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2009年1月15日 (木)

再びモンスターペイシェント

…が急増しているそうです。
急増というより話題になるのが多くなっただけではないかという気もするのですが、増加傾向という実数を調べた調査ってあるんでしょうかね?
何はともあれ、まずはこちらのニュースから。

医者や看護師に暴行・暴言繰り返す 「モンスター患者」急増、対策が急務(2009年1月12日J-CASTニュース)

   病院で医師や看護師に暴力や暴言をふるう「モンスターぺイシェント」(怪物患者)が全国的に急増し、社会問題化している。ほぼ毎日のように暴行・暴言が起こり、職員の心身が持たない状態に追い込まれている病院すらある。対策として元警察職員を雇ったり、監視カメラを設置したりする例も出てきた。

「医者一人では足りないからもう一人呼べ!」

   些細なやりとりから医師に対してクレームを付けるのは代表的な例だ。

    「診療結果が正しいかどうか、お前が責任取れるのか!」
    「医者一人では足りないからもう一人呼べ!」
    「日本の医療制度は変だ。納得いくまで診療代は払わない!」

   怪我で縫合手術をした後に化膿止めの抗生物質を処方すると、
    「こんな薬を出せと頼んだ覚えはない!」
などと威圧するなど、無理難題に近いクレームが多い。

こんな時、必ず口にするのが「(厚生労働省などに)訴えるぞ!」といった言葉なのだそうだ。また、患者以外のトラブルも増えていて、入院中の母親を見舞いに来た男がその母親と喧嘩。看護師が止めに入ったのだが、止めに入ったことに腹を立て男が看護師に暴行、全治2週間のケガを負わせるという事件も2008年11月に大阪で起こった。酒に酔って来院、それに伴うトラブルも多く、徳島県では、酔った患者が病院で暴れ灰皿で職員を殴り大ケガをさせる、ということもあったという。

   全日本病院協会が08年4月に公表した調査によれば、回答のあった全国1106の病院で、「過去1 年間で職員に対する院内暴力(身体的暴力・精神的暴力)があった」のが52.1%。発生件数は6882件。職員に対する院内暴力・暴言が起こる不安を持っている病院は60.7%だった。同協会では、
    「職員が安全な環境で働くための院内整備をおこなうことが重要な課題のひとつ」
と全国の病院に呼びかけている。

対策を立てなければ職員の心身が持たない

   これを受けて、全国の病院では「モンスターぺイシェント」の対策が始まっている。職員に向けた対応マニュアルを作成するほか、元警察職員の雇用、監視カメラの設置を行っている病院もある。徳島県にある阿南共栄病院では、08年12月15日に県警組織犯罪対策課の捜査員を招き講習会を実施。医師や看護師約150人が出席したこの講習会で、捜査員が「モンスターペイシェント」を演じ、患者の暴行、暴言による不当要求の対応についてアドバイスをした。

   同病院はJ-CASTニュースに対し、患者の暴行や暴言は過去からあったものの、現在はほぼ毎日のように起こっているという。しっかりとした対策を立てなければ職員の心身が持たない状態だ、とも打ち明ける。なぜこうした患者が増えてしまったのかについては、

    「お年を召した方よりは若い人に多くみられます。現代の風潮といいますか、自己中心タイプの人が医療をサービス業と同じものだと考え、言った者勝ち、無理でもゴリ押しすれば通ると・・・。それがエスカレートし暴言、暴力にまで行ってしまうのではないでしょうか」

と話している。同病院では09年1月中に対処法をまとめたマニュアルを策定し、職員に配布する予定になっている。

いやしかし、「こんな時、必ず口にするのが「(厚生労働省などに)訴えるぞ!」といった言葉」って、それはたぶん厚労省に訴えると言ったんじゃないと思うんですけどね(苦笑)。
それはともかく、昨今ではどこの業界でもモンスター対応で大変だとも聞きますが、医療業界はことにこういった面での対策が遅れている印象がありますね。
ちょっとした病院ともなれば数百人単位の人間が働く大きな事業体でもあるわけですが、まともなクレーム担当者も決まっておらず現場スタッフが個々の裁量での対応を強いられていたり、名目だけの担当者は決まっていても時間外になるとろくに連絡も取れなかったりとさんざんです。

医療従事者には何かしら医療と言うものは他の業界とは違う特別なものであるかのような考えを抱いている人間が多いのかも知れませんが、世間並みのことすら出来ていない時代遅れの側面が多々あるということを自覚し改善を図っていかなければならないように思いますね。
昔から問題のある顧客はどこにでもいたわけですから、もっと早くルールを決めていても良かったくらいですが、遅ればせながらようやく各地で対応する動きも見えてきているようです。

問題患者(モンスターペイシェント)対策本格化 広域組織で勉強会 岡山県内外の病院、弁護士 マニュアル作成狙う(2009年1月10日岡山医療ガイド)

 医師、看護師らに暴言や暴力で危害を加えたり、診療を妨害する「問題患者(モンスターペイシェント)」対策へ、岡山県内外の病院と弁護士が共同で動き出した。法的に適切な対処法のマニュアルを作成するのが狙い。身体的、精神的苦痛から辞めてしまう医療従事者もおり、医師、看護師不足が社会問題化する中、対策が急がれている。

「法外な額の賠償を求めてくるのは不当要求に当たり応じる必要はない」「問題患者とのやりとりは録音したり、看護記録に記しておくと証拠になる」
 昨年12月中旬、岡山大病院(岡山市鹿田町)で開かれた「問題患者等対応検討会」(MPA)の第2回勉強会。関係者ら約30人が集まり、具体事例に対する対処法について意見を発表、その意見に対して弁護士が法的な助言を添えた。

 MPAは川崎医科大付属、岡山大病院など岡山県内をはじめ、広島、香川、鳥取、兵庫県内で350以上の病床を持つ15の病院(精神科除く)と、岡山弁護士会所属の4人で構成。同年8月に立ち上げた。
 大学、民間病院といった枠を超え、広域的に集まって実践的な対策を話し合う組織は「全国でも異例」(森脇正弁護士)という。

 全日本病院協会(東京、会員2248病院)の調査では、2007年1年間に576病院で医師や看護師らへの身体的、精神的暴力、セクハラなどが起きていたことが判明。件数は6882件に上った。
 MPAメンバーのある病院では昨年1月、医師の診療態度に言い掛かりをつけて暴力を振るった男が現行犯逮捕された。別の病院では、患者の家族がトラブルから院内に灯油を持ち込んだケースがあったという。
 岡山県内の具体的な数字はないが、病院関係者は「問題は日常的に発生。仕事のつらさより、暴力などのストレスに耐えきれず辞める医療従事者もいる。問題患者が医療崩壊の一端にもなっている」と指摘する。

院側はこれまで、職員がその場で話をつけて収拾を図り、やむを得ない場合は警察への通報や損害賠償を求める民事訴訟を起こして対応してきた。ここ数年、法的手段をとる病院は少なくないが、診療を断る「診療契約解除」に至るケースはまだほとんどない。医師には医師法で応召義務があり、「正当な理由」がなければ診療を断れないからだ。
 MAPではこの点も検討。森脇弁護士は「問題患者の行為の大半は『正当な理由』に当てはまるが、病院側は判断しかねている。何が理由になるかを具体的に、明確にしていきたい」と話す。

 今後は定期的に勉強会を重ね、問題患者対策の指針となる対応マニュアルを完成させる方針。メンバー以外の病院にも配布し、各病院が統一的な対応ができるよう体制づくりも進めたい考えだ。
 MPA会長の森定理・川崎医科大付属病院事務部参与は「故意に基づく言動や態度が社会的に許容限度を超えたら問題患者。その数が1人でも、医師や看護師が費やす労力と時間は計り知れない。医療従事者の保護はもちろん、一般患者への診療に支障がないようにしていきたい」としている。

問題患者の存在は何より真面目な患者の迷惑であるということをもっとアピールしていかなければならないでしょうね。
それはともかく、記事中でもある「診療契約解除に至る正当な理由」というものですが、医師法19条1項「応召義務」に関連して認められているのは今のところこんなところとされています。

診療を拒否できる正当な理由:

・医師が不在の場合
・病気、酩酊により事実上診療できない場合
・歯科医師の親族、知人の婚礼、争議がある場合
・患者が酩酊状態の場合
・休日診療などが整備してあり、緊急で無い場合

法律が古いものですからこうした問題自体を想定していないのは仕方ありませんが、今の時代に合わせてそろそろ改める必要もあるとは言われながら厚労省は未だに慎重な姿勢を崩していません。
現実的な対応としては法律家の意見も聞きながら、何より世論を背景にしてやっていくしかないと思うのですが、その意味で「勤務医 開業つれづれ日記」さんで紹介されているような「患者からの不当な要求に対する医療機関からの損害賠償請求が認められた」なんてニュースは明るい兆しではありますよね。

ところでもう一つ気になるのは、記事中では弁護士から「問題患者とのやりとりは録音したり、看護記録に記しておくと証拠になる」という助言が出されているようなのですが、その一方でこうした記事も出てくるようになっていることです。

患者家族の会話記録 福知山市民病院 京都弁護士会が勧告 (2007年10月23日京都新聞)

 福知山市民病院(京都府福知山市厚中町)が特定の入院患者について、通常の看護記録とは別に、家族が患者本人や看護師と交わした会話の内容、治療と関係のない家族の個人情報などを詳細に記した「家族来院記録」を作成し、京都弁護士会(中村利雄会長)から「監視行動と評されても仕方なく、プライバシー侵害に当たる」として人権侵害救済申し立てに基づく勧告を受けていたことが23日に分かった。病院は事実関係を認め「一部不適切な表現があった」と謝罪している。

 看護記録について、日本看護協会は2004年に策定した指針で、患者の人格などに配慮した記録基準や記載範囲について明文化しているが、患者家族を対象にした規定はない。「医療情報の公開・開示を求める市民の会」世話人の勝村久司さん=木津川市=は「家族を患者扱いして監視した記録で極めて不適切だ。なぜ現場から反対の声が出なかったのか。医療者の人権感覚が問われる」と批判している。

 関係者によると、患者が死亡した後の2000年6月、家族が市を相手に医療過誤訴訟を起こし、証拠保全手続きで家族来院記録の作成が判明した。記録は1998年12月から2000年1月の1年余りにおよび▽家族の来院日時▽何をしたか、話したか▽その際の表情-などが180ページにわたって記され、記載した看護師がサインをしていた。

 家族からの申し立てを受け、弁護士会が昨年夏から関係者の聞き取り調査をした。病院側は「治療の際に家族と病院の間で行き違いが生じていたので、言った言わないの無用な紛争を防止するために記録した」と主張した。しかし弁護士会は「日常の看護にあたる全看護師が家族の同意を得ずに入退室時刻から家族の動作、看護師とのやりとりを網羅的に記録しており、必要性や相当性に欠ける」と指摘し、9月21日付で勧告した。

 また弁護士会は看護記録と家族来院記録に親族の家族構成や経済状況まで記されている点について「名誉感情の侵害」として是正を求めた。
 福知山市民病院は「勧告書を真摯(しんし)に受け止め、今後はプライバシーの侵害に当たるような監視的な記録は行わないよう徹底したい」としている。

立場の異なる者同士で見解が対立するのは珍しいことではありませんが、医療機関の暴走などと非難されないようにある程度ガイドラインなりで公的な権威づけも必要になるのかも知れませんね。
いずれにしろモンスター襲来といった外圧も医療業界を改革する外圧にはなるのかも知れませんが、なるべくなら自分が直面したくない問題だと言うのがおおかたの現場の人間の思いなのではないでしょうか。

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