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2008年12月 9日 (火)

モンシターペイシェント ~ 何も遠慮はいらない?

近ごろの教育現場では「モンスターペアレント」なんて言葉が結構普通に使われているそうですが、医療業界でも類似の話は数多くあります。
理不尽な要求を繰り返す「クレーマー」というのはどこの業界にもいるものですが、医療現場でも近ごろではクレームを通り越して「モンシターペイシェント」なんてことが言われるようになってきました。
今回はいよいよ本格的に動き始めたモンスター対策の話を取り上げてみましょう。

悪質ケース、診療拒否も 県が素案 病院独自の策定求める /香川(2008年12月4日  読売新聞)

 医師や看護師ら医療従事者に暴力や暴言、嫌がらせをする迷惑患者対策について、県は3日、県庁で開いた県医療安全推進協議会(会長=坂東義教・県医師会理事)で、悪質な場合は警察への通報や診療拒否などを盛り込んだ「患者が守るべきルールとマナー」の素案を示した。ただ、県側が「あくまでも病院が独自でルールを策定するうえでの参考資料」などとしたため、委員からは「県の考え方として明確に示さなければ効果がない」などと県主導でルール作りを求める意見が相次いだ

 素案では、患者の禁止行為として、医師や看護師らへの暴言や暴力、威嚇、執拗(しつよう)な面談の要求などを挙げ、違反した場合には警察への通報や診療拒否、院外退去を求めることができる――などとしている。また、症状が軽い患者が夜間、休日に受診する場合は、不必要に救急車を呼ばず、各地域に設けられた夜間急病診療所、休日当番医での診察を求めている。

 この日の会議には、医師会などの医療団体やPTA関係者、弁護士ら8人が出席。県医務国保課は「本来は地域住民や病院が作るべき内容。県が押しつけてはいけない」とし、県が示したルールを基に各病院が独自で策定して院内に掲示する活用法を提案した。

 これに対し、坂東会長は、患者の迷惑行為が医師不足につながっている現状を指摘したうえで、「これまで病院単位で対応に苦慮してきたが、県が積極的に動き出したことに意味がある」と述べ、県の責任でルール作りをするよう注文。患者側の立場で出席した三野八重子・県PTA連絡協議会母親代表委員会長も「県としての(迷惑患者対策への)答えを提示してほしい」と要望した。

 県は早ければ来年1月にも県民から意見を募り、今年度内にルールを策定。県内約1300のすべての医療機関に配布する。

他の報道も見比べてみて思うのですが、どうも県当局は言うだけ言っているだけで実際の統一ルール作りには及び腰なようなんですが、これも役人の無責任体質というものなのでしょうか?
一方で面白いのは、こういう受診ルールに関する利用者たる県民の反応なんですが、おおむね「厳しくやれ」と言うところが大多数のようです。
実際のところただでさえ不足しがちな医療リソースを一部の「モンスター」が食い荒らせば、最大の迷惑を被るのはまともな受診者であるわけですから、こうした結果には納得がいくというものです。
特に公立病院においては「お前ら税金で食わせてもらってんだから俺様の言うとおりにやるのが当たり前」という勘違いさんが大勢いらっしゃいますから、最終的にどこまで拘束力と実効性をもったルールに出来るかといったあたりが肝心になるでしょうね。

「県がルールを」8割 /香川(2008年12月6日  読売新聞)

 医師や看護師ら医療従事者に暴力や暴言、嫌がらせをする迷惑患者について、県民がどう考えているか県がアンケートしたところ、回答者の8割強が「共通ルールを明確にし、患者に従ってもらうべきだ」と考えていることがわかった。県はルールの素案を作成。その一方で、「ルールは各病院が独自に策定すべきで、県が押しつけるべきではない」としているが、県民の多くは、より実効性の高い対策を求めていることが浮き彫りとなった。

 アンケートは7月、無作為に選んだ20歳以上の3000人を対象に実施し、1158人から回答を得た。その結果、迷惑患者を知っているかとの質問には、57・7%が「新聞、テレビなどで知った」と答え、「実際に、または間接的に見聞きした」という人も10・2%いた。

 迷惑患者を巡り、県は「患者が守るべきルールとマナー」の素案で、医師や看護師らへの暴言や暴力、執拗(しつよう)な面談要求などを患者の禁止行為と規定。違反した場合は警察への通報や診療拒否、院外退去を求めることができるなどとしている。しかし、いずれも「病院が独自に策定するルールの参考資料」と説明する。

 これに対し、82・5%は患者向けの共通ルールを策定するよう県に求めており、「迷惑行為や理不尽な要求でも、患者の要求には応えるべき」との意見は3・2%にとどまった。「どちらともいえない」は8・8%だった。

 県医務国保課は「迷惑患者に対する県民の問題意識は高いことがわかる。どうすればルールを認識してもらい、医療現場で守ってもらえるか、関係者と協議を重ねて最善の策を考えたい」としている。

ところで、実際にこういうモンスターが襲来した場合にどう対応していくのが良いのでしょう?
最近ではテレビの影響か、院内での救急コールを示す「コードブルー」と言う言葉が少しばかり知られるようになりましたが、ヤバ気な人が…ってな場合には「コードホワイト」というものが発動されることもあります。
彼らの行動パターンは多くの場合「自分は病人であり弱者である」「医者は患者を断れない」という二点を前面に出してくるのが基本なのですが、実際のところ日常診療の現場でお目にかかる行為の数々はその多くが違法行為となり得るものなんですね。
以下はwikipediaの記載から引用してみますが、犯罪行為に該当する例としてこんなものが挙げられています。

# 治療がうまくいかないことに腹を立て、病室に入った女性看護師に理由も告げずに1人ずつほおを平手打ちする(→暴行罪)。

# 少しでも待ち時間が長くなると「いつまで待たせるんだ」と医師や看護師をどなりつける(→威力業務妨害罪)。

# 「検査結果で異常がなかった」、「医療費は高い」などの主張により、支払いを拒否する(→詐欺罪)。

# 暴言・暴力でほかの患者にまで迷惑をかけ、病院の備品を壊し、6人部屋を1人で占有する(器物損壊、威力業務妨害にあたる)。

# 情報伝達の不十分さに腹を立て、医師たちに3時間近く罵声を浴びせた末に土下座を強いる(→強要罪)。

# 「ベッドの空きがないので明日来てほしい」と告げられ、医師に缶コーヒーを投げつけ、殴って顔面を骨折させる(→傷害罪)。

# 看護師に包丁を見せたり、ナースコールを一日80回以上も鳴らしたりして、病院の業務を著しく妨害する(→脅迫罪、威力業務妨害罪、銃刀法違反)。

# 医師を「もしものことがあれば、お前を殺す」と脅し、ポケットに入れた刃物をちらつかせる(→脅迫罪、銃刀法違反)。

# 看護師に添い寝を強要する(→強要罪、軽犯罪法違反)。

# 治療が終了し、疾患が完治しているのにもかかわらず退院を拒否し、医療費も100万円以上滞納して支払う意思を見せないばかりか、説得に来た病院事務員を罵倒したり、看護師に性的暴力を振るう(→詐欺罪、婦女暴行罪)。

つまりはこれらに該当する犯罪行為に対しては、素直にしかるべき筋に通報してお引き取りいただくのが正しいということになりそうですが、現場では未だに警察沙汰にすることへの抵抗感が根強い(あるいは、そうした方法論自体が頭にない?)ことが問題解決を難しくしている一番の原因なのではないでしょうか?
ひと頃は「警察なんていくら電話しても相手にしてくれない」なんて言われていた頃もあったようですが、幸いにも最近では社会全体の風潮の変化か警察の方でも積極的にこうした犯罪行為に対処する方向になっているようです。
となると後は何が問題かと言えば、実際に通報するかどうかだけと言う話になるわけですが、ここで一つこんな話を考えてみました。

診療の現場で医師やら看護師やらのスタッフが「警察呼んで!」と叫んでも、どこかの段階でストップがかけられてしまうというのは結構ありそうな話に思えませんか。
なぜそういうことになるかと言えば、現場から直接警察へ通報するというルートがないことが一因だと思うんですね(院内は携帯禁止ですし、外線は通常交換を通すことが多い)。
「警察沙汰にするのはどうも…」という事なかれ主義の病院上層部に阻まれて、現場の熱意ある医療従事者が職場を去るという話がどれだけ増えていることか。
そこで小売り店などで良くある通報装置のようなものを、医療現場にも導入することを考えてみてはどうでしょうか?

外来受付などでは普通に大金を扱っているわけですし、夜間ともなるといつどんな暴漢が侵入してくるかも判らない割に、現在の医療機関のセキュリティーシステムはどこもかしこもあまりにお粗末に過ぎると思うのです。
時に院内に侵入した部外者が入院患者を殺害したなんて話もあるくらいで、人間が最も無防備となる病院という場所だからこそこうした保安のためのシステムが必要とされるのではないでしょうか。
何よりそうしたシステムを備えているということが今の時代、当院では患者だけでなくスタッフの安全をも守ってますという姿勢を内外にアピールすることになると思うんですが、どこかの医師不足に悩む病院ででも一つやってみないものでしょうかね?

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