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2008年12月

2008年12月31日 (水)

今日のぐり「中国料理 娘娘」

ほんの数日前に「今年最後のぐり研活動かも」などと言いながら、また逝って、もとい、行ってしまいましたわけなんですが。
今度こそ本当に今年最後のぐり研に間違いはありません(断言)。
いやしかし、このところ体重が大変な勢いで急上昇しているのはどういうことなんでしょうねえ…

今日のぐり「中国料理 娘娘」
以前に久しぶりに訪問してちょっと「?」な内容だったこともあって、今回はそのリターンマッチといったところでしょうか。
前回食べたようなものも含めて色々と取りそろえて食べてみたんですが、主なものから幾つかインプレッションを。

海老焼売
いわゆる広東風蒸し餃子で、透き通った皮の下に見える海老の紅さが魅惑的な一品というやつですね。
ぶりぶりした海老の食感と風味は合格点をつけられるんですが、やはり皮の食感はイマイチ。
ここの点心系は全般的に皮がもう一つかなとは感じるんですが、必ずしも蒸し加減ばかりの問題でもないのかなと言う気がしてきています。

イカと季節野菜の炒め物
個人的には一番ここの店らしいメニューだと思うんですが、今回食べたところではきちんと濃厚な旨みとイカと野菜の食感が残っていてよろしい。
なんだやれば出来るじゃないかと思う反面、前回の情けない炒め物の出来は何だったのかと改めて思うところではありますか。
強いてケチをつけるならば、大昔の頃の見るからに素晴らしい出来から比較するとイカの飾り包丁がちょっとばかり雑になってるように感じたのは気のせいでしょうか?

肉団子の甘酢あんかけ
基本的に甘酢系はあまり好きではないので味の評価は保留としておきます。
しっかりパイナップルも入ってるし(苦笑)、どうもこういう酸味系主体の味って何の料理に限らず苦手なんですね。
味はともかく野菜のしゃっきり感もきちんと残っていて全体にまずまずなんですが、肉団子はわずかに揚げすぎって感じですかね。

貝柱入り粥
これも以前の印象に比べるとやや煮詰まりすぎな感じもあってちょいと雑な仕上がりかなとも思うところですが、味は悪くないです。
濃厚な旨みが含まれていながらもさっぱりとした後味はどうしても脂っこくなりがちな料理に合わせるのにもぴったり。
この店の場合、下手な御飯ものや麺類を頼むくらいなら粥を頼んでおいた方が幸せになれるかも、ですかね。

胡麻団子
揚げたての熱々なやつをボフンボフンと噛みつぶしていく感覚は変わらず楽しくていいです。
中身の餡はわりあいあっさりした味なんですが、これくらいが料理の締めとしては程よい感じでしょうか。
締めはこれだけで終わるより冷たいデザートと組み合わせて頼んだ方がバランス的にはいいかも、ですね。

全体を通じて言えば、今回はいかにもこの店らしい味が保たれていて、ゲストにも喜んでもらえて良かったかなと思いますね。
以前にも時には明らかに失敗していると思える皿はあったように思いますが、毎回のように味の差が大きくなってきているのであれば問題かなとも思います。
これだけの規模になってしまうと常時変わらない味を保つのも大変なのは理解できますが、客の方はいつも同じレベルで出てくるものと期待して来ているわけですからね。

とはいえ、総合的に見てメニュー選択さえ間違えなければ今もトップクラスの味を楽しめる店という評価は変更せずともよさそうです。
気になるところとしては店側としては主流にしているつもりらしいコースメニューの設定が、どれも「らしくない」料理ばかり並んでいるところですかね。
この店は素直にスープの旨みを前面に出した料理が一番らしくていいんじゃないかなと思います。

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2008年12月30日 (火)

今年を象徴するものは ~ やっぱり「変」?

燃料費が乱高下したり株価が暴落したりと色々とにぎやかだった今年という一年ですが、いよいよ終わりも近づいてきました。
本年7月より始めさせていただきました当「ぐり研ブログ」も未だにしぶとく生存していられるのも皆様方の御支援によるもので、本当にありがとうございました。
さて、年末と言えば各メディアでは「今年を振り返る」だのと言った企画が目白押しですが、今年を象徴する漢字というのは「変」なんだそうですね。

今年の漢字:「変」に決まる 政治や経済など「変化」象徴 (2008年12月12日毎日新聞)

 日本漢字能力検定協会(京都市)は12日、世相を最も反映した今年の漢字に「変」が選ばれたと発表した。同日、同市東山区の清水寺奥の院で、森清範貫主(かんす)が大型の和紙(縦1.5メートル、横1.3メートル)に「変」と力強く揮毫(きごう)。31日まで同寺本堂で一般公開される。

 過去最多の応募11万1208通のうち「変」は6031通(5.42%)。協会はオバマ氏が当選した米大統領選や金融危機、気候異変など「変化」を象徴したとみている。2位は北京五輪などにちなんだ「金」(3211通)、3位は株価などから「落」(3158通)だった。

まあ変化の変という見方もあるでしょうが、変と言えば変態の変、変態と言えば天下の毎日新聞のトレードマークじゃないですか。
というわけで今年を代表する10大ニュースというものも、当然にこういったあたりに集約されてくるわけです。

読者が選ぶ2008年インターネット10大ニュース 結果発表

トップは毎日新聞社の“低俗すぎる記事”騒動
 1位は、毎日新聞社の英語版サイト「Mainichi Daily News」のコラムコーナー「WaiWai」が「低俗すぎる」記事を掲載しているとして、ネット上での批判をきかっけに大問題になった話題。週刊誌などの報道を引用したものだったが、日本の社会や風俗を伝える「ありえない」内容のゴシップ記事を、事実の裏付けのないまま翻訳・配信していたことが問題視された。その後、同社のニュースサイト「毎日jp」に広告を出稿する企業への抗議活動にも発展し、同サイトの広告スペースが自社広告で埋め尽くされる事態も起こった。

 2位のGoogle マップ「ストリートビュー」は、居ながらにして各地の街の景色を見られるという利便性が支持されたこともあるが、プライバシー面での懸念で注目が集まったと言える。最近では各地の自治体などがストリートビューについて懸念を示したり規制を求める動きも見られ、今後、サービスの存続にも影響しかねない社会問題に発展する可能性もある。これに対してグーグルがどのようなスタンスをとるのか注目される。

 3位の私的録音録画補償金の見直し議論では、“iPod課金”というかたちで当初見込まれていた課金対象の見直し面については、数年にわたる議論を経ても結論は見送られた。その一方で、インターネットなどから違法録音録画物をダウンロードする行為を「私的使用目的の複製」から除外する、いわゆる “ダウンロード違法化”については、著作権法改正に盛り込まれる方針が固まった。現在、ニンテンドーDSソフトの海賊版被害などが問題になっていることもあり、これをコンピュータプログラムにまで拡大することを求める声も挙がっている。ダウンロード違法化については、今後、私的録音録画にとどまらない大きな範囲へ影響を及ぼす可能性がある。

さて、毎日新聞社も長年にわたって「低俗すぎる」捏造記事を全世界に向けて発信してきたことを反省したのか、何度かの言い訳、もとい、謝罪記事を掲載してきました。
以後は「事実の裏付けのない不適切なコラムを国内外に発信してしまった反省から、編集体制を立て直し、記事や企画の選択などのチェック機能を強化」し、「日本のニュースを世界に発信する国際メディアとしての役割を果たすべく、全力を尽く」す決意だと言うことです。
全くのところ報道機関の鏡とも言うべき素晴らしい決意だと思うのですが、その真摯な反省に基づいて国際メディアとしての役割を果たすべく全力を尽くした結果、出てきた記事というのがこちらなんだそうです。

スローライフ スローセックス:私はこうやってセックスレスから脱却した(2008年12月25日毎日新聞)

 「5年ほどセックスレスだったのですが、ここ2年くらい前からセックスを楽しんでいます。回数は週1、時には週2のこともあります」。ペンネーム「ほり」さん(男性、44歳)からのメールはこんな書き出しで始まります。

日本のセックスレス問題が世界のメディアを駆け巡ったとのお話はすでに『Dr北村の部屋』でもご紹介しましたが、それでは、セックスレスになってしまったカップルにはどうアドバイスするのか、その答えが欲しいとの声があちこちから向けられていました。確かに、1カ月以上性交渉から離れてしまったカップルにとっては、交渉再開は想像以上に難しいといいます。だから、セックスレスの定義が、半年でも3カ月でもなく、「1カ月」なのです。要するに、1カ月ないと3カ月ない、半年ない、ずっとない、となる可能性が高いからです。1カ月触れ合うことがなかったカップルが、突然迫ることもかなわず……。どんな言葉をかけたらいいか、どんな触れ方であれば不自然にならないか、想像しただけで疲労困憊(こんぱい)。「じゃあいいか」となりかねないのです。

 42歳の奥様と3人のお子様がいらっしゃるという「ほり」さんは、その困難を見事に乗り越えた様子をメールで寄せてくれました。

 「新婚時より回数は増え、その代わりおもちゃやローションなどで遊んでいます。お金にもゆとりができて、アダルトショップでいろんなおもちゃを購入するのが2人の楽しみでマンネリ化をなくしています。このころはアナル(筆者注:肛門を使った性交のこと)にもチャレンジしています」

 果敢に挑戦する姿が、言葉の端々から伝わってきます。とかく日本人に欠けている点がセックスの場での工夫です。世界のコンドームブランドであるデュレクス社が行っている国際比較調査2007で、日本人の年間性交回数が48回(平均103回)と世界でもっとも少ないことはよく知られていますが、「現在セックスに取り入れていること」についても、世界各国の回答とは大きくかけ離れています。一番多いのが「腟に挿入する(セックス)」(日本51%vs.世界79%)であることは言うまでもありませんが、以下「マッサージをする/される」(36% vs. 55%)、「オーラル(口を使った)セックスをする」(35%vs.52%)、「オーラルセックスをされる」(34%vs.50%)、「セクシーな下着を着る」(26%vs.35%)、「アダルトビデオをみる」(29%vs.43%)、「アナルセックスをする」(3%vs.14%)、「アナルセックスをされる」(4%vs.15%)などとなっています。このデータでおわかりのように、あらゆる行為において、日本人の消極性だけが浮き彫りされています。「2人が合意しているのであれば何でもアリ」がセックスの基本ですが、おそらく「こうして、ああして」「こうしたい、ああしたい」などの言葉がベッド上で交わされることが少ない。ベッドどころか、日常生活の中でもお互いを理解し合うためのコミュニケーションが図られていないのではないかと推察されます。そのような意味からは、セックスレスからの脱却のために「ほり」さんご夫婦に学ぶべきことが少なくありません。

 ところで、「ほり」さんからは困った質問が続きます。

 「2年前に久しぶりにセックスをして、しばらくして避妊に失敗し中絶をしました。それ以来スキンを使用するようにしたのですが、私も妻も違和感がありあまり気持ち良いものではありません。それをきっかけにアナルにチャレンジしました。私も満足してますし、妻も楽しんでます。残りの人生、できる限り現役で楽しみたいと思っています。そこで先生のコラムによく出てくるピルの使用を考えました。今まで相談できる人もいなく、はじめはパイプカットも考えました。夫婦2人で、残りのセックスライフにピルはどうでしょうか? 購入方法も判りませんし、危険性も副作用もわかりません」

 スキン(コンドーム)を全面否定するつもりはありませんが、妊娠が女性にのみ起こることを考えると、男性の性器に装着する用具に身を任せていては望まない妊娠を回避することはできません。「避妊は女性が主体的に取り組める方法を、HIV/AIDSを含む性感染症予防にはコンドームを」がどうしても必要なのです。しかし、「ほり」さんの場合、コンドームの使用にためらいを感じておられるご様子。ぜひ、お2人で性感染症のチェックをしてその結果によっては必要な治療を進めてください。やるべきことをおやりになった結果、コンドームが無用の場合だってないわけではありません。確実な避妊法である低用量ピルや子宮内避妊具、卵管結紮(けっさつ)術を使うには婦人科、精管結紮術(パイプカット)の場合には泌尿器科での受診が必要になります。

 「人事を尽くして天命を待つ」ではありませんが、己のやれることをきちんと果たして、安心セックスに今度はチャレンジしてください。

ちょwww少しは読者にも配慮しろよとwww

しかしさすがは変態の殿堂毎日新聞、謝罪しようが反省しようが変態成分だけは未だ健在ってことですか…orz

まあしかし、こうして改めて記事を眺めてみると、彼らなりの反省が見られないわけでもないのかなと思いますね(これが天下の公器たる新聞のネタか?といった野暮な突っ込みはなしとして)。
何しろ全世界に向けて「日本人ってこんなに変態なんだよ!」と声高に捏造記事を発信してきた過去を反省した結果であるわけですから、「日本人はまだまだ変態成分薄め」というこうした記事によって少しでもその悪影響を回避しようと彼らなりに精一杯の努力をしているのだと…認められるかボケっ!(笑)

新しい年になっても相変わらず「最強のネタ新聞」として君臨するであろう毎日新聞社の前途は明るいのだと確信せざるを得ないほどの素晴らしいニュース、どう見ても本物の変態です本当にありがとうございました。

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2008年12月29日 (月)

新潟の医療行政ってどうなのですか?

年の瀬も押し詰まってきましたが、世間では不景気の嵐が吹き荒れて大変なようです。
ところが世の中には、そんな世知辛い世情を一発で吹き飛ばしてしまいそうな景気の良い話もあるようなのですね。
自分の知る限りでは話題の始まりはこのニュースだったと思いますが、まずこちらから紹介してみましょう。

「魚沼基幹病院」計画が始動 /新潟(2008年9月15日朝日新聞)

●「7年待てない」地元に懸念の声
 魚沼医療圏の救急医療などを担う、魚沼基幹病院(仮称)の設立準備が本格化し始めた。8月末には、基幹病院を含めた地域医療全体を検討する「整備協議会」の初会合も。年度内には病院のベッド数や医師、診療科数などの基本計画が策定される見込みだ。とはいえ、開院は7年後。地元からは、現在も続く、厳しい医師不足の現状に「7年も待てない」。そんな悲鳴があがっている。

 新幹線のJR浦佐駅から車で約5分。住宅街の中を走ると、広い水田地帯が見えてくる。この水田の一部が、7年後に開院予定の魚沼基幹病院(仮称)の最有力候補地だ。
 基幹病院は、救命救急センターや地域がん拠点、周産期医療の機能を担う。災害時の拠点病院にもなる。県が建物をつくり、財団法人が経営する「公設民営」で、研究所などの研究機能の併設も検討されている。
 救命救急センターがない魚沼医療圏では、重篤な救急患者は圏外の病院に運ばれる。湯沢町や津南町、旧入広瀬村(現魚沼市)など、搬送に1時間以上かかる地域もある。高度医療ができる病院もなく、心筋梗塞(こうそく)や狭心症患者の約6割、がん患者の約4割が長岡市などの他圏域で診療を受けているのが現状だ。
 基幹病院の開業にあわせ、既存病院の再編もすすめられる。現在、比較的専門性の高い二次医療などを担っている公立病院は、規模を縮小するなどし、日常的な健康相談や一般的な疾病に対応する「一次医療」に主に専念する計画だ。小出、六日町の2県立病院はこれに伴い、市立病院などに生まれ変わるという。

泉田裕彦知事は、魚沼医療圏の理想的な将来像として、米・ミネソタ州の「メイヨークリニック」と同様の病院を描いている。同クリニックのあるロチェスター市の人口は約9万人。そこに高度な治療を求めて年間約40万人が訪れ、薬品や福祉などの関連企業も集積している。
 07年5月に南魚沼市であったタウンミーティング。泉田知事は魚沼医療圏が、東京から新幹線で約1時間半の好立地であることを強調した上で、こう続けた。「東京から患者、見舞客、医療、健康産業にかかわる人たちが集まってくると、町のイメージが大きく変わる。まさにあこがれの地、魚沼が出現する」。

「病院を開設する前に、魚沼から医師がいなくなる」

 「7年は待てない」
 8月28日。基幹病院を含めた地元医療について考える「魚沼地域医療整備協議会」の初会合が、南魚沼市で開かれた。委員を務める、地元の医師や首長、住民らから、厳しい意見や指摘が飛び出した。
 委員の多くが訴えたのが、現在、同医療圏にいる勤務医が、厳しい勤務環境などを理由に、基幹病院の開設を待たずに退職してしまうのではないか、という不安だ。
 魚沼医療圏の人口10万人あたりの医師は、126.2人。県内で最も多い新潟医療圏(同241人)の約半分で、全国平均(同217.5人)から見ても厳しい勤務実態がうかがわれる。委員の一人で、地元の医師として、基幹病院計画に当初からかかわってきた庭山昌明医師は指摘する。
「現場の医師は過重労働で本当に苦しい状況にある。医師不足対策で最も重要なのは、今いる医師の流出を食い止めることだ。そのためには、医師のモチベーションが上がるよう、基幹病院の運営方法や開院後の医師の身分などを一日も早く具体的に示す必要がある」
 そうした声がある一方、基幹病院の医師をどう確保するのかという問題や、基幹病院開設後の既存病院の医師の処遇や、医師の確保対策でも不透明な部分が多く、地元関係者は危機感を強めている
 開院後の課題を指摘する声もある。同様の再編を行った他県の例では、開院後に患者が基幹病院に集中、既存病院の患者が減ったり、基幹病院がパンク状態になったりする影響が出ている。医師も、基幹病院への勤務希望が多く、周辺の既存病院は敬遠される傾向があるという。
 魚沼市地域医療対策室の中川太一・室長は「市民の大病院志向、専門医志向で、患者が基幹病院に集中する可能性もある。かかりつけ医などを持ってもらい、基幹病院に集中しないように市民に理解をしてもらう必要がある」

しかし、当今の財政事情の悪化に加えて「厳しい医師不足の現状」の中で、今どきこういう巨大ハコモノ計画ですか…
先日も湯沢町の重粒子線治療施設計画についての続報を書きましたが、こちらは更に輪をかけて大規模と言いますか、ほとんど夢想的な話ですよね。
こういう何でも病院を欲しがる地元の感情も理解できないではないですが、メイヨークリニック云々はともかく「まさにあこがれの地、魚沼が出現する」ってキャッチコピーはどうなのよと。
千葉県南部の片田舎には亀田メディカルセンターという有名な医療施設があって、今や全国から医師も患者も集めるような存在になっていますが、あの存在によって地元の千葉県鴨川市があこがれの地として崇め奉られているなんて話は聞いたことがないんですが。

まあ知事閣下の思惑はそれとして、最近になってその素案なるものが公開されましたのでこれも記事から紹介してみます。

魚沼基幹病院設置へ地元素案(2008年12月25日新潟日報)

 魚沼基幹病院設置について話し合う「魚沼地域医療整備協議会」が二十四日夜、南魚沼市大和庁舎で開かれた。外傷センター機能を持ち、病床は四百五十四床規模、診療科は内科など二十二科を基本にするとした地元素案が示され、同病院の概要が初めて明らかになった。同素案は、今後県が策定する基本計画の骨格となる。

 県立六日町、小出両病院長など地元医療関係者による同協議会の専門部会「魚沼基幹病院設置準備委員会」が、病院の機能や規模について九月から検討してきた結果を地元素案として報告した。

 素案には、病院機能として検討されてきた救命救急センター、周産期母子医療センター、災害医療センターなどのほか、魚沼地域に多いスキー場での事故などに対応するため、新たに外傷センターの機能を盛り込んだ。

 病院の規模は、一般病床四百床、精神病床五十床、感染症病床四床の計四百五十四床。診療科は内科、小児科、産婦人科など二十二科を基本に、形成外科と救急科の設置も検討する。

地域のがん医療の中心的役割を果たすとともに「放射線治療医の確保を念頭に、放射線治療の施設整備が必要」としている。地元医療機関との診療情報の相互交換を行い、患者の利便性と医療の質の向上に向け、電子カルテネットワークの構築も検討する。

 同日の協議会では「素案に基づくと七十-八十人の医師が必要になる」「医師確保に向け、県立病院ネットワークの維持が重要」「(運営する)財団法人における身分や給与などを早く明らかにしてほしい」などの意見が出た。

 協議会は今後、地域住民に地元素案を周知した後、最終報告「地域医療整備の全体像」を取りまとめる。これを受け、県は本年度内にも基本計画を策定する予定だ。

循環器も周産期も扱うわ、精神科もやるわ、癌診療拠点も目指すわ、おまけにスキー客の救急外傷も扱うわ…いやまさに、本気でこれが出来たら新潟に素晴らしい医学の桃源郷が誕生することになりそうですね。
問題はこの地でこういう高度な診療をやってくれる「七十-八十人の医師」をどこからどうやって確保してくるかと言うことですが、何でも知事閣下の話によればこんな感じの計画らしいです。

平成20年1月23日 泉田知事定例記者会見要旨より

今まで地元の要望、場所(建設地)の関係の調整等を行ってきましたが、具体的に医師を確保していくためには、働く方にとっても魅力のある病院でなければならないと考えていますので、医師の視点でも病院基本計画の策定を進めていきたいと思っています。研究所の併設ということを進めながら、病院長、研究所所長の具体的な人選を念頭に置いた上で、アドバイザリーボード(諮問委員会)の設置を夏までに進めたいと思っています。そして、新年度(平成20年度)内に整備基本計画の策定を終えてしまいたいと思っています。ここから先(整備基本計画策定後)はハードの設計ということになりますので、ここまで行けば機械的に流れていくと(思います)。平成23年度の着工を目指してスケジュールを進めていきたいと思っています。
 医師確保そしてまた魅力的な病院にするために、研究所の併設を考えているわけですが、現段階での希望ですが、特色として持ちたいのは成人病に対応できる病院。多くの人が成人病と言えば魚沼基幹病院に行かなければいけないというような形になるとか、もしくは昨日も京都大学に再生医療の研究所(iPS細胞研究センター)ができましたが、再生医療のような分野で、一つの役割が担えるような機能、こういったものを持てないかということを念頭に置いて、研究所所長の人選を進めていきたい(と思います)。単独候補というのはおそらく固まらないと思いますので、候補者ということを念頭に置いたアドバイザリーボード、基本計画の策定委員会という性格を帯びてくると思いますが、設置したいと思っています。

研究所が併設されていれば医師にとって魅力的な病院になるのなら、全国の大学病院は今ごろ医師が殺到してウハウハの状態になっていてもおかしくないだろなんて野暮な突っ込みはこの際やってはいけません(苦笑)。
しかし急性期に特化するのかと思えば成人病もやるって、この知事はこの種の慢性期疾患患者を基幹病院が吸い上げてしまった場合にどうなるか考えていなかったのでしょうか?
そもそも急性期と慢性期では扱う医師の気質も違えば病院の性質も違うわけですが、そうした差違は無視してとにかく頭数さえ揃えればいいだろうという感覚なのでしょうかね?

医師集めの現実性は別として当然ながら「新病院に医師を引っこ抜かれた既存病院はどうなるの?」という疑問が湧いて出るわけなのですが、知事閣下からは何とも心強いお言葉をいただいております。

同・質疑より


 若干ネガティブかもしれませんが、魚沼基幹病院に人が集まれば、結果的に県内の他の病院の医師不足が進んでしまうというジレンマがありませんでしょうか。

A 知 事
 したがって、役割分担ということで、これまでのフレームワークで相談してきているわけです。(南魚沼市立)ゆきぐに大和病院との関係を含めて、「まあこんなところかな」と意見が煮詰まりつつありますので、具体的な計画に落としていきたいということです。
 医療は単純ではありません。日本は先進諸外国と比べて家庭医と専門医の役割分担がうまくできていないんです。病院というと小さい診療所から大病院まですべて同じようなことをやるかのような錯覚があるわけです。これが勤務医の先生方の疲労を招くということもありますので、今の質問はすべて同じようなことをやるということを想定しての質問なので、まずその考え方を直していかないといけないということではないでしょうか。

「まずその考え方を直していかないといけない」そうです(苦笑)。
以前に湯沢町長さんの突っ走りっぷりについても感じたことなんですが、何かすごくずれてるんじゃないかなと言う素朴な疑問を感じているのは自分だけでしょうか?
良く言えば何とも楽観的かつ前向きでうらやましくなる性質なのでしょうが、もしかして新潟の県民性ってものがこんななのでしょうかね?
いずれにしても今後の続報込みで、こちらも地元情報なりと是非とも期待したいニュースではありますね。

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2008年12月28日 (日)

今日のぐり「Ryoutei」

今年最後のぐり研活動となるであろう本日の更新ですが、この時期は宴会のお誘いが多くて困ったものですな。
しかし宴会で出るような豪華な料理ってどうしてああも健康に悪そうなものが多いんでしょうねえ?
その昔「身体に悪いものほどうまい!」なんて言い切った偉大な先生がいましたが、美食願望とは人間という存在の抱える最大の自己矛盾なんですかね。

今日のぐり「Ryoutei」
奉還町商店街近くの裏通りと言うより、老舗ラーメン屋の浅月や富士屋の隣と言った方がわかりやすいでしょうか?
見た目は何とも言い難い店構えですが中は結構広く、内装もそこそこ凝った作りと確かにちょっとした料亭風。
HPの記載によれば「和のしつらえに現代的なセンスを取り入れ、本格派の味をカジュアルに楽しめる」のだそうで、一日一部屋一組限定の予約システムも売りなんだそうです。
ちなみにこの日は妙にでかい階段ホールのような部屋(座・スタジアム)で飲み放題食べ放題という趣向でした。

何となく和食の店なのかと思っていましたが、出てくる料理はどれもこれも居酒屋的メニューばかり(ついでにスタッフのレベルも居酒屋のバイト並みといったところですが…)。
ま、味の方は見た目通り居酒屋チェーンの料理なみと言いますか、スーパーのお総菜コーナーと言ったところでしょうか?
特に自家製っぽい豆腐ですが、味は言うに及ばずとしてもう少し丁寧に仕上げて欲しいですね。
こういう店の場合、見た目ちょっと手がかかってるっぽい料理に手を付けるよりコロッケやエビフライと言った定番に限定しておいた方が幸せになれる場合が多いものですが、ここも例外ではないようで味に関しては特記するものを感じません。

料理はあくまでつまみレベルとして、この手の飲み放題にしては酒やドリンク類はそこそこ種類が揃っているのが、唯一のよかった点と言ったところでしょうか?
ただ、どのような利用形態を想定しているのか知りませんが、この階段状の床に膳を並べて宴会と言うのはどうも相互の親睦を図る上でいいんだか悪いんだか。
不必要なほどでかいスクリーンの存在といい、「ここでそのまま学会でも出来そうな雰囲気」なのは話のネタにはなるんですけどね。

とにかく店の名前やら内装やらといったものからこの味を想像するのは難しいという意外性にあふれた店なのは確かですね。
味から想像するところ案外安い店なのかと思っていましたが、後で料金を確認したところでは何とも微妙な価格帯で、居酒屋と言うよりまともな料理屋レベルに近い。
料金のほとんどを場所代に払ったのだと納得できる人ならスーパーのお総菜にこの値段で文句はないのかも知れませんが、そのあたりの居酒屋で同レベルの飲食をすれば半値で済みそうなものですけどね。
あまりにも決まり切った居酒屋スタイルというものに「現代的なセンス」を取り入れたいという気持ちも判らないでもありませんが、「本格派の味をカジュアルに楽しめる」って果たしてこういうことなのかと疑問無しとしない店ではありました。

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2008年12月27日 (土)

自治体病院ただいま改革真っ最中? その二

このところシリーズものばかりで恐縮ですが、昨日も少し書きました自治体病院の話題を今日ももう少し続けます。
まずはこちら、総務省が公立病院の支援に乗り出すというニュースから紹介してみましょう。

公立病院への財政支援拡充へ(2008年12月26日産経新聞)

 総務省は26日、経営難や医師不足が深刻な公立病院への財政措置に関する要綱を公表した。

 過疎地にある「不採算地区病院」に対する特別交付税措置の要件を現在の100床未満から150床未満に緩和し、病床数に応じて決める交付額も2~8割増にする。特に医師不足が深刻な周産期医療の病床は5割増、小児医療病床も4割増程度に拡充する。こうした緩和措置は21年度から実施し、地方交付税の総額は、20年度予算の2930億円から700億円程度増額させる方針だ。

過疎地、産科への交付税拡充=09年度700億円を増額-総務省(2008年12月26日時事通信社)

 総務省は、医師不足などで経営が厳しい過疎地の公立病院や、産科、小児科、救急医療部門を備えた公立病院を運営する自治体向けの地方交付税を2009年度から拡充する。26日、財政措置に関する要綱を改正し、交付税の上乗せ対象となる過疎地の小規模病院(不採算地区病院)の指定要件緩和を盛り込んだ。公立病院関連の配分額は、08年度に比べ700億円程度増え約3600億円となる。
 不採算地区病院は、病床数100床未満で市町村内唯一の病院であることなどが要件。しかし、市町村合併の進展や医師不足の深刻化を踏まえ、病床数150床未満で「最寄りの病院まで15キロ以上」などに緩和した。これにより、対象は232病院から320病院程度に増える見通しだ。
 周産期病床や救急医療施設向けの配分は5割程度、小児病床向けは4割程度増額する。

この医療費削減時代に何?とお思いかも知れませんが、自治体病院というのは厚労省ではなくて総務省の管轄なんですね。
以前から公言しているように厚労省は赤字を産むばかりで生産性の低い中小病院を潰しにかかっているというのに、総務省はなんともまあ空気がよめないことをしてくれます。
医学部定員問題などは文科省だし、どうもこの国の医療行政はやたらと分断されまくって船頭多くして何とやらなんじゃないかとは誰しも思うところですが、このあたりは麻生総理も気にしているようで「地域医療の崩壊を食い止めるために各省庁は連携を」との発言もあったようです。

しかし地方の自治体病院では盛んに医師不足だと言いますが、田舎だろうがちゃんと医師を集めている病院もたくさんあるという現状をどう考えているのでしょうか?
医師の勤務態勢を改善するどころか奴隷労働を押し付け、医局派遣の人事に頼ってまともに医師を集める努力すらしてこなかった公立病院に今どきどんな医師が集まるのかと言うことですよね。
実際のところ医師自身が勤務先を選ぶようになった新臨床研修制度の導入以来全国の自治体病院勤務医数は減少を続けていて、最近三年間で実に7%の医師が辞めているという話があります。
キャリアアップのために敢えて自ら虎口に飛び込むような一部の高度医療機関は別として、一般的に自治体病院など医師にとっては「医局命令ででもなければ行きたくない場所」でしかないという事実を彼ら当事者は認識しないといけないでしょうね。

それはともかくとして、実際のところ公立病院の経営がどうなっているのかと言えば、どこも漏れなく赤字なのは当然ですが赤字幅自体も大出血サービス中というところらしいですね。

公立病院、4年で2倍超の赤字(12月12日医療介護CBニュース)

 全国各地で公立病院(自治体病院)の休止や閉鎖が相次ぐ中、2003-07年度の4年間で自治体病院の赤字が2倍超に増えていることが明らかになった。全国に約1000ある自治体病院の経営が、この数年間で急速に悪化した要因について、総務省の「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会」の報告書では、医師不足の深刻化や診療報酬のマイナス改定、地方財政の悪化を挙げており、国の早急な対策が求められている。

 今国会でも、参院予算委員会で山下芳生氏(共産)が公立病院の経営悪化について政府の見解をただしている。

 山下氏は、公立病院の赤字が2003年度の932億円から07年度には2006億円と2.15倍に増えていることを取り上げ、「公立病院はもともと、救急や産科、小児科などの『不採算医療』を担ってきた。このため、多くの病院が赤字だが、その原因は、個々の病院の問題というより、国政にかかわる問題だ」と追及。また、医師不足の深刻化や地方財政の悪化などについて、「その大本には、小泉内閣以来、社会保障費を毎年2200億円削減してきたことや、地方交付税を5兆1000億円も削減してきたことがある」として、麻生太郎首相の認識をただした。

 麻生首相は、医師不足の深刻化や地方財政の悪化などを認めた上で、「救急や小児医療、産科などの分野で、公立病院に対する地方財政措置の充実を考えていかなければならないと認識している」と答弁した。
 これに対し、山下氏は「公立病院への財政措置を決めた政府の検討会の報告が出た後に、大阪府松原市立松原病院の閉鎖が発表された。政府の対策では救われないということで、特に中小の都市にある病院への対策が抜けている。医師不足や地方財政の悪化は国が招いたことで、政治の責任で取り除かなければならない」などとして、社会保障費の毎年2200億円の削減や地方交付税の大幅な削減の中止を求めた。

医師一人で平均1億の売り上げと言いますが、病院というところは医師を沢山抱え込むほど収入が増え、黒字を出しやすくなると言うことが最近すっかり世間でも知られるようになりました。
当然各地のやる気のある病院ほどさっさと好待遇で医師囲い込みに走っているわけですが、これに完全に乗り遅れているのが自治体病院というわけです。
天下の読売新聞のように「医師の強制配置で僻地送りを実現しよう!」なんて主張をしている方々もいらっしゃるようですが、そういう医師達にどれほどのモチベーションが生まれるだろうかと言う点にも多少の想像力を働かせた方がいいんじゃないかとは思いますね。
残念ながらと言うしかないのですが、システムとして崩壊している現在の医療現場は医師を初めとする個人個人の奮闘努力によって辛うじて支えられていると言うしかないのが現状なのですから、真っ先に現場の意志を挫いてどうするのかと言うところでしょうか。

いずれにしても赤字赤字で先立つものがなければ身動きもできないのはどこの業界でも同じ事ですから、本気でやる気のある病院にはそれなりの公的支援をという考えもありだとは思いますが、問題は今このタイミングで政府にも全く金がないということですよね。
雇用対策と込みで需要と供給のアンバランスが大きい医療・介護に巨大な新規市場を開拓するというのは面白いビジネスモデルなんじゃないかと思うのですが、どうもお偉い方々のお考えは違っているようで、そのうち本気で「道路は出来てもその先に病院はなかった」なんてオチがつきそうですけれどね(苦笑)。

新交付金「8割は道路に」 谷垣氏、自民総務会で見解(2008年12月5日日経ネット)

 自民党道路特定財源の一般財源化に関するプロジェクトチーム座長の谷垣禎一元国土交通相は5日の党総務会で、来年度の創設を打ち出した約1兆円の地方向け交付金の使途について「約8割は道路に使われるイメージだ」と語った。

 8000億円程度が道路整備に充てられることになり、そのほかの事業などへの投資は2000億円程度にとどまる見通しだ。

 総務会では「病院に行くにしても道路が悪いと時間がかかる」などと道路整備を重視すべきだとの意見が出た一方、「一般財源化というなら、地方が自由に使える金にすべきだ」などの意見も出た。

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2008年12月26日 (金)

自治体病院ただいま改革真っ最中?

少し前に紹介しました「基幹病院がいきなり閉鎖!?」と大騒ぎになった銚子市立病院ですが、その後どうなってんだという話題から紹介します。

千葉・銚子市長、リコール確実に 署名は2万5639人(2008年12月22日朝日新聞)

 9月に休止された千葉県の銚子市立総合病院を巡り、岡野俊昭市長の解職請求(リコール)活動をしている市民団体が署名集め最終日の21日、「請求に必要な有権者の3分の1(1日現在2万229人)を上回る2万5639人の署名が集まった」と発表した。今後、市選管の審査などを経て、有効署名の人数が確定されることになるが、市民団体は3分の1を上回るのは確実とみている。

 「病院の休止は公約違反で納得できない」として「何とかしよう銚子市政 市民の会」(茂木薫代表)が署名を集めていた。市選管への提出は26日。未回収の署名簿もあるといい、署名の数はさらに増える見通しだ。

 有効署名が有権者の3分の1を上回れば、市民団体は解職の本請求をし、解職の是非を問う住民投票が実施される。住民投票で有効投票の過半数が賛成すれば市長は失職し、50日以内に市長選挙が行われる。

病院の存在がついに自治体首長の首も飛ばしかねない時代になったと思えば感無量ですが、存続させるということはその分自分たちが金を払うことになるのだという自覚を持ってやっていらっしゃることなのでしょうかね?

銚子市民の選択はともかく、景気が急減速する中、どこの自治体も大変なようです。
なにしろ日本で最も景気が良いなどと言われていた愛知県もこのところ税収減が深刻で、とうとう地方交付税交付団体に転落する見通しなんて言ってるくらいですからね。
こういうことになりますと固定的経費と言って良い自治体病院の赤字も気になるのが人情と言うもので、実際各地から公立病院関連の話題が相次いで飛び込んで来ています。
しかし公立病院というところは地方においてはいろいろな利権も絡まり合った難しい存在ですから、なかなか銚子市立病院のような英断を下すというのも難しいようですね。

これも少し前に取り上げました市立松原病院閉鎖問題と絡んでの話ですが、「産科医療のこれから」さんで「地元全戸に配られた自民党号外」なるものが公開されていますのでリンクだけですが紹介しておきます。

市立松原病院閉院! 地元全戸に配られた自民党号外o(^-^)o ..。*?

いやあ何と言いますか、色々な意味ですごいなあとしか言いようがないのですが、良くも悪くも公立病院なんてものは色々なしがらみでがんじがらめになってるんだということが垣間見える話ではありますよね。

このところ公立病院関連の話題が多いのは、一つには市町村合併でそれまでの公立病院配置図が再編を余儀なくされているということもありますが、もう一つには例の特例債の関係もあります。
公立病院再建のための蜘蛛の糸、もとい、最後の切り札となるであろう「公立病院特例債」の発行が認められるのは08年度中に限っての話ですから、希望する各自治体は今年度中に病院改革プランというものを策定しなければなりません。
ま、役所仕事ですから元より結論ありきなバラ色の未来図が描かれているだろうことは想像に難くないところだと思いますが、見ていると幾ら何でもそれはちょっとどうよ?と思われるような話も多いようなんですよね。

荒尾市民病院:累積赤字41億円、6医師確保で黒字化図る 病院特例債を活用 /熊本(2008年12月23日毎日新聞)

 荒尾市は、約41億円の累積赤字を抱える市民病院(大嶋壽海院長、274病床)の再建計画をまとめた。2年後の単年度黒字化を目指しており、そのためには6人の医師確保が最重要課題。来年4月には、予算や人事権を持った独立採算の公営企業に衣替えして計画に取り組むが、肝心の医師確保のめどは立っていない

 09年度から5年間の中期経営計画で、公立病院の経営改革を促すため、国が08年度限定で認めた特例債を活用する。償還期間7年で14億円を起債した。

 計画では、これを原資にして、金融機関から借り換えを繰り返して「不良債務」化している21億円を7年間で返済し、経営の足かせの一つを解消する。さらに6人の医師の確保で患者数を増やし、08年度4億1000万円の赤字を、09年度は7900万円に圧縮し、10年度に7200万円の黒字に転換する。

 新たな医師は来年4月から2人の常勤が決まっており、さらに3年間で4人を確保して現在の28人から34人体制にする。計画最終年の13年度の総収入は、07年度の43億円から21%増の52億円にすることを目標にしている。

不安材料は、医師確保の成否に加え、財源を市の一般会計からの繰入金に依存している点だ。08年度の4億5000万円を09年度から4億9000万円に増額し、毎年度繰り入れる。他にも病院特例債償還分の2億円や勧奨退職者の退職金の一部も賄うため、09~15年度の繰入総額は7億5000万円~8億円に上る。

 このうち3億5000万円は、病床数などから算出される国の交付金で補てんされるが、残りは市の持ち出しとなるため、最悪の場合、財政調整基金など各種基金残高の16億円を取り崩して充てる

 職員給与カットなどの行財政改革を進めている市は“背水の陣”で病院再建に取り組む覚悟を見せた。前畑淳治市長は「病院の収支を改善しなければ、一般行政が機能不全に陥る。6人の医師確保を絶対命題として、計画以上の収支改善をやり抜かねばならない」と再建にかける意気込みを語っている。

ちょww黒字化には6人の医師確保が絶対条件で、今はその目処すら立ってないけど何とかなるさって、幾ら何でも画餅に過ぎるだろと思うところですが。
こういう脳内お花畑な人たちが立てたクリスマスケーキよりも甘い計画がどのような末路を迎えるか、恐らくはご当人達以外の方々にとっては子供にでも判りきった話ではないかと思いますがね。
一般行政を機能不全に追い込んでまで維持したい自治体病院というものが何なのか色々と邪な興味はあるところではあるのですが、中にはもう少し真面目に?こんな計画を練っている自治体もあるようです。

不採算の診療科、廃止も検討 富山市民病院の経営改善計画(2008年12月25日  読売新聞)

 赤字経営が続く富山市民病院(富山市今泉北部町)は24日、3年以内の黒字化や不採算部門の診療科を廃止することを含めて検討するなど経営改善計画の中間報告をまとめた。同日の市議会厚生委員会で明らかにした。

 報告によると、入院患者の確保や経費削減のため、診療科ごとに3年間の行動目標を立て、達成度や需要を調査。不採算の診療科は廃止を含めて見直す。

 医師の確保などを迅速に行うため、病院を地方公営企業法の「全部適用」とし、財務、人事権を持った事業運営形態に移行することも必要とした。

 また、市民病院に救急医療センター(富山市)を併設することが検討されていることから、救急医療専門の医師や看護師を確保することも盛り込まれた。

 同病院は、一般病床の入院患者の減少などにより、2006年度から赤字に転落。07年度決算では経常収支が8億9800万円の赤字になっている。

 病院は来年1月、パブリックコメントを求め、2月の経営改善委員会で最終報告をまとめ、3月には富山市長に答申する見通しだ。

基本的なところを押さえておきたいのですが、公立病院の何が問題といって極めて経営効率が悪いということです。
死ぬ気になって確保しないといけない医師には安月給で過酷な奴隷労働を強要、そのくせ一日新聞を読んで過ごしている働かない公務員事務や点滴一つまともに出来ない場所ふさぎコメディカルのコストだけは異常に高い、おまけに地元業界への利益誘導で建設費やら納入費だけはあり得ないほど高コストときている。
ではそう言った点を改革すればいいのか?と言う話ですが、そんなことはとっくの昔から民間病院が当たり前にやってることであって、今さら公立病院が形ばかりの改革なんてことを叫んでみたところで勝負になるわけがないのですよ。

要するに民間なら当たり前に黒字に出来る分野であっても公立病院が関わるというだけであっという間に赤字確定なわけですから、公立病院が下手に手を広げれば広げるほど赤字がますます拡大するだけと思って間違いないのです。
それでも公立病院の存在意義があるとしたら、民間では赤字でやっていられないような部門を社会保障の一環として公費で行っていくというその一点に絞られるのです。
どうしても自治体病院を維持したいのであれば、民間で黒字に出来る部分は徹底して民間に任せ、公立病院は赤字部門だけに特化しても良いくらいだと思うのですが、その公立病院自らが赤字部門を廃止して出来もしない金儲けに走るってどうなのよと言う話ですね。
将来的に更なる赤字を負担することになるだろう市民であれ、今以上の過重労働を強要されることになるだろう同院の医師であれ、結局は誰一人として幸せにならない計画ではないかなと予想しますがどうでしょうかね。

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2008年12月25日 (木)

医者が足りぬと言うのなら その三

昨日に続いてさらに動員令絡みの話を続けてみますが、まずは埼玉の周産期医療はこんなにヤバくなってるよと言う話題から。

周産期医療 現場からの報告<上> 疲弊する医師 /埼玉(2008年12月23日東京新聞)

 「二十四時間、三百六十五日の周産期母子医療センターとは名ばかり。それでも補助金をもらっているのかと問われれば、今すぐにでも県に指定返上願を出す用意はある

 本紙が県内の各周産期母子医療センターに周産期医療の現状をアンケートをしたところ、深谷市の深谷赤十字病院からの回答には悲痛な現場の叫びが書かれていた。同病院は県北地域で唯一、地域周産期母子医療センターに指定されている。当直を二人体制にしたいが常勤医師不足でままならない。「センターとして機能しているのは平日の日勤だけ」という。

 県内の周産期医療は、設備が充実しリスクの高い救急医療ができる総合周産期母子医療センターに指定されている埼玉医大総合医療センターと、産科と小児科を併設し比較的高度な医療ができる地域周産期母子医療センター五カ所の計六医療機関が中核を担う。来年度には地域センターが一カ所増える見通しだ。

 地域センターでは常勤医師は五人が多く、休日夜間の当直体制は多くが一人で対応している。埼玉医大総合医療センターは四人で当直しているが、それでも「三十六時間勤務はざら」(関博之教授)という。

 厚生労働省の二〇〇六年の調査では、県内の産科医は出産適齢人口十万人当たり二七・六人と全国で二番目に少ない。施設面では今年四月一日現在、人口七百万人で総合センター一カ所、地域センター五カ所だが、東京都は人口千二百万人で総合九、地域十三、人口二百万人の栃木県は総合二、地域八。県内の医療資源がいかに貧困かが分かる。

 「行政は、新生児集中治療室(NICU)と総合周産期母子医療センターを充足するための対策を放置している。妊婦に『野垂れ死にしろ』と言っているに等しい」と話すのは、埼玉医大病院(毛呂山町)の岡垣竜吾准教授。

県はNICUの増床を目指すが、医師不足で既存のNICUの運営すら厳しいのが現状といい、同病院の板倉敦夫教授は「設備を充実してもマンパワーが追いつかない。医師の養成はお金ではカバーしきれない」と、効果を疑問視する。

 関教授は県内の施設、医師数不足を考えると「これまで救急の妊婦の死亡例が県内でなかったのは奇跡だ」と話した。ある関係者はつぶやいた。「厳しい勤務で医師が次々に辞めている。県内六カ所の周産期母子医療センターで、撤退する病院が出てくるかもしれない」

ま、近ごろではどこでも珍しくない「現場はいっぱいいっぱいで崩壊寸前」と言う話ですかね。
これだけであれば今さら取り上げるようなネタでもないのですが、埼玉県の素晴らしいのはこの状況でこういう話が出てくるところなんですね。

埼玉医大 重症妊婦は無条件 あすから受け入れ体制(2008年12月23日東京新聞)

 重症の妊婦が病院に受け入れを断られて死亡するのを防ぐため、埼玉医大総合医療センター(埼玉県川越市)は二十四日から、救命処置が必要な重症妊婦の受け入れを原則拒否しないことになった。同県が二十二日、発表した。東京都の周産期医療協議会が重症妊婦を無条件に受け入れる病院を三カ所指定することが決まっているが、同様のシステムの運用開始は、埼玉県が全国初となる。

 県は同大総合医療センターを「母体救命コントロールセンター」と位置付け、長距離で搬送に時間がかかり妊婦に危険が迫る場合などは同医療センターが受け入れ先を調整、手配も行う。

 受け入れは脳血管疾患や出産後の大量出血、交通事故などで速やかな救命措置が必要なケースに限定。妊娠二十二週以降のいわゆる周産期に限らず妊娠十二週程度から分娩(ぶんべん)直後までを対象とする。

「もうこれ以上は無理。勘弁して」と悲鳴をあげている現場に更に仕事を押し付けますか…ここにも牟田口の後継者がいたということですかね?
そもそも救急における律速段階というものは搬送する救急隊ではなくてその先の受け入れの段階なんですが、今まで救急隊がやってきた搬送先探しの仕事まで一番修羅場っている病院にやらせようと言う意味がわからんのですが。
医師確保のために1600万の予算もつけますなんてことを言っているようですが、これで何人集めるつもりか知りませんが産科医の相場が急騰している今どきに一体どんな医者が釣れますかね?
今後は他の地域でも「必ず受け入れ」を指定される病院が出てくるかと思いますが、現場の医師達がどういうリアクションを取るのか要注目ですかね。

ところで医師不足と言いますが、実際のところは臨床の第一線で奴隷労働をこなす医師が足りないというのが正確なところであるわけです。
医師不足だ医師不足だと騒いでいますが、現場で医師がどれくらい過酷な労働をこなしていようが利用者としていつでも好きなときにかかれる自由さえ保障されていれば知ったことか!というのも国民の率直なホンネと言うものではないでしょうか。
ま、そういうホンネが直に当の奴隷労働者に伝わってしまったのが現在の医療崩壊という現象の一因でもあるのですが、一方でこうなってきますと「俺は金はちゃんと出すからいつでもどこでも診てくれよ!」と言う要求も出てきて当然だと思うんですね。

海外諸国では支払い能力に応じて国民自ら「高くてもすぐ診てもらえる」「安いが待ち時間が長い」といった選択枝を提供している国もあるわけですが、日本では国中どこへ行っても基本的に同一料金の保険診療と言うのが建前ですからこうした差別化は存在しません。
大学病院でその道の第一人者に診てもらおうが、場末の怪しげな診療所で診てもらおうが支払いは同じというのは考えてみればずいぶんと奇妙な話だと思うのですが、今まではオプションサービスに対する追加料金というものは混合診療として認められていなかったわけです。
某開業医の利権団体の主張するように混合診療導入にもデメリットももちろん存在しているわけで、この機会に国民でじっくり議論していけばいい話ではあるかと思うのですが、何か非常に興味深い裏技(失礼)でこの壁を突破しようという試みがあるようなので紹介しておきます。

順天堂リフレッセクラブ(特別会員制)

 当院の医療施設を利用して、会員の検査・治療、心身・健康の維持増進、疾病に対する適切な指導及び健康管理を実施し、医学的な情報を提供しております。

特典
   1. 人間ドック健診を、年1回無料(基本コース+脳ドック:145,000円)で受けることができます。
      宿泊ドックも同様の割引となります。
   2. 疾病を有する場合、適切な医学的指導を、専門医から受けることができます。
   3. 健康スポーツクリニックの施設を利用し、心身健康の維持増進(運動指導・栄養指導・生活指導)を図ることができます。
   4. クラブの担当医師(健康スポーツ室医師)との情報交換を行い、会員の健康管理に協力いたします。
  5. 緊急時医療について、昼間(9:00~17:00)は健康スポーツ室、夜間(17:00以降)は救急室を 通じて、サービスを行っております。
   6. 入院した場合には、特別療養環境料(室料)を10%割引とします。(2週間:14日まで対象期間となります。)
   7. 順天堂大学医学部附属病院・順天堂大学関病院等の、適切な病院を紹介いたします。
   8. 疾病の治療のため、予約診察室を用いて速やかに診察を行い、疾病内容により、適切な専門医を紹介して、診察を受けることができます。

会費
【入会金】    1,050,000円 (税別 1,000,000円)
【預託金】    1,000,000円 (入会期間中無利息)
【年会費】    315,000円

ここで注目すべきは通常診療においてもお待たせしない予約診療をうたっているほか、緊急医療についても昼夜の別なくサービスを提供するとうたっていることですね。
「一部の人間はコネでいつでも好きなときに医者にかかれるんだろう?」なんて批判をする人が時々いますが、こうしてオープンに「コネ」を作ってしまうシステムというのは結構面白い試みかも知れませんね。
特権階級が隠れて小ずるいことをやっていると思われるからこそ批判を受けるのであって、誰もが機会を得た上で正当な契約関係として双方合意の元にやっていく方がよほど透明性も高まろうと言うものです。
金満家として名高いみの氏あたりにワイドショーで取り上げてもらえれば、全国の善良なる視聴者の注目も高まろうと思うのですが如何でしょうかね?

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2008年12月24日 (水)

医者が足りぬと言うのなら その二

昨日にも少し書きましたが、医師不足対策ということで世の中もようやく動き始めたようです。
今日は昨日の続きということで、来年度予算に関連して産科関連の話題から二つばかり引いてみましょう。

救急・産科拡充へ304億円 09年度予算重点枠 医師数確保急ぐ(2008年12月23日日経ネット)

 妊婦の受け入れ拒否問題を受け、財務省は22日、2009年度予算の「重要課題推進枠(重点枠)」で、救急、産科医療の拡充のための費用などとして計304億円を厚生労働省などに新たに内示した。厚労省所管分227億円のほか、文部科学省に対する新生児集中治療室(NICU)整備費用17億円など。救急医の手当や地域周産期母子医療センターの運営に対する財政支援に充てる。

 厚労省は重い脳障害を起こした妊婦が各地で受け入れを拒否され、死亡したり、重い後遺症が残ったりするケースが続発していることを受けて、産科・救急医療体制の整備を重点的に進めている。

産科医に「分娩手当」=お産1件当たり1万円-救急医の当直支援も・厚労省(2008年12月22日時事通信社)

 2009年度予算編成の焦点だった3300億円の重要課題推進枠で、厚生労働省は22日、お産1件当たり1万円の「分娩(ぶんべん)取扱手当」を産科医に支給することを柱とした医師確保、救急医療対策を発表した。
 東京都内で10月、救急搬送された妊婦が8病院に受け入れを拒否され死亡した問題などで産科、救急医不足が顕在化。産科、救急医に手厚く財政支援することで、医師不足解消を目指す。
 産科医支援策では、分娩取扱手当に加え、医学部卒業後3年目以降の若手産科医に対して3年間、1人当たり月5万円を支給することも盛り込んだ。
 一方、救急医支援策では、救急医療を担う病院のうち、重症患者を扱う第2次と第3次救急医療機関(全国約630カ所)で勤務する救急医に対し、夜間の当直1回当たり1万8659円、土日祝日の当直1日当たり1万3570円を支給する。
 これらの事業はいずれも国が3分の1を負担。残りは都道府県と市町村が負担するが、自治体の協力が得られない場合には医療機関側に負担を求める

勝手に医療機関側に負担を求めるってそんな(苦笑)。
医療費削減一辺倒から少しばかり方針転換しつつあるのかとも思える話なんですが、財源の問題もさることながら、これらの措置の実効性はどうなのか気になるところです。
NICU一つにしても施設は作ってもそこで働くスタッフが手当てできなず、既存スタッフに更なる過重労働が逃散を招くという悪循環ということになれば全く話になりません。
直接現場に金を出そうという発想が出てきたことはやらないよりはマシと評価したいところですが、問題はこれがちゃんと「にんじん」として機能するかということですよね。
単に楽して金を儲けたいなら他に幾らでもやり方があるという中で一分娩一万円と言うご祝儀はなかなかに微妙なところだと思いますし、まして医療は医師だけでやっているわけでもありませんからね。

さて、突然とも言えるこうした厚労省の方針転換は別に官僚が心を入れ替えたというわけでもなく、大臣のパフォーマンスに過ぎないのでは?という脱力な話がこちらです。

重要課題推進枠:社会保障予算案…舛添氏主導で実現(2008年12月22日毎日新聞)

 産科、救急など不足が際だつ診療科の勤務医への手当、出産育児一時金の4万円上積み、難病対策費の4倍増--。09年度予算案の重要課題推進枠に盛り込まれた社会保障分野の予算は、舛添要一厚生労働相が主導し、消極的な厚労官僚の尻をたたいて実現させた。医療現場も「まずは必要なカネ」と、一定の評価をしている。ただ応急的な色彩はぬぐえず、今後制度に反映させ、継続させていけるかどうかが問われる。

 厚労省は09年度予算編成で、社会保障費の2200億円抑制方針を財務省に緩めてもらうことを重視するあまり、同省から新規財源を得ることに及び腰となっていた。医師不足問題にも、「人口減で将来医師過剰になる」と、重い腰を上げようとしなかった

 そこに目をつけたのが年金記録漏れ問題で精彩を欠き、再浮上を狙っていた舛添氏だ。「医師不足」を唱え、役人が抵抗するや「官僚と闘う舛添」を演出。次々直属の有識者会議をつくり、予算要求の根拠となる「ビジョン」を打ち上げた。一連の施策は支持率急落にあえぎ、予算の目玉が欲しい麻生太郎首相の思惑とも合致した。

 政府は08年度の診療報酬改定で、産科などの報酬を厚くした。しかし、勤務医の収入が増える保証はない。病院経営者が増収分を人件費でなく設備投資に回しても、国にそれを止める手だてはないからだ。

 舛添氏主導の税による所得保証は、専門や腕で評価に差がつくことに否定的な医療界に風穴を開けるものだ。それでも単なる予算措置では、「いつなくなるか分からない」との現場の不安を消せない。恒久的な制度への格上げを要する。

 出産育児一時金の引き上げをめぐり、舛添氏は年約450億円の所要財源を「全額税負担」と説明し、関係者の同意を取り付けた。しかし、ふたをあけると国庫負担は約190億円(満年度分)で、しかも1年半限り。厚労官僚が舛添氏に抵抗した理由の一つは、「継続性が担保できるのか」という点だ。同省はいずれ所要財源を保険料でまかなう意向だが、企業負担の増加を嫌う経済界の同意を、今後得なければならない。

官僚の言うことも一応いちいちごもっともとも言える根拠はあるわけですが、結局のところ動かないことを大前提とした言い訳に過ぎないという見方も出来てしまうわけです。
将来はどうとか継続性がこうとか、猫の目医療行政で全く現場の信頼を失っている厚労省が口にしたところで「お前が言うな!」で終わる話ですよ。
桝添氏らのパフォーマンスはパフォーマンスとしても、官僚に主導される厚労省が全くと言っていいほど説得力ある医療の将来ビジョンを示すことが出来ていなかったという事実は事実として認めてもらうところから始めなければならないでしょうね。

少し前に株価が暴落したりで大騒ぎになりましたが、ああした局面で一番大事なのは将来がどうとか言う正しくとも即効性のない話ではなくて、今この瞬間に市場にどんなメッセージを送れるかということですよね。
まさに志気が崩壊しつつある(してしまった?)医療現場が求めているのも、100年先まで安心して継続できる医療システムなんてご大層な話ではないということを官僚は理解しているんでしょうか?
今は継続性がどうとか言う遠大な話よりも、必要な瞬間に必要な相手にはっきりした意思表示が出来るかどうかの方がはるかに重要ではないかと思うのですけどね。

ま、これで年明け早々政権がひっくり返って全部ご破算にでもなったら更に笑えますけどね(苦笑)。

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2008年12月23日 (火)

医者が足りぬと言うのなら

医療費削減方針の抜本的見直しまでは未だ至っていないようですが、政府厚労省もようやく医師不足を公式に認め対策を講じ始めているようです。
問題はその内容なのですが、例えば臨床研修は期間が一年に短縮されたり研修先に枠がはめられたりと、制度発足当初の理念?何それ食べられるの?な制度改革がほぼ確定的となるなど、根こそぎ動員体勢が敷かれつつある気配すらあります。
近ごろでは医学生すら、すっかり世間からは優良顧客扱いになっているというニュースから紹介します。

オリコ学費ローン:医師は出世払い…無担保で最大2千万円(2008年12月20日毎日新聞)

 信販大手のオリエントコーポレーションが、私立大学の医・歯学部の学生向けに無担保で最大2000万円を融資する学費ローン商品を開発した。国立や他学部に比べて学費負担が重い私大の医・歯学部は、一般家庭の学生があきらめがちだが、高収入が期待できる医師・歯科医の「出世払い」を“担保”とする考えだ。

 オリコの学費ローンの実質年率は固定金利型で年4.8%以上。合格証明書や在学証明書などを添付した上で、電子メールや郵送で申し込めるため、来店が不要。1000万円までなら、在学中は利息だけの支払いも可能という。融資は学費として直接大学に振り込まれる仕組みで、神奈川歯科大学(神奈川県横須賀市)が来年2月から導入することを決めたほか、現在5大学と協議している。

 私立大の医・歯学部の卒業までの学費は2000万~6000万円。ほかにも寄付金などがかかるケースも多く、日本学生支援機構(旧日本育英会)や各大学独自の奨学金制度だけでは不十分なのが現状だ。学費の安い国公立大は募集人数が少ないため、金銭的な理由で医師への道をあきらめる学生も少なくない。みずほ銀行や三井住友銀行など1000万円以上の教育ローンを設定している大手銀行もあるが不動産などの担保が必要だ。

 同社は「医師・歯科医は高収入の場合が多く、融資決定の際に将来の返済能力も考慮する。地方を中心に医師不足が深刻化する中、学費負担の軽減で医師を目指す生徒が増えれば」と話している。

素朴な疑問として金がないなら努力して金がかからない大学に行けと思うんですが、まあ双方納得ずくでやることであれば真っ当な商行為ということでよろしいのではないでしょうか。
しかし「学費負担の軽減で医師を目指す生徒が増えれば」なんてオリコさんは判って言ってるんだと思うんですが、いくら学資援助をしようが医学部定員枠以上には学生は増えないんですけどね。
こうしたローン導入で社会に何かしらメリットがあるとすれば、今後は今まで以上に医者を金で釣りやすくなるだろうなということくらいでしょうが、医師不足が深刻化している地方にとってそれが良いことなのか悪いことなのかは検討を要する課題ってものではないですかね。

ところで医学部人気は衰え知らずなんて話も聞く一方で、ちょいと気になるこんな記事も出ているんですが実際のところはどうなんでしょうか?
少なくとも仕事に不自由する心配も就職活動で苦労する心配も当分なさそうな業界ですから、この不景気で先行き不透明な折ならもっと人気も出て良いんじゃないかと思うんですがね。

医学部進学 40人割れ ピーク94年度の半数に/秋田(2008年12月9日読売新聞)

 医師不足が問題になるなか、2008年度に医学部へ進学した、県内高校の卒業生が39人にとどまり、ピークだった1994年度の82人から半減したことが県高校教育課のまとめでわかった。県出身の医学生が減ることで、将来、県内の医療に携わる医師を確保することがさらに難しい状況になりそうだ。
 県高校教育課によると、高校卒業者の大学医学部進学者(現役・浪人合格の合計)は、記録が残っている72年度から2000年度に45~70人で推移。過去最高となった94年度には、82人のうち32人が秋田大医学部に入学した。
 01年度以降は減少傾向をたどり、07年度まで40~50人で推移。秋田大医学部は07年4月から県内高校の出身者の入学枠を設けたが、医学部入学者は07年度25人、08年度21人と増えていない。

さて、最近は学生ばかりではなくリタイア・ドロップアウト組にも動員令発動中と言うことのようです。
こちら大ベテランにも現場復帰をしていただこうという記事を紹介しておきましょう。

復帰目指す 医師に『相談制度』 効果的な人材確保へ/千葉(2008年12月20日東京新聞)

 県のドクターバンク・メディカルサポート事業の一環で、医師の復職や転職などの相談に応じる「復職コーディネーター」の試みが始まった。再就職を求める医師を医療機関に紹介する取り組みは既に実施されているが、県は専門のコーディネーターに調整してもらうことで、より効果的な紹介をし、医師確保につなげたい考えだ。 (小川直人)

 県のドクターバンクに対し現在、常勤医師が六十八医療機関で二百四十五人、非常勤は二十三医療機関、六十五人の求人がある。一方で、職を求める登録医師は五人と少なく、これまで就職した実績は一人だけだ。

 県は、専門知識を持った人に調整してもらい実効性を上げるため、復職コーディネーターの配置を決定。本年度は月に一回ほど、相談日を設ける。電話のほか、メールでの相談にも応じ、相談日は県のホームページなどで告知する。メディカルサポートは、進歩する医療技術を習得するための研修先を紹介することが目的。出産や子育てなどで長期間、医療現場から離れていた医師の支援策にもなる。

 復職コーディネーターを務めるのは、県医師会理事の秋葉則子さん=写真。初回となった十七日には六十代の女性医師から、健康診断施設でフルタイムの就職を希望する相談があったという。

 秋葉さんは日本医師会女性医師バンクでもコーディネーターを務める。「勤務状態に悩む人など多くの医師に相談制度を知ってもらうことが大事。女性医師の場合、夫の転勤により転勤先での就職を求める人も多い」と指摘。県医療整備課は「登録医師が少なくもっとPRし、一人でも多くの医師確保につなげたい」としている。

六十代の女性医師、健康診断施設でフルタイムの就職を希望、ですか…
ま、今どきの医療業界で働く意志と能力のある人にはとっくに話が来ていると思われますから、こういうところに登録してという先生方は色々とその、何かしらの事情がおありの方々も多いんでしょうね。
それでもまだ医師としての資格を持ってやっているのなら誰に非難されるものでもないのですが、近ごろではいよいよ資格拡大も画策されているようです。

養成始まるナース・プラクティショナー 初期診療や薬の処方目指す(2008年12月17日産経ニュース)

 医師不足が深刻な中、看護師ら医師以外の医療従事者の役割を拡大してはどうか、という声が上がっている。米国ではナース・プラクティショナー(NP、診療看護師)やフィジシャン・アシスタント(PA、医師助手)という職種があり、診察や治療、患者説明などを担当している。日本でも今年から、NPの養成が始まり、医療を担う新たな存在として注目されている。

米国のNPやPAは、日本では医師にしか認められていない初期診療や急性の病気の手当て、薬の処方などを行うことができる専門職だ。米国でNPとして働く緒方さやかさんによると、NPは米国で医師不足が懸念された1960年代に養成が始まり、90年代に医療の質の高さや医療経済的な面から評価され活用が広まった。免許保持者は現在、14万人に上るという。

 緒方さんは「患者さんは『ちゃんと診てくれるなら医師でもNPでもかまわない』と考える人が多い。医師からは『専門の研究に専念する時間ができた』『休暇がとれるようになった』と言われることもあり、いい関係を築いている」と話す。

 名称にナース(看護師)が含まれるため、NPは看護師がスキルアップした職業ととらえられがちだが、米国では看護師の資格がない人も養成大学で学べば資格を得ることが可能だという。今年6月、米国のNPやPAの現場を視察した東京女子医大心臓血管外科の西田博講師によると、NPはシフト勤務で週40時間労働が守られ、資格取得1年目で年収7万5000~8万ドル(675万~720万円)程度。西田講師は「医師ほど責任が重くなく、忙しくないうえ、安定した収入が見込めるとして、米国では人気の職種となっている」と話す。
(略)
 一方、将来の医師不足が心配される外科系の医師の学会からも、NPやPAの養成を望む声が上がっている。日本胸部外科学会は4月、医師の過重労働を軽減し、高度医療を推進するために、「医師以外の専門職が担当できる部分を拡大するなどの制度改革が必要」との提言をまとめた。日本外科学会などは外科手術の術前、術中、術後の周術期を担当する「周術期管理ナース(もしくはNP)」の構築を検討し始めた。

 ただ、日本では現在、診断や処方などの医療行為が認められるのは医師と歯科医師のみ。また、保健師助産師看護師法で、看護師の業務は「診療の補助」などと規定されている。このため、NPが医師の指示がなくても自らの判断で診断や処方をするには法律改正が必要という議論もある。

 日本外科学会理事の田林晄一・東北大教授は「医療の質と安全性を高めるためにチーム医療による分業は不可欠で、コメディカル(医師と協同して医療を行う病院職員)の存在は今後、より重要になる」とNPやPAに期待を寄せている。

将来もしこうしたものが「補助医師」として位置付けられることになった場合に、医療現場に与える影響と言うものはどうでしょうか?
この手の話になると必ずと言っていいほど出てくるのが沖縄にかつて存在していた「医介輔」という補助医師制度ですが、沖縄の本土復帰後ははっきりした法的位置付けがないまま介輔の減少を続けた結果、ついに今年最後に残った介輔も廃業したと言います。
現状ではまだ法的にはっきりした資格となっていませんし補助医とも呼べるものでもありませんが、将来的に医師業務を一部なりとも代行するということであれば、まずはどの程度の権限を与えるのかをしっかり議論していかなければならないのは当然でしょうね。

そもそも過酷な現場から医師が逃げ出す理由の一つとして訴訟リスクも大きな要因とされていますが、こうした補助医的制度の何が問題かと言えば補助医の出した指示による結果も医師の責任となるのか?ということですね。
産科領域では現状でも助産師というものが存在しますが、同制度も「正常分娩は助産師で、異常分娩は産科医へ」という理念とは裏腹に様々な問題も指摘されており、必ずしも肯定的評価ばかりを得ているものではありません。
「医療現場で何か問題があれば全て医師の責任」と言うことであれば、医師としては何をされるか判らない他人の指示で医療をされたのでは安心も出来ませんから最初から全部自分で手を下していくしかない、それが結果として更なる過重労働を招くことにつながっているわけです。
現場での責任分散の制度もあわせて考えていかなければ、それぞれ異なった命令を発する司令部の数だけを増やしても誰も喜ばないと言う結果に終わるのではないかと危惧しているのですが…

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2008年12月22日 (月)

たらい回しは許さない ~ 救急医療再建

以前にも紹介しましたが、桝添氏と二階氏の「いわく付き」トップ会談の結果、厚労省と経産省が協力して救急搬送にIT技術活用を計っていくという話がまとまりました。
その初会合がこのたび開かれたそうですので、まずはこちらの記事から紹介していきます。

救急受け入れ支援の情報活用研究会が初会合(2008年12月17日CBニュース)

 受け入れ可能な医療機関が見つからず、妊婦が死亡した問題などを受け、厚生労働省と経済産業省は12月17日、「救急患者の医療機関への受け入れを支援する情報活用等に関する研究会」の初会合を開いた。研究会では、医療機関が救急患者の受け入れを円滑にする情報システムや運用体制について検討していくが、大都市部と地方での運用方法の違いなどの問題点について、課題が浮かび上がった。

 研究会の座長には、有賀徹・昭和大医学部救急医学講座主任教授が選ばれた。研究会の下には「運用・IT技術ワーキンググループ」(座長=山本隆一・東大大学院情報学環准教授)を設け、今年度中に報告を取りまとめる。
 初会合ではまず、厚労省が、都道府県が医療機関に要請している「救急医療情報システム」の入力状況などについて報告。導入している43自治体のうち、「情報に変更があればその都度入力する」が4自治体、「1日2回以上」が7自治体、「1日2回」が29自治体、「1日1回」が3自治体と、頻度に地域差が見られた。厚労省側は、医療機関に入力頻度を上げるよう協力を求めることは負担増につながるほか、最終の搬送先決定には直接電話連絡をする必要があるため、医療機関と搬送機関のヒューマンネットワークの構築などが必要とした。
 研究会の検討事項としては、▽救急医療情報システムの機能増強▽周産期救急情報システムの機能増強▽各情報システムの運用体制の強化▽新情報システムによる実証事業で検証が必要な事項-が挙げられた。

 質疑応答の冒頭、有賀座長は「産科救急と一般救急のネットワークはかなり違う」と指摘した。
 これに続き、岡井崇委員(昭和大医学部産科婦人科学教室教授)が、産科救急では、妊婦はこれまで診察を受けていた医師の元に一度運ばれ、その医師が医療機関に搬送を指示することがあると指摘。「問題はベッドが満床で、医師不足のために現場が多忙で、病院を見つけることが困難なことだ」と訴えた。また、「周産期救急は、一般救急と比べ圧倒的に件数が少なく、これまでは医療機関同士でやりとりをすればうまく回っていたが、それが変わった」と説明した。
 小倉真治委員(岐阜大大学院医学系研究科救急・災害医学分野教授)は、都市部と地方の救急搬送の状況の違いを指摘し、「岐阜県では救急患者を受け入れるため、時間をかけてマニュアル化を行い、ある程度うまく機能している。まず、『医療情報システムの構築ありき』といっても、地域や地場の情報体制を変えるのは難しい」と述べた。
 続いて、杉本充弘委員(日赤医療センター第一産科部長)が、「大都市圏ではITが特に必要かもしれないが、過疎地では状況が違ってくる。その地域に合うように幾つかのモデルを示す必要があるのではないか」と指摘した。
 また、坂本哲也委員(帝京大医学部救命救急センター教授)は「ディスパッチャー」と呼ばれる管理者を引き合いに、「米国では、空床の状況を把握しながら、医療機関に受け入れを要望するコーディネーターがいる。情報といっても誰が管理するのか。サポートはどうするのか議論が必要」と述べた。

 厚労省は救急医療情報システムについて、「全国一律ではなく、各地域に最も合ったものを県の中で議論してほしい。ただ、他県に患者を運ぶことが多い地域は、近隣県と相互に検討が必要。一般論として広域化が望ましい」とした。また、「新しい情報技術を使えば、入力などでもっと人の負担が少なくなるのではないか」と指摘した。
 これに対し、有賀座長が「現場の意見としては、ITだけで判断できるとは思っていない」と述べたほか、山本ワーキンググループ座長も、「ITはあくまでツール。ツールと仕組みは分ける必要がある。ツールは共通して利用できることが必要だが、判断については、自動化はできない。判断をする人の負担を減らすことを考えるべき」とした。
 研究会は、ワーキンググループによる数回の議論を経て、来年3月に第2回会合を開く予定だ。

初回と言うことでとりあえずこんなものかなと思いますが、医療資源の地域ごとの実情も全く異なるわけですから、全国一律のシステム改革と言うのは現実問題難しいのではないかと思いますね。
むしろ各地方、近隣県のレベルで広域救急搬送問題に関する連絡・協議の場を設けていくといったことの方が、より早期に実効性ある結論が出てくるのではないかと思いますが。

ところで桝添-二階会談でも出ました「IT技術を活用して」云々というくだりなんですが、これがどんな斜め上な…もとい、素晴らしい最先端技術の結晶として結実してくるかに非常に興味がそそられるわけですよ(笑)。
そう思っておりましたら、先の会議でも岐阜大・小倉教授が「岐阜県では救急患者を受け入れるため、時間をかけてマニュアル化を行い、ある程度うまく機能している」と自負する岐阜県から、さっそくこんな記事が出てきました。

ICカードで医師動向把握 患者たらい回し解消へ/岐阜(2008年12月21日岐阜新聞)

 ICカードで病院内の医師の動向を把握して救急隊に最適な搬送先を指示できる救急医療情報システムの開発に向け、岐阜大学医学部を中心に産官学が連携して2009(平成21)年度から、県内で実証実験に取り組む見通しになった。患者の「たらい回し」の解消にも効果が期待される。

 20日内示された09年度予算財務省原案で、この実証実験を含むプロジェクトに3億円が盛られた。

医師にICカードを携帯してもらい、病院内に設置したセンサーで、「手術中」「診療中」など勤務状態をリアルタイムで把握。自動的に専用サーバーに情報を送る。一方でサーバーは救急車に装備した端末から患者の情報も受け取る。

 こうした医師の業務状況と救急患者の傷病状態の双方の情報を基に、最適な受け入れ可能病院を素早く救急隊に示す「人工知能」を組み込んだシステムの開発を目指す。

 早ければ09年度から岐阜、高山、美濃加茂市の計3病院で医師の動向を把握する設備を整え、順次、救急車に端末を導入する計画。11年度ごろをめどに救急救命センターなど10―15病院、救急車75台への拡大を目指す。

いやあ、「患者の「たらい回し」の解消にも効果が期待される。」って、何かさっそくいい感じですねえ(笑)。
当然ながらこういう素晴らしい最先端のシステムであれば医師の勤務状況を把握するなど朝飯前なわけですから、今後二度と時間外手当未払いなんて問題は起こるはずがないものと今から期待も高まろうと言うものですよ。
岐阜県には是非とも医療現場のIT革命を通じて、医療労働管理体制においても日本の最先端をこのまま独走していただきたいと思いますね。

さて、救急搬送問題に関わる話題として、こういう記事もあります。

救急科医の志望者、わずか2.2%(2008年12月17日CBニュース)

 全国医学部長病院長会議(会長=小川彰・岩手医科大学長)と臨床研修協議会(理事長=矢崎義雄・独立行政法人国立病院機構理事長)が共同で行っている「臨床研修制度」についてのアンケート調査の中間集計で、若い医師らが「医師不足」や「過重労働」といわれている診療科を避ける傾向にあることが、あらためて明らかになった。現役の医学部生、初期研修医、卒後3-5年目の医師で、「救急科」を志望する人は全体のわずか2.2%、「産婦人科」も6.4%にとどまった。一方、最も志望者が多かったのは「内科」の14.4%だった。

 両団体は10月末、大学80施設、臨床研修病院80施設の医学部生、初期研修医、卒後3-5年目の医師、指導医、医学部長、病院長ら1万8500人に、アンケート調査を実施し、12月5日までに1万1800人から回答を得た(回収率63.8%)。

 それによると、臨床研修制度の導入による「総合的診療能力の変化」について、大学病院の指導医の26.4%、臨床研修病院の指導医の45.3%が「高くなった」「どちらかといえば高くなった」と回答した。一方、大学病院の指導医の31.9%、臨床研修病院の指導医の14.6%が「低くなった」「どちらかといえば低くなった」とした。

 「初期研修の必修科目」については、大学病院の指導医の34.4%と臨床研修病院の指導医の36.0%が「少なくした方がよい」と回答。「現状がよい」と答えたのは大学病院の指導医の22.4%と臨床研修病院の指導医の28.2%、「多くした方がよい」としたのは大学病院の指導医の2.0%と臨床研修病院の指導医の2.6%だった。

 また、「初期研修の期間」について、大学病院の指導医の24.2%と臨床研修病院の指導医の40.5%が「現状がよい」と回答。一方、「一定の条件の下に短縮した方がよい」と答えたのは大学病院の指導医の37.5%と臨床研修病院の指導医の26.8%だった。

わずか2.2%しかいないと考えるか、2.2%もいるのかと考えるか、立場によって受け取りかたが微妙な数字という気はしますが。
救急というものを担当しているのは当然に救急科医だろうと思っておられる方も多いと思いますが、ほとんどの病院では内科、外科など各診療科からスタッフを捻出して救急を回しているのが現状なんですね。
救急専門医というものに関してはずっと以前にも一度書いたことがありますが、基本的には各専門科に引き継ぐ初期診療を請け負う診療科であって、他科のバックアップ無しにそれ自体が単独で成立するという類のものではない点には留意しなければなりません。
特に日本の場合は主治医制というシステムが敷かれている病院が多い関係もあり、テレビドラマなどでの大活躍ぶりと比べると院内では結構微妙な立場だったりすることが結構あって、現状では例えば新卒医師の10%なりが救急科に進んだとしてもむしろ現場で持て余す可能性もあるのかなという気がしています。

学生や研修医に話を聞いてみると判りますが、一度は救急を学びたいという数は相当に多いのですが、それを生業としたいと考えている人間は極めて限られています。
救急科医志望がわずか2.2%という話が出るからには最終的にどれくらいの数をという目標設定があるはずですが、救急科医を揃えたいならその分をどこの診療科から削り取ってくるのかという議論も為されなければならないのは当然なんですけどね。
いずれにせよ一昔前は何も考えないでとにかく手を動かせという突貫小僧が多かった医療業界ですが、知識や技能はきちんと身につけた上で自らリスクマネージメントを行っていく彼ら若手医師たちの姿勢は、時代の求める医師像として率直に評価されるべきものだと思いますね。

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2008年12月21日 (日)

今日のぐり「焼肉レストラン鶴松 灘崎店」

最近体重計がちょいと怖いです…
この時期は色々とお誘いが多いと思いますが、気をつけないとメタボ一気の恐れが強いですからね。
皆さんも健康のため飲み過ぎ食べ過ぎにはご注意ください。

今日のぐり「焼肉レストラン鶴松 灘崎店」
岡山市街地からかなり南方、田園地帯の最中にある、一見していかにも大衆向きといった店構えの焼肉店です。
このご時世にここのお昼は各種定食系が軒並み1000円以下で御飯おかわり自由、ソフトドリンクフリー(全くのセルフサービスですが)と頑張っているようですね。
ちなみに石焼きビビンバ定食やらカルビ炒め定食(野菜炒め?)やらは理解できるんですが、鶏唐揚げ定食ともなるともう焼肉と何の関係があるのやら。
結局はモツ鍋定食\1000を注文しましたが、御飯つきはともかくうどんまで入っているとは…

ちなみにカルビ炒めや唐揚げなども目にしたのですが、どれもハンパなく量が多いんですね。
焼肉定食系ももちろん高価な肉ではないんですが、見た目のボリューム感はなかなかこだわっているようです。
肝心のモツ鍋ですが、甘味噌仕立てで少しくどいのも確かですが、これはこれで飯に合わせるには悪くはないかなと。
これに限らず甘味噌系の味にこだわりがあるのか味噌漬け肉の焼肉などもあるようなんですが、いずれの料理も韓国的辛さはいたって薄く石焼きビビンバに合わせるコチジャンすらないみたいですね(それはそれでどうかと思いますが)。

少なくともランチの時間帯は人件費を思いっきり削っているのも確かで、席に着いた後はほとんど放置状態なんですが、昼はとにかくそれなりの味で値段とボリュームを優先する路線に徹しているのかなと言う印象です。
実際にこんな辺鄙な場所にある割にそれなりに繁盛している様子で、これはこれで悪くない割り切りだと思いますね。
メニューの写真なども見る限り、通常の焼肉にはそれなりにまともな肉も使っているようですが、一度夜の部の味とサービスも試してみたいですね。

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2008年12月20日 (土)

色々な意味で痛いニュース

というわけで、最近目についた「それはちょっとどうなのよ?」と言うニュースを集めてみました。
事実は小説よりも奇なりとは言いますが、狙ってやってるわけではないんですよね…?

動物園でライオンが虎を噛み殺す(2008年12月18日Innolife)

動物園で虎がライオンに噛まれて、死ぬ事故が起きた。

昨日午後3時半頃、全羅北道全州市全州動物園で飼育係が投げたえさで、七歳のライオンと六歳の虎の間でけんかになった。

この過程で虎がライオンに首を噛まれて、その場で死んだ。

全州動物園関係者は死んだ虎はシベリア産で、急所を噛まれて、呼吸困難で死んだと述べた。

これは文字通りに痛い話なんですが、動物園で最強決定戦っていきなりそう来ますか(笑)。
古来百獣の王は虎かライオンかとはよく議論されてきたところですが、ざっとネットで過去の記録を調べて見たところでは勝ち負けは時の運(個体差?)といったところのようですね。
しかしこれ、お互いよほど腹が減って気が立っていたのか知りませんが、管理者責任を問われる事態ってやつじゃありますまいか。

落書きはアート「理解していると思った」(2008年12月18日日刊スポーツ)

 大阪市営地下鉄の敷地内に侵入して車両に落書きしたとして、器物損壊罪などに問われたスロバキア国籍の美術家ダリボラ・スピシアク(26)、ハンガリー国籍の大学生タカチ・ビクター(26)両被告は18日、大阪地裁(橋本健裁判官)で開かれた初公判で起訴事実を認めた。

 被告人質問でスピシアク被告は「自分が作るものはアートで、人々が理解していると思っていた」などと述べた。

 検察側冒頭陳述によると、2人はことし9月に観光と落書き目的で来日し、東京、大阪、京都、福岡で電車などに落書きを繰り返したという。

 起訴状によると、2人はスプレーを使う手口で9月4日未明に地下鉄新大阪駅に、同日夜に地下鉄谷町線の八尾車庫内に侵入し、停車中の車両に落書きするなどした、とされる。

ええとですね、色々と言いたいことはあるんですが、とりあえずそういうことは自分の国でやって下さいと。
て言うか観光と落書き目的で来日って何だよと、せめて「来たときよりも美しく」という日本の言葉を学んで帰れよと。
許可を得るどころか車庫に不法侵入してまで落書きしてんですから、これはどうにも同情の余地無しのイタさってところではないですかね。

蚊帳で漁を行いマラリア蔓延、漁業資源も枯渇(2008年12月13日livedoorニュース)

新華社ナイロビ(ケニア):多くの魚が住むアフリカ最大の淡水湖・ビクトリア湖。湖周辺諸国の多くの民が、この湖での漁業で生計を立てている。ところが今、このビクトリア湖で困ったことが起きている。ケニアの湖周辺に住む人たちが、漁網ではなく蚊帳で漁を行っているのだ。

ケニアメディア11日付の報道によると、この蚊帳は政府がマラリア防止のために支給したもの。その蚊帳が正常に使われていないことで現地ではマラリアが蔓延し、さらに湖の漁業資源も激減することとなった。蚊帳は普通の漁網より目が細かいため、通常では網にかからない小さな稚魚でさえも、文字通り「一網打尽」にしてしまうからだ。

蚊を媒介にして伝染するマラリアは、アフリカ地域の主要死亡原因の1つ。毎年100万人を超える人がマラリアにかかり死亡している。ケニア衛生省の専門家によると、政府はマラリア対策のため、マラリアの感染が深刻な地域の住民、特に妊婦と5歳以下の子供に蚊帳を配布しているという。ビクトリア湖周辺の漁村地域には今年、2万張の蚊帳が支給された。

ところが、目先の利益に目がくらんだ一部の漁師が、複数の蚊帳をつなぎ合わせて魚を採ることを思いついたという。その企みに気づいた政府は蚊帳の色を緑色にし、白い漁網と区別しようとしたが、その効果たるやほぼゼロに等しいものだ。ビクトリア湖では、奇怪な緑の網が常に見られるようになっているという。政府はマラリア被害地域に蚊帳を低価格で提供する補助政策を行っているが、それが裏目に出てしまった形だ。蚊帳1張の価格は、漁網の正規価格を大幅に下回っているという。

貧すれば何とやらで同情の余地無しとはしませんが、こういうのはやはり「みんな貧乏が悪いんや!」ってことなんでしょうかね?
日本のような国でこういうことをやってみせれば、下手すると「あり合わせのものでよく工夫した!」なんて褒められてたんじゃないかなって気もするような話なんですが、いずれにしても一網打尽はいけません。
世界中の第三世界で広がっている環境破壊ってものはこういうパターンも多いんじゃないかという気がしますが、強度を落とすなり漁網に使えない色彩にするなり何かしらうまい具合に対策が立てられるといいんですけどね。

愛犬、今度はホッキョクギツネ!飼育1年で判明―湖北省武漢市(2008年12月12日レコードチャイナ)

2008年12月12日、湖北省武漢市で、ある市民の愛犬がイヌに似ていないため地元動物園に鑑定を依頼したところ、ホッキョクギツネであることが判明したと伝えられた。武漢晩報の報道。

同市内在住の張(ジャン)さんはおよそ1年前、出張先で見初めたポメラニアンを600元(約8400円)で購入した。しかし、成長するにつれしっぽが長くなり、鳴き声も「ワンワン」ではなく「ウーウー」とうなるようになり、飼い主にも一向になつかないばかりか、噛みつくこともしばしば。今年の夏からは、なんともいえない体臭を発するようになり、毎日シャンプーしても改善の兆しが見えず、張さん一家は辟易した。

「これは、イヌではないのでは?」疑念を抱いた張さんは、武漢動物園の獣医に鑑定を依頼。なんとポメラニアンは人工繁殖されたホッキョクギツネであることが判明した。ホッキョクギツネは北極域に棲息する小型のキツネで、むくむくとした多毛や丸っこい体型が特徴。中国では国家保護動物にも指定されている希少種で、もちろん飼育には適さない。張さんは「愛犬」を動物園に寄付することにしたという。

中国と言えば先日も猫と思って飼っていたら実はユキヒョウだったというびっくりニュースがありましたが、何か国として方向性が間違ってないですか。
と言いますか、見た目は確かに似ているかも知れませんが、どう見てもポメラニアンよりこっちの方が希少じゃないですか。
羊頭狗肉と言う言葉が生まれた彼の国ですが、狗と偽って羊を売るかのような真似をしちゃいけませんぜ旦那。

19歳の「鬼太郎」が冬の鳥取をPR(2008年12月18日産経ニュース)

 20日公開の映画「劇場版ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!」に合わせ、原作者、水木しげるさんの出身地、鳥取県の観光キャンペーンとして、鬼太郎そっくりさんが18日、東京・大手町の産経新聞社を訪れ、「鬼太郎ファンには鳥取は一番のお薦め」とアピールした。

 鬼太郎に扮(ふん)するのは、鳥取県境港市の「妖怪そっくりコンテスト」で優勝した東京都江戸川区の専門学校生、馬場裕加さん(19)。頭に目玉おやじを乗せ、ゲタや衣装も自前でそろえる徹底した鬼太郎マニアで、「普段からこの格好。子供のころから鬼太郎になるのが夢でした」と話している。

 境港市は水木しげる記念館や130体の妖怪ブロンズ像が並ぶ水木しげるロードがあり、妖怪をテーマに地域おこしに取り組んでいる。鳥取県では「市に近い皆生温泉など県内は温泉も多く、松葉ガニもいまが旬。冬場の観光客誘致を図りたい」と、鬼太郎効果を期待している。

いやまあ、コスプレとか趣味の問題にクチを挟むつもりは毛頭ないんですが、「普段からこの格好」って女子学生がそれはヤバいだろJK。
と言いますか、原作の鬼太郎ってもっとずっと小汚いイメージがあるもんですから、こんな小綺麗な格好されてると何か違うって感じなんですが。
「校内は下駄禁止と決まってるだろう!」なんて、年代的にドンピシャな人間も多かろう専門学校の先生から突っ込まれていないことを祈ります。

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2008年12月19日 (金)

大阪公立病院事情 ~ 阪南市立病院と松原市立病院の対比

別段含むところがあるわけでもありませんが、何故か何度も取り上げることになってしまっている阪南市立病院のその後について、このたびは特例債申請に向けた改革プランを出してきたようです。

阪南市立病院、改革プラン案まとまる 総務省に提出へ(2008年12月18日産経ニュース)

 経営難に陥っている阪南市立病院の改革プラン策定を進めてきた有識者や住民代表らによる「市立病院経営改革懇談会」(座長、今中雄一・京都大学大学院教授)が17日、市役所で開催され、改革プラン案がまとまった。議会への説明を経て、今月中に「公立病院特例債」発行の認可を得るため総務省にプランを提出する。

 プラン案では泉州南部15万人医療圏の住民から信頼される地域医療を担う中核病院として機能することを掲げている。経営改善については、医師の辞職の動きがあるが、現段階では医師の辞職が確実になっておらず、これまでの計画通りとなっている。現状の医師の給与体系(年収約2000万円)をベースにし、平成25年度までに経営基盤を確立し改善を進める。25年度には一日平均の入院患者数155人を目標にしている。

 阪南市立病院の累積赤字は平成19年度末で約22億8000万円。プラン策定による「公立病院特例債」約10億5000万円の発行を予定し、7年間の長期債務に振り替えて、財政への影響を抑える計画。しかし、現在、辞意を表明している医師が一斉に辞め、他の医師確保が進まなれば特例債が発行されないことも想定され、今年度、一般会計から病院に約15億5000万円の資金援助が必要となり、財政が一気に悪化する恐れが出てくる。

ちなみに公立病院特例債につきましては以前に書きました通りですが、この特例債なるものは抜本的改革をしたいが金がないため出来ない自治体病院救済のための臨時的な措置で、これを申請するためには「こんな風に改革していきます」というプランを提出しなければなりません。
改善の計画についてはここでは詳細は明らかでないのですが、とりあえず「医師の辞職の動きがあるが、現段階では医師の辞職が確実になっておらず、これまでの計画通りとなっている」という時点でいったい実現性としてどうなのよと突っ込んでおかなければならないでしょうね。
大阪府内で周辺医療機関にも不自由していない中、人件費率9割なんてあり得ない経営状況の公立病院を大赤字を抱えてまで維持しなければならないという執着がどこから来るのか、外野としてはその情熱をもっと有意義な方向に生かせよと思ってしまいますが。

さて、以前から「金がなくて公立病院を維持できない自治体の中から、自前の病院を廃止して周辺自治体や民間の病院に肩代わりを求める自治体が出てくるのでは?」と言ってきたわけですが、同じ大阪府で阪南市とは逆に公立病院廃止を決めた松原市の例を取り上げてみましょう。

公立病院閉鎖へ、異例の条例案可決 大阪府松原市(2008年12月17日産経ニュース)

 深刻な経営難に陥っている大阪府松原市の市立松原病院(桑田博文院長、162床)を来年3月末で閉鎖する条例案が、17日に開かれる市議会本会議で自民、公明などの賛成多数で可決された。すでに今月15日から新規の入院、外来診療の受け付けを停止するとともに入院患者の受け入れ先を探しており、来年度中に廃止する方針。

 平成16年に導入された新臨床研修制度による医師流出などに伴い、各地の公立病院は構造的な赤字体質が続いているが、廃止に踏み切るのは極めて異例だ。

 中野孝則市長は11月28日、施設の老朽化や医師不足などを挙げ、本年度末までに累積赤字が約50億円に達する見通しも示して、廃止を発表していた。

 平成13年に38人いた常勤医師は、今年1月には27人に減少。外来患者数は、13年度の約22万6000人から、19年度には約13万3000人に落ち込んだ。

 同病院は昭和25年に開設。診療科は内科、外科、産婦人科、小児科など12科。医師不足と施設の老朽化などで患者数が減少し、19年度決算で約40億円の累積赤字を計上。今後も毎年約10億円の赤字が見込まれ、市の財政再生団体への転落が危ぶまれる中、一般会計からの繰り入れも限界に達していることから閉鎖を決めた。

風の噂によれば閉院の大きな原因は建て替え費用がまかなえないからだとも聞きますが、経営効率が極端に悪い公立病院は言うまでもなく、私立の病院を含めて考えても今の診療報酬ではまともな医療をやっていればぎりぎり黒字になるかどうかを目指すのが精一杯でしょう。
当然ながら健全経営を維持した上での自己資本での建て替えなどおいそれと出来るものではないはずなのであって、未だにハコモノ行政の延長線上でやれ移転だ、立て替えだと大騒ぎしている各地の自治体よりもよほど潔いんじゃないかとも思いますね。
そもそも他の医療機関も多く周辺自治体との交通も整備されているこうした都市部で、明らかに経営効率の悪い公立病院を大赤字を抱えてまで維持する理由というのはないんじゃないかと思うし、その分を他の住民サービスに回した方がよほど皆が幸せになれると思うのですが、何故かこうした「英断」に対しても批判の声が結構あがっているらしいんですね。

「結論急ぎすぎ」市立松原病院の閉院可決(2008年12月18日朝日新聞)

 市長の閉院表明からわずか20日足らず。松原市立松原病院の閉院が17日、市議会で可決された。「命と健康のとりでをつぶすな」と存続を求める署名活動をしてきた市民団体は「市民の願いに耳を傾けず、あまりに結論を急ぎ過ぎだ」と怒りの声をあげ、可決に抗議する声明を出した。今後、中野孝則市長の辞職や閉院の先送りを求めていくという。

 60人を超す市民が傍聴する中、議長を除いた採決で、自民(7人)、公明(5人)、民主(2人)が賛成、共産(5人)が反対した。採決前の討論では、閉院に賛成する市議が「(閉院は将来)英断だと評価されるだろう」「問題の先送りは市民サービス低下につながる」「市立病院は歴史的使命を終えた」と述べると、傍聴席からは「ばかなこと言うな」「議員をやめろ」「それで福祉の党といえるのか」とヤジが飛んだ。

元病院職員らでつくる「病院の存続・充実を求める会」は閉会後に記者会見。「『市立病院が役割を終えた』というのは非常識な発言だ」「財政難を理由に病院を切り捨てるのは許せない」と訴え、今後、来年3月末の閉院を6月にもある市長選の後に先送りすることや、市長の辞職を求める署名活動を進めていくことを明らかにした。

 閉院の可決を受け、中野市長は「閉院で市民に多大なご迷惑をかけることをおわびする。入院患者の転院や職員の処遇の問題には誠意をもって対応したい」と話し、辞職については「そんな無責任なことはできない」と否定した。

松原市なんて他に幾らでも医療機関がある中で「命と健康のとりで」もないものだと思うのですが、うがった見方をすれば何らかの事情で他の医療機関にはかかりたくない人々にとっての「とりで」でもあったのか、あるいは病院関係者と言うだけに病院に存続してもらうこと自体に何らかのうまみでもあったのかなどと妄想もふくらみますが、どうなんでしょう?
公立病院の9割が赤字とされる中、今やどこの自治体でも自前の病院経営が極めて大きな重荷になりつつありますが、立地も医療事情も無視して「自前の病院くらい持っていなければ」などという根拠のない思いこみが一度失われてしまうとどういうことになっていくのか、なかなかに興味深いことになっていくのかも知れませんね。

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2008年12月18日 (木)

祝!読売新聞社が日本鬼畜訴訟大賞最極悪賞を受賞

なかなかに傑作な話がありましたので、今日はまずこちらのニュースから紹介してみます。

第一回「日本鬼畜訴訟大賞」最極悪賞に読売新聞社(2008年12月11日MyNewsJapan)

 12月8日、2008年「日本鬼畜訴訟大賞」の選考会が東京・月島で開かれ、審査委員による議論と投票の結果、最極悪賞に、言論媒体であるにもかかわらずジャーナリスト個人狙い撃ちで“口封じ訴訟”を連発した読売新聞西部本社が選ばれた。(略)
 企業や権力者が裁判制度を悪用して高額訴訟を吹っかけ、個人の口封じ・嫌がらせを図る事例が頻発している。そのような人間の風上にも置けぬ「鬼畜」による訴訟の防止と対策を図るため、ジャーナリズムメディアであるMyNewsJapanは、このほど鬼畜訴訟防止委員会(鬼防委)を結成。手始めの活動として、今年の「鬼畜訴訟大賞」を選出・発表し、“嫌がらせ口封じ訴訟”を仕掛ける組織名を世に広く知らしめることにした。
(略)
◇「最極悪賞」は読売新聞社、次点に新銀行東京
 グランプリにあたる「最極悪賞」は、極悪な訴訟のなかでも、さらに最も悪意が感じられる訴訟で、裁判制度の悪用、つまり国民の税金無駄遣いも甚だしい訴訟を起こした最悪の企業・団体に贈られる。2008年の、不名誉ある最極悪賞には、計11点を獲得した読売新聞西部本社が輝いた。江崎法務室長名による訴訟も含め、2008年は黒薮氏に対する訴訟を連発した。

概要:
    読売新聞西部本社(江崎法務室長含む)
    1:読売新聞社が販売店との商取引を中止した経緯を、ジャーナリストの黒薮哲哉氏が自身のウェブサイトに掲載したところ、その一部が、読売新聞西部本社および社員3人(江崎法務室長、長脇担当、池本担当)に対する社会的評価を低下させたとして、2008年3月11日、黒薮氏に対して2230万円の損害賠償を請求。読売側が問題にしたのは、以下の記述だった。
 「その上で明日の朝刊に折り込む予定になっていたチラシ類を持ち去った。これは窃盗に該当し、刑事告訴の対象になる」。黒薮氏に対して削除・訂正の要請すら行わず、突然、裁判を起こした。

2:読売新聞西部本社法務室長・江崎氏の催告書を黒薮氏のウェブサイトに掲載したところ、催告書は江崎氏個人の著作物だとして公表権を主張、2007年12月28日、催告書を削除せよと仮処分申請、2008年4月、本裁判開始。

読売と言えばモンスターペイシェントの典型例としてしばしば引用される、かの「新聞社で医療を担当している」と緊急手術を強要したという伝説の渡辺勝敏医療情報部次長を擁するほど医療には強いことを以て自認している新聞社ですが、強いのは医療に対してだけではなかったということですね(苦笑)。
読売新聞の偉業達成はともかくとして、去る11月に京都大学で行われた上杉隆氏の講演がなかなかに興味ぶかかったので、一部だけですが抜粋してみます(是非全文を一読されることをおすすめします)。
マスコミ業界の感覚と言うものは例えばTBS社長の井上弘氏の過去発言などを見てみればある程度おわかりになるかと思いますが、この業界も特に上の方に居座っている方々はずいぶんと浮世離れしているところがありそうですね。

11月祭講演会録 「記者になりますか?それともジャーナリストになりますか?」(2008年12月01日京都大学新聞社)

外部の記者を阻み、メンバーすらも雁字搦めにする記者クラブ制度をはじめ、様々なシステム的問題を抱える日本のメディア。日本型の会社員的な記者ではなく、本当の意味でのジャーナリストになるためにはどうすればよいのか。この国は健全なジャーナリズムを築けるのか。議員秘書、海外メディア、フリーランスと様々な角度から日本のメディアを見てきたジャーナリスト上杉隆氏に話を聞いた。
(略)
次に日本の記者クラブ制度について話します。私自身と記者クラブの関わりは、最初はNHKのスタッフとして中から、次に議員秘書という権力側から、その後ニューヨーク・タイムズというオブザーバーの立場から、最後に記者クラブから最も阻害されるフリーランス、という4つの立場からのものでした。15年ほど記者クラブという制度を見てきて、これが日本の報道がうまくいかない最たる理由ではないか、ひいては日本の社会システム全体を歪めているのではないかと思っています。
(略)
この制度がなぜ問題かというと、クラブの性質によって政治の様々なマイナス点が隠され続けてきたからなんです。最近の例をあげると後期高齢者医療制度。あれは3年ぐらい前に民主党の山井和則さんや福山哲郎さんなどの若手議員らが、とんでもない制度だといって委員会でどんどん質問をしていた。しかし記者クラブメディアはそれを一文字も取り上げない。なぜかと聞くと、野党の一議員が言ったってニュースにならないと言うんです。ところが2年経って制度の運用が始まると、今度は大騒ぎするわけですね。なぜこのことが明るみに出なかったのか、政府はこの制度を隠していたんじゃないのかと。しかし全然隠してなんかいなかった。山井さんなんか自分でビラを作って配っていました。このようなことになったのは、政治報道が権力側の発表に従う発表ジャーナリズムであることが原因なんです。政府が発表するまではニュースにならないし、逆に発表すればなんでもニュースになる。政府が発表したかどうかでニュースになるかを判断し、政策などで物事を判断しなくなってしまう。

“出入り禁止”禁止

この前、元財務省の高橋洋一さんと対談をしていて、そこで高橋さんが、マスコミは使いやすいよ、紙を1枚作っておけば、みんなヤギのように寄ってたかって取っていって、ありがたく記事にする。自分が作った中で本当のことなんて書いたことないが、それでも紙ならニュースになり、紙以外はニュースにならない。紙以外をニュースにする場合は取材が必要なわけです。権力側は、「本当に報じないといけないこと」は事実無根だと否定してくる。それを記事にするということこそ世界中のジャーナリストがやっていることなのですが、日本の場合は出しても全く得がないので出しません。これが記者クラブ制度の最大の問題点。

たとえば私が記事を出して、間違っていれば、基本的には、責任とって訂正記事を出すか、謝罪するか、再取材して改めて記事を出すか、そうしたことをすればいいだけだと思うんです。ところが日本のメディアでは1回間違えると、それがそのまま評価の対象になってしまう。そこには間違いは存在しないという前提があるんです。記者クラブの記者が、仮に間違えた場合どうなるかというと、処罰や人事に影響します。スクープをとればいいかというとそうでも無くて、場合によっては記者クラブから出入り禁止となってしまう。(略)

なぜそれを恐れるかといえば、取材された側が社内の上の方に言いつけて、お叱りをいただいて評価が下がるからです。非常に珍しいシステムです。それでもよければ記者は書き続けるのですが、当然ながら出世は見込めず、地方に飛ばされるか現場から外されるか、もしくは辞めざるを得ない状況に追い込まれる。記者も当然ながら生活をして家庭を構えているので、おとなしくせざるを得ない。それがシステムとして完成されているのが日本の記者クラブであって、そこから厳しい記事が出るはずがない。

知るべきことを知らされない国民

記者クラブは、同業者の仕事の邪魔をする不思議な制度であって、権力側からすれば大変便利だが、フリーからすると非常に邪魔。しかし一番不利益を被っているのは、本来知るべきことを知らされない日本の国民です。これを打破する動きとして、鎌倉市や長野県で記者クラブを開放したということがあったのですが、これはいつのまにかなくなってしまった。また5年以上前に民主党が岡田克也代表のとき記者クラブを開放しているのですが、不思議なことに一切これは報じられなかった。これは既得権益に絡む問題です。民主党の記者クラブ開放を報じてしまうと、雑誌とか海外メディアや私のようなフリーが入ってくる。するとこれまでの記者クラブの調和が崩れてしまい、当たり前ですが政治家に厳しい質問も出てしまう。(略)

しかし記者クラブの開放自体は時代の流れだと思います。これまで記者クラブが維持されて来たのは記者たちが、どうでもいい情報をいかにも大事であるかのように扱い、自分たちだけが持っていることで価値を高めて、報じて来たからなんですね。

ところが、そういうことができなくなって来た。その一つの原因にインターネットの普及があります。かつては委員会などの国会審議とかは記者クラブの記者以外は現場に入ってみることができなかった。傍聴してもいいけれど、毎日やっている暇はない。それがいまや完全に動画で公開されている。それを見れば一般の人でも本当のことが何なのかがわかり、記者クラブの記者がどうでもいいことを取材したフリをするなんてことがまずできなくなってきている。また秘書や役人が匿名で書くブログのようなものも増えているし、なんといっても大きいのが政治家とか官僚、つまり取材される側が本人の名前でブログで直接情報を発信していること。特に若手政治家、河野太郎さんや山本一太さんなどはかなり早い段階でブログを書いていて、官邸で首相の話を聞いて来たなんてことをその直後にはアップするわけです。そうすると政治部記者はたまったもんじゃない。翌朝の新聞に書いてあることよりも、もっと詳しい内容を当事者が全部書いてしまうわけですから、いままでのようなごまかしはきかない。そういう意味で変化の兆しはあります。

ただ根本的な部分はちょっと変わりにくい。というのはやはり記者クラブを守って来た人が、いまやメディアの経営陣となっていて、それを開放するというのは自分たちのやって来たことを全否定することになってしまう。私が記者クラブ批判を書いていても、若い記者からは好意的な反応をもらったりもするのですが、幹部の人からは例外無く嫌われている。そういう今の幹部の人がいなくなって、記者クラブに疑問を感じている人が上にいけば、メディア自身から変わっていくこともあるかもしれません。

記者クラブ制度というものに関しては以前から多方面で批判されていることは周知の通りですが、確かにジャーナリストたるを放棄してしまえばこれほど簡単便利に記事を書けるシステムもないんだろうなとは容易に想像できるところです。
ただし上杉氏の公演中にもありますように、最近ではそうしたお仕着せの報道に飽き足らない顧客層の増加が既存マスコミ離れを招いていることも事実ではあるでしょう。

それでも購読者数減少が直接の収入減となる新聞社と違ってテレビ局の場合はスポンサーさえつかんでおけば経営は万全なのでしょうが、昨今の不況下においてはこれも怪しいところ。
と言いますか、そもそも広告効果が疑わしいものを惰性で続けてきたスポンサー各社が、この不況を表向きの理由に一気に決別に走り始めたという印象すらあります。
天下のトヨタですら大騒ぎしているという時代にあって、今まで一人勝ちでやってきたマスコミ業界がどういう危機対応を見せてくるのか要注目というところでしょうか。

大手飲料メーカーが番組提供CMから撤退する? (2008年12月15日ゲンダイネット)

 民放各局は震え上がっているのではないか。これまでCMを大量に出稿していた大手飲料メーカーが番組提供から手を引くのだという。

 あるテレビ関係者がこう言う。

「この会社はこれまで各キー局の複数の番組に、満遍なくCMを出稿してきました。番組はアニメ、歌番組、バラエティーのすべてを網羅しています。でも、テレビで宣伝してもその効果がはっきりしないし、期待しているほどではないと判断し、“テレビからの撤退”を決断したというのです」

 これまで1000億円以上を出稿してきたトヨタ自動車が、来年度は広告宣伝費を30%減らすことを表明している。この会社もトヨタ並みに出稿量が巨額だけに痛手だ。キー局としてはスポットCMの収入激減に頭を痛めている時に、番組提供のCMまで減らされては死活問題だろう。

 これにはタレントも大弱り。高額の出演ギャラを期待していた連中のもくろみはパー。テレビを取り巻く環境はさらにシビアになりつつある。

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2008年12月17日 (水)

産科未収金問題は解消するのか?

いきなりタイトルと縁遠い話で恐縮ですが、思わず紹介したくなったのがこの記事です。

安心のお産、今昔探る /奈良(2008年12月14日朝日新聞)

あまりにアレな内容なのでリンク張るだけにとどめておきますが、こうした人々は一種のカルトなんだと言っていたとある先生の話を思い出しましたね。
この超ベテラン産婆さんに尋ねてみればいいんですよ、その60年という長年の経験を通じて死産だったのは何人で母体が亡くなったのは何人くらいでしたかって。
ちなみにちょうど60年前と言いますと新生児死亡率が戦後最高を記録したという時期で、周産期死亡率も今とは桁違いに高かった時代ですが、まあ人間何に幸せを感じどんなことで安心を得るかは人それぞれということなんでしょうね。

それはともかくとして本題に戻りますが、相変わらず分娩費用未払いは増加傾向にあるようです。
払わなくてもきちんと請求しない病院側にも問題があるとはいえ、無保険妊婦が増えてきているのは時代の反映なのでしょうか。

出産費未払い7400万円 県内昨年度公的病院に集中 /栃木(2008年12月11日  読売新聞)

 県内の医療機関で出産したのに、入院費や出産費用を支払わなかった例が昨年度は260件あり、未払い金の総額は約7400万円に上ることが、日本産婦人科医会県支部(野口忠男支部長)の初めての実態調査でわかった。500万円を超えたのは5病院で、1000万円を超えた病院もあり、地域の中核病院にとっては、毎年度未払いが積み重なって経営を圧迫しかねない深刻な問題にもなっている。

 調査によると、昨年度に未払いがあったのは、県内で分娩(ぶんべん)を扱う49医療機関の半数を超える27施設(病院11、診療所16)。全分娩数1万8566件に占める未払い件数の割合は1・4%だった。

 未収額は1施設あたり151万円で、都道府県別では山梨県に次いで多かった。1施設で最高は2000万円。

 500万円超の5病院は、県央、県南の中核病院。「総合周産期母子医療センター」の独協医大、自治医大付属の両病院を含む3病院は、1000万円を超えた。「飛び込み出産」などの救急搬送も受け入れている公的な病院に未払いが集中する結果となっている。

 12月市議会で34件、約760万円の未払いが明らかになった小山市民病院。妊婦の8人に1人が出産費用を払わなかった計算で、うち半数超は、外国人だった。経済的に苦しい妊婦の負担軽減のため、出産育児一時金を、病院が代理で受け取れるよう事前の申請を勧めるなどしているが、「無保険の妊婦も少なくない。他の医療機関に断られた人でも(公立病院のため)最終的には受け入れざるを得ない」という。

 ある産科診療所では、出産した母親から、退院前日になって「お金がない」と告げられた。迎えに来た夫に「少しずつでもいいから」と分割払いを勧めたところ、夫は「ないものは払えない」と開き直ったという。家庭訪問などを行って回収に努めており、院長は「調査結果は氷山の一角。医師不足の中、医療そのもの以外に労力を費やすのは、やるせない思いでいっぱい」と嘆く。同医会県支部は「地域医療を守るためにも、確実に出産費用が医療機関に入るような対策を行政に求めたい」と訴えている。

以前にも書きましたが、未収金問題に頭を悩ます医療機関においてもようやく回収業者に委託するなど対策に乗り出す動きが出ています。
特に未収金問題が重症化しやすいのは公立病院ですが、本来病院が預かったお金というものは税金同様の公金と考えるべきものであって、ろくに回収もしないまま放置するなどと言語道断の公務怠慢と言うべきではないでしょうか。
まして未収金問題によって病院財政がさらに悪化し、最終的には善意の患者層でもある一般市民が悪影響を被るともなれば決して放置が許されるような問題ではないと思いますね。

ところで先頃厚労省が出産一時金の増額方針を明らかにしましたが、どこの保険者も財政難の折にどうしたものかと疑問の声なしとしないようです。

出産一時金、42万円に 来年10月から厚労省方針(2008年12月12日朝日新聞)

 出産時に公的医療保険から支払われる出産育児一時金の増額を検討している厚生労働省は12日、4万円増の42万円に引き上げる方針を固めた。緊急的な少子化対策と位置付けて来年10月から11年3月末までの暫定措置とし、11年4月以降については出産費用の保険適用なども検討する。

 年間の出生数は約110万人で、4万円増に必要な年間予算は約450億円。厚労省は、国費と保険料で半分ずつ負担する方向で調整している。ただ、国民健康保険を運営する市町村や、健康保険組合などの保険者側は財政難などを理由に反対しており、増額実現には不透明さも残っている。

 現在35万円の出産一時金は、出産時の医療事故で重い脳性まひになった子への補償制度の来年1月導入に伴い、補償制度の保険料分3万円が上乗せされ、38万円になる。厚労省は来年10月からはさらに4万円増やす予定。

財政難や少子化対策云々といった部分はまた別稿に譲ることとして、この出産一時金増額が未収金問題の解決につながる可能性はあるものでしょうか?
ひと頃問題になったような分娩費用未払い、出産一時金も持ち逃げといった場合にはそれなりの意味はあるでしょうが、こちらは近く一時金が病院に直接支払われるように制度変更される予定ですので今後大きな問題となることはなさそうです。
それでは何が問題かと言えば、そもそも出産一時金とは妊婦の加入する医療保険から支払われるものですから、先の栃木の例のように無保険者が多くなってくる場合には全く意味がないわけですね。

根本的な解決方法は日本国内で出産するのに関わる費用は保険加入の有無を問わず公的に支払いが行われるという制度の導入でしょうが、折からの財政難ですから国であれ自治体であれおいそれとこんな事を言い出すとは考えがたいところではあります。
しかし経済危機によって今後ますます無保険受診者が増加すると考えられる中で、出産に限らず未収金問題は今後増加する一方であることが予想されるわけですから、「不払いを理由に直ちに診療を拒むことが出来ない」という応召義務に関する厚労省の解釈を変更(あるいは応召義務自体を撤廃?)するでもしないのなら未払い分は公的に負担いただくのが筋かなとも思います。
実際のところこうしたウルトラCがあり得ない話かと言えばそうでもなくて、近ごろ問題となっている親の無保険化に伴う小児医療に関しては一足先に救済策がきちんと成立しているのですね。

無保険救済法案が衆院で可決 中学生以下に短期保険証交付(2008年12月11日47NEWS)

 親などが国民健康保険の保険料(税)を滞納して「無保険」状態になっている子どもを救済する国民健康保険法改正案が11日午後、衆院本会議で全会一致で可決された。法案は来週中に参院本会議で可決され、成立する見通し。

 親などが保険料を1年以上滞納すると保険証を返還させられるが、改正案は中学生以下の子どもには有効期間が6カ月の短期保険証を一律に交付する。

 民主、社民、国民新の野党3党が対象年齢を18歳未満とした改正案を国会に提出し、自民党と協議して年齢を中学生以下に引き下げることで合意。修正案が10日の衆院厚生労働委員会で全会一致で可決された。

 厚労省の調査では、無保険の中学生以下の子どもは全国で約3万3000人。保険証を返還すると医療機関でいったん医療費全額を支払わなければならず、経済的に苦しい家庭の子どもが受診を控える恐れがある。

少子化対策だ、子供の権利保護だと小児科において出来ることであれば、その前段階であるお産の場においても同じロジックが成立しないはずがない(産まない限り子供は増えないのは当然です)。
そんなことを言い出せば全ての無保険受診者も公費負担されてもいいかと言う話になり、そうなるとその財源はと考えていくと…遠くない時代に現在の国民皆保険制度というもの自体が大きな変革を迫られることになりそうな気がしますね。
そして後に待っているのはマスコミの皆さんの求めてやまないアメリカ型医療ということに、果たしてなるのでしょうか?(苦笑)

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2008年12月16日 (火)

非配偶者間体外受精が「日本生殖医学会から」認められた

ちょいと前振り代わりの話ですが、例の阪南市立病院の件に絡めて阪南市議会のみもと栄次氏のブログを見学させていただきました。
外野としては中の人もそれなりに大変なんでしょうねと言うしかありませんね。

2008年12月 5日 (金) 市立病院が大変な局面を迎えることになってきました

2008年12月13日 (土) 昨日、市立病院関連特別委員会がありました

まあ当事者のどの方々もそれぞれの考えに基づいて精一杯の活動をしてらっしゃるんだとは思いますが、現実問題としてこういう状況になってしまうともうキレイな形での収拾なんて無理でしょうよ。
ところでみもとセンセ、当方のような怪しいサイトの管理人が申し上げるのも僭越ではございますが、一応の公人の方が実名を出してブログを開いているのであれば、スポンサーのリンク等にももう少し気をつかわれた方がよろしいのではないでしょうか?(苦笑)

ここらで話は変わって本日のメインディッシュですが、不妊治療に関してちょっとばかり興味深いニュースがありましたので紹介しておきます。

夫婦以外の体外受精を容認 生殖医学会、来年3月めど(2008年12月13日47ニュース)

 不妊治療実施施設の医師らでつくる日本生殖医学会は13日までに、夫婦間以外の第三者から提供された精子、卵子を使った体外受精による不妊治療を容認する方針を固めた。家族や知人からの提供も認める。来年3月をめどに実施のための指針をまとめる計画だ。

 夫婦間以外の体外受精をめぐっては、厚生労働省の部会が2003年、匿名の第三者からの提供に限って認めるとの報告書をまとめたが、法制化の動きは止まったまま。ほとんどの産婦人科医が加盟する日本産科婦人科学会は「現時点では実施するべきでない」との立場を取っている。

 一方で、国内でも一部の医師が夫婦以外での治療実施や出産例を公表。海外に渡り精子や卵子の提供を受ける夫婦も相当数いるとされる。早急な対応が求められる中で現場レベルの動きが進んだ形だ。

 生殖医学会によると、治療の対象は自分の精子や卵子を使って子どもを得ることができない夫婦。提供者には制限は設けない。提供は無償だが、交通費などの実費は支給する。生まれた子が出自を知る権利を認め、一定の年齢に達して本人が希望すれば、提供者の名前を告知するなどとしている。

 学会は来年2月中に倫理委員会で指針案をつくり、3月の理事会に諮る方針。

不妊治療の手段として行われている体外受精に関しては、本邦でも2006年の時点で年間9万4千件が施行され、通算で生まれた子供の数も10万人を突破するなどずいぶんとメジャーな方法論になってきています。
長野で不妊クリニックを開いている根津八紘氏などは自らも先進的な不妊医療を実施する一方で、着床前診断に関する産科学会の規定無効を訴える(二審まで敗訴確定済み)などなにかとメディアを賑わせていることは周知の通りですが、一方では産科学会が中心になってこの辺りの大方針を政府と詰めてきたという長年の歴史があります。
こうした経緯も踏まえた議論の流れの中で、非配偶者間の体外受精に関しては平成15年の時点で「人工受精に用いる精子・卵子の提供者は匿名の第三者とすること」という倫理審議会答申書が示されたまま、現在に至るまで目立った法制化も行われず表だって実施される機会もないまま時ばかりが過ぎている現状があります。
今回の報道の何が面白いかと言えば、こうした厚労省-産科学会のラインで停滞している流れに反して、日本生殖医学会(旧・日本不妊学会)という別組織がこうした見解を示したということなんですね。

産科学会がこうした非配偶者体外受精に及び腰であるのは、一つには出生児の地位・権利などといった法的側面の未整備もあると同時に、もう一つは産科婦人科学会という名が示すとおり同会が産科、婦人科の全領域を包括する非常に大きな組織であることも関係しているように思いますね。
ほとんどお産は扱わない婦人科専門医から日々の奴隷労働をこなす末端産科医まで含まれている会員達のほとんどにおいて、不妊治療という行為の占める意味というのはさほど大きなものではないんだろうなとは容易に想像できるところです。
だいたいが不妊治療というものは高額な費用を要する保険外医療であって、こうした行為の多くが大病院の産科外来よりも各地のいわゆる不妊クリニックで行われているわけですが、昨今の産科崩壊という流れの中で不妊医療を行う医師たちに対して「過酷なお産の現場からドロップアウトした産科医が楽して稼いでいる」と見なす風潮が強まっていることは否定できません。
不妊治療を行うような妊婦さんというのは高齢など元よりハイリスクな症例が多いわけですから、いざ産むという段階になれば高次産科医療施設にお任せという場合が少なくないわけですが、当然ながらこうした施設で過酷な勤務をこなす末端産科医たちにとっては、やっかいな症例を押し付けてくる存在である不妊クリニックというものが面白かろうはずがありません。

いずれにしても法的側面が全く未整備である以上、なにかしらの権威づけのもと手探りで行っていくしかないというのは確かでしょうが、世の中には「船頭多くして船山に上る」という言葉もあります。
前述の根津医師は非配偶者間体外受精の実施を理由に産科学会から除名処分を受けましたが、産科学会以外からの権威づけに基づいて行われた行為に対して産科学会がクチを出すことは出来ない理屈ではありますよね(容認するかどうかは別として)。
複数の権威がそれぞれの方向を目指してやりたいことをやっていくと言う状況は、ものすごく好意的に解釈するならば今まで以上に幅広い選択枝を提供し得るチャンスと言う言い方も出来るのかも知れませんが、どこかの段階で大きな問題が起こってくるのが目に見えているようにも思います。

別に産科医に限ったことではないですが、医療従事者というのは従来自分たちの行為が法的にどれほど危ない橋を渡っているのかに関してあまりに無自覚だったというのは事実でしょう。
報道を見る限りでもいろいろと危惧されるところは多々思いつくのですが、果たして生殖医学会はそうした司法リスクの面も考慮しながら話を進めているのかどうか危惧しないでもありません。
いずれ何年か何十年か先のことかも知れませんが、どこかで誰かが告発されただのという話になるかも知れませんね。

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2008年12月15日 (月)

マスコミ崩壊?! ~ 危ないのは毎日新聞だけじゃない

毎日新聞が相変わらず飛ばしていますが、ようやく世間でも「この会社ヤバイんじゃないの?」という認識が出てきたようです。

平成13年に東京女子医大で起きた心臓手術を巡る死亡事例に絡んで、根拠もないまま毎日新聞の連載記事で「医師の機械操作ミスが原因」と決めつけられた医師の損害賠償請求が東京地裁で認められました。
先日はリウマチ治療薬に絡んで、日本リウマチ学会が製薬会社から不正に金を受け取ったとする記事を毎日新聞と週刊新潮が掲載したことに関して、同学会がHPで抗議文を掲載するとともに法的対応を検討していく旨の発表がありました。
やや旧聞に属するところでは昨年にも禁煙タクシー内で喫煙をごり押しするというDQN行為を取材と称して行った上に反省のかけらも見られない言い訳まで書き連ねるという醜態をさらした挙げ句、日本禁煙学会からの抗議を受けるという事件もありました。

さすがに毎日新聞に関してはこれだけ醜行が相次ぎますとスポンサー離れも顕著となっているようで、もともと経営危機が叫ばれた同社であるだけに話題は既に潰れるか潰れないかではなく、いつ潰れるかに移行しつつある気配すらありますが、実は厳しいのは毎日新聞だけではありません。
このところ深刻さを増しつつある世界的な不景気の余波は、生涯賃金上位に軒並み名を連ねるほど我が世の春を謳歌してきたマスコミ業界でさえその屋台骨を揺るがしつつあるのですね。

朝日新聞100億円赤字に転落 広告大幅落ち込み、部数も減少(2008年11月21日J-CASTニュース)

   朝日新聞社が、半期ベース(連結)で100億円以上の赤字に転落したことがわかった。単体ベースでみても売り上げが約142億円減少しており、販売・広告収入の落ち込みが裏付けられた形だ。新聞業界では「比較的勝ち組」とも言われる朝日新聞でさえ、苦境に立たされていることが浮き彫りになった。ほかの大手の新聞社の決算も悪化するのは確実だ。

広告・販売とも、収入は「右肩下がり」

   朝日新聞社(大阪市)は2008年11月21日、子会社のテレビ朝日(東京都港区)と朝日放送(大阪市)を通じて08年9月中間期(08年4 月~9月)の連結決算を発表した。単体ベースの決算もあわせて発表されており、それによると、前年同期には1857億6900万円あった売上高が、 7.7%減の1715億3200万円にまで減少。営業利益は前年同期が42億1800万円の黒字だったものが32億3000万円の赤字に転落している。純利益は同92.6%減の2億5300万円だった。

新聞各社の経営状態をめぐっては、広告・販売とも、収入は「右肩下がり」の状況が続いており、先行きが見えない情勢だ。今回の朝日の決算でも、売上高は約142億円も落ち込んでおり、そのかなりの分が広告収入の落ち込みによるものとみられ、関係者からは「前年比、通年ベースで広告だけで 200億円近くは落ち込むのでは」との声も根強い。さらに、このところ部数も徐々に落ち込んでおり、ダブルパンチで売り上げが減る形だ。

連結ベースでも大幅赤字

   朝日新聞社は、不動産を大量に所有し、財務体質がいいことから「新聞業界の中では比較的勝ち組」と言われてきたが、11月20日発売の会員制経済誌「ザ・ファクタ」08年12月号が

    「2009年3月期、創業130周年にして初の営業赤字転落という憂き目にあう」

などと大々的に報じており、通年ベースでも赤字転落が確実な情勢だ。

メディアの革命18 "数字は正直"、中間決算で見えてきた「民放」が直面する問題の数々(2008年12月1日マイコミジャーナル)

かねて予想はされてきたものの、現実の数字となって表れると、それなりの衝撃があった。

今月13日、在京テレビ、キー局各社は中間連結決算を発表した。それによると、各社とも景気後退の影響で、売り上げの核である広告収入が減少、日本テレビ放送網(NTV)とテレビ東京は赤字転落した。赤字額は、それぞれ12億円と3億円。NTVは半期ベースで37年ぶり、テレビ東京は中間決算公表を始めて以来の赤字決算である。

売り上げの核である広告収入が減少、日テレとテレ東赤字転落

両社とも自動車、食品業界からの広告収入が大幅に落ち込んだ。東京の民放キー局が赤字に転落する事態は、世界的な経済不況による影響もあるが、経営体質の構造問題を露呈した結果ともいえる。

10月に持ち株会社に移行したフジ・メディア・ホールディングスは、前年同期に特別利益を計上した反動で大幅な減収、減益だが最終利益は確保した。ただ、それも番組制作費を約60億円圧縮したことや、通信販売子会社の業績に支えられた結果である。

売上高は第2位となるも、視聴率振るわなかったTBS

一方、TBSは、輸入品販売会社のソニープラザの買収や、赤坂複合商業施設の開業など、不動産関連の売り上げが貢献、売上高は前年比12.3%増の1,784億900万円、日本テレビを抜き第2位に躍り出た。

しかし、その中身はあまりほめられたものではない。広告収入はテレビが前年比6.9%、ラジオが7.7%のダウンで、経常利益は同9%減の113億3,400万円だった。視聴率競争でもゴールデンタイムで6社(NHKを含む)中4位、プライムタイム5位と振るわなかった。

最も注目を集めたテレビ朝日の中間決算

ある意味で最も注目を集めたのがテレビ朝日の中間決算だった。本連載第14回でも述べたように、テレビ朝日は、親会社の朝日新聞社との間で今年6月、新たな株の持ち合い関係を結んだ。
つまり朝日新聞社の筆頭株主である村山美知子社主の持ち株38万株(11.88%)をテレビ朝日が約239億円で取得した。

一方で、2社間の株持ち合いの場合、持ち株比率で25%以上の出資を受ける側の会社は、相手先の株式を保有しても議決権を行使できない。
そこで「両者の関係を支配関係からパートナーとするため」(秋山耿太郎・朝日新聞社長)、2008年6月6日現在で朝日新聞が35.92%持っていたテレビ朝日株を、次期株主総会までに25%以下にすることにした。

「あの朝日が! 」と驚きで迎えられた朝日新聞初の赤字中間決算

今回、同時に発表された朝日新聞社の中間決算では、テレビ朝日の持ち株比率は26.82%となっているから、この間にほぼ10%を放出し、関係財団に寄付、一部はテレビ朝日が自社株買いの形で購入したとみられる。

その朝日新聞社の中間決算も業界からは、「あの朝日が! 」と驚きの目をもって迎えられた。売上高は1,715億3200万円で前年比マイナス7.7%、営業損益が5億円余りの赤字(前年同期は74億円の黒字)、最終(当期)損益も、103億円の赤字(同47億円の黒字)だった。

同社が中間決算公表を始めて以来、初の赤字転落である。その原因は、広告収入の落ち込み、販売部数の減少もさることながら、テレビ朝日株の売却損44億円の計上が効いている。

「斜陽産業を救う余裕はないはず」株主はテレ朝に厳しい目

テレビ朝日株の株価推移を見てみると、年初は17万円台の上をつけていた。それが、朝日新聞社との株交換を発表した直後から下がり始め、10月には一時12万円割れ、中間決算発表後は12万円台を行ったり来たりだ。つまり、年初に比べで30%近く価値を下げている。

無論、株価の低迷は、テレビ朝日だけの現象ではない。しかし、朝日との株交換発表直後からの下げは、「マスメディアの媒体力が落ちている。朝日新聞とテレビ朝日の提携でメディアの衰退を避けたい」(6月6日、君和田正夫・テレビ朝日社長)という願望に対する、市場の冷ややかな受け止め方を反映している。

「テレビ朝日の現状と、利益から考えれば、270億円も使って"斜陽産業、朝日新聞"を救済する余裕は、全くなかったはずだ」(株主)という声には合理性がある。

先日は米大手新聞社が経営破綻したことがニュースに取り上げられましたが、日本のメディアが安泰かと言えば全くそんなことはなく、ただ単に「大手が潰れたことはないんだから何とかなるだろう」という根拠のない盲信に浸っているだけのようにも感じられます。
新聞が発行部数を落としているのは単に有料だからと言うのみならず読者にとって媒体としての価値が薄れているからだと言うデータがありますが、最近は地上波テレビメディアもどんどん活力が低下しているようですね。
最近は何かあればマスメディア自体を叩くよりもスポンサーに抗議した方が有効だということが知れ渡っていますから、不景気を一つの契機として俗悪な番組からは撤退していく企業も多いのではないでしょうか?
淘汰自体は良いことだと思いますが、果たして生き残るに足るだけのものを発信しているメディアがどれだけあるかと考えれば、時代はまさにマスコミ斜陽の時代と言えそうに思えます。

ネットを敵視することでしか状況に対応できない毎日新聞などは論外としても、大手メディアも続々とネット時代への移行を計っているようです。
ニュースや無料の娯楽がネットで幾らでも手に入る現在、これからは本当に自分で興味があるジャンルにだけお金を払うというのが広まるんじゃないかと思いますが、一方で近い将来やってくる地上波デジタルの時代に民放各局がどう対応していくかが注目されるところですね。
情報発信量が増えるわけですから質的向上を図れるのなら喜ばしいのですが、今までの安かろう悪かろうの俗悪路線を単に量的に拡大するだけということにでもなれば本当にメディアとして終わってしまうかも知れないという危機感はあるのでしょうか?
昨今では何かとネットをはじめとする批判に晒されがちなマスコミ業界ですが、経営危機という事態に直面して何を守り何を切り捨てていくのか、そこに彼らの目指すところが見えてくるんじゃないかという気がしています。

面白いから妙に心を入れ替えたりしないで、最後の最後までトンでもないものばかり残してくれると楽しいんですけどね(苦笑)。

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2008年12月14日 (日)

今日のぐり「バーミヤン総社店」

思うところあって、久しぶりに「二百三高地」と「連合艦隊」とを立て続けに観てしまいました。
しかし霊界の宣伝マン云々は閉口ものでしたが、こういう役になると丹波哲郎はハマってますね。
二つの映画の開戦前シーンを見比べるだけでも両時代間の日本の変化というものがありありと浮き彫りにされているようで興味深かったですね。

今日のぐり「バーミヤン総社店」
中華系のファミレスというのか、ファミレス系の中華と言うのか判りませんが、最近やたらとあちこちで見かけるチェーン店ですね。
ちなみに最近の多くのファミレスの例にならってここもメニューにカロリー表示がされているのですが、これが驚きましたよホント。
今回選んだ中華丼エビチリランチが比較的低カロリーとはいえ701カロリー、ものによっては一食だけで1500kcalオーバーのランチもあるんですから!
いやあ、こういう食事を積み重ねていると色々と不幸なことになりはしないかと心配になってきますね…

ところで別にこの店に限ったことではないのですが、この手の店の多くがそうであるようにメニューの写真と実物とがあからさまに違いすぎるのはちょっとどうかと思いますね。
エビやホタテは仕入れる段階でおよそのサイズは決まってくるのですから、明らかに別物と判るような品を使っていると言うのはどういうことなのでしょう。
このあたりは何店か同系列を回ってみると店毎の個体差なのか、あるいは系列全体でやっていることなのか判るのでしょうが(とてもそんな気にはなれませんけどね)。

ちなみに味ですが、思ったより悪くないです。
中華丼は具材のショボさは置くとしてもスープが貧弱で調味料だけがやたら尖った味、これがまだ丼だから食えますが単品でこの味は想像したくないというシロモノ。
エビチリは良くある何が楽しくてこんな料理にエビを浪費するんだか理解し難い味(すみません、人生で食う価値があったエビチリ体験は赤坂四川飯店だけな人間です)。
こういう味ですから味覚に変化を付ける意味でも栄養学的な意味でもスープバーよりサラダバーが欲しいんですが、この料理にあわせて単なる化調入り塩水を腹一杯飲まされてもどうよと言うところ。
まあ要するに、とりあえず腹が膨れればそれでいいと考えて入る分には十分に期待に応えてくれる味です(こういう店の存在価値自体は否定する気はありませんしね)。

それでも一昔前の食えばやたらと喉が渇く中華よりはずっとマシで、普通にダシがしょぼくて味がいまいちで調理が雑な中華料理屋のレベルといったところでしょうか。
マズいのはマズいとしても、ひと頃のこの手の店でよくあったように、とにかく化調でうまさを誤魔化さなくなってきたのは良い傾向だと思いますよ。
最近こういう脱化調で味はイマイチという店が増えているんですが、スープ(湯)の出来こそ素人の家庭料理とプロの料理を分ける一番の境目ですから、早く改善していってくれたらいいのにと思いますね。

値段や味を考えるとまさにファミレス的ポジションな店なだけあって、水やランチのスープなどもほとんどセルフでサービスを云々するほどではないんですが、一点気になったことがありました。
ここの麻婆は甘い順に普通と辛口、四川辛口の三つから選ぶんですが、中華料理店なんて来たことがなさそうな年配のグループがたまたま近くに入っていて、麻婆を頼んでいたんですね。

「辛さは三種類ございますが、どのようにいたしますか?」
「ん~?よくわからんけど中くらいのにしといてくれる?」
「承知いたしました。それでは辛口ですね」

おいおいおい!明らかにこういうの食い慣れてない年配客が中くらいと言ってんだから、「甘くも辛くもない中くらいの味=普通」って意味で言ってんだろJK!?
それを選択枝の真ん中だからって辛口なんてしちゃったら、かわいそうにお爺ちゃんそんなもの食べられないよ。
こういうのを見せられると味以前にちょっとどうなのよと思ってしまいますね。

まあ深夜にどうしても中華が食べたい、しかも自分では冷凍食品を解凍するのも嫌だというのであれば選択枝に入る可能性はあるとしても、自分としては他の店が開いている時間帯に来る店ではなさそうですかね。

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2008年12月13日 (土)

湯沢町重粒子線治療施設計画 迷走を続けるその後

松浦お前は神か!!(爆)
しかし終了間際の仙台は何ともまあ…(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

ま、それはともかく…以前にもかな~り否定的に書きましたところの湯沢町重粒子線治療施設の件ですが、誰一人その実態を知らされないままに頓挫しそうな勢いです(湯沢の一町民さん、情報ありがとうございます)。

がん治療施設誘致 財団の年内設立困難(2008年12月13日朝日新聞)

 湯沢町が目指している重粒子線がん治療施設の誘致計画をめぐり、施設の建設や運営主体となる財団法人の年内設立が難しい見通しであることがわかった。計画に関する質問が相次いだ
12日の町議会一般質問で、上村清隆町長は「計画に進展はない」と答弁し、撤退の可能性も示唆した。

 財団法人設立準備室の丸茂正光室長は、9月に行われた住民説明会や記者会見の中で、「早ければ10月中に、遅くとも年内には財団設立を済ませたい」と述べていた。

 一般質問では6人の議員のうち3人がこの問題を取り上げた。各議員からは「あまりにも楽観的」「計画が何も明示されていない。ゆゆしき事態だ」と厳しい声が飛んだ。

 上村町長は答弁で、「町所有の遊休地を有効活用し、町の産業構造改革につながればとの思いだ」と誘致の必要性を強調。その一方で「(手を)引くかということも考えていかなきゃならん」と述べ、計画からの撤退についても初めて言及した。

 また、町が実施した建設予定地の土壌汚染処理調査に関し、町が特命随意契約で委託した茨城県の会社の取締役に、財団設立の中心メンバーである医療法人理事が名を連ねていることも明らかになった。入札を経ずに実績に乏しい会社と契約を交わしたことについては、「緊急性があったから」(上村町長)との説明に終始した。

 この誘致計画は、丸茂氏らが新たな財団法人を新設した上で、町有地を安価で買い取り、最先端のがん治療施設を建設するというもの。だが、この土地は土壌汚染が確認されており、町が8~14億円に上るとされる汚染処理費用を負担する

この計画のずさんさ、町長の独走ぶりには今さらどうこう言っても仕方がないとして、報道を額面通りに受け取るなら計画からは撤退の方向ということでめでたしめでたしとも思えるわけですが、何しろ天下の朝日の報道ですからどこまで信用してよいものやら(苦笑)。
実のところこの手の計画が頓挫しかけているのは湯沢町だけの話でもなくて、このところの世界的不景気のあおりを受けて他の同種計画も頓挫しそうな勢いなのですね。
となると当たり前のことですが、仮に今後こうした施設の建設が再浮上するとしても優先されるのは需要の大きい都市部での計画であって、わざわざ湯沢町の綱渡りな話に乗ってくれる出資者はそれほど期待できないだろうという予想が立つわけです。

粒子線治療の最先端施設、資金難で着工できず:愛知県(2008年12月医療・医学ニュース)

がんを痛みなく治す「粒子線治療」を目指し、民間事業者として全国で初めて愛知県大府市に建設を計画している最先端医療施設の資金集めが難航、着工のめどが立っていないことが分かった。

がん細胞に直接放射線を照射し手術せずに治す重粒子線がん治療施設で、名古屋大名誉教授らが役員を務める「名古屋先進量子医療研究所(アイナック)」が大府市の「あいち健康の森」の西側2万平方メートルに、治療病棟や先進画像診断棟などを建設する計画。10年の完成を目指してきた。

民間では例のない施設のうえ、健康保険が適用されないため治療費が1人約300万円と高額。名古屋市が別の粒子線治療施設を計画しているため、採算性を危惧する金融機関や企業が貸し付けや出資に慎重になっている背景もある。(中日新聞)

重粒子線治療施設ということに関しては、採算性というものを考えないわけにはいきません。
治療の適応範囲自体が(今後拡大されていくとしても)かなり限られている上に、少なくとも現段階では保険診療にも認められていないということで患者にとっては大きな経済的負担を求める治療です。
重粒子線よりずっと需要が大きいだろうガンマナイフ(脳腫瘍などをねらい打ちするのに用いる治療法)ですら全国49施設、各県1施設というのが採算の限界と言われていますし、ひと頃マスコミで万能のように取り上げられて大人気だったPETなどもそろそろ経営的には厳しいかとささやかれている時代なのですからね。
要するに元よりさほど需要が見込めないものであって、恐らく全国で数カ所程度の施設があれば十分ではないかと言われている中で、湯沢町への立地が(最大限大きく見積もって)北陸地方のセンターとなり得るほどの需要があるものかどうか。
そして何より、湯沢町にこんな施設が出来たとしてキャリアを放り出してまで働きたいと思う放射線科医をはじめとするスタッフがどれだけいるものかを考えなければいけないでしょうね。

もちろんこの手の治療はある程度全身状態(ADL)のいい患者が対象になる場合が多いはずですが、患者の立場として考えた場合にはどうでしょうか?
これが泊まり込みの健診などと言う話であれば、空気の良い田舎でのんびりバカンスがてらと言う需要もある程度はあるかも知れません。
しかし治療中に何か合併症なりがあった時に、常時そろっている各科の医師が万全の治療体勢を取ることが出来る都市部の治療施設と、何かあったら大慌てで遠い基幹施設に送らなければならないような(失礼ながら)田舎の治療施設と、あなたならどちらにかかりたいと思うでしょうか?
重粒子線治療の対象となるのは、今まさに生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされている患者であるという当たり前の事実を忘れてはならないのは当然ですよね。

一つ気になるのは、こうした施設を建設することが本当に湯沢町のイメージアップにつながるのかどうかと言うことです。
新潟県中越沖地震の際にも「原発から放射線が漏れるのでは?!」という風評被害によって同県下の宿泊予約はキャンセルが相次いだと言います。
医療業界など一部の人間の感覚ですと「重粒子線治療施設?話のネタに見学がてら行ってみるか」ということもあり得るかと思いますが、温泉やスキーを目当てに湯沢町に通ってくるようなごく普通の観光客に対してこの施設がどのようなメッセージを発するものか、少しばかりの想像力は必要かも知れませんね。
施設は作れど患者は集まらず巨額赤字垂れ流し、おまけに観光客の足まで遠のいたりするようなことになれば…責任を取るにしても町長の首一つでどうこう出来るような問題とも到底思えないのですが。

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2008年12月12日 (金)

専門職の無知は犯罪的行為? ~ 公的施設内に巣くう病魔

交通違反を取り締まるお巡りさんが道路交通法を知らなかったとすれば、こんな物騒な話はないと思いませんか?

あなたが高速道路を普通に制限速度を守って100kmで走っていたとする、そこへどこからか覆面パトカーらしき車が忍び寄ってきて、サイレンを鳴らしながら停車を命じられた。
おかしいな?シートベルトも締めてるし制限速度も超えてないのにと不審に思いながら下車してみると、「は~い法定速度60kmだから40kmのオーバーね!今日はもう車運転しちゃダメですよ~」なんて赤切符を切られたとしたらどう思うでしょう?
ありえね~、まさかそれって偽警官?と思うかも知れませんが、医療機関の中でも最高峰とも言うべき天下の大学病院であり得ないことが起きていたりするから世の中怖いなと思うわけです。

宮崎大病院:「眼底検査は資格外」技師が不安訴え 病院側は「問題ない」 /宮崎(2008年12月10日毎日新聞)

 宮崎大医学部付属病院(清武町)の眼科で、眼底検査を担当する40代の男性技師が「資格がないのに患者に接するのは不安だ」と自分の仕事は医師法違反(無資格医業)に当たるのではないか、と訴え出ていたことが同大の話で9日分かった。同大医学部総務課は「技師の仕事は眼底を撮影する検査機械の操作なので医療行為には当たらない」といい、技師側と意見が相違している。

 同課によると、技師は医療用の写真撮影が担当で04年4月に眼科に配属。当初、週2回、検査機を操作し、外来患者の眼球に光を当てて撮影する作業をしていた。06年に新型検査機を導入した以降は専従になった。

 技師は今年11月、撮影の際に患者のまぶたを広げたりして皮膚を触る行為が「医療行為になるのでは」と総務課に相談。同課は患者に目薬を差したり、診断する行為は医師や看護師が務めており、技師が患者に触れることは「撮影作業の一つで問題ない」と回答したという。

臨床検査技師というのは試験を課せられた立派な国家資格なのですが、その業務は法令によって指定される範囲で実に多岐にわたっておりまして、散瞳薬を投与しない眼底写真検査はもとより、血液や尿などを機械にかける検体検査から心電図、脳波などの生理学的検査、更には病理解剖の助手や医師の指示のもとに行う採血をまでも業務範囲となっています。
つまり、いやしくも臨床検査技師の資格をもっているのであれば眼底検査を行うのに何の問題もないのですが、こういう基本的な関係法令すらも知らないと言うことになると果たしてこの御仁がホンモノの技師資格を持っているのかどうかの方が疑問とされるところです。
昨今では色々と資格偽証なんてトンでもないことがまかり通っているようですから、これを機会に大学病院当局は今一度職員の資格確認を徹底する必要があるように思いますね。
何より受診する患者さんの立場からしても基礎的知識すら持っていないスタッフからどんな無茶苦茶な行為をされているか不安に感じるところ大だと思いますし、有資格者であれば当然に承知しておいてしかるべき法令すら知らない人材を雇用していることは公費の壮大な無駄使いであるとの非難を受けてもやむなきところではないでしょうか。

宮崎県と言えば早くも2002年の段階において県立延岡病院から麻酔科医5人が集団辞職するという事件が発生し、全国に先駆けて今日に続く医療崩壊という現象のはしりとなったことで俄に有名となった県ですが、さすがに色々とあると言うことなんでしょうかね。
ただし有名な知事さんの愛する同県の名誉のためにも申し添えておきますが、給料分の仕事もしなければ能力もない公務員根性丸出しなスタッフの問題は別に宮崎県に限った話ではありません。
全国どこでも公立病院と言えば巨額赤字を生み出す温床となって久しいのですが、その一因としてこうした過剰な不良在庫を抱え込んでいるという事情もあるのです。

地域医療の危機:揺れる県立病院再編案/2 高コスト体質 /岩手(2008年12月5日毎日新聞)

 ◇食いつぶす内部留保--半年で無床化「約束違う」

 「無床化は絶対に行わないこと」。県医療局の新経営計画案を受け、入院ベッドを廃止する無床診療所化の対象になった県立病院・地域診療センターがある地元6市町村の首長、議長らが3日、達増拓也知事らに提言書を渡し、計画案に強く反対した。
(略)
 こうした批判を覚悟の上、県医療局は非公開で新経営計画案を検討。来年度からの実施を急ぐ背景には、県立病院の厳しい財政事情がある。
(略)
 県立中央病院の望月泉副院長は「そもそも地域診療センターは、民間では考えられないほどコストを要している」と指摘する。改革プランは5病院の無床診療所化を掲げたが、地元住民らは「地域から入院ベッドが失われる」と反対運動を展開。それぞれ19病床を残し地域診療センターに移行することで妥協し、結局は中途半端な経営形態だけが残った。県医療局の細川孝夫次長は「前回(改革プラン策定時)は、地元の(ベッドを)残してくれという声を踏まえただけ」と話す。

 この結果、5センターだけで07年度は7億2200万円の赤字を計上した。最大の要因は人件費。紫波の場合、常勤医3人のほか、3交代で勤務する看護師が18人。19病床の紫波では入院患者数よりも多い状況だ。

 各地域診療センターの一般会計からの繰り入れを含む医業収益に対して人件費の割合は、▽紫波116・1%▽大迫115・8%▽花泉132・7%▽ 九戸146・0%--(07年度、08年度から診療所化の住田は除く)。県医療局の根子忠美・経営改革監は「一般に自治体病院の場合、6割程度に抑えるのが望ましい」と高コスト体質を認める。

 九戸村の岩部茂村長は「医師は不足しているのに看護師らスタッフはそろっている。患者が減る分、赤字になるのは見えていたはず。職員配置など柔軟に対応できなかったのか」と疑問を呈す。

まあ「6割程度に抑えるのが望ましい」というのもずいぶんと緩い話で、普通医療機関の健全経営には人件費率4割以下というのが目安とされているわけですから、公立病院は何故そうまで高コスト体質なのかと言うことを真摯に反省し改善していかなければならない。
そもそもそんな不要な人件費を使っていると言うことになれば本来自治体首長は地域住民に顔向けが出来ないはずなんですが、特に田舎の公立病院となるほど公共事業と同じで「地元への還元」という役割を担っていますから、医療費が潤沢であった時代には案外問題にならなかったんですね。
ところが今のような財政危機の折ですと当然に昔と同じ垂れ流しをやっていては困るわけなんですが、恐ろしいことに赤字にあえぐ自治体にとってはおいそれと辞めさせるわけにもいかない事情もあるのです。

現場から:米内沢総合病院 退職金負担が足かせに /秋田(2008年12月5日毎日新聞)

◇北秋田市と上小阿仁村、運営組合存続で対立
 北秋田市の公立米内沢総合病院(高田五郎院長)を運営する北秋田市上小阿仁村病院組合(管理者、岸部陞(すすむ)・北秋田市長)を存続させるか、解散するか。組合を構成する北秋田市と上小阿仁村の意見が真っ向から対立している。多額の赤字でこれ以上の財政支援は耐えられないが、解散に伴う経費を出す余裕もないという深刻な事態。医療機関の危機をどう軟着陸させるのか、両市村の12月議会から目を離せない状況だ。

 ◆再三の要請

 「組合を離脱したい」「組合を存続するという北秋田市側の考えには同意できない」--。上小阿仁村はこれまで、北秋田市に対して再三要請してきた。

 同病院はかつて17人の常勤医師がいたが、現在は6人。252床のうち稼働は125床と半分に満たない。今年度の病院の赤字見込み額は2億7100万円に上り、当初予定より3000万円増えた。小林宏晨村長は膨らむ負担金繰り出しが「村財政の限界を超えている」と訴えてきた。
(略)
 11月上旬にあった北秋田市議会の全員協議会では「組合は解散し、すっきりと市立化すべきだ」と容認論が出る一方、「地域の医療問題を考えれば解散はマイナス」と難色を示す声もあった。

 ところがここに来て、従来の論議とは別の課題が浮上してきた。

 ◆改善策裏目に

 病院組合は収支改善策として、病院職員の減少を柱とした合理化を進めてきた。その結果、07年4月以降に50人が退職。職員数は約3分の2になった。

 退職者には、すでに県市町村総合事務組合(秋田市)から9億4000万円の退職金が支払われた。同組合は24市町村と一部事務組合(消防団など)の計41団体で構成。退職金手当は各団体が積み立てた資金から出す仕組みとなっている。

今回の大量退職によって支払額は病院組合の積立金を大幅に上回り、事務組合は両市村に対し、もし病院組合を解散するなら不足分7億7900万円(北秋田市7億2400万円、村が5500万円)の「清算金」を払うよう求めた。

 ◆苦渋の選択

 自治体にとって、苦しい台所事情の中で多額の資金を一度に準備するのは困難。組合管理者である北秋田市の岸部市長は市議会全員協議会で「これ以上の財政負担はできない。(病院組合を)継続したい」と表明した。同市は組合解散の関連議案を9日からの12月定例会に提出せず組合を継続させる方針だ。

 これに対し早期解散を目指す上小阿仁村は、一時的な負担を覚悟のうえで16日からの村議会に関連議案を出す意向。双方の溝は容易には埋まりそうにない。

公立病院も改革をしようとすればしたで、これだけの問題があるわけなんです。
しかし続けるも地獄、やめるも地獄となれば、手を出すべきではなかったものに手を出してしまったことが最大の失敗だったということになるのでしょうか。
いやあ、何だか日々の生活においても教訓となりそうな結論ではありますかねえ(苦笑)。

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2008年12月11日 (木)

肥満は悪徳? ~ メタボリックシンドローム

このところ色々とネタがあふれる世相に一喜一笑と言うところですが、今日は近来で一番衝撃を受けたニュースというものを紹介します。

便座にお尻ズボッ! 20分間はまり続け…「1400万円支払え」(2008年12月8日産経ニュース)

 米国のスポーツバーのトイレで、便座が壊れて便器にはまり、お尻のけがが再発したとして、女性が便器の製造元とスポーツバーに対し計15万ドル(約1380万円)を求める訴えを起こした。AP通信が4日報じた。

 APによると、訴えたのはキャサリン・ヒューコさん。2006年11月19日、米東部ペンシルベニア州アレンタウン近郊のスポーツバー「スターターズパブ」を訪れた。同店の障害者用のトイレに入り、しゃがみ込んだ際、便座が破壊され、ポッチャンと便器に落下、不運にもお尻が便器から抜けない状態に。

 ヒューコさんは助けを求め叫んだが誰も現れず、約20分間はまり続け、苦しんだ末に自力で“脱出”。その際に臀部を負傷したとしている。便座が壊れた原因は不明という。

 訴状によると、ヒューコさんは以前、臀部を手術しており、今回の事件でけがが再発したと主張。同バーと、便器製造メーカーのケーラー社に対し計15万ドルを求めた。訴えられたバーとケーラー社は、ともに「現時点でコメントすることはできない」。

 一方、女性側の弁護士は「女性は普通の体重だ」と強調し、女性の重みで便座が壊れたわけではないと指摘。事故の原因は欠陥便座にあるとしている。

一見して「なんだ?どうせピザだったんじゃないの?」と思いつつ、普通の体重だって言っているので便器の欠陥なのか?と思い返しながら読み流しておりましたが、最後の一行で吹きましたよ。

 ちなみに米国立健康統計センターが04年に発表したデータによると、米国人成人女性の平均体重は75キロ。

ええと…ちなみに参考までにですが、アメリカ人女性の平均身長が162cmと言われています(日本人女性が158cm)。
これから肥満の指標となるBMI(Body-Mass-Index)の平均値を求めてみますと、なんと驚くなかれ28.6!25以上で肥満とされますから…ヤバイ!アメリカ人女性ヤバイよ!
アメリカの場合、以前から主要国の中では目立って肥満の度合いが高いとは言われているのですが、この場合標準的体型にとって貧弱すぎたトイレが産んだ悲劇と言うべきなのか、何と言うべきなのかですね。

日本でも最近急に政府が旗を振ってメタボ健診(特定健診)がどうのと大騒ぎしていますが、あれも実態はひどく怪しいものですよね。
そもそもこのメタボリックシンドロームなるもの、昔で言う成人病、その後改め生活習慣病と言うものがありましたが、一昔前まではあちこちちょっとずつ高めというのは「生活習慣に注意しながら経過観察」と言う扱いが多かったのでした。
ところがその後研究が進んでくると、各項目は急いで治療を要するほど飛び抜けて高い値でなくとも複数項目が重複して高値を呈するような人は相乗効果で動脈硬化が進んでいく、実はヤバイんだよということが判ってきたわけです。
日本でのメタボの診断基準とされているのは肥満学会などが中心になって作成されたものですが、試みに引用してみますとこんな感じになります。

    腹囲男性85cm、女性90cm以上が必須条件。
  かつ、

        血圧130/85mmHg以上。
        中性脂肪150mg/dL以上またはHDLc40mg/dL未満。
        血糖110mg/dL以上。

    の3項目のうち2項目以上を満たすこと。

見ていただければ判りますが、腹囲(内臓脂肪量)というものが極めて重視されている診断基準と言えます。
当然ながらこの基準は日本だけのものなのですが、国際的に用いられる基準と異なっていることから、同じ人に対して比較した場合の診断一致率も低かったり、データの国際比較が困難であるなど必ずしも諸手を挙げて歓迎されているわけでもありません。
特に突っ込みを受けているのが腹囲基準で、そもそも内臓脂肪の臨床的有用性が明確でないのに診断に必須の項目とされていることや、国際的な基準と異なって女性より男性に厳しい腹囲基準が設定されていることなど各界から様々な声があがっています。
日本肥満学会ではこうした反論の声に対して、CTが例外的に発達している日本では内臓脂肪量を他国より正確に評価することが可能であったことからこうした値を設定できたのだと自画自賛しており、基準は妥当であり当面変更する考えはないと強調していますが、果たしてどんなものでしょうか?

東北大学が一般的な市民を対象に行った研究では、男性は腹囲87cm以上、女性は80cm以上で高血圧や耐糖能障害の頻度が増すという結果であったと言い、少なくとも肥満学会の主張するような内臓脂肪量と疾患リスクを直接的に結びつけるデータというものは今のところないようですね。
実際のところ中高年層日本人というものは比較的低身長の方も多いですから、どう見てもアンコ型でありながら体躯が小柄であるが故に基準を逃れているという例も結構あるんじゃないかという印象を持っていますがどうでしょうか?
広く国民全般の太りすぎに警鐘を鳴らすという目的であるなら、まだしも見た目のイメージを反映しやすいウエスト/ヒップ比などの方が臨床の現場では話が分かりやすいのではないかと思うのですがね。

いずれにしても食生活の欧米化が進んだ日本人が不健康になっていく一方で、海外ではヘルシーフードとしての日本食というものが大人気となっているという逆転現象が生じています。
恐ろしいことに日本人のコレステロール値も年々上がり続けていて、昨今ではとうとう脂肪大国アメリカをも追い越す勢いだと言いますから、いつまでも「あちらではトイレにハマる女性がいて」なんて笑ってばかりもいられないということになりそうですね。
過剰なカロリー摂取は不健康のもとですから、皆さまもくれぐれも食べ歩きなどと恐ろしいことを考えたりなさらぬよう…ってあれ?何か当ぐり研の存在意義を否定するような結論が…

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2008年12月10日 (水)

若いときの苦労は買ってでもせよ?! ~ 研修医は今も貧乏なのか?

のっけから恐縮ですが、まずは記事を紹介します。

研修医278人が違法アルバイト、厚労省が全国調査(2008年12月8日読売新聞)

 大学卒業後の初期研修中に違法なアルバイト診療をしていた研修医が、臨床研修制度が義務化された2004年度から昨年度までに、研修医の所属する61病院、278人に上っていたことが8日、厚生労働省の調べで明らかになった。

 経験の浅い研修医のアルバイト診療は、医療事故につながる危険性が高いことなどから、04年施行の改正医師法で禁止されている。違法バイトの全国的な状況が判明したのは初めて。今回の結果は、保健所の定例検査で偶然見つかったケースや研修病院の自主報告を集めたもので、氷山の一角の可能性もある。

 04年度に導入された臨床研修制度では、研修医は国の指定基準を満たした研修病院のプログラムに基づき、指導医のもとで研修、それ以外の診療はできない。

 今回判明したのは、厚労省の地方厚生局が07年度中に把握したケース。それによると、違法バイトは04年度から07年度にかけ、近畿地方の39病院で161人、関東信越の19病院108人、九州の1病院5人、北海道の1病院3人、東北の1病院1人が確認された。いずれも所属する研修医が、プログラムにない別の病院や診療所に出かけ、単独で当直などをしていた。病院の当直代は1日5万円程度が相場とされる。

 違法バイトが確認された研修病院は、大学病院が16施設、一般病院が45施設だった。聖マリアンナ医大病院(川崎市)では、30人の大量違反があった。兵庫医大、大阪大などでも確認されている。厚労省は「研修病院側が組織的に関与したケースはない」としている。

 厚労省は違法バイトのあった研修病院に対し、研修医の管理徹底を指導。08年度からは、研修医の定員を削減する罰則を科することにしたが、今のところ違反は確認していないという。07年度以前の違反に対しては罰則は適用されない。

 制度創設の検討に携わった東大病院総合研修センター長の北村聖(きよし)教授は「制度本来の趣旨を無視したもので、極めて問題だ。病院側の管理にも問題がある。違反者を出した病院は、研修病院の指定を取り消すなど厳正な処分が必要だと思う」と指摘している。

 ◆背景に給与格差や医師不足◆

 研修医の違法アルバイトの背景には、処遇改善が不十分な研修病院や、医師不足のため、労働力としてアルバイト派遣を求める地域病院などの現状がある。

 04年度に義務化された研修制度には、それまで低収入で酷使され、アルバイトで生活費を稼いできた研修医の処遇を改善し、研修に専念させる狙いもあった。国は、給与の目安を月30万円程度とし、昨年度まで、病院に対し、研修医数に応じて教育指導費名目の補助金も交付してきた。ただ、実際の給与は病院の裁量に任され、格差が大きい。医師不足に悩む地方では、月50万~60万円に加え宿舎を用意するところもある一方で、都市部では20万円に満たないところもある。

 大量違反が発覚した聖マリアンナ医大病院では、給与は月19万円。病院側は「問題発覚を受け増額した」としているが、これでも「最低額の部類」(厚労省医事課)。違法バイトを20~30回繰り返していた一部の研修医は「生活費が足りなかった」としているという。

さすが研修医に大人気の東大病院ともなるとずいぶんと強気なコメントだと感心しますが、その東大病院にしても研修医の待遇等は公表していなかった気がするのですが表に出せない事情でもあるのでしょうか?
そもそも新臨床研修制度導入に際して研修医がアルバイトに駆け回らなくてもいいように一定額の給与を保証しましょうと言う話だったはずですが、明らかにそれをはるかに下回っている大学病院の類は制度本来の趣旨を無視したもので極めて問題だと言えるでしょう。
ちなみに都市部で健康で文化的な最低限度の生活というものを送るにはどの程度の収入が必要なのかについて、最近こんな参考になる記事がありましたので取り上げてみました。

最低限の生活:首都圏20代男性なら時給1345円必要(2008年12月8日毎日新聞)

 首都圏で20代の男性が最低限の生活を維持するには時給1345円が必要--。労働問題を研究するシンクタンク労働運動総合研究所などが8日、首都圏では初めての最低生計費の試算結果を公表した。東京都の最低賃金は766円で大きな隔たりがあるとしている。

 テレビやパソコン、洋服など500項目の持ち物調査や外食の割合、値段など生活実体を調査する方法で、東京、神奈川など首都圏4都県の2039人から回答を得た。

 試算は20代男性単身世帯から50代夫婦子供2人、70代女性単身など9パターンで行った。

20代男性単身世帯では、食費3万9564円で家賃5万4167円、教養娯楽費1万8273円などで計23万3801円(月額)となった。これを最低賃金審議会で使った労働時間の173・8時間で割ると、最低賃金1345円(時給)が必要となる。試算には税、社会保険料金(4万2395円)も含まれる。

 30代母子家庭(35万512円)▽40代夫婦子供2人(56万3652円)▽70代単身女性(20万4815円)などだった。

 調査に携わった佛教大学の金沢誠一教授(公共政策)は「全体として大幅な最低賃金の引き上げが必要だ」と話している。

月額23万が最低限度としていいのかどうかはともかくとして、研修医の場合ただ生きているだけでは不十分であって、その上に医師として学んでいくための必要経費というものがあるわけですから、少なくとも月20万以下でアルバイト禁止と言う大学病院はじめ一部施設は「お前ら学ぶな!」と言っているのと同義だと考えていいわけでしょうか。
その上こういう施設が貴重な研修医を抱え込んで全国の医師不足を招いていると言う現状に思いを致すならば、東大北村教授の言うところの「違反者を出した病院は、研修病院の指定を取り消す」という発言には医療界のみならず国を挙げて全面的な賛意を示すべきだと思いますね。

実のところこういう話は今に始まったことではなくて、「外科系で一人前になりたければ40までは親に養ってもらう覚悟でいろ」だのとトンでもないことを仰る方が名物教授ともてはやされていたとか、「実家が金持ちでないならせめて嫁さんは資産家の家からもらえ」なんて事が未だに言われていたりとか、とかくこの業界には非常識な慣習がまかり通ってきたわけです。
新臨床研修制度が唯一?良かったと思える点は研修医の待遇を保証したことですが(それすらも有名無実であったことがこのように明らかになっているのは問題として)、実のところ今大きな問題になっているのは研修医のちょいと上、かつてはレジデントなどと言われていた若手医師の待遇なのですね。
何しろ研修医は待遇を改善しなければ集まってくれないということで官舎を用意したり給与を上げたりと至れり尽くせりですが、初期研修を終えて医局派遣などのルートに入ってくると途端に旧来の「釣った魚に餌はやらぬ」な本性むき出しという病院も多いのです。

この結果どういうことが起こってくるかというと、新臨床研修制度導入によって研修医とその上のレジデントで待遇逆転なんておかしな話が起こってきたのですね。
研修医は月給30万官舎つき当直なしの9時5時勤務、レジデントは25万住居手当無し週一当直夜間呼び出し放題と言うことになれば、診療の第一線を支える若手医師達も「こりゃ何かおかしいんじゃないの?!」と悟らない方がおかしいわけで、あっという間に現場の志気は崩壊するのが当たり前ですよ。
昨今特に公立病院やきつい救急病院で医師の逃散が相次いでいますが、さすがにこれはマズいと思う人間もいたのかようやく若手医師達の待遇改善がこのところ行われようかという情勢になってきているわけですが、そうなると今度は更に上の世代に不満が…と待遇改善の玉突き現象が発生しつつあるようです。

●後輩、先輩を逆転!?● /京都(2008年12月08日朝日新聞)

医師手当 府立2病院見直しへ ◆ 若手確保のしわ寄せ懸念

 後輩医師の方が先輩より給料が高くなる!?――。府人事委員会が10月に出した勧告に対し、医療関係者の間でこんな懸念が広がっている。勧告は、府立病院の医師確保策として若手医師の手当を引き上げる内容だが、予算枠が限られる中で、中堅・ベテランがしわ寄せを受ける可能性があるからだ。医療の現場からは「医師の士気にも影響しかねない」と心配する声も上がる。

 府人事委の勧告対象は、洛南病院(宇治市)と与謝の海病院(与謝野町)の府立2病院。府立病院の医師の給料は、府職員給与条例に基づいて決められているが、民間病院並みに給料水準を上げて、人材が集まりにくくなっている若手医師の確保を図るのが狙いだ。

 具体的には、採用から35年未満の医師に対し支給されている「初任給調整手当」を引き上げる。勧告は、これまで月額で最高30万6900円だった同手当について、来年度から41万900円とし、一気に10万円以上アップさせることを求めた。

 適用対象者はいないものの、これまで初任給調整手当が最も高い1年目の医師については、条例上は本給と同手当を合わせて月額54万円程度(地域手当などを除く)が支給されることになっていた。勧告通りに条例が改定されれば、これが60万円を超すことになる。

 公的病院での若手医師の確保は全国的な課題で、人事院も国の医療機関に勤める医師に対する同手当の引き上げを勧告。府人事委の勧告もこの流れに沿ったものだ。

 ただ、初任給調整手当は1年目の医師が最も高く、勤続年数に応じて減っていく仕組みとなっている。勧告は手当の上限額を示しただけで、年齢や等級による具体的な引き上げ基準は年明け以降に決まる。府立病院の予算にも限度があるため、「手当の減額幅が大きくなる中堅・ベテラン医師の場合、年次の低い医師の方が給料が高くなる可能性もある」(医療関係者)との懸念が出ている。

 府立与謝の海病院の柴田克己事務部長は、「若手医師の確保も必要だが、中堅・ベテラン医師から不満が出るような給料改定になるのなら、歓迎はできない。バランスのとれた処遇を検討してほしい」と話す。

まあ実際のところ公立病院では給料だけ高くてろくに仕事も出来ない不良債権じみた、もとい、公務員的勤労精神にあふれた大ベテランの先生方も多いと言いますから、この機会にと一掃してしまえと言う気持ちもあるいはあるのかも知れません(邪推)。
しかし患者から見て良い医者と医師から見て良い医者とが異なるのと同様に、診療現場から見て良い医者と経営側から見て良い医者ともまた異なるはずなのです。
特に全国の公立病院では現場との関係が冷え切っている場合も多いようですから、目先の収支だけに視線を奪われて現場の空気を読まない改悪路線を突っ走った結果、あっという間に病院崩壊を来してしまった舞鶴市民病院の轍を踏まないようにお気を付けられた方がよろしいかと思いますよ。

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2008年12月 9日 (火)

モンシターペイシェント ~ 何も遠慮はいらない?

近ごろの教育現場では「モンスターペアレント」なんて言葉が結構普通に使われているそうですが、医療業界でも類似の話は数多くあります。
理不尽な要求を繰り返す「クレーマー」というのはどこの業界にもいるものですが、医療現場でも近ごろではクレームを通り越して「モンシターペイシェント」なんてことが言われるようになってきました。
今回はいよいよ本格的に動き始めたモンスター対策の話を取り上げてみましょう。

悪質ケース、診療拒否も 県が素案 病院独自の策定求める /香川(2008年12月4日  読売新聞)

 医師や看護師ら医療従事者に暴力や暴言、嫌がらせをする迷惑患者対策について、県は3日、県庁で開いた県医療安全推進協議会(会長=坂東義教・県医師会理事)で、悪質な場合は警察への通報や診療拒否などを盛り込んだ「患者が守るべきルールとマナー」の素案を示した。ただ、県側が「あくまでも病院が独自でルールを策定するうえでの参考資料」などとしたため、委員からは「県の考え方として明確に示さなければ効果がない」などと県主導でルール作りを求める意見が相次いだ

 素案では、患者の禁止行為として、医師や看護師らへの暴言や暴力、威嚇、執拗(しつよう)な面談の要求などを挙げ、違反した場合には警察への通報や診療拒否、院外退去を求めることができる――などとしている。また、症状が軽い患者が夜間、休日に受診する場合は、不必要に救急車を呼ばず、各地域に設けられた夜間急病診療所、休日当番医での診察を求めている。

 この日の会議には、医師会などの医療団体やPTA関係者、弁護士ら8人が出席。県医務国保課は「本来は地域住民や病院が作るべき内容。県が押しつけてはいけない」とし、県が示したルールを基に各病院が独自で策定して院内に掲示する活用法を提案した。

 これに対し、坂東会長は、患者の迷惑行為が医師不足につながっている現状を指摘したうえで、「これまで病院単位で対応に苦慮してきたが、県が積極的に動き出したことに意味がある」と述べ、県の責任でルール作りをするよう注文。患者側の立場で出席した三野八重子・県PTA連絡協議会母親代表委員会長も「県としての(迷惑患者対策への)答えを提示してほしい」と要望した。

 県は早ければ来年1月にも県民から意見を募り、今年度内にルールを策定。県内約1300のすべての医療機関に配布する。

他の報道も見比べてみて思うのですが、どうも県当局は言うだけ言っているだけで実際の統一ルール作りには及び腰なようなんですが、これも役人の無責任体質というものなのでしょうか?
一方で面白いのは、こういう受診ルールに関する利用者たる県民の反応なんですが、おおむね「厳しくやれ」と言うところが大多数のようです。
実際のところただでさえ不足しがちな医療リソースを一部の「モンスター」が食い荒らせば、最大の迷惑を被るのはまともな受診者であるわけですから、こうした結果には納得がいくというものです。
特に公立病院においては「お前ら税金で食わせてもらってんだから俺様の言うとおりにやるのが当たり前」という勘違いさんが大勢いらっしゃいますから、最終的にどこまで拘束力と実効性をもったルールに出来るかといったあたりが肝心になるでしょうね。

「県がルールを」8割 /香川(2008年12月6日  読売新聞)

 医師や看護師ら医療従事者に暴力や暴言、嫌がらせをする迷惑患者について、県民がどう考えているか県がアンケートしたところ、回答者の8割強が「共通ルールを明確にし、患者に従ってもらうべきだ」と考えていることがわかった。県はルールの素案を作成。その一方で、「ルールは各病院が独自に策定すべきで、県が押しつけるべきではない」としているが、県民の多くは、より実効性の高い対策を求めていることが浮き彫りとなった。

 アンケートは7月、無作為に選んだ20歳以上の3000人を対象に実施し、1158人から回答を得た。その結果、迷惑患者を知っているかとの質問には、57・7%が「新聞、テレビなどで知った」と答え、「実際に、または間接的に見聞きした」という人も10・2%いた。

 迷惑患者を巡り、県は「患者が守るべきルールとマナー」の素案で、医師や看護師らへの暴言や暴力、執拗(しつよう)な面談要求などを患者の禁止行為と規定。違反した場合は警察への通報や診療拒否、院外退去を求めることができるなどとしている。しかし、いずれも「病院が独自に策定するルールの参考資料」と説明する。

 これに対し、82・5%は患者向けの共通ルールを策定するよう県に求めており、「迷惑行為や理不尽な要求でも、患者の要求には応えるべき」との意見は3・2%にとどまった。「どちらともいえない」は8・8%だった。

 県医務国保課は「迷惑患者に対する県民の問題意識は高いことがわかる。どうすればルールを認識してもらい、医療現場で守ってもらえるか、関係者と協議を重ねて最善の策を考えたい」としている。

ところで、実際にこういうモンスターが襲来した場合にどう対応していくのが良いのでしょう?
最近ではテレビの影響か、院内での救急コールを示す「コードブルー」と言う言葉が少しばかり知られるようになりましたが、ヤバ気な人が…ってな場合には「コードホワイト」というものが発動されることもあります。
彼らの行動パターンは多くの場合「自分は病人であり弱者である」「医者は患者を断れない」という二点を前面に出してくるのが基本なのですが、実際のところ日常診療の現場でお目にかかる行為の数々はその多くが違法行為となり得るものなんですね。
以下はwikipediaの記載から引用してみますが、犯罪行為に該当する例としてこんなものが挙げられています。

# 治療がうまくいかないことに腹を立て、病室に入った女性看護師に理由も告げずに1人ずつほおを平手打ちする(→暴行罪)。

# 少しでも待ち時間が長くなると「いつまで待たせるんだ」と医師や看護師をどなりつける(→威力業務妨害罪)。

# 「検査結果で異常がなかった」、「医療費は高い」などの主張により、支払いを拒否する(→詐欺罪)。

# 暴言・暴力でほかの患者にまで迷惑をかけ、病院の備品を壊し、6人部屋を1人で占有する(器物損壊、威力業務妨害にあたる)。

# 情報伝達の不十分さに腹を立て、医師たちに3時間近く罵声を浴びせた末に土下座を強いる(→強要罪)。

# 「ベッドの空きがないので明日来てほしい」と告げられ、医師に缶コーヒーを投げつけ、殴って顔面を骨折させる(→傷害罪)。

# 看護師に包丁を見せたり、ナースコールを一日80回以上も鳴らしたりして、病院の業務を著しく妨害する(→脅迫罪、威力業務妨害罪、銃刀法違反)。

# 医師を「もしものことがあれば、お前を殺す」と脅し、ポケットに入れた刃物をちらつかせる(→脅迫罪、銃刀法違反)。

# 看護師に添い寝を強要する(→強要罪、軽犯罪法違反)。

# 治療が終了し、疾患が完治しているのにもかかわらず退院を拒否し、医療費も100万円以上滞納して支払う意思を見せないばかりか、説得に来た病院事務員を罵倒したり、看護師に性的暴力を振るう(→詐欺罪、婦女暴行罪)。

つまりはこれらに該当する犯罪行為に対しては、素直にしかるべき筋に通報してお引き取りいただくのが正しいということになりそうですが、現場では未だに警察沙汰にすることへの抵抗感が根強い(あるいは、そうした方法論自体が頭にない?)ことが問題解決を難しくしている一番の原因なのではないでしょうか?
ひと頃は「警察なんていくら電話しても相手にしてくれない」なんて言われていた頃もあったようですが、幸いにも最近では社会全体の風潮の変化か警察の方でも積極的にこうした犯罪行為に対処する方向になっているようです。
となると後は何が問題かと言えば、実際に通報するかどうかだけと言う話になるわけですが、ここで一つこんな話を考えてみました。

診療の現場で医師やら看護師やらのスタッフが「警察呼んで!」と叫んでも、どこかの段階でストップがかけられてしまうというのは結構ありそうな話に思えませんか。
なぜそういうことになるかと言えば、現場から直接警察へ通報するというルートがないことが一因だと思うんですね(院内は携帯禁止ですし、外線は通常交換を通すことが多い)。
「警察沙汰にするのはどうも…」という事なかれ主義の病院上層部に阻まれて、現場の熱意ある医療従事者が職場を去るという話がどれだけ増えていることか。
そこで小売り店などで良くある通報装置のようなものを、医療現場にも導入することを考えてみてはどうでしょうか?

外来受付などでは普通に大金を扱っているわけですし、夜間ともなるといつどんな暴漢が侵入してくるかも判らない割に、現在の医療機関のセキュリティーシステムはどこもかしこもあまりにお粗末に過ぎると思うのです。
時に院内に侵入した部外者が入院患者を殺害したなんて話もあるくらいで、人間が最も無防備となる病院という場所だからこそこうした保安のためのシステムが必要とされるのではないでしょうか。
何よりそうしたシステムを備えているということが今の時代、当院では患者だけでなくスタッフの安全をも守ってますという姿勢を内外にアピールすることになると思うんですが、どこかの医師不足に悩む病院ででも一つやってみないものでしょうかね?

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2008年12月 8日 (月)

周産期救急の問題点 ~ マスコミもついに反省という言葉を覚えた?!

先日書きました「救急は全例受け入れ」の話題ともかぶる話ですが、この5日に発表されてから一部でかなり話題になっているのが文科省の全国国立大学病院NICU整備計画です。
今日はまずこちらのニュースからご紹介しましょう。

4年間で国立大全病院にNICU 文科省が整備計画(2008年12月5日共同通信)

 満床などを理由に、病院が妊婦の受け入れを相次ぎ拒否した問題を受け、文部科学省は5日、2009年度から4年間で、現在9つの国立大病院で新生児集中治療室(NICU)がない状況を解消し、全国立大病院の半数に当たる21病院では、周産期医療の関係病床数(国立大平均11・4床)を各20床に増やす整備計画を公表した。

 文科省調査で、大学病院の関係病床数(分院を除く)が私立大の平均29・8床、公立大の平均16・0床に比べ、国立大が少ない実態が判明。文科省は若手医師育成の充実や産科・小児科の女性医師の復帰支援なども含め、地域の周産期医療の拠点として国立大病院の機能強化を目指す。

 しかし、妊婦受け入れ拒否の要因とされているNICU不足は、厚生労働省研究班の調査で全国で約1000床に上るとされ、ほかの大学病院や国公私立の病院の整備も急務となっている。

 計画では山形大、福井大、山梨大、佐賀大、長崎大などNICUがない9大学病院に最低各6床を設置。NICUと、母体・胎児集中治療室(MFICU)、継続保育室(GCU)を合わせた周産期医療の関係病床数を少なくとも21大学病院で各20床にする。

 09年度予算で58億円を概算要求しており、今後、人材確保や施設の状況などをみて対象病院を決める。

なるほど、こういう場合は大学だから文科省の管轄になるんだなと思わされた話ですが、問題はどこからどうやって人材をかき集めるかというところに尽きるでしょうね。
今現在でも全国大学の産科・小児科医局で十分な数の医師が足りているなんてところは寡聞にして知りませんが、特に国公立大学病院ともなりますとこれに加えてあり得ない低待遇、働かない看護師以下のスタッフと医師のモチベーションを下げる要因には事欠きません。
実際のところどこの大学が対象になるのか、それを受けての現場の反応はどうなのかといったあたりは今後次第に話が出てくることと思いますが、またどこかから医師引き上げなんて話になることはほぼ確定的なんでしょうね。

ところで全国どこでもNICU不足と言いながらおいそれと増やせないのはスタッフが集まらないからと言うことが大きな要因でしょうが、一方でなぜそうまでNICUが不足しているのかということも考えていかなければなりません。
よく(日本の小児救急はなっとらん!と言う文脈で)引用される話として1-4歳児の死亡率が先進国の中でも最低クラスに悪いなんて話が出てきますが、0歳児死亡率が世界トップであるという話は都合良く?無視されることが多いようです(実のところ、ほとんど全年齢で世界トップクラスなのですが)。
この数字に関して以前から言われることに、本来なら0歳児の時点で亡くなってしまっていたはずの子供を日本の小児科が頑張って延命できた結果1-4歳児死亡率を押し上げているという説があり、実際国際平均と比較してみると先天疾患が死因になることが多いようです(この「持ち越しによる押し上げ」に対して否定的な意見もありますが)。

実際のところ出産年齢の高齢化によってダウン症など胎児の先天性疾患発症率が急増することは昔から知られていて、お隣韓国などでは10年前の2倍に増加したなんてデータもあるようです。
また、先頃厚労省がまとめたレポートでは「小児科常勤医が重症児に対応する小児専門の救命救急機関の不足」がこの原因であると結論づけていますが、どちらにしても「今まで以上に手厚い小児医療体制」に対する社会的要求が年々高まっていることは間違いないでしょう。
すなわちNICU不足問題の背景にはスタッフの不足という医療側の要因と同時に、社会的需要の増加という被医療側の要因が存在していることを理解しなければなりません。

増える低出生体重児出産 「新生児集中治療室」満床の原因にも(2008年12月4日産経新聞)

 東京都内で妊婦が相次いで搬送を断られた問題で、都内の周産期母子医療センターの「新生児集中治療室(NICU)」が満床になる一因に、NICU治療の必要性が高い低出生体重児出産の増加が挙げられている。無理なダイエットで胎児に十分な栄養を与えられないやせ過ぎの若い妊婦や、子宮機能が低下した高齢出産の増加などが背景にあると指摘する関係者も多い
(略)
 なぜ、都内のNICUは満床なのか。都では医師不足以外に、NICUでの治療必要性が高まる2500グラム未満の低出生体重児の増加を指摘する。

 都の調査では、平成2年の都内の低出生体重児数は6583人だったのに対し、平成18年には約1・5倍の9564人まで増加、全国最多にのぼっている。低出生体重児の出産は子宮機能の低下により胎内で胎児を育てられず、胎児が一定の体重になる前に出産する早産や、不妊治療による双子や三つ子など、母体から受け取る栄養分の量が少ない多胎児を妊娠した妊婦にみられる。いずれも一般的に高齢出産といわれる妊婦に多いのが特徴だ。

 実際、厚生労働省の平成18年の調査によると、低出生体重児を出産する割合は、45歳以上が16・2%と最も多い。以下、40~44歳は13・3%、35~39歳の11・1%。女性の初産平均年齢が全国最高の30・7歳の都にとって、出産の高齢化による低出生体重児の増加の深刻さを裏付けている。

 岡山大病院産科婦人科長の平松祐司教授は、無理なダイエットでやせすぎの20代の妊婦について触れ、「お母さんからの栄養が足りなければ、胎児に補給される栄養も少なくなる。その結果、低体重の子供が生まれやすくなる」と指摘する。
(略)

要するに医療問題と言いながら、特に「病気ではない」妊娠、出産に関する問題では医療以前の社会問題としての側面が顕著に表れてくるということなのです。
そう考えていくとひと頃「またたらい回しか!」なんて扇情的な見出しがマスコミでさかんに活用されていた時期があったのですが、最近では何故かほとんど見かけなくなったと思いませんか?
当のマスコミ関係者自身にもそういうところに自覚はあるようで、今ごろになって当事者からもこんな自省的?な言葉が出てきていたりもするようです。

「たらい回し」「搬送拒否」は適切な言葉?

医療者から起きる反発の声
妊婦さんの搬送受け入れがうまくいっていないことが問題になっていますが、さて、報道で繰り返されている「たらい回し」「搬送拒否」という言葉は適切でしょうか?実は、医療関係者からは、この言葉に対する強い反発の声が聞かれます。

病院バッシング?
日本赤十字社医療センター産科部長の杉本充弘医師は「正しくは『受け入れ不能』あるいは『受け入れ困難』でしょう」と言います。「たらい回し、拒否といった否定的な言葉が出てくるのは、どこかに病院バッシングの気持ちがあるからではないでしょうか?」

最近出産したあるお母さんは、「たらい回しという言葉を聞くと病院が何の努力もしていないように感じる」と言いました。確かに「たらい回し」「搬送拒否」という言葉には「本当は受け入れられるのに、面倒だから受け入れない」という職務怠慢・職務不履行のニュアンスが含まれます。そこが、医療者たちを「違う!本当に余裕がないんだ」と叫びたい気持ちにさせるのです。
(略)
「本当にベッドがない」という深刻な現実
残念ながら、やりくりをしても今の状況では限界はあります。日赤医療センターも、他のブロックや他県から来る搬送依頼は半数程度しか受け入れられていません。ただ、担当地区内の受け入れ責任をギリギリで果たせるか、果たせないかの瀬戸際にある病院がそれ以上のことを求められても、それは現実的ではありません。断られた人たちはみんな「たらい回しにされた」と感じているかもしれませんが、本当に受け皿が足りなくなってしまったのです。

少し良くなった赤ちゃんはNICU(新生児集中治療室)をすぐ出る・・・それでも足りない・・・
神奈川県立こども医療センターも同様でした。川滝元良・豊島勝昭両医師によると、ここも、ほとんど毎日が満床で、受け入れるのは他病院では治療出来ない赤ちゃんだけ。他の赤ちゃんはその子の重症度に合った病院を探してあっせんします。

それでも、どうしても県内にベッドがなく、県外に赤ちゃんを送らざるを得ない日もあるといいます。少しでも空きを作ろうと早期退院、転院につとめても今の状況ではそういう日が出てしまうのです。NICUを必要とする患者数と医療の供給が明らかにアンバランスだからです。

こうした声を、マスコミはどう受けとめているでしょう?新聞やテレビの関係者に意見を聞いてみましょう。

記者の中からも「決めつけだった」という声が
マスコミ関係者の中にも、表現を見直したいという気運が現れています。何名かの声をご紹介しましょう。

ある新聞記者は「受け入れ不能」という言葉がいいのではないか、と言います。「マスコミは、問題が起きた時に『本当は受けられたのに断った病院もあっただろう』と疑念を持って「たらい回し」と言い出したのでしょう。でも、現場取材に行くと、病院はこんな苦労をしてきたのかと実態がわかって、今は認識を改めつつあるところだと思う。先日の厚生省事務次官殺人事件で当初『テロ』という言葉が使われたように、マスコミは、実態がよくわからないうちに決めつけをしてしまうことがある。それは自戒しなければならないのでは」

番組の中で話し合い「たらい回し」という言葉は使用しないことに
民放TVでニュース番組を担当するあるディレクターも、現場取材をしたスタッフから「『たらい回し』という言葉は実態に合わない」という意見が出て、この言葉を番組内で使わないようになったと言います。ただ、かわりのいい言葉が見つかったわけではなく「搬送を断った」と表現することが多く、字数を節約する必要があるテロップでは「搬送拒否」となることが多いそうです。

受け入れてもらえない患者のやりきれない気持ちは、医師もわかってほしい
一方、しっかりと患者側に立った視点が大事だ、と考える報道関係者もいます。ある新聞記者はこう言います。「『たらい回し』は患者の実感そのものを表した言葉。それを『違う』と強調されると『医療者は断られた人の気持ちを理解していないのではないか』と世間から見られるだろう。『受け入れ不能』にすべきだ、という意見もあるようだが、それは個々の病院の状況を表しているだけで患者の困窮を表してはいない。『たらいまわし』という言葉を否定するには、さらなる検証をおこなうことも必要。ほとんどの医師は最大の努力をしているのだろうが、そうではない病院もあるかもしれない

お互いの立場をわかり合いたい
「たらい回し」「搬送拒否」という言葉をめぐる報道関係者の思いはさまざま。でも、ひとつの共通項があるように思われてきます。それは、医療者、マスコミ、患者の間で「相手の事情が見えない」というコミュニケーション不足が起きているということです。

NHKで報道番組に携わるあるディレクターは「医療者と私たちが話し合える場を持ちたい。私たちも、医療との間に溝のようなものがあるように感じている。まずはそれを解決したい」と言いました。

はじめのコメントをくれた記者からは、こんな声も聞かれました。「こんなに困っていたのなら、医療側からもっと早くマスコミに発信してほしかった、という気持ちはあります。医療を責める表現になってしまったのは、お互いに日頃のコミュニケーションが不足していた」

当今では猿でも反省すると言いますから、少なくとも霊長類の範疇に入ってきたのは喜ぶべきことだと思いますね(苦笑)。
しかし過ちを改めるのに遅すぎると言うことはないとは良く言うことですが、仮にも報道関係者を自称するなら「実際に取材をしてみると話がずいぶん違っていることがわかった」だの「お前らがもっと大騒ぎしないのがいけないんだ」なんてことを堂々と言っちゃっていいんでしょうかねえ…?
報道というのは他人に全部おんぶにだっこでないとやっていけないんだという率直な告白と受け取っておきますが、これも日本の誇る「ニュースとは座してお上から授けられるのを待つもの」という記者クラブシステムの産んだ弊害というものなんでしょうか。
いずれにしても桝添厚労相に続いてこうしてマスコミさんのありがたいお許しもいただいたわけですから、全国の医療従事者の皆さんは今まで以上に大きな声で言いたいことを言っていかなければならないというわけですよ。

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2008年12月 7日 (日)

今日のぐり「きゃべつ畑」

最近またリアル知人と会いまして、「ぐり研見てますよ」と言われました。

やはり誰かが広げているのか?と気になりますが、とりあえず今日もぐり研活動いってみましょう。

今日のぐり「きゃべつ畑」

福山市街地から北に進み福山平成大学などの近所、最近は向かいにモールが出来たりと少しはにぎやかになってますが、基本的に市街地の外れの目立たない立地にあるお好み焼き屋です。
見た目は至って間口の狭い小さな店に見えるのですが、店内に入ってみると案外奥の方まで細長く続いていて意外に大勢が入れそうな感じ。
メニューを見て思うところはあったのですが(後述)、ここはとりあえず迷ったときのおすすめという名物焼きのそば玉シングルを注文。
豚玉を基本にもちとイカ天入りというものらしいのですが、どのあたりが名物なのかは今ひとつよく判りません(苦笑)。

焼くときに「重し」を載せて圧迫をかけるのがここの流儀なのでしょうか。
モダンの麺もよくあるような蒸し麺を使うのではなく、その場で一玉ずつ茹でた麺を使っているのはこだわりなんでしょうね。
卵はほとんど火を通さず、鉄板の上にさっと広げただけでお好み焼きを上から載せて一回し、即座にひっくり返す。
半熟トロトロの卵の上にソースを塗ると、両者が渾然一体となったうまみが広がると言うわけです。

で、結論なんですが味は良いですよ。
鉄板と皿とサーブの方法で焼き方も変えているようなんですが、これに限らず親父さんはわりあいいろいろと気がつく人という様子で好印象ですね。
寒くなるこの時期ですから、こういう鉄板の上からとにかく熱いやつを突くというのはなかなかよろしいものですね。

いくつか欠点も挙げておきますと、まず一番気になったのが妙にメニューが判りにくいことでしょうか。
豚玉を探そうと思ってたんですが、しばらく眺めて見ても結局判らなかったのは自分がトロいだけなのか、そもそもそういうものがなかったのか。
豚玉に限らず一般的なお好み焼き屋とメニューの記載パターンが違っているようで、ちょっと戸惑いますね。

あとは店名の割にキャベツはちょい控えめな感じなんですが、べつにバランスが悪いわけでもないのでこれはこれでいいかなと言うところではありました。
バーナーに近いところに座ったせいか、最後の方はさすがにちょっと火が通りすぎでコテで切り分けるのも大変だったんですが、広い鉄板は全面を調理に使っているわけでもないようなので、この辺りなにか配置転換などで一工夫できないかなとも感じましたね。

今のところ行った人間には評判の良い店というレベルにとどまっているようですが、もっと有名になってもいい店ではないかと思います。

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2008年12月 6日 (土)

救急医療は弱肉強食の時代へ進む?

少し前の話になりましたが、墨東病院などの受け入れ不能事例を受けて東京都が「周産期救急の全症例を受け入れる」施設を作ると言うニュースがありました。
現状の医療機関を維持するだけでも不足している医療スタッフをいったいどこから調達してくるつもりであるのか興味があるところですが、まずはこういう記事から紹介していきましょう。

周産期医療:都立府中病院産婦人科部長・桑江千鶴子さんに聞く /東京(2008年12月2日毎日新聞)

◇重症妊婦すべて受け入れ--「スーパー総合」都が導入へ

 「スーパー総合」は機能するのか--。都内で9~10月、脳出血の症状を訴えた妊婦を総合周産期母子医療センターが受け入れられない事態が相次いだ問題で、都周産期医療協議会は先月28日、重症妊婦の搬送をすべて受け入れる「スーパー総合周産期母子医療センター」(仮称)の導入を決めた。既存のセンター3~4カ所を「スーパー総合」にするというが、都立府中病院産婦人科部長の桑江千鶴子さんは「周産期医療に大きな影響を与えるのでは」と懸念する。現場の最前線に立つ桑江さんの話を聞いた。【須山勉】

 ◇現実追いつかず、人材不足拍車も

 --「スーパー総合」をどう見るか。

 「すべて受け入れる」というが、ベッドが満床だったり、手術中だったら現実的にどうするのか。受け入れられず、患者に悪い結果が出れば「すべて受け入れると言ったじゃないか!」と言われ、裁判にされる恐れもある。それにより貴重な人材が疲弊し、傷つき、辞めていけば、ただでさえ人手不足の周産期医療に重大な影響が出る。現場の人間から見ると、いい考えとはどうしても思えない。

 --発端は、総合周産期母子医療センターが妊婦の搬送を受け入れられない事態が相次いだからだが。

似たようなケースは日常的に起きている。ハイリスクの妊婦を受け入れる施設は都内でも不足している。府中病院でも妊婦を他へ搬送しなければならなくなった時、医師が1人はりついて受け入れ先探しの電話をかけまくる。1日で見つからず、数日間かけ続けることも珍しくない。

 --脳内出血を起こした妊婦が亡くなったケースでは、産科でなくER(救急治療室)で対応すべきだったとの指摘もあったが。

 でも産科医の手が空いていない状況で妊婦が搬送された場合、救急だけで対応することはありえない。赤ちゃんがおなかにいる状況で脳の手術はできない。まず、産科医が帝王切開をして赤ちゃんを出さなければ先に進めない。今のERはあくまでも窓口に過ぎず、患者を受け入れたら結局各科に回しているのが現状だ。ERに運べばなんとかなるという議論はおかしい。
(略)
 --そもそも産科医不足が背景にある。

 産科医をすぐに増やすことはできない。数が少なくて休みを十分取らせることができないなら、せめて給与面を改善してほしい。特に都立病院の医師は「タダ働き」が多い。緊急で病院に出ていく時の特殊勤務手当は、低額なうえに基本給の25%までで打ち切られている。あとはどんなに緊急出勤しても手当がつかず、民間病院と大きな格差がある。
 公務員としての制約も多いうえ、事務系管理職はすぐ異動し、いい病院づくりができていない。若い医師が行きたがる都立病院にしなければ、医師不足はさらに進むのではないか。

昨日紹介しました「とりあえず運び先は決まっていた」札幌市の産科救急がどういうことになったのかを見れば、根本的なリソース不足を放置したままこういうシステムを組んだところでどうなるか火を見るより明らかだと思うのですが、石原都知事はかねてERなんてものがお好きのようですから、これも実行されてしまうのでしょうね。
東京というところは絶対量としての医療資源は全国一という所柄ですから、良くも悪くも全国に先駆けたモデルケースとしても今後を見守っていくべきなのかも知れませんが、そもそもこうした「何でも受け入れます」式の施設をばんばん整備していけば医療問題は全て解決!なんて、そんなムシのいい話があるものでしょうか?

別に札幌や東京に限った話ではありませんが、全国どこでも医師不足なのは今に始まった話ではありません。
中でも産科医不足は周産期医療という世間の耳目を集めやすい問題と密接に関わっていることもあって、殊更深刻さが際だってきている印象がありますが、実際のところも減少傾向は更に進む一方という状況です。

産科減少傾向に歯止めかからず、90年の6割近くに(2008年12月2日読売新聞)

 全国の産科・産婦人科のある病院数は2007年、前年よりも37か所少ない1539か所で、産科・産婦人科の減少傾向に歯止めがかからない実態が2日、厚生労働省がまとめた「医療施設調査」でわかった。

1990年(2459か所)と比較すると6割に近い水準にまで減っており、同省は「過酷勤務や訴訟リスクを回避したい医師の産科離れは深刻。産科施設の集約化も進んでいる」と分析している。

 調査は毎年実施されているが、実際に分娩(ぶんべん)を扱った病院数の調査は3年に1回。直近の05年では、産科・産婦人科のある病院の2割弱が分娩を実施していなかったため、07年調査の病院数にも未実施施設が相当数含まれているとみられる。

 小児科のある病院の減少も続き、07年は前年比60か所減の3015か所だった。

ん~おかしいですね、かの柳沢厚相の公式答弁としては産科医が減っているのは単なる少子化の反映と言うんじゃなかったでしたっけ?なんて突っ込みも入りますが、いずれにしてもまず絶対数が足りていないということを認識しなければならない。
医療が高度化すればするほど多量のマンパワーを含めた医療資源を必要とすることになるのですから、患者一人あたりの必要労力というものを考えてみればスタッフ数も医療機材も昔より多くを要するようになるのは当然です。
寝る間も惜しんで働くというのはある局面では美徳となることなのかも知れませんが、少なくとも医療訴訟の現場で考慮されるべき事情ではないことは明白なのであって、産科と言う場所はとりわけ医療訴訟に関わることが多いという職場環境であるわけなのですから…諸先生方、くれぐれもご自愛くださいますよう。

それはともかく、数が減れば仕事はきつくなる、きつくなるからまた辞めるというのはどこの業界でも昨今珍しくはない現象ですが、医者の場合は不幸にもと言うべきか幸いにもと言うべきか、今のところそこまできつくない働き口がまだまだ選べるという幸せがあります。
これだけ医師不足だ産科医不足だと言いながら未だに何らのインセンティブも提示されていない状況が続いているわけですから、当然きつい職場からの逃散は続いている。
当然今後も長くこの状況は続くと言うことはまず確定的なわけですから、そうなると当面の問題は医療のどこを死守するのかということに移りつつあるのですが、それは同時にどこを捨てるかという話と表裏一体であることを知らなければなりません。

産科救急 (下)月505時間 過酷勤務(2008年12月4日  読売新聞)

 また、新たな産科救急問題が明るみに出た。昨年11月、札幌市の自宅で30歳代の女性が早産した未熟児(約1300グラム)が7病院で受け入れられず、その後死亡した。新生児集中治療室(NICU)が満床などの理由だった。
 集中治療によって、未熟児の生存率は飛躍的に向上し、日本は世界でもトップ水準を維持している。しかし、出産年齢の高齢化などで未熟児が増加し、NICUは慢性的な不足状態だ。

 少しずつだが、行政も増床を進めてきた。当時、受け入れを打診された北海道立子ども総合医療・療育センターはその2か月前に開設。NICU9床を設置予定だった。ところが、看護師の確保ができず、6床で稼働していた。
 去る10月、脳出血を起こした妊婦(36)が死亡した東京都立墨東病院でも、今春、NICUを3床増やして15床にしたが、看護師不足のため増床分は使っていない

 ベッドを増やしても、人が確保できない。
 さいたま市の自治医大さいたま医療センターは、来年10月から、NICU6床を含む周産期母子医療センターを稼働させる予定だったが、新生児科医と産科医確保の難しさから、再来年以降に延期された。

 産婦人科医はここ10年で1割減った。医師不足が勤務状況を悪化させ、志望者を減らす悪循環を生んでいる。日本産科婦人科学会が今年行った調査では、大学病院の産婦人科医の1か月の当直は平均6回。最も多い医師は15回だった。この医師の勤務時間は月505時間、休日をまったく取らずに1日17時間働いた計算になる。
 医師不足の悪循環を止めるためには、働きやすい環境の整備が不可欠だ。文科省は来年度から医学部の定員を大幅に増やすが、育成には時間がかかる。女性医師や開業医の活用など工夫が求められている。
(略)
 東京都内で、8病院に受け入れを断られ、脳出血で妻を亡くした夫(36)は、札幌の搬送問題にコメントを寄せた。「また一つ、救えたかもしれない尊い命が失われたことを知り、残念でなりません。死を無駄にして欲しくないと思います」。対策に待ったはない。

昨日も書きました札幌市の未熟児搬送事例を取り上げて、かねて医療問題には強いと自称する読売新聞は上記のような記事を書きました。
「対策に待ったはない」とはその通りだと思いますが、こうした救急医療機関に人を集めれば集めるほど、その他の場所では今以上に手薄になってくるのは道理です。
今でさえ「妊娠が判明したら即座に分娩予約を入れないと産む場所がない」なんて言いますが、何でも受け入れる救急センターが出来たはいいが、まず分娩予約をしてから子供をつくらなければならないなんてことになるかも知れないわけです。

結局のところ全体のパイの大きさが限られているわけですから、当面は切り分け方をどうするかの話でしかないはずなのに、施設を作れば悪いことはなくて良いことだけが待っているような錯覚を起こしているのだとしたら問題ですよね。
東京都のような力の強い自治体が自前の医療機関を整備し、医師を囲い込もうとすればするほど、その他の地域での医師不足にはますます拍車がかかるという問題意識を国民の皆さんはまず持たなければなりません。

産科救急に限らず全国どこでも医師を集約化して何でも受け入れられるセンターを作りますと言う話が聞こえてきますが、あなたの通っていた病院から医者がいなくなりますと言われれば無条件に賛成できますか?
今のところ近所の医者よりいざというとき頼りになる救急施設と言う声の方が大きく聞こえますが、実際のところ利用頻度からすれば近在の医療機関にかかることの方がはるかに多いのは当たり前のことなのですね。
こうした良い面も悪い面も含めて、医療行政の当事者はきちんと国民にアナウンスしていくべきだし、国民も自らの一生を左右するかも知れない問題として自分で判断しなければならないはずなのです。
皆さんの周りではどうでしょうか?黙っていると思わぬ貧乏くじを引くことになるかも知れませんよ。

かつてベトナムが飢餓に見舞われた時、ホー・チ・ミンは次のような言葉で国民に語りかけたと言います。

愛する同胞の皆さん、飢饉は日に日に悪化の一途をたどっています。
そこで私は、全国の皆さんに提案があります。

十日に一度、1回の食事を抜きましょう。
1ヶ月に3度の食事を抜きましょう。
そして、その米を貧しい人を助けるために持って行きましょう。

皆で助け合えば、餓死を免れるコトが出来るのです。

時代はまさに弱肉強食、医師奪い合いの時代に突入しようとしているのかも知れません。
皆で少しずつ分け合って生き残るのか、それとも一部の者だけが飽食するのか、そもそも本当は全員が生き残るだけのものは最初から存在していないのか、医療行政の恐ろしいところはこれら全て実のところ誰にも答えが判っていないことにあるような気がします。

ただ一つ明らかなことは、国の舵取りがどんな方向を向くにせよ、民主主義国家である以上は後になって「知らなかった」ではすみませんので、国民一人一人がきちんと情報を得て自分で判断していかなければならないことでしょうね。

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2008年12月 5日 (金)

またたらい回しか!? ~ 札幌市産科救急とっくに崩壊中?!

杏林割り箸事件の刑事訴訟控訴審では検察側が上告を断念したとのことで、先の民事訴訟とあわせて10年近くの長きにわたったこの事件も法的にはようやく決着することになりました。
それはそれとして、今日は最近になって意外にも燃え上がってしまったニュースから紹介しましょう。

早産男児、7病院拒否 10日後死亡 札幌で昨年11月(2008年12月2日北海道新聞)

 札幌市内の三十歳代の女性が自宅で早産した未熟児が昨年十一月、七病院に「満床」などを理由に受け入れを断られ、一時間半後に新生児集中治療室(NICU)のない市内の病院に搬送され十日後に死亡していたことが一日、分かった。道内で医療体制が最も整備されているはずの札幌で、生まれてくる未熟児の生命が危機にさらされている現実が明らかになった。

 専門医はNICU不足を指摘する一方「未熟児はすぐに低体温、低酸素状態となる。もっと早くNICUで治療できていれば助かったはずだ」としている。

 未熟児は搬送当初は呼吸をしていたものの病院に着いたときには心肺停止に陥っていた。リスクの高い新生児を引き受ける道央圏で唯一の「総合周産期母子医療センター」である市立札幌病院も受け入れを断っていた

 市などによると、女性は昨年十一月十五日午後十時半ごろ、北区の自宅で腹痛を覚え、妊娠二十七週で一三〇〇グラムの男児を出産。119番通報で男児は救急車で運ばれた。

 市立札幌病院救命救急センターの医師がドクターカーで駆けつけて二十八分後にこの救急車に同乗し、車内で応急処置にあたった。

 女性のかかりつけの医院は重篤な患者を受け入れる施設が整っていなかったため、救急隊が未熟児の状態を確認した直後から消防局指令情報センター(中央区)が電話で受け入れ先病院を探した。

情報センターは市立札幌病院、北大や札幌医大、道立子ども総合医療・療育センター、民間の総合病院三病院に「NICUが満床」などと次々と断られた。この中にはNICUがない病院もあったが「治療は無理」と断られたという。

 三番目に依頼を受けた市立札幌病院によると、同院のNICUも満床だった上、当直医が「別の患者の治療中で手が離せない」と断ったという。最終的にNICUのない手稲区内の病院が受け入れたが、病院着は翌日午前零時八分。通報から一時間半が経過し、未熟児は心肺停止となっていた。女性は別の救急車で産科のある病院に搬送され、無事だった。

 市立札幌病院は翌日、未熟児の受け入れを申し出たが、この病院から「動かせる状態ではない」と言われたという。市立札幌病院の服部司新生児科部長は「あってはならないケースと認識している。無理をしてでも当日に受け入れるべきだった」と対応の不備を認めている。

未熟児拒否 札幌市「申し訳ない」 NICU増床の方針(2008年12月2日北海道新聞)

 昨年十一月、札幌市内で未熟児が七病院に受け入れを断られ新生児集中治療室(NICU)がない病院に搬送された後に死亡した問題で、札幌市は二日、記者会見を開き「市立札幌病院を含めてNICUで受け入れられず、お子さんが亡くなったことは大変申し訳ないと考えている」と陳謝した。今後はNICUの増床や新生児科医の増員に取り組む方針を明らかにした。

 市立札幌病院は道央圏唯一の「総合周産期母子医療センター」だったが、満床などを理由に受け入れを断った。市病院局の野崎清史経営管理部長は「受け入れ可能な場合は唯一のセンターとして、可能な限り受け入れなければならない。今回は医師不足のため受け入れることができず、残念に思う」と釈明した。

 また、市保健所の飯田晃医療政策担当部長は「NICUの満床は平常時から続いているため、受け入れできない病院が重なってしまった場合は搬送まで時間を要する」と説明、市内のNICUのベッド数を増やすことが必要だと強調した。

 一方、市は会見で、子どもを最終的に受け入れた病院が手稲渓仁会病院(手稲区)であることを公表し、他の断った病院名も明らかにした。

記事からは自宅での突然のお産になってしまった事例だと推察しますが、突発的にこういう厳しい状況になってしまったと言うのはずいぶんと運がなかった話なんだろうなと同条申し上げます。

ところで昨年末という古いネタがなぜ今頃急に話題になっているのかと考えると、何かしら背景事情があるのかとも思うのですがどうでしょうか?
一方で今回の事例でいちばん注目するべきなのは市当局が謝罪声明を出していることなのですが、実はここにいたる経緯を知っていればさもありなんという事情があるのですね。
札幌市の産科救急がにわかに注目を集めることになったきっかけとなったのは、今年初めのこんなニュースからでした。

重症救急撤退を通告 札幌市産婦人科医会 市に「夜間の負担増」(2008年2月27日北海道新聞)

札幌市の産婦人科の救急医療で、重症患者を診る二次救急を引き受けている札幌市産婦人科医会(遠藤一行会長)が「各病院の負担が重く、これ以上は担いきれない」として、二次救急からの撤退を市に申し入れていたことが、二十六日分かった。
市は医師や住民による協議会を三月中に設置し、負担軽減策を話し合う考えだが、同医会は具体案が出ない場合は、九月で撤退すると通告している。市内では現状でも妊婦のたらい回しが起きており、撤退となれば、市の産婦人科救急に大きな影響が出そうだ。
(略)
担当医師の負担が増えたのは、産婦人科医の減少で二次救急を毎日交代で引き受ける医療機関が、四年前の十四から五カ所も減少したため。各医療機関の担当回数が二週間で一回から一週間で一・三回程度に増え、担当医から「産婦人科は慢性的な人手不足で、受け持ち患者の診療と出産で手いっぱい。これ以上、救急を分担できない」と、声が上がった。

このため、同医会は二○○八年度に向け、市の夜間急病センターに夜間の初期救急を診る産婦人科医を置き、初期と二次を分離するよう市に要請した。
遠藤会長は「センターで患者を振り分け、子宮外妊娠や早産などの重症患者だけを二次救急に送れば、医師の負担が大幅に軽減される」と説明する。しかし、市は新年度予算案に、二次救急医療機関への報酬の一千万円増額を盛り込んだものの、センターへの産婦人科医配置は見送ったため、医会として撤退を申し入れた。

市医療調整課の飯田晃課長は「夜間急病センターに産婦人科医を配置すると、約七千万円の予算が必要になる。財源が限られる中、住民合意を得られるだろうか」と説明。三月中に協議会を設置し、負担軽減に向けた代案を話し合う。

医療機関に二次救急を担う法的な義務はない。撤退が決まった場合、市が個別の医療機関に担当を依頼しなければならず、三次を担う市立病院や、市の依頼に応じる一部医療機関の負担が増大するのは確実。最悪の場合は救急体制が崩壊する恐れもある。
遠藤会長は「医療にどうお金をかけるか、市と住民で考えてほしい」と話している。

これ自体は昨今ではどこでもありふれた産科救急逼迫の話題であり、札幌市も改善を検討するということで何かしらの落としどころが見いだされるものだろうと言う程度で終わった話なのですが、問題はその後の経過です。
しばらくすると今度はこんな記事が出てくることになり、にわかに香ばしいものが漂い始めたのですね。

札幌の産科重症救急 医会、輪番制9月撤退 市と決裂(2008年7月23日北海道新聞)

 札幌市は22日、札幌市産婦人科医会(遠藤一行会長)が重症者を診る2次救急の輪番制から撤退するのを容認する方針を固めた。同医会は救急医療の負担軽減を求めていたが、市は財政上の理由から対応策で折り合えないと判断した。医会は9月末で撤退することが確実となった。医会は2次救急と組織的にかかわらなくなるが「個別の病院で対応する」としている。
 撤退により、重症者が重篤な患者を診る3次医療機関に集中する事態が懸念されるため、市は10月から夜間急病センターに看護師や助産師をオペレーターとして配置。札幌市内各病院の空きベッド数を確認し、その情報に基づき救急隊が病院を探す。また、市は三次救急を現行の4病院から7病院に増やす考えだ。
(略)
 今年3月には市と医会、市民団体のメンバーらで対策協議会を立ち上げて協議。市は6月末に「ニーズを調べ、必要性が認められれば来年度から同センターに医師を配置する」との改善策を示したが、医会側は「医師を必ず配置する確約がなければ応じられない」と難色を示し、17日の臨時理事会で受け入れ拒否を決定した。

 市保健所の館石宗隆所長は「センターに医師を常駐させる体制には少なくとも年4000万円以上かかる。財政が厳しい折に多くの市民に説明できない」と強調。オペレーター制度は年2000万円程度の費用を見込んでいる。
 一方、医会の遠藤会長は「産婦人科医が減少し続ける中、自分たちの病院の患者を守るのに全力を尽くさなければならない状況。ただ、市から重症者の受け入れ要請があれば個別に病院で対応する」としている。

かくて同年9月末で二次救急輪番から脱退してしまったと言うわけですが、医会の提案を蹴った市当局は「2次救急の患者を必ず受け入れる拠点病院を整備するから問題ない」と言うばかりで、それは心ある市民ならこのご時世に大丈夫なのかと心配になることでしょう。
実際のところ同市内の状況がどうなっているのかが垣間見えるこういう記事があります。

札幌未熟児死亡 2病院はNICU持たず、5病院は満床(2008年12月3日朝日新聞)

 札幌市の女性が自宅で早産した未熟児が昨年11月、病院に相次いで受け入れを断られ、8カ所目となる搬送先の病院で数日後に死亡した問題で、7病院は、未熟児の治療に必要な新生児集中治療室(NICU)が満床だったり、備わっていなかったりしていたことが分かった。当時、「たらい回し」の末の妊婦や胎児の死が問題化していた。なぜ、教訓は生かされなかったのか。

 未熟児の受け入れを断った病院のうち、NICU病床を持つのは5病院(計42床)。

 高度医療の中核である総合周産期母子医療センターに指定されている市立札幌病院(NICU9床)は「当日夜は満床のうえ、当直医師も別の新生児の治療中で引き受けられなかった」と説明。翌日になってNICUに空きができ、搬送先となった手稲渓仁会病院に転院を打診したが、「動かせる状態になかった」という。

 札幌市内で最多の12床を備える天使病院は「当時の記録は残っていないが、満床で断ったと思う」、札幌医大病院は「満床だったので断った可能性が強い」と話した。北大病院は当日、院内感染対策でNICUを消毒中で、「受け入れ不能の状態だったはず」という。
(略)
 NICUを持たない2病院も要請を受けた。

 札幌徳洲会病院は「この症状では当院での治療は無理という判断が当然。設備のある病院で手だてを作ってもらわなければ困る」と説明。KKR札幌医療センターも「毎晩産科医がいるわけではないし、そもそも急患は妊娠34週以降に限っている」と要請自体を疑問視する。

 市消防局は、これら7病院への搬送要請について「次々と断られたので範囲を広げるしかなかった」と説明している。

おわかりでしょうか?札幌市内ではそもそも産科・周産期救急医療のリソースが根本的に不足していたことが今回の事例の背景事情として存在しているわけです。
「道央圏で唯一の総合周産期母子医療センター」である市立札幌病院の対応を批判しているような場合でもなく、市当局が今ごろNICUの増床やら新生児科医の増員やら言いだして間に合うような話でもなく、ずっと以前から存在している構造的問題であるのです。
市当局が自信満々で問題ないなんて言い切ったことが、どれほど現場の実感から遠いことであったことかおわかりいただけましたでしょうか。

このあたりの現場の事情が見え隠れするのが、当の私立札幌病院のサイトにありますご意見箱の内容です。
ぱらぱらと見ていくと「ずいぶんと態度の悪い医者が多い病院なんだな」と感じられると思いますが、これなどまさに過重労働に過労した現場の志気崩壊寸前に典型的に見られる光景なんですね。
産科救急に限って言えば医会の輪番離脱で更なる過重労働を強いられているはずですから、それはもう現段階ではすさまじいことになっていることと想像します。
さらに志気崩壊の元をたどっていけば、こんな古い話にまで行き着いてきます。

平成16年度第7回定例市長記者会見より抜粋
「市立札幌病院における医療事故の医師名公表について」

北海道新聞
 市立札幌病院のこれまで非開示になっていた医療事故の医師の氏名等が、文書で開示されるということになりました。上田市長も医療過誤の専門家というようにも言われていらっしゃいますので、こういう流れみたいなものはどういうふうに受け止めていらっしゃるか。あと、今回のこの決定が今後どういうような影響をもたらすのか、お考えのほどをお聞かせください。

市長
 今回の審査会の決定については、私は一切関与しておりませんけれども、患者さんがどのお医者さんに何をされたのか分からないままいるという状況はどうしても不可思議なことではなかろうかなというふうに思いますので、大きな流れとして個人の責任といったものが明らかにされるということ、情報公開の流れの中では、全国的には非常に突出した決定のようにも思いますけれども、利用者の皆さん方、患者さんあるいはご遺族の皆さん方にとってみれば、より医療の透明性といったものを保たせるということに通じるだろうというふうに考えます。

当時の市長と言えば平成15年から今に続く上田文雄現市長の話ですが、この方は弁護士上がりで元々が医療事故訴訟の専門家と言いますから、医療には決して因縁浅からぬものがあるわけですね。
市立札幌病院の服部司新生児科部長の言うように「無理をしてでも当日に受け入れ」ていたらどういうことになっていたか、いささか悪趣味な興味も出てくるわけですが、それはともかくとしても噂を聞く限りかなり香ばしさ漂う市当局の方針だったようです。
記事中でもこうした件に自分はノータッチであることを強調していますが、現在に至る札幌市医療行政の流れを見る限りでは、これだけ崩壊しかけている同市の医療に対して少なくとも市長が率先して改革・改善していくというタイプの御仁とは到底見受けられないところでしょう。
その結果札幌市の産科救急はどういう状況になっていたのかは見てきた通りですが、実は今回の事例が明らかになる前のつい先日のこと、新たに開設されたオペレーター制度に関して市当局はこんなことを言っているのです。

札幌市の産婦人科救急、おおむね良好(2008年11月13日北方ジャーナル)

 産婦人科の救急医療体制について話し合う札幌市産婦人科救急医療対策協議会が11月13日開かれた。(略)
 協議会では主に施行から1カ月間の結果報告が行なわれた。相談窓口の助産師は、患者や医療機関、救急隊からの電話を受け、軽症者には翌日の受診を促し、医療措置の必要なケースでは2次・3次の病院を紹介している。1カ月の相談件数は181件で、そのうち救急医療機関に受診を手配したのは28件、1日あたり0.9件となった。9月以前の産婦人科への1日あたりの搬送件数は2.2件で、まだ施行から1カ月のデータで安易に判断はできないが、データだけを見ると救急搬送は電話相談により半減したことになる。

医会が撤退を表明し、市内の2次救急に穴が空くと心配されたが、現在のところ杞憂に終わっている。市の説得により協力を約束した「拠点病院」が毎日、市内の2次救急医療を担当しているほか、拠点病院以外の6つの「協力病院」が月の半分ほどの日数を当番制で救急を担当し、拠点病院とともに救急患者の受け入れのために待機している。月に半分ほどの日数は2つの医療機関が2次救急を受け持っているということだ。拠点病院なる病院が市内のどこの病院かはもちろん記者や関係者は分かっているのだが、この病院名は公表できない。「その病院では夜でも患者を受け入れているんだ」と、心ない市民が救急病院としてではなくコンビニのように便利な“夜間診療所”として利用する可能性があるからだ。だから公表しない。今後どこかで公表されることがあるとすれば、そのメディアが何にも考えていないか、あるいは拠点病院が2次救急から手を引くときかだろう。そういう見方で病院名を気にしておくのも面白いかもしれない。

 また、市では1月からの3カ月間、助産師だけではなく産婦人科医も相談窓口に置き、助産師だけの場合との比較、検証を行なう方針だったが、その相談医師の配置に産婦人科医会は、「電話だけでは医師は到底責任が持てない」と協力しない意向を示した。とりあえず、1カ月の結果検証では「おおむね順調なスタート」ということが確認され、そのほかにもさまざまな事柄が話し合われた。

ええと…この人達はどこまで脳内お花畑なんでしょうか(苦笑)。
とりあえず送り先が決まってるんですからそれは救急搬送先を探す手間は減るでしょうが、肝心の送り先が一杯という現実は無視でしょうか。
リソース不足という一番肝心な問題には最後の瞬間まで目をつぶっておいて、いざマスコミで事件が報道された途端に「すみませんすぐに増やしますので」って、それどんな蕎麦屋の出前やねん!出来ることなら最初っからやっとけ!と突っ込みも入ろうと言うものですよ。
この人達は現場の声を聞くとか、現場を守っていくとか言った考え方は持っていないんでしょうね。

医療に限らずどんな職場でも同じ事ですが、スタッフを尊重しない職場はスタッフから尊重されることもありません。
今回の事例を契機に市当局が今後「戦犯捜し」を始める気なのかどうかは知りませんが、現場はとっくにこれだけ崩壊してきているという現状に目を背け続けた結果が現在の状況であると考えていくなら、一番の戦犯は誰か?と言えばもはや明らかなんじゃないかと思うんですけどね。
今回の事例を彼らがどういう具合に総括してくれるものなのか、その成り行きが楽しみですよ。

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2008年12月 4日 (木)

政府の将来ビジョンは? ~ 介護業界の今・その二

今日は昨日に続いて介護ネタをもう少しやります。

金がない人がいないとナイナイ尽くしの介護業界ですが、少なくとも社会的需要は大きなものがあるわけです。
政府厚労省としてはこのまま介護を潰す気なのか、それともテコ入れして何とかしようとしているのか、まずは監督省庁の責任としてその点を明らかにしなければならないところではないでしょうか。
というわけで、最近の報道の中から政府の目指すところに関連する話題を取り上げてみましょう。

「療養介護士」の創設提言(2008年11月12日  読売新聞)

厚労省案 経管栄養やたん吸引など可能に

 厚生労働省は12日、あるべき介護の将来像を示す「安心と希望の介護ビジョン」のたたき台をまとめた。

経管栄養やたんの吸引など一定の医療行為を行う「療養介護士(仮称)」の創設や、介護職の給与公表の推進などが盛り込まれた。

 ビジョンは、舛添厚生労働相直属の検討会が7月から検討していたもの。たたき台では、2025年の高齢社会を見据えた上で、〈1〉高齢者が地域づくりに貢献できる環境づくり〈2〉地域で暮らし続けるための介護の質の向上〈3〉介護従事者にとっての安心と希望の実現――の3点を強調している。

 介護の質の向上では、総合的なケアを提供するための専門職として、経管栄養やたんの吸引など、原則として医療職しか認められてこなかった一部の医療行為が行える「療養介護士」を創設する。24時間対応の訪問介護・訪問看護事業者の確保、在宅生活支援リハビリテーション拠点の整備なども盛り込まれた。

報道だけ見ているといつもの判ったような判らないような言葉の羅列で「そのコストは誰がどうやって負担するの?」と言う話がてんこ盛りですが、ここで注目すべきは新たな資格職らしい「療養介護士」なるものの創設でしょうか。
おそらく全国多くの介護関係者が「それって介護福祉士とどう違うっちゅうねん?!」と突っ込みを入れたことと思いますが、まずもってこういう意味不明の新資格導入という話は認定業務関連で天下り先なりのうまみを求めているのだと考えておけば間違いありません。
さすがにあまりにバレバレだと例によって「誤解」を受けるとでも考えたのでしょうか、直後に早速こんな報道が出ています。

「療養介護士」創設見送り 介護従事者に経管栄養などの医療行為研修を(2008年11月20日医療タイムス)

 舛添厚労相の私的諮問機関「安心と希望の介護ビジョン」は20日、介護ビジョンの取りまとめを行った。厚労省が提案した「療養介護士」の創設については、新資格創設は見送られた。「療養介護士」は厚労省が前回会合で、介護士が経管栄養や喀痰吸引などを行える新たな資格として提案。在宅での生活を推進していく上で、経管栄養などの医療行為が行えるよう緩和は必要と、委員らも趣旨には賛成だった。しかし、新資格の創設では普及に時間がかかるなどの指摘があり、最終的に「療養介護士」創設は見送られた。その代案として、必要な研修を受けた介護従事者が施設入所者に対し、医師や看護師との連携の下に、安全が確保される範囲内で経管栄養や喀痰吸引などを行えるよう条件整備を行うことを決めた。具体的には、介護福祉士などの研修項目に経管栄養や喀痰吸引などを盛り込む。

新資格なんてなしでもやれるなら最初っからそれでやれよと言いたくなるところですが、この程度の朝令暮改でへこたれていては昨今の厚生行政についていくことなど出来ないということですね。
問題はどの程度の行為が実際に出来るのかということですが、例えば吸痰一つを取ってみてもその道はなかなか奥が深く、正しく正確に行うには長年の修練を要するという技術です。
単に「法令上行えるようにする」だけではなく、背景の医学知識まで含めてきちんとした教育が行っていけるかどうか、果たして現状の介護の現場にそこまでの対応が出来るのかどうかにも注目が集まるところですが、何しろまだ話が出たばかりの段階ですので今後の展開に注目していきましょう。

さてもう一点、今度はこの不景気の寒風厳しい世情にとっては光明となるかも知れないという密やかな期待感もこもる?ニュースです。

フリーターを介護職員に 厚労省、雇用事業者に助成金(2008年11月19日日経ネット)

 厚生労働省は2009年度にも年長のフリーターを介護職員として雇用した介護事業者への助成制度を始める。25歳以上40歳未満のフリーターが対象で、 1人当たり年100万円を1回助成する。就職環境の厳しい年長のフリーターを人材の不足する介護分野に誘導する狙い。19日午前に開かれた自民党の雇用・生活調査会で報告した。

 助成金は採用6カ月後に50万円、その6カ月後に50万円を支給する。介護事業者ごとに最大3人までを助成対象とする。

 厚労省は12月から、介護事業者が介護業務の経験のない人を採用した場合に年50万円を支給する制度を始める計画。この制度とは別に、年長のフリーターを対象にした助成策を設けることにした。

以前から「医療・介護は国民的事業としてもっと拡大せよ」と主張している者としては不景気だからやるって話ちゃうやろ!と言いたいところですが、ついでにケチをつけておきますと中途半端な年齢制限には何の意味があるのでしょうか?
むしろリストラされた中高年層やリタイアしたプレ被介護者も含めて、国民全員参加の国民的事業として介護というものをやっていったらいいじゃないですか。
道路なんてものより介護の方が今後はるかに需要の伸びが見込まれるわけですし、将来性という点でも社会的容認度という点でも土建行政と揶揄されるよりはるかに票に結びつくんじゃないでしょうか?
そのためにこれだけの財源が必要ですが、これは間違いなく国民の皆さんに還元されるお金ですときちんと説明していくのが、今こそ政府厚労省に求められている仕事なのだと思いますけどね。

さらに大風呂敷を広げてみますと、どうせ教育現場でボランティアを必修化しようなんて話もあるようなご時世なんですから、いっそ介護経験を単位認定してみるというのはどうでしょうか。
中学、高校あたりでは年間何十時間か介護現場に参加すればそれなりの点数がついて内申書も有利になるとすれば、それなら話のネタにもやってみようかって人間は結構いるんじゃないかと思うのです。
実際どのあたりまでやらせるかはまた今後の検討課題ってやつですが、少なくとも最低限の救急対応とか介護の仕事は基礎教育の段階で仕込んでおくことによって、国民ほぼ全てを介護と言うものに関して最低限の「手に職を付けた」状態にしておくことが目的です。
その昔には日本にも徴兵制度というものがあって、一通りの基礎的教育を行った予備役を有事に動員するということが行われていましたが、平和国家日本にふさわしいのは国民皆兵ならぬ国民皆介護従事者という国家方針ではないでしょうか。

というわけで、どこかの政党でもこんな政策掲げてみてくれませんかね?

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2008年12月 3日 (水)

不景気のさなかでも求人てんこ盛り?! ~ 介護業界の今

森鴎外の小説の一つに「高瀬舟」という短編があります。
島送りになる罪人を護送する高瀬舟の上で、弟殺しという重罪を犯しながらどこか嬉しげな様子を見せる罪人と、それを不審に思った役人とのやりとりが不思議な余韻を残す物語ですが、今日においても「やむにやまれぬ罪を犯した者」と言う文脈でしばしば引用されるところです。
今日は現代の「高瀬舟」とも言うべき一つの事件についてまず引用してみましょう。

100歳の実父殺害 壮絶な介護実態(2008年12月2日  読売新聞)

 宮崎市の自宅で100歳の実父を殺害したとして殺人罪に問われている同市吉村町、無職佐藤智子被告(71)の初公判が1日、宮崎地裁(高原正良裁判長)であり、佐藤被告は起訴事実を認めた。検察側は冒頭陳述で、壮絶な介護の実態を明らかにしつつ、懲役5年を求刑。弁護側は「遺族に処罰を求める声はない。6000人近い嘆願書も集まっている」と執行猶予付きの判決を求め、即日結審した。

 起訴状によると、佐藤被告は昨年12月24日、自宅で就寝中だった父の正行さんの腹や首などを包丁で刺し、失血死させた。その後自殺を図り、帰宅した夫に見つかって一命を取り留めた。

 冒頭陳述などによると、佐藤被告は35年前から父の世話を始めたが、父は10年ほど前から認知症の症状が出て、叱責(しっせき)したり、つえを振りかぶったりするようになった。叱責は毎日のように続き、被告は昨年4月、うつ病と診断された。父は深夜に大声を出し続け、徘徊(はいかい)する行為や部屋の窓ガラスの損壊も。実の娘を他人と思い込んで、「取ったものを返せ」とののしったこともあった。

 一人で日常生活を送ることは困難になり、自宅に客を招くことさえできなくなった。家族で話し合い、同年12月25日に介護施設への入所を決めた。ところが、24日午前、父は自宅を施設と誤解して「施設には入らん。死んだ方がまし」と激しく抵抗。被告は入所が無理と思い、自殺も考えたが、「父親を残せば、夫や妹にも迷惑をかける」と考えて無理心中を思い付いたという。

 佐藤被告は別の時期にも自殺を考えたが、踏みとどまっており、犯行後は夫に「ごめん、死なせてちょうだい」と語ったという。被告人質問で「殺すしか手段はなかったのか」と問われ、被告は消え入るような声で「今考えてもよく分かりません」と供述した。

 検察側は論告で「今後、被告のような家庭が急増すると予想されるが、安易に寛大な刑は高齢者の命を軽んずる風潮につながりかねない。負担を強いられたのは事実だが、動機は自己中心的」と指摘した。一方、弁護側は長年介護を続けた被告自身も病を患い、無理心中を図った事情へ理解を求めた。判決は26日に言い渡される。

事件自体に関してはこちらの短い記事に見られるように当時それほど大きな注目を集めたわけでもありませんでしたが、こうして経緯が判ってくると医療・介護問題では全く門外漢である検察にまで「今後、被告のような家庭が急増すると予想される」と言われるように、まさによくありそうな事例ではありますね。

慢性期の患者を引き受ける療養病床削減問題については以前にも取り上げましたが、政府厚労省は一時的に先延ばしにするとは言っているものの削減方針自体は撤回しているわけではなく、医療機関から介護・療養施設へという流れを医療費削減の柱の一つと位置づけているようです。
その政策誘導の一環として診療報酬削減によって医療機関自身に患者追い出しをさせようとしているのが厚労省のいやらしいところですが、その結果どういうことが起こっているのかということですね。

診療報酬改正でスケープゴートに、再入院もままならない脳卒中後遺症患者の苦難(2008年11月12日東洋経済)

 血栓溶解剤(t‐PA)使用への高額の加算創設など、2008年度の診療報酬改定では、脳卒中患者の早期治療、早期回復を強力に後押しする仕組みが盛りこまれた。反面、脳卒中の後遺症で長期の入院生活を続けている患者や体調の悪化で急に再入院が必要になった患者には、今までと同様の入院の機会が保障されなくなった。

 東京都足立区の柳原リハビリテーション病院(藤井博之院長、総病床数100床)。同病院3階の「障害者病棟」(40床)には、介護する人がいないために自宅に戻れない脳卒中の後遺症患者や、在宅生活で機能が低下した患者が多く入院している。ところが、今回の診療報酬改定で、そうした患者が同病棟の報酬算定対象者から10月1日付で外された。これにより同病院は報酬算定を断念。病院の収入が月に550万円も減少する見通しになった。

 柳原リハ病院の年間収入は約10億円。今の事態を放置すると、半年で7000万円近くも穴が開く。同病院では、難病患者など引き続き障害者施設等入院基本料の対象となる患者の受け入れを増やすことで、再び障害者病棟の入院料の算定を目指しているが、道のりは厳しいという。

 病院の危機は、患者の危機と表裏一体だ。診療報酬点数の低い患者は病院経営を圧迫する。その結果、「不採算」の患者は行き場を失う

発端は療養病床再編 患者支援の機能が欠如

 「障害者病棟には、本来の目的にそぐわない患者が多く入院している。そういった方々は、(介護保険対象で医療従事者が少ない)老人保健施設などに移っていただきたい」

 厚生労働省幹部がこう言い放ったのは07年11月。診療報酬改定を議論する審議会の席上だった。難病患者や肢体不自由児などの入院を目的にした同病棟に、脳卒中の後遺症で障害を持つ患者が多数入院している事実を取り上げ、「本来の趣旨に外れている」と同省幹部が断言したのだ。

 脳卒中後遺症患者が同病棟に流入したのは、06年度の診療報酬改定にさかのぼる。この時、長期入院患者が多い療養病床(医療保険適用)に患者の医療必要度に応じた「医療区分」を導入。寝たきりなどで介護の手間がかかるものの、医療行為が比較的少ない患者に関する診療報酬を採算割れの水準にまで引き下げた。

 医療区分導入を機に、こうした患者が多い病院は経営危機に直面。病棟の一部を、相対的に診療報酬が高い障害者病棟に転換することで経営悪化と患者の追い出しを回避しようとした。改定前の05年から2年間で、同病棟の病床数が5割増の5万床に達したことがその事実を物語る。

 ところが厚労省は、08年度の報酬改定で障害者病棟の対象患者から脳卒中の後遺症患者を除外。患者を自宅や介護施設などに移転させる方針を明確にした。が、ここでの問題は自宅に介護者がいなかったり、介護施設が満杯で退院の見通しの立たない患者が少なくないことにある。

 柳原リハ病院では、脳卒中後遺症患者は同病棟の5割を占める。医療保険適用の療養病床から転換した経緯があるためだ。同病院では患者の追い出しは行わないが、自宅で体調を崩した患者の再入院も困難になっている。「亜急性期病床」という再入院の仕組みも活用しているが、病床数は全体の1割に規制されているため、同病院では10床にとどまる。

 「介護施設を含め、脳卒中患者を長期で支える仕組みを欠いたまま、障害者病棟を大幅に見直したのは歴史に残る失策だ」(藤井院長)。

 脳卒中患者の苦難は続きそうだ。

療養病床の削減問題は以前にも書いたところですが、結局のところ回り回って受け皿を失った急性期病院が救急患者を受けられないという問題にまでつながっていることをまず認識しなければなりません。
現実問題として医療機関から介護施設に移そうとしたところでどこも満杯の数年待ちという状況が解消されないのに、入所待機中の慢性期患者を引き受けていた療養病床を大幅削減しようとしたところに無理があったわけですが、むしろ厚労省としてはそれすらも折り込み済みだったのかも知れません。
急性期病院はどこも一杯で常時満床状態、慢性期を扱う療養病床ですら大幅削減となれば、要介護度の高い患者層は何があろうが物理的に入院加療など行えなくなるのは当然なのですから、結果として医療費削減も達成されるという理屈なのです。
厚労省も「療養病床の再編成についての概要と基本的なQ&A」なんてものを発表して必死に「誤解」を受けないよう努めてらっしゃるようですが、問題は彼らの「入院させる場所がなくなれば患者も出て行かざるを得ないだろう」なんて考えが国民の支持を受けているかどうかなんですけどね。
国民が求める水準の医療には金がこれだけかかるという説明責任も果たさないまま、単に現場に行政の尻ぬぐいを押し付けようとする姿勢はどうかと思いますよ。

さて、介護施設が足りなければ増やせばいいじゃないかとお考えになるかも知れませんが、実のところ医療スタッフのみならず介護スタッフも大幅な人材不足で、どこも手を広げようにも現状維持が精一杯という現実があります。
仕事がきついのは人手不足もあるわけですから仕方がない部分もありますが、問題はそのきつい仕事に見合うどころでなく報酬が極端に安いということで、ここでも根本的な原因は介護報酬を出し渋る厚労省の姿勢があるわけです。
確かに自分でお金が出せる人達用の施設なら現状でも待たなくてもいいくらい余裕があるのですが、だから介護施設は十分足りてるってものでもないですよね。
施設はどんどん増やせ、ただし金は出さないぞ…こういう社会奉仕精神を強要するような厚労省の政策に乗ってくれる心優しい人間ばかりだったら、日本という国もさぞや住み心地の良い国になっていたことでしょうが、残念ながらそんなユートピアはまだこの地上には存在していなかったようですね。

介護事業所の経営悪化…報酬減、人手不足 介護業者 火の車(2008年11月6日  読売新聞)

 厚生労働省が10月に発表した介護事業経営実態調査の結果から、介護施設などの経営が悪化していることが分かりました。
 実態調査は、3年ごとの介護報酬改定の参考とするために行われます。今回は、15種の介護サービスを行う計2万4300事業所・施設に今年3月の経営状況を聞き、7195事業所・施設から回答を得ました。

 2005年の前回調査と比較すると、収入に対する利益の割合(利益率)が、特別養護老人ホームは13・6%から3・4%に、デイケアは18・9%から4・5%に大きく下がりました。入居者の要介護度上昇で収入が増えたグループホームなど、4種を除き、利益率が低下していました。
 06年度の介護報酬改定(05年10月改定分を含む)で、社会保障費を抑制するため、施設サービスで平均4%、在宅サービスで平均1%、介護サービスの価格にあたる報酬が引き下げられたことが、大きく響いています。
 ケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所の利益率は、最も厳しいマイナス17・0%となりました。経営を安定させるだけの利用者を確保できなかったことなどが影響したと見られています。
 事業規模別に見ると、規模が小さいほど、経営が厳しいことが分かります。この傾向は、訪問介護などの在宅サービスで特に強く出ています。

 介護の仕事は、大変な割に賃金が安いと言われています。特に都市部では他業種の賃金水準が高いため、職員を集めるには賃金を上げざるを得ません。このことも施設の経営を圧迫している要因になっています。特養では、収入に対する給与費の割合が、05年調査では55・1%でしたが、今回は60・8%に上昇しました。
 こうした現状を受け、政府・与党は、来年度から介護報酬を3・0%引き上げることを決めました。施設などに入る収入を増やし、職員の賃金を底上げするのが狙いです。月給を2万円引き上げ、現在約120万人いる介護職員の人数を約10万人増やすことを目指しています。

 事業所や施設の経営を安定させ、介護職員の待遇を改善することは、ケアの質の向上にもつながります。厚労省は、実情に即した報酬改定を行い、引き上げによる負担増について、国民の理解を得る努力が必要です。

【埼玉】介護 人手不足、疲弊する現場(2008年10月28日東京新聞)

 財団法人介護労働安定センター(東京都文京区)が昨年度に県内の179の介護関連事業所に行った調査によると、訪問介護員や介護職員など労働者の平均年齢は44.4歳。雇用形態別では非正社員が58.7%。1年間の離職率は全国より1.5ポイント高い23.1%で、離職者のうち勤務年数1年未満の人が49.6%を占めた。一方で平均月収は全国平均より9000円高いものの約22万3000円で、労働者に対する労働条件などの悩み調査(複数回答可)では「賃金が低い」が53.1%とトップだった。

◆寝る暇ない当直

介護業界は低賃金に加えて過酷な労働環境が敬遠され、さらに人離れが進むという悪循環に陥っている。
 「転職はめずらしくない。少しでも労働条件の良いところに人材が流れていく」。そう指摘するのは、川越市のデイサービスセンターに勤める介護福祉士の女性(39)。今の施設は三カ所目の職場だ。
 女性は「当直時間帯、看護師を含めて三人で六十床を担当した。おむつ交換や食事の介助に追われて寝る暇なんてなかった」と以前勤めていた病院の状況を振り返る。基本月給は手取り十四万円程度。生活のためには当直に入らざるを得なかった。職員不足も相まって八回も当直をこなした月もあった。
 女性は「福祉系専門学校はバタバタとつぶれ、九割以上の施設で職員が不足している」と前置きし、「待遇を改善し、次の担い手を育てる政策を打ち出さなければ、スタッフの質は落ちるばかりです」と警鐘を鳴らす。

折しも世情は新たな不景気の時代に突入しつつあると言いますが、どうせ政府主導で金を使うのであればこういう社会的需要もあり、人材も求められているところがもっと立ちゆくようにしていけばいいのにと思いませんか?

そのあたりにつきましては長くなりましたので次回に回したいと思います。

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2008年12月 2日 (火)

診療報酬不正請求問題 ~ 悪徳医師が保険財政を崩壊に導く!?

昨日は元厚労省の美容外科医が新郎報酬不正請求で逮捕されるというなかなかキャッチーな事件がありまして、ワイドショーなどでもそれなりににぎやかに取り上げられていたようですね。
まずは記事から紹介してみましょう。

診療報酬不正請求で旧厚生OB医師ら3人逮捕 神奈川県警(2008年12月1日産経新聞)

 美容外科「菅谷クリニック」(現サニークリニック)で診療報酬の不正請求を繰り返したとして、神奈川県警は30日、詐欺容疑で、旧厚生省OBの医師でクリニックを経営する医療法人社団「天道会」理事長の菅谷良男容疑者(58)ら3人を逮捕した。
 菅谷容疑者は「不正請求はしていない」と否認しているという。菅谷容疑者は昭和62年~平成元年、旧厚生省で医療指導監査官として保険請求の不正監査に従事していた。

 調べでは、3人は平成16年10月ごろから18年8月ごろまで、自由診療で入れ墨除去をした患者に虚偽の病名を付けて保険診療を装い、計約110万円をだまし取った疑い。
 クリニックをめぐっては、診療報酬約400万円を不正請求したとして神奈川社会保険事務局が昨年2月、保険医療機関指定を取り消し、同年12月、菅谷容疑者を詐欺罪で刑事告発。県警は今年1月、クリニックなど関係先を家宅捜索したほか、菅谷容疑者に任意で事情を聴くなど、調べを進めていた。

元厚生省OBの医師逮捕 不正請求暴くプロが自ら不正(2008年12月1日産経新聞)

 「不正請求は行っていない」-。美容外科「菅谷クリニック」(横浜市泉区、現サニークリニック)で診療報酬を不正に請求したとして、詐欺容疑で神奈川県警に逮捕された菅谷良男容疑者(58)は、旧厚生省で不正請求が疑われる保険医療機関への監査に従事した経験を持つ、その道のプロ。不正の手口には精通していた。

 菅谷容疑者は昭和62年~平成元年まで、旧厚生省で医療指導監査官として保険請求の不正監査に従事。かつては医療機関による巧妙な架空請求や二重請求に目を光らせ、「摘発」してきた。
 しかし、旧厚生省を退官後後に美容外科をスタートさせると、自らが不正に手を染め、逮捕前には「治療していないのにしたものとして請求したことはない」と繰り返した。

 厚生労働省によると、18年度に実施した医療機関への個別指導は3334件で、新規に保険適用となった施設への指導分などと合わせ、求めた返還額は計約53億4000万円。
 総医療費が30兆円を超える一方で、少子高齢化の急速な進展で保険財政は逼迫(ひっぱく)の一途をたどっており、診療報酬の不正請求は財源不足をより悪化させる。

 不正請求を知り尽くした菅谷容疑者が逆に不正を行っていたとすれば、許されるものではない。

この件に関しては実際のところどんな状況だったのかまだ判らない部分が多いのですが(噂では詐欺まがいの行為も確かにあったとか云々…)、テレビ報道などを中心にいわゆる診療報酬不正請求問題と絡めて論ずるものが目立ちます。
そもそもこの診療報酬の不正請求というもの、いったいどういうことなのか世間一般では理解されていない場合が多いようですね。
「また何か医者が小ずるいことをやって金儲けしてるんだろ」なんて認識では医療側にとっても被医療側にとっても不幸が増えていくばかりなので、今日は不正請求という現象について少しばかり書いてみましょう。

診療報酬というものは行った医療の内容を記録したレセプト(いわゆる明細書)というものを毎月医療機関から保険者(国民健康保険団体連合会や社会保険診療報酬支払基金など)に送り、査定を経た上で認められた分が保険者から医療機関に支払われることになっています。
ところがこの診療報酬の査定というものは県毎に基準が違っていたりと昔から保険診療に関わる大きな問題として指摘されてきながら、全く改善されることなくますます悪化の一途をたどっているところなんですね。
こちらのようなサイトでもいろいろと書かれていますが、聞くところでは業者に外注で査定審査をやっていて、減額に成功すると成功報酬でその何割とかが委託業者の懐に入る仕組だと言いますから、それは医療として正しい、正しくないとは全く無関係に、ただ保険者の支払いを減らすためだけの作業が行われるのは当然でしょう。
つまり、明らかな詐欺行為もおかしな査定で削られた分も同じ「診療報酬不正請求」という言葉でくくられてしまっているのが現状であるわけです。

こうした機械的な査定審査の結果、医療現場にどういう影響があるのかが重要になってきますが、いくつか簡単な例を取り上げてみましょう。
慢性呼吸器疾患の患者では「経皮的酸素飽和度」と言うものを測定することが欠かせません(指先にセンサーをつけると酸素飽和度何%と表示される機械です)。
当然この測定というものは保険診療上認められた正当な医療行為なのですが、例えば一ヶ月間入院した患者に一日一回、計30回測定しましたと請求すると、たいてい10回くらいはばっさり切られて認められません。
おかしいと思いつつも20回までは認めてくれるんだなと次の月には20回測定しましたと請求すると、今度は7回くらいは切られてしまいます。
何で?と思いつつしつこく請求を繰り返していると、そのうち「おたくの病院、ちょっと請求回数が多すぎるんじゃないですか?いい加減にしないと全部認めなくしますよ?」なんて恐ろしいコールが来ることになるわけです。

無論、指先につけるセンサーで計るだけのことですから初期の導入コストはかかっても運用コストは微々たるものであって、無制限に認めれば幾らでも金儲けのネタにされてしまうという懸念は理解できます。
しかしそこには「酸素飽和度も測定できないようでは、この患者さんの治療は満足に行えないのでは?」などと言う考えは微塵も存在しておらず、単にお金の多寡だけを問題にする姿勢が根底にあるわけです。
「不正請求」を行った医療機関とそれを切り捨てた保険者、はたしてどちらが「正しい医療」を目指していると言えるのでしょうか?

不正請求の別な例として、最近なにかと話題になっている「同じ成分で同じ効果」をうたうジェネリック(後発医薬品)と言うものがあります。
このジェネリック問題については以前にも少しばかり取り上げましたが、ジェネリックも不正請求の温床となっていることをご存知でしょうか?
保険診療において薬を出すには、カルテにそれらを用いることが保険上認められている病名(適応症)を記載しなければならない、逆に言えば適応症としての病名記載がないのに薬を出すことは診療報酬の不正請求とされてしまいます(薬だけでなく検査や手術など何でも同じことですが)。
問題は同じ成分で同じ効果を持つはずでありながら、元になった薬(先発品)が持っていた適応症を持っていないジェネリックが存在しているということなんですね。

甲と言う病名に対して適応となっている薬Aを処方していた患者がジェネリックへの変更を希望しました。
担当医は処方箋に「同効薬変更可(ジェネリックに変えても良いよ)」と記載して患者に渡しました。
患者は院外の薬局でAのジェネリックであるA'という薬を受け取り、薬代も安くなったと喜んで帰りました。
嗚呼!やっぱりジェネリックって素晴らしい!

ところが後日判明したことに、担当医がカルテに書いていた保険病名が薬Aの適応症としては認められていても、薬A’の適応症としては認められていなかったのですね。
そうなると薬剤を処方した医療機関の診療報酬から適応外の薬価分の点数が差し引かれてしまい、しかもマスコミからは「また金勘定だけ達者な悪徳医者か!」などとバッシングされ、おまけに近隣住民からは「あそこの病院って違法行為やって処罰されたんですってね」と噂を立てられることになるわけです。
「幾ら何でもそりゃおかしいだろう」と処方箋のジェネリック変更を不可にするなど、ささやかな抵抗をしている先生もいらっしゃいますが、想像するだけで空しくなってきませんか?

あるいは陣痛促進剤の保険外使用の問題があります。
そもそもこの陣痛促進剤というものもひと頃さんざんバッシングされた薬ですが、例えば胃潰瘍の薬として承認されている「サイトテック(ミソプロストール)」という薬を陣痛促進剤として保険外適応したことをもって「添付文書にも妊婦には流産の危険ありと記載されているのに!なんてひどい医者だ!」とやられた。
実はこのサイトテックという薬、海外では陣痛促進剤として一般的に用いられている薬なので「潰瘍の薬として」妊婦に使えば流産するかも知れないのは当たり前なのですが、これも国内では何故か陣痛促進剤としての保険適応が認められていないことが問題をこじらせたのでした。

サイトテック自体は産科の先生からは「使いやすい薬だったのに残念だな~」と惜しむ声も漏れ聞こえて来ますが、日本では使ってはならないと言うのであれば他の薬を使わざるを得ないのは仕方ありません。
陣痛促進剤の使用自体についても色々な意見はあると思いますが、ここでは「極めて劇的な効果を生む薬とはしばしば最も強力な毒薬でもある」という一般論を語るもににとどめておきます。
しかし本来であればごく当たり前に使えたはずの有用な薬を正当な使い方で用いていながら不正請求として非難されると言うのであれば、それはやはり釈然としないものを感じますね。

もう一つ別な例として血液製剤(アルブミン製剤)の問題も取り上げてみましょう。
肝硬変も末期になってくると血液の浸透圧を維持する蛋白質(アルブミン)が次第に低下していき、身体の中の隙間に水が貯まって見るからに苦しそうな状態になってきます。
これを改善するために外から蛋白質を補いながら治療を行うと劇的な効果があるのですが、この場合に使用するアルブミン製剤というものは血液由来の貴重なものであるせいか月々の使用量に厳しい制限が科せられています。
アルブミンに限らず他の多くの治療・投薬でも言えることですが、使えば効くことが判っているのに保険診療上認められていないから使えない、結果患者さんは苦しみながら亡くなっていくという現実に釈然としないものを感じている医師も多いのではないでしょうか。

実際のところ不正請求をやった病院にテレビカメラが押しかけて周りの人たちに聞いてみると、意外にも「いや、熱心でいい先生でしたよ」なんて声で満ちあふれていたなんてことをワイドショーなどで見かけませんか?
明らかな犯罪としての不正請求と、査定で不当に削られた不正請求とがどれくらいの割合になるのか、はっきりしたデータは見たことはありませんが、ざっと調べたところ普通にやっていても削られてくる査定率というものは国公立病院で0.5~1%くらい(中には2%超というところもあるようですが…)、民間病院だとそれより低くたいてい0.3%以下?といったところでしょうか。
30兆の医療費のうち返還を求めた分が53億という数字とあわせて考えると、特に大部分の医療費を使っている病院診療においてはうっかり間違いや適応症記載漏れといった過失が大多数で、犯罪的な意味での不正請求はほとんどないように思います(現場の勤務医に取っては全くメリットがないですし)。

一部の医者が本当に犯罪行為に手を染めていたとして、それがどれほど全体に影響を及ぼすかとなると考えれば、「診療報酬の不正請求は財源不足をより悪化させる」式の批判ってのはずいぶんと的外れであって、むしろ医療業界全体にかつてでは考えられないほど「不正請求は出来ない」というプレッシャーがかかっていることによって、医療自体が変質を余儀なくされることの方がよほど問題でしょう。
一昔前なら「保険の査定で削られようが、患者のために必要な薬はちゃんと使え!」という「間違った先生」も多かったものですが、病院の半数が赤字に転落しているという今のような医療費大削減時代にそんな「金の亡者のような悪徳医者」は真っ先に淘汰されていきます。
生き残っていくのは「申し訳ないですが、これ以上の治療は保険で認められておりませんので」とすっぱり斬って捨ててくれるような「正しい先生」ばかりとなれば、それは確かに財源不足の悪化を食い止めることにはなるでしょう。
しかし保険で認められないからとすっぱり治療をやめちゃう先生と、保険では通らないけどやりましょうと最後まで頑張ってくれる先生と、果たして患者にとってどっちが良い先生なんでしょうね?

マスコミの片隅を賑わせる診療報酬不正請求なんて「犯罪行為」の裏側には、そんな医療現場の小さな小さなドラマが隠されていたりするわけです。

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2008年12月 1日 (月)

既存マスメディアはネット時代に対応できていない

先日もお伝えしました毎日新聞の誤報問題ですが、どうも真摯な反省の態度が見られないようです。
風の息づかいを感じていれば」等々他人に要求することは殊更に厳しい正義派の毎日新聞としては、こうした態度は如何なものなんでしょうか?

「毎日新聞は正義」、誤報への開き直り発言か?(2008年11月30日探偵ファイル)

元厚生事務次官・吉原健二氏の殺害予告がウィキペディアでなされていたと、毎日新聞は報じた。ところが、ウィキペディアが採用する「協定世界時(UTC)」を、担当記者は知らなかった模様だ。そのため、事件報道後に書き込まれた内容を、殺害予告と勘違いしてしまった。

毎日新聞が新聞紙に掲載した訂正記事には、「犯行示唆と受け取れる書き込みをしたとする人物」と書かれていた。これに対して、各所で批判が続出した。ウィキペディアにあった「×は暗殺された人物を表す」という文章を「犯行示唆と受け取れる書き込み」と捉えたのは、記者の勝手な思い込みではないかという指摘だ。

当該の書き込みをした「Popons」という人物は22日、その後の経緯をウィキペディアで報告した。「被疑者として警察で丸一日取り調べを受けました」とのことで、個人情報を警察に提出した上に、会社も休むことになったという。報道による生活への影響を批判し、同日に毎日新聞に抗議の電話をかけたそうだ。

29日、この人物が再びウィキペディアに出現。毎日新聞社会部に属する人物と会い、先方から口頭で謝罪があったという。その際に、以下の3点を要求したとのこと。「(1)毎日新聞上での私に対する公式な謝罪、(2)誤報が何故起きたのか原因究明、(3)私が実生活で被った不利益に対する補償」。

書き込みは被害者感情を傷つけるものであるという理由で、紙面での謝罪は道理に反すると、毎日新聞は回答したという。更に、「毎日新聞は正義」と発言したそうだ。また、毎日新聞の責任転嫁という上述の点を指摘した日経の記事について、「日経新聞本紙の記事ではない」との理由で、問題はないと語ったとのこと。毎日新聞が報じなくても警察が取調べを行なった可能性はあるから、補償の必要はないとも述べたという。

これらの主張に対して、ネット上では非難の声が続出。「毎日新聞は正義」という発言への批判、責任転嫁の問題を棚上げにしているという意見、新聞紙ばかり重視しネットの記事は軽視しているのかという疑問、毎日新聞が誤報を流さなければ警察沙汰にならなかった可能性は極めて高いという指摘など、様々だ。

今年のネット流行語大賞は「変態新聞」に違いないと言われている。今回の騒動により、「変態新聞は正義」が大賞になるかもしれない。

ちなみに上記記事中にも出ているウィキペディアでの経緯報告というのはこちらの話のようですね。
そもそものウィキペディアでの記載自体が公開される百科事典として適切なものなのか?という指摘はあり、当該する書き込みを行ったPoponsもその点については率直に謝罪しているのですが、一方で根拠なき誤報によって他人に迷惑をかけた側として毎日新聞の態度はいささかどうなのかと思う人も多いのではないでしょうか?

近ごろでは毎日新聞の暴走ぶりが目立つためか他の既存メディアの失態はやや隠れてしまっている感もありますが、ネット上では毎日新聞に限らない既存メディアへの批判的論調というのが一つのトレンドになっているようです。
今日は最近のネットメディアの発信した記事から、こうした既存のマスメディア批判の主だったところを幾つか拾い上げてみましょう。

元厚生事務次官殺傷事件の報道に、現場的「おい!大丈夫か」(2008年11月26日日経BP)

 もともと新聞やテレビの報道を全面的に信じるタイプではない。にもかかわらず、元厚生事務次官殺傷事件のネットにかかわる報道には「おい!大丈夫か」になってしまう。
 その代表が毎日新聞の「誤報」である。

 容疑者が出頭したこともあって、いまや忘れさられようとしているが、これこそ「おい!大丈夫か」の典型だろう。毎日新聞が11月19日朝刊で「ネットに犯行示唆?(27面 14版東京)」の四段抜き見出しで「事件の約6時間前に、インターネットの『フリー百科事典・ウィキペディア』に犯行を示唆する書き込みが会ったことが分かった(同)」と報じた件ある。
 ネットでも話題になったので、ご存じの方も多いだろう。要は協定世界時(UTC)を日本標準時(JST)と間違え、「約6時間前」と記事にしてしまったのである(参照 「ウィキペディアで犯行示唆」 恥ずかしい大誤報を毎日新聞が謝罪 JCASTニュース11月19日)。かなり批判されたようなので「打落水狗」はしたくないが、いくら「?マーク付」とはいえ「恥ずかしい大誤報」と指弾されても当然だろう。
(略)
 いい訳ではないが、生活時間とパソコンのローカルタイムに加え、サーバーの設定タイム──わかっているつもりでも往々にして勘違いは起きる。
 しかし、間違いが起きるのと、そのまま記事にして紙面に載せるのは大違いだ。いくら記者が「これは特ダネ」と思っても、チェック機能が働くのが新聞だろう。編集長や校閲担当者が「裏はとったか?」とする筈である。
 見逃したのか、それとも確認もしなかったのか、「裏もとらず」活字になってしまったしか思えない。

 ところが、「おわび:『ネットに犯行示唆?』の見出しと記事=11月19日付朝刊(毎日jp 11月20日)」では「本紙記者はその事実を把握しないまま記事にしました(同)」とあるだけで、「裏をとらなかった」ことには一切の説明もない。しかも、受けとり方によっては「書き込みをしたとする人物(同)」の責任転嫁しているようにも読める内容である(リンク先参照)。
 これでは「大丈夫か」を通り越して、「社会の木鐸」として機能するのか心配になってしまう。
(略)
 容疑者が出頭するまで、程度の差はあるにせよ「年金テロ」とテレビも新聞も報じてきた。現在も「テロ」という言葉を使う報道もある。冷静に事実だけを見ると、はたして軽々しく「テロ」といっていいのか判断は難しい。それは、Web制作現場の手に余るが、違った影響をもたらすのは確実である。
 その一つとして「テロ」と何度も報道されると「年金のことや官僚の天下りをトヤカク指摘すると『テロ』を助長するかも」と心配する傾向が個人的には起きている。事実、似たような感想を持つ現場のスタッフは少なくない。それを意図してるとは思わないが、この段階でも(11月25日夕刻)「テロ」とするには違和感を覚えてしまう。

 しかも「インターネットでは」とされると、これは「大丈夫か」では済まなくなる。
 けっして毎日新聞を目の敵にしているわけではないが「今回もインターネット上で、犯行を支持するかのような無責任な匿名の意見が飛び交っている(「社説:元厚生次官宅連続襲撃 類例を見ぬ卑劣な犯行  暴力容認の風潮一掃しよう」毎日jp 11月20日)には「ちょっと待て」になってしまう。
 たしかに「犯行を支持する」書き込みがあり、目につくことは否定しない。だからといって「無責任な匿名の意見が飛び交っている」は、あまりにも事実の一部を誇張しすぎだろう。
(略)
 繰りかえしになるが、指摘されるような書き込みがあるのは否定しない。また、きわめて珍しいかというと、目にする件数としては多いだろう。
 しかし、亡くなったご夫婦の哀悼の意を表し、負傷されたご夫人の回復を祈る書き込みも目立つ。あるいは、テロ報道に疑問を表明するものや、暴力に反対という書き込みもある。
 それは「無責任な匿名の意見が飛び交っている」のではなく、「さまざまな意見が飛び交っている」だろう。百花繚乱──それがネットなのだ。
 そのことを見逃すと、なにが事実なのか偏ってしまう。
(略)
 ネットは社会から切りはなされて存在しているわけではない。きわめて攻撃的な書き込みもあるし、犯罪を助長するサイトだってある。しかし、それは社会の縮図なのだ(凝縮にネット特有のバイアスはありますが)。社会がそうであるように、暴力を支持する意見もあれば、それに反対する意見もある。それを、あえて「ネットでは」としてしまうと、結局は、すべてが「ネットだから」となってしまい、ネット特有のバイアスどころか、問題の本質さえも見逃してしまう危険性がある。

 制作現場では「データのない提案は空想と同じ」とされているが、報道でも「『確認』『調査』『取材(聞く)』のない記事やコメントは」信頼されることはない。

ネットユーザーたちが暴き始めた「客観報道」というまやかし=佐々木俊尚(2008年11月25日@niftyニュース)

ネットの普及、IT技術の進化により、一般の人が目撃したマスメディアの取材現場がネット上に晒されるケースが増えている。また、報道に疑問を持った読者、視聴者がマスメディアに電話をかけ、その対応をネット上に掲載するケースも多々ある。従来は覆い隠されていた取材現場、被取材者としての対応が暴かれることで、マスメディアは大きな危機を迎えている。

化けの皮が剥がされる「高邁な社会正義」

 今年6月8日、秋葉原で無差別殺傷事件が起こったときのことだ。
 たまたま事件現場やその周辺に居合わせた一般の人たちが、携帯電話やデジカメやデジタルムービーで被害者の様子を含め現場の悲惨な状況を撮影し、それを赤外線送受信で交換したり、ネットの掲示板やブログや動画投稿サイトにアップしたりする行為を盛んに行なった。土地柄からITに強い人が多く、パソコンに内蔵されているウェブカメラで撮影し、その場で動画配信サービスに接続して現場の生中継を行なった人もいた。
 こうした行為に対してマスメディアは「惨劇を前にして不謹慎ではないか」「被害者に失礼ではないか」と、その〝野次馬根性〟を批判した。

 もちろん、人が生きるか死ぬかという状況を前にして撮影をするべきなのか、それとも何をおいても被害者を救護するべきなのかというのは、プロの取材者であっても、モラルが問われる根源的な問題だ。実際、野次馬根性に対する批判はネット上でも沸き起こった。
 しかし、その一方で、では、マスメディアには一般の人たちの野次馬根性を批判する資格があるのか、という問題がある。

 私自身、新聞記者出身で事件現場の取材を何度も経験したのでわかるが、慣れないうちは一般の人たちと同じように興奮し、場数を踏むと今度は感覚が麻痺し、殺人現場であろうと笑いながら取材したり、他社の記者と場所取りで争ったりするようになる。ところが、紙面や画面では「我々は高邁な社会正義に基づいて報道している」という姿勢が装われる。
 従来はそうした現場の実態と報道の建前とのダブルスタンダードが通用した。たまたま一般の人が取材現場におけるマスメディアの実態を目撃しても、せいぜい周囲に話すだけで終わっていたからだ。
 ところが、今は違う。かつてなら一般の読者や視聴者にとってはブラックボックスだった取材現場における野次馬ぶり、不謹慎な態度が、ネットユーザーにより、掲示板、ブログ、動画投稿サイトなどで、文章で書かれるだけでなく、画像、映像、音声付きで生々しく暴かれるようになったのである。

 実際、秋葉原の事件のときには、新聞記者が容疑者に「あれってオタクがやったんだよね」と大声で問いかけたり、一般の人たちに「誰かもっとセンセーショナルな写真を持っていませんか」と聞いて回ったりする様子がネットにアップされた。5月に愛知県豊田市で女子高生が殺害された事件のときには、テレビ局のスタッフたちが殺害現場の近くで手を叩いて笑っている映像が投稿された。これ以外にも、路上禁煙地区になっている取材現場でマスメディアの人間がタバコを吸い、ポイ捨てしている様子や、違法駐車を注意した周辺住民にマスメディアの人間が怒鳴っている場面がネット上で報告されるといった例は数多くある。
(略)

自らが取材されることに鈍感なマスメディア

 ネットの出現、普及により、このように取材の現場やプロセスが可視化され、その実態と紙面、画面の建前のダブルスタンダードが通用しなくなり、マスメディアの取材姿勢が厳しく問われるようになっている。
 典型的な事例のひとつが、毎日新聞が2007年正月から掲載を始めた大型連載『ネット君臨』を巡る新聞社と著名ネットユーザーの議論だ。

 前年9月に始まった、難病にかかったある幼女の手術費用を募金する運動に対し、募金活動の倫理性や情報の透明性を問う視点から、ネット上で批判が起こった。『ネット君臨』取材班は批判の中心人物のひとりだったある著名ネットユーザーを取材し、『難病児募金をあざける「祭り」』と題した連載第1回で取り上げた。

 掲載された記事は決してその人物を正面から批判してはいないが、「男」と表現していた。新聞記者なら誰でも知っていることだが、「男」という表現は、犯罪者、容疑者、反社会的人物などの代名詞として使う。一見公平を装いながら、じつは読者に対してその人物は禍々しく、卑怯な人間だという明らかな印象操作を行なっていた。その後、私が彼を直接取材したところ、記事を書いた毎日新聞の記者は、最初の取材申し込み時点では所属や連絡先などを明確にせず、実際の取材でも最後まで明確な取材趣旨を説明せず、最初から議論を吹っかけるようだったという。

 彼は毎日新聞が読者向けに開設しているコミュニティサイトに取材手法や記事内容について質問状を出し、それに対して何の回答もないと取材班に抗議の電話をかけるなどした。結局、〈社としての回答は「見解の相違としかお答えできません」〉という回答がきただけだった。
 従来なら、取材対象者がいくら新聞社に抗議しようと、黙殺されるか、横柄な、あるいは官僚的な対応をされて終わりだった。ところが、時代は変わった。
 彼は一連の経緯を自身のミクシィ上の日記で公開したのである。そして、それが他の多くの日記ブログにリンクされ、掲示板にもコピーが貼られ、毎日新聞に対する批判の嵐が起こった。

ネットを見下している限りマスメディアに未来はない

 このように、現在のマスメディアは、取材現場やプロセスがネットという公の空間で可視化されるという危機に晒されている。さらに危機的なのは、マスメディア自身がその危機に極めて鈍感であることだ。
(略)
 マスメディアは不祥事を起こした一般企業を厳しく追及し、法令遵守と説明責任を強く求める。ところが、いざ自分が不祥事を起こすと、それとは正反対の態度を取る。その実態がネットという公の空間で公開されるようになったのである。
 同様に、ネットユーザーが、マスメディアの報道内容や報道姿勢に疑問を持ち、マスメディアに問い合わせ、それに対する返答をそのままネット上で報告するケースはいくらでもある。

 マスメディアの側はネットの言論をいまだに「フリーターやニートが適当なことを書いている」と見下している。
 しかし、その影響力はマスメディアが想像するよりもはるかに大きい。実際、WaiWai問題では、多くのネットユーザーが毎日のサイトに広告を出稿している企業に抗議電話をかけた結果、一時はネットの広告が全てストップし、本紙の広告にも影響が出た。リアルの世界に対するネットユーザーの影響力はここまで高まっているのである。

 ネットの登場、普及により、マスメディアの言論とネットの言論が等価値になり、言論のあり方がフラット化した。読者、視聴者のメディアリテラシーも格段に向上した。
 だが、長年「自分たちだけが報道する権利を持つ」という特権意識にあぐらをかいてきたマスメディアは、こうした時代の変化や問題の本質を理解できないでいる。ネットユーザーを見下し、恐怖し、憎悪しているだけでは、マスメディアはますますネットユーザーから不信感を抱かれ、批判を浴びるのは当然だ。

「首相は安い店に行け」 高給番記者たちの「庶民感覚」(2008年10月23日J-CASTニュース)

   麻生首相が、毎日のようにホテルのバーや飲食店で過ごしていることについて、「『庶民感覚』からかけ離れている」との声がマスコミからあがっている。これに対して、麻生首相も「ホテルのバーは安全で安いとこ」などと反論。さらに、「(安い店に行って)営業妨害だって言われたら何て答える?聞いてんだよ。答えろよ」などと、記者に向かって食ってかかる一幕もみられた。麻生首相が「ホテル会合」の正当性を主張する一方で、記者団からは「ホテルのバー通いが良くない」ことの積極的な理由が示されることはなかった。
(略)
   「ナイトライフ」についての質問が出たのは、10月22日の、カメラが入っていない昼の会見だ。北海道新聞の女性記者が
    「夜の会合が連日で、一晩に何万円もするような高級店に行くのは、庶民感覚とかけ離れているのでは」
と切り出すと、麻生首相は「高級店」を「高級料亭」と聞き間違えたのか、
    「ホテルが一番多い。あなたは今、『高級料亭に毎晩』みたいに作り変えていますが、それは違うだろうが。馬尻(東京・六本木の洋風居酒屋)が、いつから高級料亭になった?言ってみろ」
と反論。記者が
    「一晩に、一般の国民からすると、高いお金を払って食事をする、という意味」
と説明すると、首相は
    「たくさんの人と会うと言うのは、ホテルのバーっていうのは安全で安いところだという意識が僕にはあります。だけど、ちょっと聞きますけど、例えば安いとこ行ったとしますよ。周りに30人からの新聞記者がいるのよ。警察官もいる。営業妨害って言われたら何て答える?新聞記者として『私たちの権利です』って、ずーっと立って店の妨害して平気ですか?聞いてんだよ。答えろよ」
とヒートアップ。

新聞記者の給料は庶民的?

   記者側も「われわれは営業妨害をしないように…」と釈明したが、首相は
    「現実、(営業妨害)してるって。現実、みんな『している』って言われているから。だからホテルが一番(苦情を)言われないんですよ。分かります?これまでのスタイルですし、これからも変えるつもりは、今のところありません」
などと譲らなかった。
(略)
   結局、会見からは「首相が『大衆居酒屋』を使うと混乱が起こる」「首相は、これからもホテルを使い続ける」といったことぐらいしか明らかにならなかった形だ。
   記者団は「庶民」という言葉を繰り返すが、「広辞苑第6版」によると、「(1)もろもろの民。人民。(2)貴族などに対し、なみの人々。世間一般の人々。平民。大衆」という意味。
   首相が「庶民」であることが必要な理由は明らかにならないままで、記者と首相のやり取りは、かみ合わない状態が続いている。

   もっとも、取材する側も、「『庶民』とは程遠い」との指摘もある。例えば給与面を見ただけでも、朝日新聞社社員の平均年収は1358万円。幹部クラスなら2000万円プレーヤーだ。比較的経営が厳しいとされる毎日新聞でも、870万円。なお、国税庁の調べによると、07年のサラリーマン平均収入は437万円だ。
   さらに、勤務実態を見ても、庶民とはかけ離れているという指摘が避けられなさそうなのだ。

   週刊ポストが08年4月11日号で、4ページにわたって番記者の実態を特集しているが、外国特派員協会の副会長が、記者会の様子をこう証言している。
    「官邸クラブの記者席には間仕切りがあって、若い記者が短パン姿でテレビを見たり、プライベートとしか思えない長電話をしている。役所の担当者が『3時から会見です』と資料を配ると、一斉にペーパーを奪ってパソコンを打ち始める。まるでネットカフェです」
   庶民とはかけ離れたところで、「庶民感覚」について議論が続くことになりそうだ。

読売新聞「新聞が必要 90%」の謎(2008年10月18日CNET Japan)

「新聞を全く読まない」4.5%の謎

 読売新聞10月13日版の調査記事「新聞、これからも必要」が90%…読売世論調査は、いささか新聞の自画自賛ぎみの報道であった。
(略)
調査方法は、個別訪問面接方式、全国の有権者(つまり20歳以上)3000人のうち、回収率61.2%の1835人であった。しかし、この40%近くの人が、回答を拒否したのか、不在で会えなかったのか、はたまた新聞を取っていなかったので回収不能にしたのかわからない。ただ、質問のひとつに新聞を読む時間の質問に対して、全く読まないと答えたのが4.5%というのはあまりにも少なすぎる。この回収できなかった40%近くのかなりの部分で「新聞を取っていなかったので回収不能」でなかったのかと疑問さえ覚える。
(略)
新聞社が理解していないこと

 ともかく、読売新聞の調査の発想は、読者と新聞の関係は、未来永劫変わらないと考えていることだ。昔、「私作る人、あなた食べる人」という一方的に決め付けたCMがあったが、読者はせいぜい読者欄で感想を述べるだけで、読者から情報を発信するという事実を捉えられていない。

 佐々木俊尚氏の最新刊「ブログ論壇の誕生」では、「anti-monosの新メディア論」を引用している。
    既存のマスコミが絶対に理解できない、かつ生理的にも受け付けられないネットの特徴は「編集権を読者に委ねている」ということ。新聞、ラジオ、テレビと既存のマスコミはすべてニュース価値をマスコミの側で判断し、それを受け手に与えるという構造だった。何をどう扱うかは最初から最後まで、すべてマスコミ次第。つまり「編集権を完全にコントロールできる」状態。言い方を変えれば完全なる「押し付け」だ。だから、マスコミはブログやSNSなど受け手の側が発信、編集するというのは生理的にも受け入れられない。(マスコミの人間が決定的に理解できないネットの本質 ~朝日、日経、読売3社連合「あらたにす」を見ての感想)

 佐々木氏は、これを受けて
     事態はかなり絶望的だ。
     それだけではない。
     ブログ論壇の急速な台頭も、日本の新聞社のプレゼンスをさらに低下させる大きな要因となっている。

     後に述べるように、世代間対立を背景として若い世代の新聞社への信頼感はいまや急速に薄れている。マスメディアが体現する団塊世代の言論空間と、ネットで勃興しているロスとジェネレーションの言論空間の間に、お互い相容れないギャップが生じてしまっているからだ。

     記事というコンテンツは、「一次情報」と「論考・分析」という二つの要素によって成り立っている。新聞社は膨大な数の専門記者を擁し、記者クラブ制度を利用して権力の内部に入り込むことによって、一次情報を得るという取材力の部分では卓越した力を発揮してきた。だがその一次情報をもとに組み立てる論考・分析は、旧来の価値観に基づいたステレオタイプな切り口の域を出ていない。たとえばライブドア事件に対しては「マネーゲームに狂奔するヒルズ族」ととらえ、格差社会に対しては「額に汗して働く者が報われなければならない」と訴えるような、牧歌的な世界観である。

     このようなステレオタイプ的な切り口は、インターネットのフラットな言論空間で鍛えられてきた若いブロガーから見れば、失笑の対象以外の何者でもない。彼らは新聞社のような取材力は皆無で、一次情報を自力で得る手段を持っていないが、しかし論考・分析の能力はきわめて高い。ライブドア事件にしろ格差社会問題にしろ、あるいはボクシングの亀田問題にしろ、読む側が「なるほど、こんな考え方があったのか!」と感嘆してしまうような斬新なアプローチで世界を切り取っている。

     今の日本の新聞社に、こうした分析力は乏しい。論考・分析の要素に限って言えば、いまやブログが新聞を凌駕してしまっている。新聞側が「しょせんブロガーなんて取材していないじゃないか。われわれの一次情報を再利用して持論を書いているだけだ」と批判するのは自由だが、新聞社側がこの「持論」部分で劣化してしまっていることに気づかないでいる。ブロガーが取材をしていないのと同じように、新聞社の側は論考を深める作業ができていないのだ。(佐々木俊尚著「ブログ論壇の誕生」文春新書)

盗用と引用の区別ができない新聞記者

 佐々木氏の「論考を深める作業」とは何か。それは、新しい発想ができないということである。取材を通して、自分なりの記事を書くという基本を忘れてしまえば、それは単なる作業である。作業になれば考える必要が無い。
 新聞記者は、引用記事というのは嫌うらしい。引用であっても、いかにも取材しましたという記事を書く。そこに妙な自負と欺瞞がある。
 しかし、それは盗作であり、盗用である。引用したなら、ちゃんと引用元を記載するのが最低限の礼儀だと思う。
(略)
ITProに佐々木氏を交えての「時代錯誤の舞台装置はもういらない---続々・「マスゴミ」と呼ばれ続けて」という記者座談会があった。結論部分で

    収益モデルをいかに考えるのかという問題は残りますが,これからのマスコミはどうすればいいと思いますか。

    佐々木氏:自分で考えたことを自分の名前で書くという方向に行くべきでしょう。そして,記者個人が専門家になることも重要です。例えば,日経コミュニケーションの記者などは,通信業界の人よりも通信について詳しいので(※筆者は含まない),そういう記者であれば誰も「マスゴミ」と馬鹿にしないでしょう。世の中の人たちすべてに同じ記事を読んでもらうことは時代背景上,成り立たなくなっているので,細分化してきた情報圏域ごとに的確かつ深い情報を届けることが,これからの記者には求められています。

     専門家によるブログには詳しい情報がありますが,そこには公平性の担保がないことも多いです。やはり,多用な視点が取り込まれているか否かは重要で,一つの事象についてAさん,Bさん,Cさんに取材をし,そのバランスを取って記事を書くことは,記者にしかできません。入念な取材と多用な視点からの深い分析に裏打ちされた論考が,求められています。

    阿部(ファクタ出版発行人兼編集長・阿部重夫氏)氏:我々ジャーナリストの役割はモノローグではありません。ブログはそれでもいいのかもしれませんが,我々の最終的なミッションは,“裏を取る”ことであり,それができることこそが,ジャーナリストの信用であり,生命線なのです。

     ただ,裏を取るということは簡単ではありません。相当の修練や人脈が必要で,それらは時間も労力もかかるし,これといった解があるわけでもありません。プロのジャーナリストである以上,自らの特権は「一次情報に触れられる」というところにあるのではなく,「裏を取れる」というところにあることを意識し,それをフル活用した記事を書くことこそが,我々の仕事の本質です。それができている以上,その記者は決して,マスゴミとは言われません。(時代錯誤の舞台装置はもういらない---続々・「マスゴミ」と呼ばれ続けて)※(筆者は含まない)というのは、この記事を書いた日経コミュニケーションの記者のこと

新聞社は、一次情報に触れられる特権に守られ、自分達の取材力を伸ばせないでいる。今回の世論調査がいわば、仲間内の評価しか見えないのは、いまだに新聞社に危機感が無い証拠である。

 記事中にも出てきますが、もともと新聞記者という人種の一番の強みは何かと言えば、この目で現場を見てきたということではなかったかと思います。
 一次情報を知っているからこそ書けるというのはネットメディアに対しても強みになるべき既存マスメディアの最大の存在価値だったはずですが、問題は昔ほど世の中というものがシンプルではなくなってきたということなのかも知れませんね。
 昔は単に取材して記事を書くだけで良かったものが、今はとりあえず現場に行って取材はしてみたものの何が問題なのかも判らないことが多くなったと言うことでしょう。

 専門の壁に阻まれて判らないことが多すぎる、仕方がないから事実関係の記載に関しては自分に判るごく狭い範囲にとどめ、ひたすら読者の感情を煽るだけの記事を書く、世間でも受けているみたいだしこれでいいんだと勝手に納得している。
 確かにワイドショーならそれでもいいのかも知れませんが、ものが判っている人間が見れば「はぁ?こいつなに寝言言ってんだ?!」と噴飯モノの底が浅すぎる記事が最近あまりに増えてきてはいないでしょうか?
 新聞の場合は速報性を犠牲にしているわけですから、少なくとも社内できっちり検証して記事に出すくらいの最低限の作業はしてもらいたいですね。
 もっとも解説なる記事自体の判っていない中身などを見るに付け、そもそも新聞社内で専門領域の検証に耐える人材自体が完全に払底してしまっているのが一番の問題なのかも知れませんが、それは解決できない問題なのでしょうか?

 佐々木氏なども言っているように、ネット上では各分野の専門領域に幾らでも人材があふれています。
 一次情報に触れることに強みを持つ既存マスメディアと、専門性に基づいて深く掘り下げることが得意なネットメディアというのは本来対立するべきものではなく、むしろ理想的な相補的関係を築けたかも知れないものだったのですよ。
 残念ながら毎日新聞を筆頭に既存マスメディアのネット敵視は軽減するどころか増強される一方のようですが、双方の情報に等しく触れることの出来る読者たちは果たしてどちらの内容を支持するでしょうか?
 昨今では大手新聞社など既存マスメディアの経営危機が盛んに伝えられていますが、今後も生き残りたいのであれば黒白の決着が完全についてしまう前に、一度そうした読者の視線から物事を考え直してみる必要があるように思いますね。

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