。
一部で見られるように彼らを現場を知らない馬鹿だと侮るのは、色々な意味で状況を見誤ることなんじゃないかなと思いますね。

投稿: 管理人nobu | 2009年1月 9日 (金) 11時57分

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