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2008年12月11日 (木)

肥満は悪徳? ~ メタボリックシンドローム

このところ色々とネタがあふれる世相に一喜一笑と言うところですが、今日は近来で一番衝撃を受けたニュースというものを紹介します。

便座にお尻ズボッ! 20分間はまり続け…「1400万円支払え」(2008年12月8日産経ニュース)

 米国のスポーツバーのトイレで、便座が壊れて便器にはまり、お尻のけがが再発したとして、女性が便器の製造元とスポーツバーに対し計15万ドル(約1380万円)を求める訴えを起こした。AP通信が4日報じた。

 APによると、訴えたのはキャサリン・ヒューコさん。2006年11月19日、米東部ペンシルベニア州アレンタウン近郊のスポーツバー「スターターズパブ」を訪れた。同店の障害者用のトイレに入り、しゃがみ込んだ際、便座が破壊され、ポッチャンと便器に落下、不運にもお尻が便器から抜けない状態に。

 ヒューコさんは助けを求め叫んだが誰も現れず、約20分間はまり続け、苦しんだ末に自力で“脱出”。その際に臀部を負傷したとしている。便座が壊れた原因は不明という。

 訴状によると、ヒューコさんは以前、臀部を手術しており、今回の事件でけがが再発したと主張。同バーと、便器製造メーカーのケーラー社に対し計15万ドルを求めた。訴えられたバーとケーラー社は、ともに「現時点でコメントすることはできない」。

 一方、女性側の弁護士は「女性は普通の体重だ」と強調し、女性の重みで便座が壊れたわけではないと指摘。事故の原因は欠陥便座にあるとしている。

一見して「なんだ?どうせピザだったんじゃないの?」と思いつつ、普通の体重だって言っているので便器の欠陥なのか?と思い返しながら読み流しておりましたが、最後の一行で吹きましたよ。

 ちなみに米国立健康統計センターが04年に発表したデータによると、米国人成人女性の平均体重は75キロ。

ええと…ちなみに参考までにですが、アメリカ人女性の平均身長が162cmと言われています(日本人女性が158cm)。
これから肥満の指標となるBMI(Body-Mass-Index)の平均値を求めてみますと、なんと驚くなかれ28.6!25以上で肥満とされますから…ヤバイ!アメリカ人女性ヤバイよ!
アメリカの場合、以前から主要国の中では目立って肥満の度合いが高いとは言われているのですが、この場合標準的体型にとって貧弱すぎたトイレが産んだ悲劇と言うべきなのか、何と言うべきなのかですね。

日本でも最近急に政府が旗を振ってメタボ健診(特定健診)がどうのと大騒ぎしていますが、あれも実態はひどく怪しいものですよね。
そもそもこのメタボリックシンドロームなるもの、昔で言う成人病、その後改め生活習慣病と言うものがありましたが、一昔前まではあちこちちょっとずつ高めというのは「生活習慣に注意しながら経過観察」と言う扱いが多かったのでした。
ところがその後研究が進んでくると、各項目は急いで治療を要するほど飛び抜けて高い値でなくとも複数項目が重複して高値を呈するような人は相乗効果で動脈硬化が進んでいく、実はヤバイんだよということが判ってきたわけです。
日本でのメタボの診断基準とされているのは肥満学会などが中心になって作成されたものですが、試みに引用してみますとこんな感じになります。

    腹囲男性85cm、女性90cm以上が必須条件。
  かつ、

        血圧130/85mmHg以上。
        中性脂肪150mg/dL以上またはHDLc40mg/dL未満。
        血糖110mg/dL以上。

    の3項目のうち2項目以上を満たすこと。

見ていただければ判りますが、腹囲(内臓脂肪量)というものが極めて重視されている診断基準と言えます。
当然ながらこの基準は日本だけのものなのですが、国際的に用いられる基準と異なっていることから、同じ人に対して比較した場合の診断一致率も低かったり、データの国際比較が困難であるなど必ずしも諸手を挙げて歓迎されているわけでもありません。
特に突っ込みを受けているのが腹囲基準で、そもそも内臓脂肪の臨床的有用性が明確でないのに診断に必須の項目とされていることや、国際的な基準と異なって女性より男性に厳しい腹囲基準が設定されていることなど各界から様々な声があがっています。
日本肥満学会ではこうした反論の声に対して、CTが例外的に発達している日本では内臓脂肪量を他国より正確に評価することが可能であったことからこうした値を設定できたのだと自画自賛しており、基準は妥当であり当面変更する考えはないと強調していますが、果たしてどんなものでしょうか?

東北大学が一般的な市民を対象に行った研究では、男性は腹囲87cm以上、女性は80cm以上で高血圧や耐糖能障害の頻度が増すという結果であったと言い、少なくとも肥満学会の主張するような内臓脂肪量と疾患リスクを直接的に結びつけるデータというものは今のところないようですね。
実際のところ中高年層日本人というものは比較的低身長の方も多いですから、どう見てもアンコ型でありながら体躯が小柄であるが故に基準を逃れているという例も結構あるんじゃないかという印象を持っていますがどうでしょうか?
広く国民全般の太りすぎに警鐘を鳴らすという目的であるなら、まだしも見た目のイメージを反映しやすいウエスト/ヒップ比などの方が臨床の現場では話が分かりやすいのではないかと思うのですがね。

いずれにしても食生活の欧米化が進んだ日本人が不健康になっていく一方で、海外ではヘルシーフードとしての日本食というものが大人気となっているという逆転現象が生じています。
恐ろしいことに日本人のコレステロール値も年々上がり続けていて、昨今ではとうとう脂肪大国アメリカをも追い越す勢いだと言いますから、いつまでも「あちらではトイレにハマる女性がいて」なんて笑ってばかりもいられないということになりそうですね。
過剰なカロリー摂取は不健康のもとですから、皆さまもくれぐれも食べ歩きなどと恐ろしいことを考えたりなさらぬよう…ってあれ?何か当ぐり研の存在意義を否定するような結論が…

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