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2009年1月17日 (土)

信友浩一先生への大いなる反響、そして意外なオチが?

先日少しばかり取り上げさせていただいた九州大学・信友浩一教授の提言ですが、予想通りあちこちで話題になったそうですね。
今日はこちらの記事から紹介してみましょう。

「医師は応召義務を果たしていない」、ネットで物議(2009年1月16日CBニュース)より前半部分

 「医師は応召義務を果たしていない」「医師は被害者意識を捨てよ」―。昨年12月、NPO法人(特定非営利活動法人)「日本医療政策機構」のホームページに掲載された信友浩一氏(九大教授)の緊急提言がインターネット上の掲示板や医師ブログなどで物議を醸している。信友氏の「医師は、医療業務を独占していながら、応召義務を果たしていない。これが医療のもっとも本質的な問題だ」との主張に対し、ネットの掲示板には、「医療政策を提言する立場の人間が精神論を語ることに絶望する」などの書き込みが殺到している。(新井裕充)

 2004年に設立された「日本医療政策機構」の代表理事は、政策研究大学院大教授で内閣特別顧問を務める黒川清氏。副代表理事は近藤正晃ジェームス氏(東大先端科学技術研究センター特任准教授)で、両者は厚生労働省の会議に参加するなど、国とのかかわりが深い。
 同機構の設立趣旨は、「諸外国において質の高い医療政策を生み出している医療シンクタンクの理念を日本にも導入」すること。ホームページを通じて医療に関する情報を発信しており、昨年10月から「緊急提言」の掲載を開始した。

 連載8回目を迎えた今回の提言は、「医師は被害者意識を捨てよ」というタイトルのインタビュー記事。発言者の信友氏は、九大大学院医学研究院で「医療システム学分野」の教授を務めている。
 「医療政策課題にまつわる5つのキーワード」として信友氏は、▽医師は応召義務を果たしていない▽「いまあるもの」で何とかするのが医療だ▽医師は被害者意識を捨てよ▽数値と事実で議論を▽医師も弁護士型の専門家集団にすべき▽「医療理念法」(の制定)を―の5つを挙げている。

 このうち、「医師は応召義務を果たしていない」の中で信友氏は、次のように述べている。

 「医療問題にまつわるひとつ目のキーワードは、医師の応召義務。医師は、医療業務を独占している。独占しているのだから、必ず義務も出てくる。それが、応召義務。たとえば電力会社は、すべての国民に電力を供給しなければならない。その代わりに、地域の電力供給を独占できる権限が付与されている。つまり権利と義務を、同時に持っているのだ。へき地だから電気を供給しない、儲からないから送らないというとはできないのである。医師は、医療業務を独占していながら、応召義務を果たしていない。これが医療のもっとも本質的な問題だ。東京や奈良のたらい回し事件もそう。自分の施設が満床だったら断るということが、習慣化されてしまっているから起きる。『施設完結型医療』を前提にしているなら、応召義務も果たしてもらわなければ理にかなわない」

 その上で、「『いまあるもの』で何とかするのが医療だ。医師が不足していようが多かろうが、今いる人員でどうにかする。それが医療の大原則である」と主張。「満床だから」との理由で受け入れを断ることに対しては、「なぜ、許されるのか。そんな習慣をつけたのは誰か。医師たる者が、業務を独占しながら、応召義務を果たさない。いつ、医師の神経は麻痺したのだろうか」と苦言を呈している。
 「少なくても、私たちの世代、団塊の世代までは、そんなことはなかったと記憶している」とした上で、「たぶん我々の10歳年下からの世代から、そういう習慣ができ上がっていった。そんな気がしている」と述べている。

 この発言に対して、ネット上の掲示板やブログなどで、医師と思われる人が激しく反論。「なぜ医療が崩壊したのかが全く分かっていない。日本医療政策機構も、こんな提言を採用したら機構の信用が失墜する」「医療政策を提言する立場の人間が精神論を語ることに絶望する」などの書き込みが殺到している。ネット上の掲示板などでは、年末から年始にかけ、医師と思われる書き込みや、患者サイドからの書き込みで議論が白熱した。

ちなみに医師に課せられた法律上の義務に関して「周産期医療の崩壊をくい止める会」からこんな発言があります。

臨時 vol 165 「二階俊博経産相の『医者のモラルの問題』発言への抗議文」より

<水準が満たされていない状況で患者を受け入れることは違法な行為>

1 医師に課せられた法律上の義務

 新潟地裁長岡支部平成14年7月17日判決は、「品胎(いわゆる三つ児)の分娩において帝王切開を行う場合、帝王切開を施行する医師2名、麻酔専門医で輸血を行う医師1名、出生した児の蘇生・介護・検査を施行する医師3名、その助手的看護師3名(新生児1名毎に各1名の医師と看護師)、手術の器械出し、手術の外回りにそれぞれ看護師1名の人的準備と、輸血用の血液、輸液、酸素、新生児蘇生用の気管内挿管器具3組、保育器3台、インファントウォーマー3台、全身麻酔器、血中ガス濃度分析機、その他新生児の血液生化学検査一式が可能な検査設備という物的準備が必要である。」と判示し、上記設備を持たない施設において「分娩を行うこと自体を違法な行為」と判示し、約1億1千万円の損害賠償責任を認めている。すなわち、上記の水準程の設備が整っていない限り、患者を受け入れることは、それ自体が違法な行為であるとするのが司法の判断である。

民事の賠償命令と法律上の適法違法の判断とはまた別なのではないかという素朴な疑問がありますが、いずれにしてもこうした判例が積み重なった結果現在の医療現場における判断基準というものが形成されてきたのだということは言えそうです。
一昔前は医者と言えば世間知らずの代表みたいに言われていた時期がありましたが、最近はようやく世の中に目を向けるようになってきたというのは良い傾向ではないかと思いますね。
医療訴訟も年間1000件前後と決して少なくない時代ですから、医療の世界の中だけで通用する狭い論理を振りかざしたところで社会的に通用しなくなっているということは認識しておかなければなりません。

さて、今日の主題は実のところそういう話ではなくて、上記の信友先生の記事の後段部分なのですね。

「医師は応召義務を果たしていない」、ネットで物議(2009年1月16日CBニュース)より後半部分

■「ネットで暴走する医師たち」が拍車?
 加熱する医療側と患者側との議論に拍車をかけているのは、今回の緊急提言だけではない。昨年12月に出版された「ネットで暴走する医師たち」(鳥集徹著、 WAVE出版)では、医療事故が法廷で争われた奈良県立大淀病院事件、杏林大学割り箸事件、福島県立大野病院事件などについて、医師と思われる人がネット上の掲示板などで遺族らを「誹謗中傷している」と激しく批判している。さらに同書では、「ネット公論の危険性」を指摘し、医師らが匿名で書き込むことを非難している。

 書籍のオンライン通販サイト「Amazon」では、同書に対するコメントが1月16日現在で209件寄せられており、その多くが同書に批判的な内容になっている。最も高い評価を受けているコメントは、次の通り。
 「筆者はわざわざ本を出版して、ネットを見ていない人たちにまで悪評を広めてしまうのだろう。医師側と患者側の争いを煽っているようにしか思えない。それに、これらのことを批判するのであれば、マスコミ・患者側の医療者側に対する誹謗中傷、さらには多少飛躍かもしれないが、医師たちの不満の原因である医療現場の疲弊・医師の過労死、大学病院の薄給などについても、同列に述べていくべきではないのか。このような記述では一部の医師たちも反発するだけではないのか」

これだけですと妙に食い足りないと言いますか、まるで後から取って付けたようなハンパな話なのですが、実は2009年1月16日16:48に取得されたWEB魚拓ではこの後にこんな一文が存在しています。

「医師は応召義務を果たしていない」、ネットで物議(2009年1月16日CBニュース)より削除された末尾部分

 同書の「あとがき」によると、中央社会保険医療協議会で委員を務めている勝村久司氏(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)が、著者に「誹謗中傷の本書かへん?」と電話で依頼したという。
 勝村氏は、陣痛促進剤の事故で長女を亡くした京都府の高校教師で、患者や遺族の立場から幅広く活動している。公的な立場にあるだけに、「遺族への誹謗中傷」に対して反論するよりもむしろ、医師と患者との信頼関係を回復する方向に目を向けることはできないものか。

さすが勝村氏、相変わらず大活躍のご様子ですね(苦笑)。
面白いのは元の記事も削除後の記事も共に更新日時が「2009/01/16 13:25」と表示されているのですが、それ以降の時間帯に取得された魚拓があるわけですから少なくとも一度は再度の更新がなされているはずなんですけどね。
ネットの記事を後から書き直すこと自体はよくある話で、そうした場合は大抵更新日時を改めたり追記と書いたりするものだと思っていたのですが、こういう事例を見ると何か妙な背景事情でもあるのかと邪推してしまいそうです。
風邪の噂でマスコミの世界では特定の団体等に言及することはタブー視する風潮があるやにも聞きますが、医療報道に限らず特定個人なり団体なりの代弁者ばかりというのはおかしな話だと思うんですけどね。

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