« 今日のぐり「焼肉レストラン鶴松 灘崎店」 | トップページ | 医者が足りぬと言うのなら »

2008年12月22日 (月)

たらい回しは許さない ~ 救急医療再建

以前にも紹介しましたが、桝添氏と二階氏の「いわく付き」トップ会談の結果、厚労省と経産省が協力して救急搬送にIT技術活用を計っていくという話がまとまりました。
その初会合がこのたび開かれたそうですので、まずはこちらの記事から紹介していきます。

救急受け入れ支援の情報活用研究会が初会合(2008年12月17日CBニュース)

 受け入れ可能な医療機関が見つからず、妊婦が死亡した問題などを受け、厚生労働省と経済産業省は12月17日、「救急患者の医療機関への受け入れを支援する情報活用等に関する研究会」の初会合を開いた。研究会では、医療機関が救急患者の受け入れを円滑にする情報システムや運用体制について検討していくが、大都市部と地方での運用方法の違いなどの問題点について、課題が浮かび上がった。

 研究会の座長には、有賀徹・昭和大医学部救急医学講座主任教授が選ばれた。研究会の下には「運用・IT技術ワーキンググループ」(座長=山本隆一・東大大学院情報学環准教授)を設け、今年度中に報告を取りまとめる。
 初会合ではまず、厚労省が、都道府県が医療機関に要請している「救急医療情報システム」の入力状況などについて報告。導入している43自治体のうち、「情報に変更があればその都度入力する」が4自治体、「1日2回以上」が7自治体、「1日2回」が29自治体、「1日1回」が3自治体と、頻度に地域差が見られた。厚労省側は、医療機関に入力頻度を上げるよう協力を求めることは負担増につながるほか、最終の搬送先決定には直接電話連絡をする必要があるため、医療機関と搬送機関のヒューマンネットワークの構築などが必要とした。
 研究会の検討事項としては、▽救急医療情報システムの機能増強▽周産期救急情報システムの機能増強▽各情報システムの運用体制の強化▽新情報システムによる実証事業で検証が必要な事項-が挙げられた。

 質疑応答の冒頭、有賀座長は「産科救急と一般救急のネットワークはかなり違う」と指摘した。
 これに続き、岡井崇委員(昭和大医学部産科婦人科学教室教授)が、産科救急では、妊婦はこれまで診察を受けていた医師の元に一度運ばれ、その医師が医療機関に搬送を指示することがあると指摘。「問題はベッドが満床で、医師不足のために現場が多忙で、病院を見つけることが困難なことだ」と訴えた。また、「周産期救急は、一般救急と比べ圧倒的に件数が少なく、これまでは医療機関同士でやりとりをすればうまく回っていたが、それが変わった」と説明した。
 小倉真治委員(岐阜大大学院医学系研究科救急・災害医学分野教授)は、都市部と地方の救急搬送の状況の違いを指摘し、「岐阜県では救急患者を受け入れるため、時間をかけてマニュアル化を行い、ある程度うまく機能している。まず、『医療情報システムの構築ありき』といっても、地域や地場の情報体制を変えるのは難しい」と述べた。
 続いて、杉本充弘委員(日赤医療センター第一産科部長)が、「大都市圏ではITが特に必要かもしれないが、過疎地では状況が違ってくる。その地域に合うように幾つかのモデルを示す必要があるのではないか」と指摘した。
 また、坂本哲也委員(帝京大医学部救命救急センター教授)は「ディスパッチャー」と呼ばれる管理者を引き合いに、「米国では、空床の状況を把握しながら、医療機関に受け入れを要望するコーディネーターがいる。情報といっても誰が管理するのか。サポートはどうするのか議論が必要」と述べた。

 厚労省は救急医療情報システムについて、「全国一律ではなく、各地域に最も合ったものを県の中で議論してほしい。ただ、他県に患者を運ぶことが多い地域は、近隣県と相互に検討が必要。一般論として広域化が望ましい」とした。また、「新しい情報技術を使えば、入力などでもっと人の負担が少なくなるのではないか」と指摘した。
 これに対し、有賀座長が「現場の意見としては、ITだけで判断できるとは思っていない」と述べたほか、山本ワーキンググループ座長も、「ITはあくまでツール。ツールと仕組みは分ける必要がある。ツールは共通して利用できることが必要だが、判断については、自動化はできない。判断をする人の負担を減らすことを考えるべき」とした。
 研究会は、ワーキンググループによる数回の議論を経て、来年3月に第2回会合を開く予定だ。

初回と言うことでとりあえずこんなものかなと思いますが、医療資源の地域ごとの実情も全く異なるわけですから、全国一律のシステム改革と言うのは現実問題難しいのではないかと思いますね。
むしろ各地方、近隣県のレベルで広域救急搬送問題に関する連絡・協議の場を設けていくといったことの方が、より早期に実効性ある結論が出てくるのではないかと思いますが。

ところで桝添-二階会談でも出ました「IT技術を活用して」云々というくだりなんですが、これがどんな斜め上な…もとい、素晴らしい最先端技術の結晶として結実してくるかに非常に興味がそそられるわけですよ(笑)。
そう思っておりましたら、先の会議でも岐阜大・小倉教授が「岐阜県では救急患者を受け入れるため、時間をかけてマニュアル化を行い、ある程度うまく機能している」と自負する岐阜県から、さっそくこんな記事が出てきました。

ICカードで医師動向把握 患者たらい回し解消へ/岐阜(2008年12月21日岐阜新聞)

 ICカードで病院内の医師の動向を把握して救急隊に最適な搬送先を指示できる救急医療情報システムの開発に向け、岐阜大学医学部を中心に産官学が連携して2009(平成21)年度から、県内で実証実験に取り組む見通しになった。患者の「たらい回し」の解消にも効果が期待される。

 20日内示された09年度予算財務省原案で、この実証実験を含むプロジェクトに3億円が盛られた。

医師にICカードを携帯してもらい、病院内に設置したセンサーで、「手術中」「診療中」など勤務状態をリアルタイムで把握。自動的に専用サーバーに情報を送る。一方でサーバーは救急車に装備した端末から患者の情報も受け取る。

 こうした医師の業務状況と救急患者の傷病状態の双方の情報を基に、最適な受け入れ可能病院を素早く救急隊に示す「人工知能」を組み込んだシステムの開発を目指す。

 早ければ09年度から岐阜、高山、美濃加茂市の計3病院で医師の動向を把握する設備を整え、順次、救急車に端末を導入する計画。11年度ごろをめどに救急救命センターなど10―15病院、救急車75台への拡大を目指す。

いやあ、「患者の「たらい回し」の解消にも効果が期待される。」って、何かさっそくいい感じですねえ(笑)。
当然ながらこういう素晴らしい最先端のシステムであれば医師の勤務状況を把握するなど朝飯前なわけですから、今後二度と時間外手当未払いなんて問題は起こるはずがないものと今から期待も高まろうと言うものですよ。
岐阜県には是非とも医療現場のIT革命を通じて、医療労働管理体制においても日本の最先端をこのまま独走していただきたいと思いますね。

さて、救急搬送問題に関わる話題として、こういう記事もあります。

救急科医の志望者、わずか2.2%(2008年12月17日CBニュース)

 全国医学部長病院長会議(会長=小川彰・岩手医科大学長)と臨床研修協議会(理事長=矢崎義雄・独立行政法人国立病院機構理事長)が共同で行っている「臨床研修制度」についてのアンケート調査の中間集計で、若い医師らが「医師不足」や「過重労働」といわれている診療科を避ける傾向にあることが、あらためて明らかになった。現役の医学部生、初期研修医、卒後3-5年目の医師で、「救急科」を志望する人は全体のわずか2.2%、「産婦人科」も6.4%にとどまった。一方、最も志望者が多かったのは「内科」の14.4%だった。

 両団体は10月末、大学80施設、臨床研修病院80施設の医学部生、初期研修医、卒後3-5年目の医師、指導医、医学部長、病院長ら1万8500人に、アンケート調査を実施し、12月5日までに1万1800人から回答を得た(回収率63.8%)。

 それによると、臨床研修制度の導入による「総合的診療能力の変化」について、大学病院の指導医の26.4%、臨床研修病院の指導医の45.3%が「高くなった」「どちらかといえば高くなった」と回答した。一方、大学病院の指導医の31.9%、臨床研修病院の指導医の14.6%が「低くなった」「どちらかといえば低くなった」とした。

 「初期研修の必修科目」については、大学病院の指導医の34.4%と臨床研修病院の指導医の36.0%が「少なくした方がよい」と回答。「現状がよい」と答えたのは大学病院の指導医の22.4%と臨床研修病院の指導医の28.2%、「多くした方がよい」としたのは大学病院の指導医の2.0%と臨床研修病院の指導医の2.6%だった。

 また、「初期研修の期間」について、大学病院の指導医の24.2%と臨床研修病院の指導医の40.5%が「現状がよい」と回答。一方、「一定の条件の下に短縮した方がよい」と答えたのは大学病院の指導医の37.5%と臨床研修病院の指導医の26.8%だった。

わずか2.2%しかいないと考えるか、2.2%もいるのかと考えるか、立場によって受け取りかたが微妙な数字という気はしますが。
救急というものを担当しているのは当然に救急科医だろうと思っておられる方も多いと思いますが、ほとんどの病院では内科、外科など各診療科からスタッフを捻出して救急を回しているのが現状なんですね。
救急専門医というものに関してはずっと以前にも一度書いたことがありますが、基本的には各専門科に引き継ぐ初期診療を請け負う診療科であって、他科のバックアップ無しにそれ自体が単独で成立するという類のものではない点には留意しなければなりません。
特に日本の場合は主治医制というシステムが敷かれている病院が多い関係もあり、テレビドラマなどでの大活躍ぶりと比べると院内では結構微妙な立場だったりすることが結構あって、現状では例えば新卒医師の10%なりが救急科に進んだとしてもむしろ現場で持て余す可能性もあるのかなという気がしています。

学生や研修医に話を聞いてみると判りますが、一度は救急を学びたいという数は相当に多いのですが、それを生業としたいと考えている人間は極めて限られています。
救急科医志望がわずか2.2%という話が出るからには最終的にどれくらいの数をという目標設定があるはずですが、救急科医を揃えたいならその分をどこの診療科から削り取ってくるのかという議論も為されなければならないのは当然なんですけどね。
いずれにせよ一昔前は何も考えないでとにかく手を動かせという突貫小僧が多かった医療業界ですが、知識や技能はきちんと身につけた上で自らリスクマネージメントを行っていく彼ら若手医師たちの姿勢は、時代の求める医師像として率直に評価されるべきものだと思いますね。

|

« 今日のぐり「焼肉レストラン鶴松 灘崎店」 | トップページ | 医者が足りぬと言うのなら »

心と体」カテゴリの記事

コメント

 100人の卒業生のうち救急部へ2人、産婦人科に6人入局と言われたら、ま、そんなもんかな、という感じがします。このアンケートは現役医学生、初期研修医、卒後3-5年目医で分けて分析したら面白い結果が出せたのではないかと思います。

投稿: JSJ | 2008年12月22日 (月) 15時19分

 なんぼICカード作ろうとも、実働する医師が増えなければ崩壊が加速するだけだと言うことが官僚には理解できないのですね。現在勤務している医師の労働軽減、待遇改善、実質時給アップなどの議論は一切出てきません(笑)
 今残っている医師の負担を少しでも増加させることしか発想できないのでは崩壊加速を企んでるとしか考えられません。日本医療の完全崩壊シーンがいつみられるのか楽しみにしております。

投稿: 元外科医 | 2008年12月23日 (火) 11時56分

100人中産科に6人って言ったら今どき御の字じゃないでしょうか?

現場が余裕がなくてヒーヒー言ってる時に、更に無駄なく常に全力でもって働けるようなシステムを導入してくれるとどうなるのか、壮大な社会実験としては面白いかなとも思うんですがね(苦笑)。
そう言えば「モダンタイムス」のラストも言ってみれば「逃散」だったような…

投稿: | 2008年12月23日 (火) 13時23分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/43493326

この記事へのトラックバック一覧です: たらい回しは許さない ~ 救急医療再建 :

« 今日のぐり「焼肉レストラン鶴松 灘崎店」 | トップページ | 医者が足りぬと言うのなら »