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2009年1月23日 (金)

岩手県立病院再編計画 さらにその後

先日以来何度か書きました岩手県の話題ですが、県立病院再編計画の説明会が各地で開かれています。
報道が幾つか続いていますが、どれも大変な騒ぎになっているようですね。

無床診療所計画案:休日・夜間、医師配置も 県が九戸で住民懇談会 /岩手(2009年1月22日毎日新聞)

◇反対強く、議論平行線
 県立病院・地域診療センターの入院ベッド廃止(無床化)問題で、県医療局は20日夜、九戸村内で住民代表らと懇談会を開き、九戸地域診療センターについて、休日・夜間も医師を配置する方針で検討を進めていることを明らかにした。同局は地域の実情に合わせて対応策を示し理解を求める考えだが、住民らに反対意見が根強く、議論は平行線となった。

 村内には開業医がおらず、無床化が実施されると、休日・夜間は「無医村」になるという危機感がある。懇談会では、地域婦人団体協議会の佐々木トマ会長が、10年前母親が夜間に脳血栓で倒れたが、県立伊保内病院(当時)で応急手当てを受けたお陰で後遺症がなく無事だった例を挙げ、「開業医がいる地域と同じような案はおかしい」と語った。

 医療局は「土日・夜間について何らかの対応ができないか考えたい」と回答。根子忠美・経営改革監は「医師を派遣することになる二戸病院と協議する」と話した。

 懇談会後、住民からは「地域から医師がいなくなるとますます過疎化が進む。子供を育てる立場でも必要だ」(保大木信子・村PTA連合会副会長)といった声が上がった。

医療局の対応焦点に 岩手県立病院無床化で説明会 /岩手(2009年01月21日河北新報)

「無床化を撤回した上で、地域医療を守る話し合いを住民と深めることを強く要請したい」。19日夜、紫波町であった説明会。最後に席を立った住民団体の及川剛代表は医療局の田村均次局長に要請書を手渡した。

 9日の一関市花泉町を皮切りに6市町村であった説明会には、地元住民130―370人が出席した。議論は2―3時間に及び、一関市では「決定経過が不透明」「県民の意見を反映させた代替案を作るべきだ」と不満が噴出。花巻市大迫町では「大迫町には民間医療機関が1つもない」と無床化を不安視する切実な声が上がった。

 達増拓也知事が出席しなかったことにも批判が集中し、医療局は「まだ最終案ではない」「知事には伝える」と答えに苦労する場面もあった。

 一方で、地元からの提案も。岩手、紫波両町の会場では医師会が宿直応援に触れた。紫波郡医師会の渡辺立男副会長は「外来や急患の受け入れをやめ、入院専門病院にしてはどうか」とベッドを残す方策も提言した。

 花巻市の説明会では、県立遠野病院の貴田岡博史院長が「遠野病院が大迫地区をカバーする。夜間の不安を取り除きたい」と話すなど、医療局の現場医師からの積極的な発言もあった。

 こうした提言や意見をどう扱うか。20日の県議会環境福祉委員会で対応を問われた医療局の田村局長は「県議会2月定例会前に最終案を提示する」と答えただけ。

 一部の県議からは「地元の声を生かすには4月実施の先延ばししかない。草の根の声を封殺するようなら、2月定例会で新年度予算案を否決することも考える」と強硬論も浮上し始めた。

【ぴっくあっぷ】無床化説明会 地元は猛反発  /岩手(2009年1月22日  読売新聞)

■6か所とも満員
 無床化問題についての住民説明会は、9日の一関市花泉町から、19日の紫波町まで、6か所で実施された。出席した住民は計1640人に上り、いずれも満員となる関心の高さだった。

 昨年4月に病院から地域診療センターに縮小されたばかりの住田町。県は14日、深刻な医師不足に加え、赤字が続く苦しい病院経営の現状を説明し、「このままでは県全体の医療崩壊につながる」と理解を求めた。
 その後の質疑応答では、男性住民は居並ぶ県医療局の幹部に向かって、「診療所になって1年もたたないうちに、今度はベッドをなくせという。都会に暮らす人も、山に暮らす人も、同じ人間のはずだ」と声を荒らげた。

 花巻市大迫町の説明会(16日)に出席した63歳の女性は「開業医がいないこの地域では、無床化は年寄りに死ねと言うようなものだ」とため息をついた。
 無床化すれば、地域にとって医療サービスの低下は避けられない。そもそも受け入れがたい提案を、実施まで半年を切った中で出されたことで、住民側の県に対する不信と、将来への不安はより強まった。

 13日の九戸での説明会。県側の説明が終わった質疑応答で、住民からは「計画ありきで進めようとしている。地元の実情に耳を傾けようとする姿勢が感じられない」との声が上がった。
(略)
■地元からの提案
 説明会では、地元側から入院ベッドを維持するための提案も出された。

 岩手、紫波両町の会場では、地元の開業医が宿直応援を申し出た。岩手町では、佐渡医院の佐渡豊院長が郡内の開業医に働きかけ、沼宮内病院の当直や日直の一部を肩代わりする考えを示した。
 紫波町では、紫波郡医師会の渡辺立夫副会長が、センターの当直を引き受ける用意があると表明し、「あれもこれも望もうとは思わない。外来と救急はやめてもいいが、地域としては、お年寄りを迎えられるベッドだけは維持したい」と呼びかけた。
 一方、9日の花泉の会場では、地元から要望があがっているセンターを民間医療法人などに移譲するアイデアについて、県は、借り手が付きやすように施設使用料を減免するなど、後押ししていく意向を明らかにした。

■患者減と医師不足
 県立の医療施設は、22の総合病院と5地域診療センターの計27施設で、全国の都道府県で最も多い。2000年以降、県立医療施設の患者数は急激に減少し、入院ベッドの利用率も大幅に低下した。
 これに対し、県は03年11月、5県立病院を04年から順次、無床化する改革プランを公表。しかし、地元からの猛反発を受け、無床化を棚上げする代わりに、県立5病院を地域診療センターに縮小させた。
 しかし、その後も患者数の減少は予想を超え、加えて医師不足も深刻化。その間、地域診療センターに応援医師を派遣する他の病院の負担も増大していった。県立中央病院では07年度、他病院への応援回数が2000回を超え、3年前より約250回増えた。

地元住民に聞くところによると岩手というところは地形の関係もあって陸の孤島と言われる地域が多く、昔から小さな村々が分立しているような状況が続いているそうです。
当然ながらと言いますか「おらが村」意識は今も根強いとも聞きますが、感情的な反発がずいぶんと根強いことの遠因はそのあたりにもあるのでしょうか。
しかし幾ら既得権益を主張しても現実の医療は既に崩壊へ向かって一直線なわけであって、現状維持現状維持と言ってみても現実的に不可能な状況になりつつあるのも確かです。

県立千厩病院 常勤医2人減へ /岩手(2009年1月23日  読売新聞)

 一関市千厩町の県立千厩病院(伊藤達朗院長)の内科・消化器科の常勤医2人が、4月末までに他の医療機関に移ることがわかった。現在までに補充の見通しは立っておらず、外来診療が縮小される可能性もある。

 千厩病院の内科・消化器科の常勤医は現在3人。そのうち同病院で計3年間の臨床研修と専門研修を受けている医師が3月いっぱいで大学に戻る。もう1人は、県内の他の医療機関に4月末で移ることになった。
 同病院の14診療科のうち、常勤医を配置しているのは、内科・消化器科の3人のほか、外科の3人と整形外科の1人、泌尿器科2人の計9人。内科・消化器科の1日当たりの外来患者は約100人。伊藤院長は「医師補充に向けて努力は続けるが、常勤医が1人になれば、内科の外来診療を制限するか、他の診療科の医師が担当するしかない」と話している。

 県医療局が昨年11月に公表した「県立病院等の新しい経営計画案」では、4月から千厩病院の一般病床を190床から150床に削減する方針が示されている。

累積赤字200億円だとか経済的側面ばかりが強調されますが、何よりもこうした地方の医療問題の根本は医療資源偏在の問題であることを認識しなければならないでしょうね。
都市部の病院から過疎の村の患者もろくにいないような病院に応援に行ったところで仕事も何もなくて寝ているばかり、こんなことをやっている間に自分の担当患者はまた悪くなっているんじゃないかなんて心配ばかりしていなければならない状況となれば、それはまともな医者ほどそんなところに行きたがりませんよ。
今どき全国どこでも医者の仕事なんて幾らでも転がっていると言う状況で、より沢山の患者の役に立ちたい、もっと自分の技術と知識を十分に発揮して働きたいという真面目で熱心な医者であるほど僻地公立病院から逃げ出していくわけです。
地域住人は見捨てられると言いますが、僻地送りにされる医者の視点から見ればはるかに多くの患者を見捨てることを強要されているということでもあるわけですから、モチベーションに結びつくはずがありません。

施設を安く民間に貸し出して運営を委託してはどうかといったマイナーな変更は今後もあるかも知れないにせよ、基本的に岩手県医療局は計画の大筋自体は遂行していくという態度を崩していないようです。
どちらに転ぶかは今後の経過次第ですが、県下公立病院全体で抱えている医師数すなわち医療資源としてのパイの大きさを最大限保ち得る方針こそがこの場合の最善解に近いのではないかなという気がします。
財政的にも許容でき住民も納得できる素晴らしい解決策が出来上がったのはいいが、それを実行に移すための医者は誰も残っていなかったなんてことになったら洒落にもなりませんからね。

しかしまあ、事態がややこしくなったところでモノが判っていない人間が横からアジっては余計に事態をややこしくするのは昔からパニック映画の定番というものですが、その手の輩が事態解決に何の役にも立たないというのもまたお約束というものなんですけどね(苦笑)。

◆ スーパーモーニング「公立病院が儲け目的にしていいのか」(2009年1月20日J-CASTテレビウォッチ)

口減らしのために老人を山に捨てる「姥捨て山」伝説が残るという岩手県花巻市大迫町。高齢化が進む人口6500人の山間の町だ。番組はこの町で進行中の「現代版・姥捨て山」を取り上げた。

   発端は、岩手県医療局が昨2008年11月に発表した病院経営計画案。中身は、経営悪化と医師不足のために、この町で唯一の県立中央病院附属大迫地域診療センターの19床のベッドを4月から無床化し、救急医療も中止するという案だ。県ではさらに4つの公立病院の無床化を検討中という。
   町には、ほかに開業医もなく、入院できる病院施設はここだけ。他の病院に行くには、50キロも離れたよその町に行くしかないのだが、バスは1日数本というありさま。
   現在、19床のベッドは満床。70歳以上の高齢者が9割を占めているが、県は3月末までに自分で行き先を探し、出て行ってくれという冷酷な方針を打ち出している。
   県医療局は1月16日、住民への説明会を開いたが、住民からは「医療局による殺人行為みたいなものだ」といった罵声が飛んでいた。

   で、スタジオでは『現代版・姥捨て山』に批判が噴出した。矛先は総務省、厚労省、そして国。
   まず、取材したリポーターから「総務省から07年12月に出された『公立病院改革ガイドライン』が問題なのです。赤字の公立病院を3年以内に黒字化するか、削減しろというガイドラインです」と指摘があった。
   これに若一光司(作家)が、「総務省がガイドラインを作ったことに厚労省は黙っているのか、一体でやっていたら、なおさら問題だ」と、噛みついた。
   バトンを受けて鳥越俊太郎(ジャーナリスト)が「これは総務省や厚労省だけの問題でなく、日本政府の方針。社会福祉の予算は、年間2200億円カットしていく方針なんですよ。政府は弱者に対し非常に冷淡な政策を打ち出している」。
   大澤孝征(弁護士)はもっと手厳しい。「公立病院が儲けを上げることを目的にしていいのか。ある程度、赤字を覚悟しセーフティーネットとして民間にできないことをやるのが趣旨。黒字化しろというのは、それを止めろということに等しい。我々の命をどう考えているのかということですよ」と。

   「地域医療の崩壊」を道具に、消費税増税もやむなしという増税への国民のコンセンサス作りを図っているのではと、言いたくもなる。

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