« 医者が足りぬと言うのなら その二 | トップページ | 自治体病院ただいま改革真っ最中? »

2008年12月25日 (木)

医者が足りぬと言うのなら その三

昨日に続いてさらに動員令絡みの話を続けてみますが、まずは埼玉の周産期医療はこんなにヤバくなってるよと言う話題から。

周産期医療 現場からの報告<上> 疲弊する医師 /埼玉(2008年12月23日東京新聞)

 「二十四時間、三百六十五日の周産期母子医療センターとは名ばかり。それでも補助金をもらっているのかと問われれば、今すぐにでも県に指定返上願を出す用意はある

 本紙が県内の各周産期母子医療センターに周産期医療の現状をアンケートをしたところ、深谷市の深谷赤十字病院からの回答には悲痛な現場の叫びが書かれていた。同病院は県北地域で唯一、地域周産期母子医療センターに指定されている。当直を二人体制にしたいが常勤医師不足でままならない。「センターとして機能しているのは平日の日勤だけ」という。

 県内の周産期医療は、設備が充実しリスクの高い救急医療ができる総合周産期母子医療センターに指定されている埼玉医大総合医療センターと、産科と小児科を併設し比較的高度な医療ができる地域周産期母子医療センター五カ所の計六医療機関が中核を担う。来年度には地域センターが一カ所増える見通しだ。

 地域センターでは常勤医師は五人が多く、休日夜間の当直体制は多くが一人で対応している。埼玉医大総合医療センターは四人で当直しているが、それでも「三十六時間勤務はざら」(関博之教授)という。

 厚生労働省の二〇〇六年の調査では、県内の産科医は出産適齢人口十万人当たり二七・六人と全国で二番目に少ない。施設面では今年四月一日現在、人口七百万人で総合センター一カ所、地域センター五カ所だが、東京都は人口千二百万人で総合九、地域十三、人口二百万人の栃木県は総合二、地域八。県内の医療資源がいかに貧困かが分かる。

 「行政は、新生児集中治療室(NICU)と総合周産期母子医療センターを充足するための対策を放置している。妊婦に『野垂れ死にしろ』と言っているに等しい」と話すのは、埼玉医大病院(毛呂山町)の岡垣竜吾准教授。

県はNICUの増床を目指すが、医師不足で既存のNICUの運営すら厳しいのが現状といい、同病院の板倉敦夫教授は「設備を充実してもマンパワーが追いつかない。医師の養成はお金ではカバーしきれない」と、効果を疑問視する。

 関教授は県内の施設、医師数不足を考えると「これまで救急の妊婦の死亡例が県内でなかったのは奇跡だ」と話した。ある関係者はつぶやいた。「厳しい勤務で医師が次々に辞めている。県内六カ所の周産期母子医療センターで、撤退する病院が出てくるかもしれない」

ま、近ごろではどこでも珍しくない「現場はいっぱいいっぱいで崩壊寸前」と言う話ですかね。
これだけであれば今さら取り上げるようなネタでもないのですが、埼玉県の素晴らしいのはこの状況でこういう話が出てくるところなんですね。

埼玉医大 重症妊婦は無条件 あすから受け入れ体制(2008年12月23日東京新聞)

 重症の妊婦が病院に受け入れを断られて死亡するのを防ぐため、埼玉医大総合医療センター(埼玉県川越市)は二十四日から、救命処置が必要な重症妊婦の受け入れを原則拒否しないことになった。同県が二十二日、発表した。東京都の周産期医療協議会が重症妊婦を無条件に受け入れる病院を三カ所指定することが決まっているが、同様のシステムの運用開始は、埼玉県が全国初となる。

 県は同大総合医療センターを「母体救命コントロールセンター」と位置付け、長距離で搬送に時間がかかり妊婦に危険が迫る場合などは同医療センターが受け入れ先を調整、手配も行う。

 受け入れは脳血管疾患や出産後の大量出血、交通事故などで速やかな救命措置が必要なケースに限定。妊娠二十二週以降のいわゆる周産期に限らず妊娠十二週程度から分娩(ぶんべん)直後までを対象とする。

「もうこれ以上は無理。勘弁して」と悲鳴をあげている現場に更に仕事を押し付けますか…ここにも牟田口の後継者がいたということですかね?
そもそも救急における律速段階というものは搬送する救急隊ではなくてその先の受け入れの段階なんですが、今まで救急隊がやってきた搬送先探しの仕事まで一番修羅場っている病院にやらせようと言う意味がわからんのですが。
医師確保のために1600万の予算もつけますなんてことを言っているようですが、これで何人集めるつもりか知りませんが産科医の相場が急騰している今どきに一体どんな医者が釣れますかね?
今後は他の地域でも「必ず受け入れ」を指定される病院が出てくるかと思いますが、現場の医師達がどういうリアクションを取るのか要注目ですかね。

ところで医師不足と言いますが、実際のところは臨床の第一線で奴隷労働をこなす医師が足りないというのが正確なところであるわけです。
医師不足だ医師不足だと騒いでいますが、現場で医師がどれくらい過酷な労働をこなしていようが利用者としていつでも好きなときにかかれる自由さえ保障されていれば知ったことか!というのも国民の率直なホンネと言うものではないでしょうか。
ま、そういうホンネが直に当の奴隷労働者に伝わってしまったのが現在の医療崩壊という現象の一因でもあるのですが、一方でこうなってきますと「俺は金はちゃんと出すからいつでもどこでも診てくれよ!」と言う要求も出てきて当然だと思うんですね。

海外諸国では支払い能力に応じて国民自ら「高くてもすぐ診てもらえる」「安いが待ち時間が長い」といった選択枝を提供している国もあるわけですが、日本では国中どこへ行っても基本的に同一料金の保険診療と言うのが建前ですからこうした差別化は存在しません。
大学病院でその道の第一人者に診てもらおうが、場末の怪しげな診療所で診てもらおうが支払いは同じというのは考えてみればずいぶんと奇妙な話だと思うのですが、今まではオプションサービスに対する追加料金というものは混合診療として認められていなかったわけです。
某開業医の利権団体の主張するように混合診療導入にもデメリットももちろん存在しているわけで、この機会に国民でじっくり議論していけばいい話ではあるかと思うのですが、何か非常に興味深い裏技(失礼)でこの壁を突破しようという試みがあるようなので紹介しておきます。

順天堂リフレッセクラブ(特別会員制)

 当院の医療施設を利用して、会員の検査・治療、心身・健康の維持増進、疾病に対する適切な指導及び健康管理を実施し、医学的な情報を提供しております。

特典
   1. 人間ドック健診を、年1回無料(基本コース+脳ドック:145,000円)で受けることができます。
      宿泊ドックも同様の割引となります。
   2. 疾病を有する場合、適切な医学的指導を、専門医から受けることができます。
   3. 健康スポーツクリニックの施設を利用し、心身健康の維持増進(運動指導・栄養指導・生活指導)を図ることができます。
   4. クラブの担当医師(健康スポーツ室医師)との情報交換を行い、会員の健康管理に協力いたします。
  5. 緊急時医療について、昼間(9:00~17:00)は健康スポーツ室、夜間(17:00以降)は救急室を 通じて、サービスを行っております。
   6. 入院した場合には、特別療養環境料(室料)を10%割引とします。(2週間:14日まで対象期間となります。)
   7. 順天堂大学医学部附属病院・順天堂大学関病院等の、適切な病院を紹介いたします。
   8. 疾病の治療のため、予約診察室を用いて速やかに診察を行い、疾病内容により、適切な専門医を紹介して、診察を受けることができます。

会費
【入会金】    1,050,000円 (税別 1,000,000円)
【預託金】    1,000,000円 (入会期間中無利息)
【年会費】    315,000円

ここで注目すべきは通常診療においてもお待たせしない予約診療をうたっているほか、緊急医療についても昼夜の別なくサービスを提供するとうたっていることですね。
「一部の人間はコネでいつでも好きなときに医者にかかれるんだろう?」なんて批判をする人が時々いますが、こうしてオープンに「コネ」を作ってしまうシステムというのは結構面白い試みかも知れませんね。
特権階級が隠れて小ずるいことをやっていると思われるからこそ批判を受けるのであって、誰もが機会を得た上で正当な契約関係として双方合意の元にやっていく方がよほど透明性も高まろうと言うものです。
金満家として名高いみの氏あたりにワイドショーで取り上げてもらえれば、全国の善良なる視聴者の注目も高まろうと思うのですが如何でしょうかね?

|

« 医者が足りぬと言うのなら その二 | トップページ | 自治体病院ただいま改革真っ最中? »

心と体」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/43524157

この記事へのトラックバック一覧です: 医者が足りぬと言うのなら その三 :

» 日本医療の将来像はこれで決まり? [ある町医者の診療日記]
年賀状を印刷しながら、いろんなブログを読んでいたら、、、 [続きを読む]

受信: 2008年12月25日 (木) 16時57分

« 医者が足りぬと言うのなら その二 | トップページ | 自治体病院ただいま改革真っ最中? »