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2008年12月19日 (金)

大阪公立病院事情 ~ 阪南市立病院と松原市立病院の対比

別段含むところがあるわけでもありませんが、何故か何度も取り上げることになってしまっている阪南市立病院のその後について、このたびは特例債申請に向けた改革プランを出してきたようです。

阪南市立病院、改革プラン案まとまる 総務省に提出へ(2008年12月18日産経ニュース)

 経営難に陥っている阪南市立病院の改革プラン策定を進めてきた有識者や住民代表らによる「市立病院経営改革懇談会」(座長、今中雄一・京都大学大学院教授)が17日、市役所で開催され、改革プラン案がまとまった。議会への説明を経て、今月中に「公立病院特例債」発行の認可を得るため総務省にプランを提出する。

 プラン案では泉州南部15万人医療圏の住民から信頼される地域医療を担う中核病院として機能することを掲げている。経営改善については、医師の辞職の動きがあるが、現段階では医師の辞職が確実になっておらず、これまでの計画通りとなっている。現状の医師の給与体系(年収約2000万円)をベースにし、平成25年度までに経営基盤を確立し改善を進める。25年度には一日平均の入院患者数155人を目標にしている。

 阪南市立病院の累積赤字は平成19年度末で約22億8000万円。プラン策定による「公立病院特例債」約10億5000万円の発行を予定し、7年間の長期債務に振り替えて、財政への影響を抑える計画。しかし、現在、辞意を表明している医師が一斉に辞め、他の医師確保が進まなれば特例債が発行されないことも想定され、今年度、一般会計から病院に約15億5000万円の資金援助が必要となり、財政が一気に悪化する恐れが出てくる。

ちなみに公立病院特例債につきましては以前に書きました通りですが、この特例債なるものは抜本的改革をしたいが金がないため出来ない自治体病院救済のための臨時的な措置で、これを申請するためには「こんな風に改革していきます」というプランを提出しなければなりません。
改善の計画についてはここでは詳細は明らかでないのですが、とりあえず「医師の辞職の動きがあるが、現段階では医師の辞職が確実になっておらず、これまでの計画通りとなっている」という時点でいったい実現性としてどうなのよと突っ込んでおかなければならないでしょうね。
大阪府内で周辺医療機関にも不自由していない中、人件費率9割なんてあり得ない経営状況の公立病院を大赤字を抱えてまで維持しなければならないという執着がどこから来るのか、外野としてはその情熱をもっと有意義な方向に生かせよと思ってしまいますが。

さて、以前から「金がなくて公立病院を維持できない自治体の中から、自前の病院を廃止して周辺自治体や民間の病院に肩代わりを求める自治体が出てくるのでは?」と言ってきたわけですが、同じ大阪府で阪南市とは逆に公立病院廃止を決めた松原市の例を取り上げてみましょう。

公立病院閉鎖へ、異例の条例案可決 大阪府松原市(2008年12月17日産経ニュース)

 深刻な経営難に陥っている大阪府松原市の市立松原病院(桑田博文院長、162床)を来年3月末で閉鎖する条例案が、17日に開かれる市議会本会議で自民、公明などの賛成多数で可決された。すでに今月15日から新規の入院、外来診療の受け付けを停止するとともに入院患者の受け入れ先を探しており、来年度中に廃止する方針。

 平成16年に導入された新臨床研修制度による医師流出などに伴い、各地の公立病院は構造的な赤字体質が続いているが、廃止に踏み切るのは極めて異例だ。

 中野孝則市長は11月28日、施設の老朽化や医師不足などを挙げ、本年度末までに累積赤字が約50億円に達する見通しも示して、廃止を発表していた。

 平成13年に38人いた常勤医師は、今年1月には27人に減少。外来患者数は、13年度の約22万6000人から、19年度には約13万3000人に落ち込んだ。

 同病院は昭和25年に開設。診療科は内科、外科、産婦人科、小児科など12科。医師不足と施設の老朽化などで患者数が減少し、19年度決算で約40億円の累積赤字を計上。今後も毎年約10億円の赤字が見込まれ、市の財政再生団体への転落が危ぶまれる中、一般会計からの繰り入れも限界に達していることから閉鎖を決めた。

風の噂によれば閉院の大きな原因は建て替え費用がまかなえないからだとも聞きますが、経営効率が極端に悪い公立病院は言うまでもなく、私立の病院を含めて考えても今の診療報酬ではまともな医療をやっていればぎりぎり黒字になるかどうかを目指すのが精一杯でしょう。
当然ながら健全経営を維持した上での自己資本での建て替えなどおいそれと出来るものではないはずなのであって、未だにハコモノ行政の延長線上でやれ移転だ、立て替えだと大騒ぎしている各地の自治体よりもよほど潔いんじゃないかとも思いますね。
そもそも他の医療機関も多く周辺自治体との交通も整備されているこうした都市部で、明らかに経営効率の悪い公立病院を大赤字を抱えてまで維持する理由というのはないんじゃないかと思うし、その分を他の住民サービスに回した方がよほど皆が幸せになれると思うのですが、何故かこうした「英断」に対しても批判の声が結構あがっているらしいんですね。

「結論急ぎすぎ」市立松原病院の閉院可決(2008年12月18日朝日新聞)

 市長の閉院表明からわずか20日足らず。松原市立松原病院の閉院が17日、市議会で可決された。「命と健康のとりでをつぶすな」と存続を求める署名活動をしてきた市民団体は「市民の願いに耳を傾けず、あまりに結論を急ぎ過ぎだ」と怒りの声をあげ、可決に抗議する声明を出した。今後、中野孝則市長の辞職や閉院の先送りを求めていくという。

 60人を超す市民が傍聴する中、議長を除いた採決で、自民(7人)、公明(5人)、民主(2人)が賛成、共産(5人)が反対した。採決前の討論では、閉院に賛成する市議が「(閉院は将来)英断だと評価されるだろう」「問題の先送りは市民サービス低下につながる」「市立病院は歴史的使命を終えた」と述べると、傍聴席からは「ばかなこと言うな」「議員をやめろ」「それで福祉の党といえるのか」とヤジが飛んだ。

元病院職員らでつくる「病院の存続・充実を求める会」は閉会後に記者会見。「『市立病院が役割を終えた』というのは非常識な発言だ」「財政難を理由に病院を切り捨てるのは許せない」と訴え、今後、来年3月末の閉院を6月にもある市長選の後に先送りすることや、市長の辞職を求める署名活動を進めていくことを明らかにした。

 閉院の可決を受け、中野市長は「閉院で市民に多大なご迷惑をかけることをおわびする。入院患者の転院や職員の処遇の問題には誠意をもって対応したい」と話し、辞職については「そんな無責任なことはできない」と否定した。

松原市なんて他に幾らでも医療機関がある中で「命と健康のとりで」もないものだと思うのですが、うがった見方をすれば何らかの事情で他の医療機関にはかかりたくない人々にとっての「とりで」でもあったのか、あるいは病院関係者と言うだけに病院に存続してもらうこと自体に何らかのうまみでもあったのかなどと妄想もふくらみますが、どうなんでしょう?
公立病院の9割が赤字とされる中、今やどこの自治体でも自前の病院経営が極めて大きな重荷になりつつありますが、立地も医療事情も無視して「自前の病院くらい持っていなければ」などという根拠のない思いこみが一度失われてしまうとどういうことになっていくのか、なかなかに興味深いことになっていくのかも知れませんね。

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コメント

勤務医 開業つれづれ日記・2経由できました

松原市立病院の件って、児島市民病院と通じるものがありますね。近隣に、岡山市だってあるし、同じ市内に倉敷中央も川崎医大もある。まわりにいくらでも市民病院以上のスーパー病院がてんこ盛り。まさに市民病院である必要が無い病院。

政治的ゴタゴタで医師が大量辞職し、すでに無用の長物と化した市民病院。
そこに職員組合や新院長を送り出した政治的な勢力が必死で署名を集め存続の陳情。

いやー、松原市みたいに児島市民病院は早めに潰してほしいですわ。
今後赤字額は舞鶴の二の舞になるでしょうから、へたすりゃチボリ以上のお荷物。普通に考えて職員と利権団体以外は誰も存続を望まない。
来年倉敷市の議員選挙があるけどどうなりますやら。存続なら倉敷の経済的破綻も近いかも。

投稿: ないかい | 2008年12月31日 (水) 16時01分

はじめまして。
児島市民病院と言えば、倉敷市では唯一の市立病院でしたか。
倉敷市の場合は旧市合併前からの負の遺産の一つなのかも知れませんが、他の医療資源も整っている都市部で大赤字を垂れ流しながら公立病院を維持しなければならない理由が自分には理解できません。
それでも一生懸命存続に努力している人たちがいるわけですから、何かしら彼らにとっての大きな理由があるんだろうなあと考えてしまうところですね。

投稿: 管理人nobu | 2008年12月31日 (水) 18時20分

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