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2009年1月 7日 (水)

医療・介護業界の労働問題

この正月に入ってきたニュースですが、このたびようやく初めての医師の労組が出来たそうです。
今日はまずこちらのニュースから紹介してみましょう。

初の医師全国労組 今春結成 待遇改善など訴え(2009年1月4日東京新聞)

 医師による全国統一の労働組合「ドクター・ユニオン」が今春結成されることが三日、分かった。医師が加わる全国規模の労組としては、看護師や介護従事者ら幅広い職域の人たちで構成する日本医療労働組合連合会などがあるが、医師だけでつくる全国規模の労組は初の試み。

 「ユニオン」は、医療の質向上に取り組む団体「全国医師連盟」が、中心となって発足の準備を進めている。結成後は主に、勤務医の待遇改善や、医療事故で訴訟を起こされた医師の支援などに取り組む。

 同連盟は、医療の現状に危機感を持った一線の医師約八百人が参加して、昨年六月に発足。最大の医師団体である日本医師会や、学会団体とは別に、医療再生に向けた提言などを行っている。

 全国規模の労組をつくる構想は、現場の医師が労働者の立場で横断的に情報を共有し、雇用者側と交渉する必要性を感じたことから浮上。選手の地位向上を目指して労組化した日本プロ野球選手会などを参考に、具体的な組織や活動内容の検討を進めている。

 発足時の参加者は、同連盟所属の勤務医が中心になる見通し。無党派の組織にする方針。勤務状態が厳しく、訴訟リスクも高い外科、産婦人科、小児科などの医師の待遇改善や、都市と地方の医師の偏在の解消などについても取り組む。

 現役の内科勤務医で連盟の黒川衛代表は「勤務医は疲弊し、日本の医療は持てる力を発揮できない。労働問題に無頓着だった勤務医自身も反省しなければいけない。既存の労組から独立し、国や県などの雇用者を相手にしていきたい」と話している。

少し前に全国医師連盟(全医連)という組織が成立し、既存の医師会に対する第二の医師団体としての活動を始めたことはご記憶のことかと思いますが、このドクターユニオンも全医連が母体となっているということです。
ただ全医連と言う組織は開業医の利権団体である医師会と比較すれば勤務医主体という性質を持つとはいえ、個々の医師の権利擁護や待遇改善を主目的とする組織ではありませんでしたから、こういう目的をはっきりさせた別組織を立ち上げるというのは必然的な流れだったのかも知れません。
実態を無視して医師を管理職という地位に祭り上げ労働基準法無視の違法行為を正当化しようとしたり、勤務記録を捏造してまで正当な報酬支払いを拒否しているような医療機関が各地で問題化していますが、そろそろ医師も正当な労働者としての権利を主張するという当たり前の社会常識を身につけていっても良い頃だと思いますね。
少しばかり気になるのは「都市と地方の医師の偏在の解消などについても取り組む」といった大上段な言葉がまだ出てくるところですが、まずは活動を伝える続報を待ちたいと思います。

これも現場の待遇改善と絡む話ですが、世間では不景気で求職難と言いながら相変わらず人手不足に泣いているのが他ならぬ医療と介護業界なんですね。
特に介護の場合は何しろ世間からあまりに敬遠されすぎて、これだけ需要があるのに学校に学生すら集まらないという冗談のような?記事がこちらです。

県内養成施設で介護職不足 志願も定員割れ/愛媛(2009年01月05日愛媛新聞社)

 高齢化の進行で介護職の人材確保が課題となる中、愛媛県内の介護福祉士養成施設で2009年度の学生募集休止や定員縮小が相次いでいる。一方、介護職の求人は引く手あまたで求職数とのギャップは拡大。厚生労働省調査では08年度、全国の同施設定員に対する入学者数は46%にとどまっており、各施設はより質の高い介護を提供できる人材の育成などをPRし、生き残りを模索している。
 県内の養成施設は専修学校4、短大2、大学1の7施設で、08年度入学者はいずれも定員割れ。専修学校では、松山医療福祉専門学校(松山市、山本学園)と松山総合福祉専門学校(同、英数学館)が、志願者減などを理由に募集休止を決定。愛媛医療福祉専門学校(同、河原学園)は本年度120人に増やした定員を元の80人に戻した。

以前にも少し書きましたが、とにかく政府の設定する介護報酬が安すぎてまともな給料が支払えないから人が集まらない、需要に対して供給過少なため過酷な労働に耐えかねて次々とスタッフが辞めていく、残ったスタッフは更なる過酷な労働を強いられるという悪循環に陥っているのが介護業界なのですね。
政府は三年ごとの見直しを行う介護報酬で本年始めて値上げ方針に転じたとのことですが、事業者自体がどこも経営難という現状でたかだか3%のアップがどれだけ現場スタッフの待遇改善に回ってくるかと考えれば、今後も当分の間この状況が大きく改善する見込みは乏しいだろうと容易に想像できるところです。
そもそも医療と介護を切り離したこと自体が見かけの医療費を削減するための策略だったなどと言われているところですが、医療のバックアップを勤めるはずの介護が崩壊寸前という状況ではいずれ患者は介護から医療に逆戻りするしかないという本末転倒な事態になりかねません。

いつも不思議に思うことですが、日本経済もこれからは内需主導に転換していかなければならないなどと世間で言う割に、これだけ国民的需要も将来性もあるはずの(何しろ厚労省も認める天井知らずの成長産業です)医療・介護業界にどうしてもっと資本を投下して国民産業として育てていこうという声が聞こえてこないのでしょうか?
実際に今もあることですが、能力も熱意もある勤勉な労働者が身内の介護のために職を辞さなければならないと言う状況を見聞するにつけ、医療や介護をもっと充実させていけば国内雇用の促進や熟練労働者の離職防止による輸出競争力の維持など様々なメリットがあると思うのですがね。

漏れ聞こえてくる風の噂によれば、医療業界というところは天下り利権の旨みが乏しいため省庁からすると実利的にも心情的にも優遇し難いという背景事情があるやにも聞きますが、実際のところはどうなのか知らずとも政策的にずいぶん冷遇されていると感じている現場の人間は多いのではないでしょうか?
そう言えば最近は保健所所長を医師以外にも解放しようという話になってきているようですが、その線から考えますといずれ病院の管理者として医師以外も認めようなんて話も出てきますかね。

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