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2008年12月10日 (水)

若いときの苦労は買ってでもせよ?! ~ 研修医は今も貧乏なのか?

のっけから恐縮ですが、まずは記事を紹介します。

研修医278人が違法アルバイト、厚労省が全国調査(2008年12月8日読売新聞)

 大学卒業後の初期研修中に違法なアルバイト診療をしていた研修医が、臨床研修制度が義務化された2004年度から昨年度までに、研修医の所属する61病院、278人に上っていたことが8日、厚生労働省の調べで明らかになった。

 経験の浅い研修医のアルバイト診療は、医療事故につながる危険性が高いことなどから、04年施行の改正医師法で禁止されている。違法バイトの全国的な状況が判明したのは初めて。今回の結果は、保健所の定例検査で偶然見つかったケースや研修病院の自主報告を集めたもので、氷山の一角の可能性もある。

 04年度に導入された臨床研修制度では、研修医は国の指定基準を満たした研修病院のプログラムに基づき、指導医のもとで研修、それ以外の診療はできない。

 今回判明したのは、厚労省の地方厚生局が07年度中に把握したケース。それによると、違法バイトは04年度から07年度にかけ、近畿地方の39病院で161人、関東信越の19病院108人、九州の1病院5人、北海道の1病院3人、東北の1病院1人が確認された。いずれも所属する研修医が、プログラムにない別の病院や診療所に出かけ、単独で当直などをしていた。病院の当直代は1日5万円程度が相場とされる。

 違法バイトが確認された研修病院は、大学病院が16施設、一般病院が45施設だった。聖マリアンナ医大病院(川崎市)では、30人の大量違反があった。兵庫医大、大阪大などでも確認されている。厚労省は「研修病院側が組織的に関与したケースはない」としている。

 厚労省は違法バイトのあった研修病院に対し、研修医の管理徹底を指導。08年度からは、研修医の定員を削減する罰則を科することにしたが、今のところ違反は確認していないという。07年度以前の違反に対しては罰則は適用されない。

 制度創設の検討に携わった東大病院総合研修センター長の北村聖(きよし)教授は「制度本来の趣旨を無視したもので、極めて問題だ。病院側の管理にも問題がある。違反者を出した病院は、研修病院の指定を取り消すなど厳正な処分が必要だと思う」と指摘している。

 ◆背景に給与格差や医師不足◆

 研修医の違法アルバイトの背景には、処遇改善が不十分な研修病院や、医師不足のため、労働力としてアルバイト派遣を求める地域病院などの現状がある。

 04年度に義務化された研修制度には、それまで低収入で酷使され、アルバイトで生活費を稼いできた研修医の処遇を改善し、研修に専念させる狙いもあった。国は、給与の目安を月30万円程度とし、昨年度まで、病院に対し、研修医数に応じて教育指導費名目の補助金も交付してきた。ただ、実際の給与は病院の裁量に任され、格差が大きい。医師不足に悩む地方では、月50万~60万円に加え宿舎を用意するところもある一方で、都市部では20万円に満たないところもある。

 大量違反が発覚した聖マリアンナ医大病院では、給与は月19万円。病院側は「問題発覚を受け増額した」としているが、これでも「最低額の部類」(厚労省医事課)。違法バイトを20~30回繰り返していた一部の研修医は「生活費が足りなかった」としているという。

さすが研修医に大人気の東大病院ともなるとずいぶんと強気なコメントだと感心しますが、その東大病院にしても研修医の待遇等は公表していなかった気がするのですが表に出せない事情でもあるのでしょうか?
そもそも新臨床研修制度導入に際して研修医がアルバイトに駆け回らなくてもいいように一定額の給与を保証しましょうと言う話だったはずですが、明らかにそれをはるかに下回っている大学病院の類は制度本来の趣旨を無視したもので極めて問題だと言えるでしょう。
ちなみに都市部で健康で文化的な最低限度の生活というものを送るにはどの程度の収入が必要なのかについて、最近こんな参考になる記事がありましたので取り上げてみました。

最低限の生活:首都圏20代男性なら時給1345円必要(2008年12月8日毎日新聞)

 首都圏で20代の男性が最低限の生活を維持するには時給1345円が必要--。労働問題を研究するシンクタンク労働運動総合研究所などが8日、首都圏では初めての最低生計費の試算結果を公表した。東京都の最低賃金は766円で大きな隔たりがあるとしている。

 テレビやパソコン、洋服など500項目の持ち物調査や外食の割合、値段など生活実体を調査する方法で、東京、神奈川など首都圏4都県の2039人から回答を得た。

 試算は20代男性単身世帯から50代夫婦子供2人、70代女性単身など9パターンで行った。

20代男性単身世帯では、食費3万9564円で家賃5万4167円、教養娯楽費1万8273円などで計23万3801円(月額)となった。これを最低賃金審議会で使った労働時間の173・8時間で割ると、最低賃金1345円(時給)が必要となる。試算には税、社会保険料金(4万2395円)も含まれる。

 30代母子家庭(35万512円)▽40代夫婦子供2人(56万3652円)▽70代単身女性(20万4815円)などだった。

 調査に携わった佛教大学の金沢誠一教授(公共政策)は「全体として大幅な最低賃金の引き上げが必要だ」と話している。

月額23万が最低限度としていいのかどうかはともかくとして、研修医の場合ただ生きているだけでは不十分であって、その上に医師として学んでいくための必要経費というものがあるわけですから、少なくとも月20万以下でアルバイト禁止と言う大学病院はじめ一部施設は「お前ら学ぶな!」と言っているのと同義だと考えていいわけでしょうか。
その上こういう施設が貴重な研修医を抱え込んで全国の医師不足を招いていると言う現状に思いを致すならば、東大北村教授の言うところの「違反者を出した病院は、研修病院の指定を取り消す」という発言には医療界のみならず国を挙げて全面的な賛意を示すべきだと思いますね。

実のところこういう話は今に始まったことではなくて、「外科系で一人前になりたければ40までは親に養ってもらう覚悟でいろ」だのとトンでもないことを仰る方が名物教授ともてはやされていたとか、「実家が金持ちでないならせめて嫁さんは資産家の家からもらえ」なんて事が未だに言われていたりとか、とかくこの業界には非常識な慣習がまかり通ってきたわけです。
新臨床研修制度が唯一?良かったと思える点は研修医の待遇を保証したことですが(それすらも有名無実であったことがこのように明らかになっているのは問題として)、実のところ今大きな問題になっているのは研修医のちょいと上、かつてはレジデントなどと言われていた若手医師の待遇なのですね。
何しろ研修医は待遇を改善しなければ集まってくれないということで官舎を用意したり給与を上げたりと至れり尽くせりですが、初期研修を終えて医局派遣などのルートに入ってくると途端に旧来の「釣った魚に餌はやらぬ」な本性むき出しという病院も多いのです。

この結果どういうことが起こってくるかというと、新臨床研修制度導入によって研修医とその上のレジデントで待遇逆転なんておかしな話が起こってきたのですね。
研修医は月給30万官舎つき当直なしの9時5時勤務、レジデントは25万住居手当無し週一当直夜間呼び出し放題と言うことになれば、診療の第一線を支える若手医師達も「こりゃ何かおかしいんじゃないの?!」と悟らない方がおかしいわけで、あっという間に現場の志気は崩壊するのが当たり前ですよ。
昨今特に公立病院やきつい救急病院で医師の逃散が相次いでいますが、さすがにこれはマズいと思う人間もいたのかようやく若手医師達の待遇改善がこのところ行われようかという情勢になってきているわけですが、そうなると今度は更に上の世代に不満が…と待遇改善の玉突き現象が発生しつつあるようです。

●後輩、先輩を逆転!?● /京都(2008年12月08日朝日新聞)

医師手当 府立2病院見直しへ ◆ 若手確保のしわ寄せ懸念

 後輩医師の方が先輩より給料が高くなる!?――。府人事委員会が10月に出した勧告に対し、医療関係者の間でこんな懸念が広がっている。勧告は、府立病院の医師確保策として若手医師の手当を引き上げる内容だが、予算枠が限られる中で、中堅・ベテランがしわ寄せを受ける可能性があるからだ。医療の現場からは「医師の士気にも影響しかねない」と心配する声も上がる。

 府人事委の勧告対象は、洛南病院(宇治市)と与謝の海病院(与謝野町)の府立2病院。府立病院の医師の給料は、府職員給与条例に基づいて決められているが、民間病院並みに給料水準を上げて、人材が集まりにくくなっている若手医師の確保を図るのが狙いだ。

 具体的には、採用から35年未満の医師に対し支給されている「初任給調整手当」を引き上げる。勧告は、これまで月額で最高30万6900円だった同手当について、来年度から41万900円とし、一気に10万円以上アップさせることを求めた。

 適用対象者はいないものの、これまで初任給調整手当が最も高い1年目の医師については、条例上は本給と同手当を合わせて月額54万円程度(地域手当などを除く)が支給されることになっていた。勧告通りに条例が改定されれば、これが60万円を超すことになる。

 公的病院での若手医師の確保は全国的な課題で、人事院も国の医療機関に勤める医師に対する同手当の引き上げを勧告。府人事委の勧告もこの流れに沿ったものだ。

 ただ、初任給調整手当は1年目の医師が最も高く、勤続年数に応じて減っていく仕組みとなっている。勧告は手当の上限額を示しただけで、年齢や等級による具体的な引き上げ基準は年明け以降に決まる。府立病院の予算にも限度があるため、「手当の減額幅が大きくなる中堅・ベテラン医師の場合、年次の低い医師の方が給料が高くなる可能性もある」(医療関係者)との懸念が出ている。

 府立与謝の海病院の柴田克己事務部長は、「若手医師の確保も必要だが、中堅・ベテラン医師から不満が出るような給料改定になるのなら、歓迎はできない。バランスのとれた処遇を検討してほしい」と話す。

まあ実際のところ公立病院では給料だけ高くてろくに仕事も出来ない不良債権じみた、もとい、公務員的勤労精神にあふれた大ベテランの先生方も多いと言いますから、この機会にと一掃してしまえと言う気持ちもあるいはあるのかも知れません(邪推)。
しかし患者から見て良い医者と医師から見て良い医者とが異なるのと同様に、診療現場から見て良い医者と経営側から見て良い医者ともまた異なるはずなのです。
特に全国の公立病院では現場との関係が冷え切っている場合も多いようですから、目先の収支だけに視線を奪われて現場の空気を読まない改悪路線を突っ走った結果、あっという間に病院崩壊を来してしまった舞鶴市民病院の轍を踏まないようにお気を付けられた方がよろしいかと思いますよ。

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