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2008年12月17日 (水)

産科未収金問題は解消するのか?

いきなりタイトルと縁遠い話で恐縮ですが、思わず紹介したくなったのがこの記事です。

安心のお産、今昔探る /奈良(2008年12月14日朝日新聞)

あまりにアレな内容なのでリンク張るだけにとどめておきますが、こうした人々は一種のカルトなんだと言っていたとある先生の話を思い出しましたね。
この超ベテラン産婆さんに尋ねてみればいいんですよ、その60年という長年の経験を通じて死産だったのは何人で母体が亡くなったのは何人くらいでしたかって。
ちなみにちょうど60年前と言いますと新生児死亡率が戦後最高を記録したという時期で、周産期死亡率も今とは桁違いに高かった時代ですが、まあ人間何に幸せを感じどんなことで安心を得るかは人それぞれということなんでしょうね。

それはともかくとして本題に戻りますが、相変わらず分娩費用未払いは増加傾向にあるようです。
払わなくてもきちんと請求しない病院側にも問題があるとはいえ、無保険妊婦が増えてきているのは時代の反映なのでしょうか。

出産費未払い7400万円 県内昨年度公的病院に集中 /栃木(2008年12月11日  読売新聞)

 県内の医療機関で出産したのに、入院費や出産費用を支払わなかった例が昨年度は260件あり、未払い金の総額は約7400万円に上ることが、日本産婦人科医会県支部(野口忠男支部長)の初めての実態調査でわかった。500万円を超えたのは5病院で、1000万円を超えた病院もあり、地域の中核病院にとっては、毎年度未払いが積み重なって経営を圧迫しかねない深刻な問題にもなっている。

 調査によると、昨年度に未払いがあったのは、県内で分娩(ぶんべん)を扱う49医療機関の半数を超える27施設(病院11、診療所16)。全分娩数1万8566件に占める未払い件数の割合は1・4%だった。

 未収額は1施設あたり151万円で、都道府県別では山梨県に次いで多かった。1施設で最高は2000万円。

 500万円超の5病院は、県央、県南の中核病院。「総合周産期母子医療センター」の独協医大、自治医大付属の両病院を含む3病院は、1000万円を超えた。「飛び込み出産」などの救急搬送も受け入れている公的な病院に未払いが集中する結果となっている。

 12月市議会で34件、約760万円の未払いが明らかになった小山市民病院。妊婦の8人に1人が出産費用を払わなかった計算で、うち半数超は、外国人だった。経済的に苦しい妊婦の負担軽減のため、出産育児一時金を、病院が代理で受け取れるよう事前の申請を勧めるなどしているが、「無保険の妊婦も少なくない。他の医療機関に断られた人でも(公立病院のため)最終的には受け入れざるを得ない」という。

 ある産科診療所では、出産した母親から、退院前日になって「お金がない」と告げられた。迎えに来た夫に「少しずつでもいいから」と分割払いを勧めたところ、夫は「ないものは払えない」と開き直ったという。家庭訪問などを行って回収に努めており、院長は「調査結果は氷山の一角。医師不足の中、医療そのもの以外に労力を費やすのは、やるせない思いでいっぱい」と嘆く。同医会県支部は「地域医療を守るためにも、確実に出産費用が医療機関に入るような対策を行政に求めたい」と訴えている。

以前にも書きましたが、未収金問題に頭を悩ます医療機関においてもようやく回収業者に委託するなど対策に乗り出す動きが出ています。
特に未収金問題が重症化しやすいのは公立病院ですが、本来病院が預かったお金というものは税金同様の公金と考えるべきものであって、ろくに回収もしないまま放置するなどと言語道断の公務怠慢と言うべきではないでしょうか。
まして未収金問題によって病院財政がさらに悪化し、最終的には善意の患者層でもある一般市民が悪影響を被るともなれば決して放置が許されるような問題ではないと思いますね。

ところで先頃厚労省が出産一時金の増額方針を明らかにしましたが、どこの保険者も財政難の折にどうしたものかと疑問の声なしとしないようです。

出産一時金、42万円に 来年10月から厚労省方針(2008年12月12日朝日新聞)

 出産時に公的医療保険から支払われる出産育児一時金の増額を検討している厚生労働省は12日、4万円増の42万円に引き上げる方針を固めた。緊急的な少子化対策と位置付けて来年10月から11年3月末までの暫定措置とし、11年4月以降については出産費用の保険適用なども検討する。

 年間の出生数は約110万人で、4万円増に必要な年間予算は約450億円。厚労省は、国費と保険料で半分ずつ負担する方向で調整している。ただ、国民健康保険を運営する市町村や、健康保険組合などの保険者側は財政難などを理由に反対しており、増額実現には不透明さも残っている。

 現在35万円の出産一時金は、出産時の医療事故で重い脳性まひになった子への補償制度の来年1月導入に伴い、補償制度の保険料分3万円が上乗せされ、38万円になる。厚労省は来年10月からはさらに4万円増やす予定。

財政難や少子化対策云々といった部分はまた別稿に譲ることとして、この出産一時金増額が未収金問題の解決につながる可能性はあるものでしょうか?
ひと頃問題になったような分娩費用未払い、出産一時金も持ち逃げといった場合にはそれなりの意味はあるでしょうが、こちらは近く一時金が病院に直接支払われるように制度変更される予定ですので今後大きな問題となることはなさそうです。
それでは何が問題かと言えば、そもそも出産一時金とは妊婦の加入する医療保険から支払われるものですから、先の栃木の例のように無保険者が多くなってくる場合には全く意味がないわけですね。

根本的な解決方法は日本国内で出産するのに関わる費用は保険加入の有無を問わず公的に支払いが行われるという制度の導入でしょうが、折からの財政難ですから国であれ自治体であれおいそれとこんな事を言い出すとは考えがたいところではあります。
しかし経済危機によって今後ますます無保険受診者が増加すると考えられる中で、出産に限らず未収金問題は今後増加する一方であることが予想されるわけですから、「不払いを理由に直ちに診療を拒むことが出来ない」という応召義務に関する厚労省の解釈を変更(あるいは応召義務自体を撤廃?)するでもしないのなら未払い分は公的に負担いただくのが筋かなとも思います。
実際のところこうしたウルトラCがあり得ない話かと言えばそうでもなくて、近ごろ問題となっている親の無保険化に伴う小児医療に関しては一足先に救済策がきちんと成立しているのですね。

無保険救済法案が衆院で可決 中学生以下に短期保険証交付(2008年12月11日47NEWS)

 親などが国民健康保険の保険料(税)を滞納して「無保険」状態になっている子どもを救済する国民健康保険法改正案が11日午後、衆院本会議で全会一致で可決された。法案は来週中に参院本会議で可決され、成立する見通し。

 親などが保険料を1年以上滞納すると保険証を返還させられるが、改正案は中学生以下の子どもには有効期間が6カ月の短期保険証を一律に交付する。

 民主、社民、国民新の野党3党が対象年齢を18歳未満とした改正案を国会に提出し、自民党と協議して年齢を中学生以下に引き下げることで合意。修正案が10日の衆院厚生労働委員会で全会一致で可決された。

 厚労省の調査では、無保険の中学生以下の子どもは全国で約3万3000人。保険証を返還すると医療機関でいったん医療費全額を支払わなければならず、経済的に苦しい家庭の子どもが受診を控える恐れがある。

少子化対策だ、子供の権利保護だと小児科において出来ることであれば、その前段階であるお産の場においても同じロジックが成立しないはずがない(産まない限り子供は増えないのは当然です)。
そんなことを言い出せば全ての無保険受診者も公費負担されてもいいかと言う話になり、そうなるとその財源はと考えていくと…遠くない時代に現在の国民皆保険制度というもの自体が大きな変革を迫られることになりそうな気がしますね。
そして後に待っているのはマスコミの皆さんの求めてやまないアメリカ型医療ということに、果たしてなるのでしょうか?(苦笑)

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