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2008年12月27日 (土)

自治体病院ただいま改革真っ最中? その二

このところシリーズものばかりで恐縮ですが、昨日も少し書きました自治体病院の話題を今日ももう少し続けます。
まずはこちら、総務省が公立病院の支援に乗り出すというニュースから紹介してみましょう。

公立病院への財政支援拡充へ(2008年12月26日産経新聞)

 総務省は26日、経営難や医師不足が深刻な公立病院への財政措置に関する要綱を公表した。

 過疎地にある「不採算地区病院」に対する特別交付税措置の要件を現在の100床未満から150床未満に緩和し、病床数に応じて決める交付額も2~8割増にする。特に医師不足が深刻な周産期医療の病床は5割増、小児医療病床も4割増程度に拡充する。こうした緩和措置は21年度から実施し、地方交付税の総額は、20年度予算の2930億円から700億円程度増額させる方針だ。

過疎地、産科への交付税拡充=09年度700億円を増額-総務省(2008年12月26日時事通信社)

 総務省は、医師不足などで経営が厳しい過疎地の公立病院や、産科、小児科、救急医療部門を備えた公立病院を運営する自治体向けの地方交付税を2009年度から拡充する。26日、財政措置に関する要綱を改正し、交付税の上乗せ対象となる過疎地の小規模病院(不採算地区病院)の指定要件緩和を盛り込んだ。公立病院関連の配分額は、08年度に比べ700億円程度増え約3600億円となる。
 不採算地区病院は、病床数100床未満で市町村内唯一の病院であることなどが要件。しかし、市町村合併の進展や医師不足の深刻化を踏まえ、病床数150床未満で「最寄りの病院まで15キロ以上」などに緩和した。これにより、対象は232病院から320病院程度に増える見通しだ。
 周産期病床や救急医療施設向けの配分は5割程度、小児病床向けは4割程度増額する。

この医療費削減時代に何?とお思いかも知れませんが、自治体病院というのは厚労省ではなくて総務省の管轄なんですね。
以前から公言しているように厚労省は赤字を産むばかりで生産性の低い中小病院を潰しにかかっているというのに、総務省はなんともまあ空気がよめないことをしてくれます。
医学部定員問題などは文科省だし、どうもこの国の医療行政はやたらと分断されまくって船頭多くして何とやらなんじゃないかとは誰しも思うところですが、このあたりは麻生総理も気にしているようで「地域医療の崩壊を食い止めるために各省庁は連携を」との発言もあったようです。

しかし地方の自治体病院では盛んに医師不足だと言いますが、田舎だろうがちゃんと医師を集めている病院もたくさんあるという現状をどう考えているのでしょうか?
医師の勤務態勢を改善するどころか奴隷労働を押し付け、医局派遣の人事に頼ってまともに医師を集める努力すらしてこなかった公立病院に今どきどんな医師が集まるのかと言うことですよね。
実際のところ医師自身が勤務先を選ぶようになった新臨床研修制度の導入以来全国の自治体病院勤務医数は減少を続けていて、最近三年間で実に7%の医師が辞めているという話があります。
キャリアアップのために敢えて自ら虎口に飛び込むような一部の高度医療機関は別として、一般的に自治体病院など医師にとっては「医局命令ででもなければ行きたくない場所」でしかないという事実を彼ら当事者は認識しないといけないでしょうね。

それはともかくとして、実際のところ公立病院の経営がどうなっているのかと言えば、どこも漏れなく赤字なのは当然ですが赤字幅自体も大出血サービス中というところらしいですね。

公立病院、4年で2倍超の赤字(12月12日医療介護CBニュース)

 全国各地で公立病院(自治体病院)の休止や閉鎖が相次ぐ中、2003-07年度の4年間で自治体病院の赤字が2倍超に増えていることが明らかになった。全国に約1000ある自治体病院の経営が、この数年間で急速に悪化した要因について、総務省の「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会」の報告書では、医師不足の深刻化や診療報酬のマイナス改定、地方財政の悪化を挙げており、国の早急な対策が求められている。

 今国会でも、参院予算委員会で山下芳生氏(共産)が公立病院の経営悪化について政府の見解をただしている。

 山下氏は、公立病院の赤字が2003年度の932億円から07年度には2006億円と2.15倍に増えていることを取り上げ、「公立病院はもともと、救急や産科、小児科などの『不採算医療』を担ってきた。このため、多くの病院が赤字だが、その原因は、個々の病院の問題というより、国政にかかわる問題だ」と追及。また、医師不足の深刻化や地方財政の悪化などについて、「その大本には、小泉内閣以来、社会保障費を毎年2200億円削減してきたことや、地方交付税を5兆1000億円も削減してきたことがある」として、麻生太郎首相の認識をただした。

 麻生首相は、医師不足の深刻化や地方財政の悪化などを認めた上で、「救急や小児医療、産科などの分野で、公立病院に対する地方財政措置の充実を考えていかなければならないと認識している」と答弁した。
 これに対し、山下氏は「公立病院への財政措置を決めた政府の検討会の報告が出た後に、大阪府松原市立松原病院の閉鎖が発表された。政府の対策では救われないということで、特に中小の都市にある病院への対策が抜けている。医師不足や地方財政の悪化は国が招いたことで、政治の責任で取り除かなければならない」などとして、社会保障費の毎年2200億円の削減や地方交付税の大幅な削減の中止を求めた。

医師一人で平均1億の売り上げと言いますが、病院というところは医師を沢山抱え込むほど収入が増え、黒字を出しやすくなると言うことが最近すっかり世間でも知られるようになりました。
当然各地のやる気のある病院ほどさっさと好待遇で医師囲い込みに走っているわけですが、これに完全に乗り遅れているのが自治体病院というわけです。
天下の読売新聞のように「医師の強制配置で僻地送りを実現しよう!」なんて主張をしている方々もいらっしゃるようですが、そういう医師達にどれほどのモチベーションが生まれるだろうかと言う点にも多少の想像力を働かせた方がいいんじゃないかとは思いますね。
残念ながらと言うしかないのですが、システムとして崩壊している現在の医療現場は医師を初めとする個人個人の奮闘努力によって辛うじて支えられていると言うしかないのが現状なのですから、真っ先に現場の意志を挫いてどうするのかと言うところでしょうか。

いずれにしても赤字赤字で先立つものがなければ身動きもできないのはどこの業界でも同じ事ですから、本気でやる気のある病院にはそれなりの公的支援をという考えもありだとは思いますが、問題は今このタイミングで政府にも全く金がないということですよね。
雇用対策と込みで需要と供給のアンバランスが大きい医療・介護に巨大な新規市場を開拓するというのは面白いビジネスモデルなんじゃないかと思うのですが、どうもお偉い方々のお考えは違っているようで、そのうち本気で「道路は出来てもその先に病院はなかった」なんてオチがつきそうですけれどね(苦笑)。

新交付金「8割は道路に」 谷垣氏、自民総務会で見解(2008年12月5日日経ネット)

 自民党道路特定財源の一般財源化に関するプロジェクトチーム座長の谷垣禎一元国土交通相は5日の党総務会で、来年度の創設を打ち出した約1兆円の地方向け交付金の使途について「約8割は道路に使われるイメージだ」と語った。

 8000億円程度が道路整備に充てられることになり、そのほかの事業などへの投資は2000億円程度にとどまる見通しだ。

 総務会では「病院に行くにしても道路が悪いと時間がかかる」などと道路整備を重視すべきだとの意見が出た一方、「一般財源化というなら、地方が自由に使える金にすべきだ」などの意見も出た。

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コメント

いつも大変お世話になっております。
「勤務医 開業つれづれ日記」中間管理職といいます。

1か月ほど前に初めてこちらにきて、楽しく読ませていただいております。
とても丁寧な医療環境の記事を読み勉強させていただいております。

できましたら、貴ブログを当ブログでご紹介させていただきたいですが、いかがでしょう。
地方ネタもあるようで、ひっそりとやりたい、という方もいらっしゃいますのでご意見をいただけましたら幸いです。

今後とも貴ブログの発展を期待しております。よろしくお願いいたします。

中間管理職
勤務医 開業つれづれ日記・2
http://med2008.blog40.fc2.com/


投稿: 中間管理職 | 2008年12月28日 (日) 09時05分

はじめまして。
過分なお言葉とあわせて、わざわざのご連絡ありがとうございます。
いわゆるひとつのリンクフリーですので、煮るなり焼くなり好きなようにしちゃってくださいと言いますか(笑)。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

投稿: 管理人nobu | 2008年12月28日 (日) 17時43分

 総務省のスタンスはわかりにくいですね。赤字公立病院を淘汰したいのか延命したいのか。そうかと思うと、今度は消防法を改正して、満床でも急患を受け入れさせようとか(消防法を改正しただけでそんなことが可能になるのか、よく分からないのですが)、救急病院への攻勢を強めたようですし。
 腰の定まらない拙劣な戦術なのか、味方に被害がでそうになるとさっと引く「負けない」戦い方なのか、圧倒的優位を確信して敵(=医療)をいたぶっているのか…。
 医者を苦しめるのが目的と考えると、赤字公立病院を延命しようとすることも、救急医療に干渉しようとすることも、まことに合目的であるといえるかも。

投稿: JSJ | 2008年12月29日 (月) 08時04分

敵とか味方とか言う以前に、自分たちの内輪以外がさっぱり目に入っていない状態なんじゃないでしょうか。
以前に聞いた話では(現在の)官僚というものは国の将来とか長期計画とか言った発想はなく、ただただ目先の実績を上げることだけに専念している方々が主流なのだそうですね。
医療業界自体もまさにそうした体質が濃厚なわけですから人のことは言えないと思いますが、結局各省庁ごとの目指すべきところも統一されていないようでは現場もとりあえず今を生き残ることに専念するしかないでしょう。
そのうち各省庁間で医療行政の主導権を握って一大バトルにでも発展してくれれば見ている分には面白い話になりそうなんですが(苦笑)。

投稿: 管理人nobu | 2008年12月29日 (月) 12時14分

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