« 今日のぐり「そば茶屋いきいき」「天の(天乃うどん店)」 | トップページ | 迷走中の阪南市立病院のその後 »

2008年11月17日 (月)

東京都の救急医療はデスマーチ?

近ごろではすっかり救急問題で話題の地域となってしまった東京から、また新たなネタが飛び込んできました。
まずは記事から紹介してみます。

妊婦拒否:24施設を地域救急センター指定へ 都(2008年11月15日毎日新聞)

 救急患者の受け入れ拒否を防ぐために東京都は14日、重症患者を扱う2次救急病院の中から24施設を「地域救急センター」(仮称)に指定し、各病院間で受け入れ先を探す「東京ルール」を採用することを決めた。

 都などによると、高度な医療機関同士が受け入れ先を探すルールを決める。また、都内を12地域に分け、各病院で手術の可否や空きベッドの有無の最新情報を検索できる新システムを来年度にも導入し、素早い搬送先確保を目指す。

 また、脳内出血の妊婦が複数の病院に受け入れを断られて死亡した問題を受け、石原慎太郎知事はこの日、スムーズな救急搬送体制を整備するプロジェクトチームを発足させると発表した。石原知事は「都立病院や国立病院、地域の産科医などを束ねる機能を欠いていた。都民の不安を解消したい」と述べた。

 担当となる猪瀬直樹副知事は「年金問題で総務省が社会保険庁を監視しているように、直接の担当者以外でグループを作り問題の検証をしたい」と話した。

なるほど、監視をしていくと…今やすっかり犯罪者扱いですがどうしますよ?>東京都下の救急担当者。
と言いますか、知事の認識ではあくまでも医療リソースの不足などではなくて、各施設間の連携の問題であったということになっているんでしょうかね?>救急搬送問題。
つまり今でさえ「もう限界、勘弁してくれ」な医療現場を、今よりさらに効率よく酷使することが目指すべき道であると?
今後の調査検討の結果こういう認識を覆すレポートが出てくればまだ救いがあるのでしょうが、さて…

ところでこの「東京ルール」なる聞き慣れない言葉ですが、この実態がまた素晴らしいもののようなのです。
どうやら恐ろしいことに「一見ERっぽい」システムを指定病院に押し付けようということ、なんですね。
しかしこれ、押し付けられた病院の方でもずいぶんと大騒ぎになりそうな悪寒なんですが(苦笑)。

救急医療体制「東京ルール」を来年度からスタート(2008年11月14日 読売新聞)

 東京都は、急患の「たらい回し」をなくすため、病院間で受け入れ先を探す新たな救急医療体制「東京ルール」を来年度から始める。
 都内の24病院を「地域救急センター」に指定し、患者を受け入れられる病院を見つける。急患の受け入れで、病院同士で連絡を取り合って決める試みは全国初。都は「地域救急の新たなモデルになる」と期待している。

中核病院が搬送先探し

 急患は東京消防庁の救急隊が病院に照会し、搬送先を決めている。
 都救急災害医療課によると、東京ルールは、都内を12地域に分け、手術や入院が必要な重症患者を扱う2次救急病院の中から、1地域で2か所をセンターに指定。救急隊の受け入れ先探しが難航した場合、センターが救急隊に代わって患者を受け入れる病院を探したり、受け入れたりする。
 地域のほかの2次病院は、センターに空きベッド、当直医の専門や人数などの情報を提供する。
 それでも受け入れ先が見つからないケースでは、東京消防庁指令室の救急救命士が務めるコーディネーターが、ほかの地域のセンターと調整する。
 都救急災害医療課は、「たらい回しを防ぐには、地域の病院が責任を持って救急を支えるしかない」と話している。

 急患の搬送を巡っては、病院が「ベッドは満床」「当直医が専門外」「処置中」などと受け入れを拒否するケースが後を絶たず、10月に出産間近の妊婦が8病院に断られて、出産後に死亡する問題も起きている。
 都内では10年前と比べ、救急医療機関数は2割減少し、335か所(2008年)。一方、救急搬送患者数は3割増え、62万人余(07年)となっている。「夜間・休日になると、当直医が1人しかおらず、休業状態になる2次病院も多い」(公立病院医師)といい、より高度な医療を行う3次救急病院にしわ寄せが行っている。
 全国でみると、2次病院の当直体制(07年)は、1人が4割、2人以下が7割に上り、手薄な状況にある。
 東京ルールは14日、都庁で開かれる救急医療対策協議会で報告される。

あくまでも「応急措置」

 救急医療体制の「東京ルール」で、急患受け入れに、地域の病院が責任を持つことになる。地域救急センターが、2次救急病院の当直医の専門や空き状況を把握することで、効率性も増し、「たらい回し」対策につながるとされる。
 地域と病院の違いはあるが、東京ルールは、すべての患者を救急医が受け入れて診療科の医師へとつなぐ北米型ER(救急治療室)の地域版に一歩近づけようという試みとして、成否が注目される。
 しかし、たらい回しの原因である医師不足が改善されるわけではない。医師を急患受け入れの基幹となる病院に集約するのでもない。センター病院の負担ばかりが増え、新ルールが絵に描いた餅になる恐れもある。

要するにただでさえ過重負荷であっぷあっぷ言っている現場に、搬送先探しの電話番までやらせようってことですかそうですか…orz
「困った時の医者に丸投げ」って何ですかそれは?この人たちはどこが一番のボトルネックになってるか本当に判ってないんですか?マジで?
都とすればとりあえずたらい回しはしてないと言い張れるし、救急隊とすれば指定搬送先に置いて帰れば仕事は終わりになるから皆が幸せになれる素晴らしい!ってわけですか?
今まで以上に余計な仕事を、それも現場の医療機関でなくても誰でも出来る仕事を負担させられる指定病院でいつ「指定を辞退させていただきます」なんて話が飛び出すか、今から楽しみですよホント。

まあ報道ばかり見ているとまた「誤解」してしまうかもですから、当事者の石原都知事の認識を知るために会見での声を拾ってみるべきですかね。

【石原知事会見詳報】(1)「都合いい時だけ地方分権は無理」(2008年11月14日産経新聞)

 「冒頭、私から読み上げるものはないんですが、おそらくあとで質問に出るかもしれませんので事前にお答えしておきますがね、この間の都立墨東病院の妊婦さんの痛ましい事故ですけども、ケースとしてもね、脳出血を併発してね、非常にレアケースではありますが、しかしそれだけではちょっとすまない、と思います」

 「いろいろ調べました。週刊誌にもかなり綿密な報告をしてくれる所もあったりしてですね、そういうものも参照しましてね。東京には都立病院のほかに国立の病院、私立の病院、それからね、(東京都)医師会長にもお願いして、市井(しせい)の産婦人科のお医者さんの動員態勢なんかもお願いしたんですが、いずれにせよ、そういうファクターがいくつかありながら、ちょっとそれが束ねられた形で機能する能力を欠いていたという気がします」

 「これはですね、庁内から上がってくる報告を聞き合わすだけでは納得いかないことがあるんでね、猪瀬(直樹副知事)さんにお願いしてプロジェクトチーム(PT)を作ってですね、やっぱり機能整備というんでしょうかね。例えば、札幌などでは、こういう緊急の事態の時、どこの病院にどう送り込むか、差配する、差配師というのか、コーディネーター、そういうシステムがあるようですから。これもやっぱり参考にさせていただいてね、もっと綿密な機能というものを都内で講じていきたいと思っております」

 「ただね、これまた言い訳にもなりませんが、(都内には)かなりの数のベッドはあるんですね、産科のための。ただね、調べてみると、(利用者の)30%以上が都外の方ですね。要するに、周辺の県のそういう整備が必ずしも東京に比べて厚くないんで、むしろ、都外の方々がそこに入院しているということが実態としてある。それはそれで結構なことで、決して拒否するつもりは毛頭ありませんが、そういう事情も含めて、都内にある機能をもうちょっと十全に活用する、要するに医師の機能整備というものをするために機能を検証し、かつ建設していくPTのようなものを作ってですね、都民の不安の解消に応えていきたいと思っております」

 -今後PTの中で都外からの搬送について話が出るということか。

 「それは仕方ないでしょ、東京の機能ってたって、昼間ですね、神奈川、千葉、埼玉から300万超す人たちが来て、東京の運用してくださってるわけですからね。現に東京で働いている警察官や都庁の職員だって半分以上は都民じゃないんだよ、住んでいるところは。だからね、そんなこと言ってられないと思いますよ。これはやっぱりね、周辺圏もですな、その問題について思い切って整備してもらいたいけども、それが間に合わない状況には、それを東京が引き受けざるを得ないけども、それはそれでですね、やっぱりこれだけみんなポテンシャルありながらうまく機能できなかったうらみがあるから。札幌はね、規模も小さいけど、そこでやってるコーディネーターのシステムみたいな形を勘案しましてね、もっと合理的に安全に運用できるように考え直そうと思ってます」

なるほど、都知事閣下に言わせると東京には十分なポテンシャルがある、ただそれがうまく活用できていないだけだと、やはりそういう認識のようなんですね。
では石原氏自慢の都内産科の状況というものがどういうことになっているのか、「天漢日乗」さんの情報によるとこうなんだそうです。
…いやあ何と言いますか、繰り返すようで恐縮ですが決してネタではありませんので念のため。

「首都圏産科崩壊 東京大空襲始まる(その9)墨東病院11月の当直表は地獄の様相 都は墨東病院の常勤産科医を労基法違反の過重勤務で殺す気か」より抜粋

 墨東病院周産期センターの2008年11月医師当直表です。文字ずれてたりしたらごめん。(略)
産科・新生児科とも常勤医だけではとても回らず、非常勤の先生も混ざっています。この表では区別しませんでした。ちなみに私も以前大学病院時代、墨東ではない別の某都立病院で非常勤当直した事あります。外科だったけど、常勤だけではとても足りてませんでした。
 墨東では例の事件を受け、土日の産科当直をできるだけ2人体制にすると発表しました。しかも常勤医使って。
http://www.bokutoh-hp.metro.tokyo.jp/200811sanka.pdf
この結果がこの表であり、常勤医は月5?7回の当直になっています。無論翌日は休みじゃありません。
 まさしく「奴隷エンジン」ですね。私は特に、g-A先生のお体が心配です。
(略)
g-A先生の11月下旬は地獄だ。
 11/23 日直+当直(24時間連続勤務)
 11/25 日勤+当直+翌日8時間=32時間連続勤務
 11/29 日勤+当直+翌日8時間+当直+翌々日日勤=56時間連続勤務
(略)
大丈夫ですかっ、産科のA先生。
11/23の朝9時から12/1の夕方5時までの8日間、200時間の内
 労働時間 136時間
 業務を外れている時間(理想値) 64時間
なのだ。実際には、9時5時の勤務の日でも、お産の進み具合によっては、勤務時間はもっと長くなる。
 もしA先生が、病魔に襲われてもおかしくはない、苛酷な労基法違反の勤務を都が強いている
のである

まあ昨今では労働基準法などなど色々な法律を遵守している場所の方があまりないんだとは思いますが、これが都知事閣下ご自慢の周辺県の患者も引き受けるほど余力を持っている医療資源の実態かと思えばどうでしょうか。
「いやあ、いつもながら「天漢日乗」さんはちょっと大げさに言い過ぎるところがあるから」なんてお思いの皆さんもいらっしゃるかと思いますが、実際の当事者の声によるとこんな感じの認識らしいですよ。

都立病院医師の給与水準 石原都政で全国最下位

 妊娠中の女性が緊急入院を断られ死亡する事件が相次ぎ、都立病院の医師不足が大きな問題になっていますが、革新都政時代には全国の主要自治体病院で中位だった都立病院医師の給与水準が石原都政で最下位に後退したことが十四日、明らかになりました。日本共産党の松村友昭都議が都議会で追及しました。

 松村氏が都立病院医師の年間給与水準の推移をただしたのに対し、中井敬三病院経営本部長は総務省の資料を基に、全国の都道府県・政令市と比べ、革新都政時代の一九七六年度は五十六自治体中三十一位だったものの、自民党都政になって順位が下がり続け、石原都政の二〇〇六年度には六十一自治体中最下位に後退した事実を明らかにしました。

 松村氏は、石原都政が“医師の給与が高過ぎる”との包括外部監査の指摘や、都立病院への繰入金の二割削減を求めた「財政再建推進プラン」に沿って、待遇改善を怠ってきたと強調。待遇改善をはかり、産科・周産期医療で欠かせない女性医師の確保に努めるよう求めました。

 中井病院経営本部長は「都立病院の医師の充足率は高い」などと答えました。

いやあの、「医師の充足率は高い」ってあ~た、公立病院の定数を満たしてるから医師は足りてるなんて、満員電車でも車外にあふれていないからキャパは足りてると言うようなもので(r
今どきまともに救急やるような急性期病院でそんなこと言ってたら、あっという間に過重労働であっちでもこっちでも戦線破綻が目に見えているんですけど。
まずは机上の数字を睨んでいるだけじゃなくて、ちょっとでもいいから現場に出て当事者の生の声に耳を傾けましょうよ。

着々と死亡フラグ立てが進んでいる東京都救急医療体制ですが、まず明らかなリソース不足を認めていくところから始めていくのが筋じゃないんですか?
て言いますかね、やっぱりいるんですよ、牟田口の後継者って。
産科医を誤解させた二階さんだけじゃなくて、日本全国どこにでも牟田口さんの後継者だらけなんです。
彼らが今この瞬間も医療現場を追い込み、崩壊させていっているんですよ。

11月10日、司令官であった2階大臣は自らが立てさせた会見所に幹部を集めて
泣きながら次のように訓示した。
「諸君、当直医は、院長命に背き夜間救急を放棄した。受け入れ態勢がないから
医療は出来んと言って救急搬送を勝手に断りよった。これが病院か。
病院は空床がなくても受け入れをしなければならないのだ。
検査機器がない、やれ薬剤がない、機材がないなどは救急を放棄する理由にならぬ。
MRIがなかったらCTがあるじゃないか。CTがなくなれば、XPでいくんじゃ。
XPもなくなったら足で蹴って反応を見い。足もやられたら口で噛みついて意識を確かめい。
当直医には応召義務があるということを忘れちゃいかん。
病院は公立である。知事が守って下さる・・・」
以下、訓示は一時間以上も続いたため、当直明け通常勤務後の残業の連続で、
立っていることができない医師たちは次々と倒れた...

|

« 今日のぐり「そば茶屋いきいき」「天の(天乃うどん店)」 | トップページ | 迷走中の阪南市立病院のその後 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

猪瀬直樹委員(東京都副知事)は地方分権改革推進委員会で、自治医大の9年の義務づけを短いと言い、20~30年の「拘束」を厚生労働省に主張していたくらいですので。

第24回会議(2007 年10 月23 日(火))
http://www.cao.go.jp/bunken-kaikaku/iinkai/kaisai/dai24/24gijiroku.pdf
(30~31頁あたり)

(猪瀬委員) 今の話に少しだけ抜けていたものですから。医者の数の問題のことなのですが、自治医科大とか防衛医大の卒業生については、一定の年季奉公ではないですが、勤務義務がありますね。何年間でしたか。
(佐藤課長) 9年間です。
(猪瀬委員) それは、短くないかなと思うのです。もっと長くすべきです。(略)私はそのときに言ったのですが、自治医科大とか防衛医大は9年ということですが、だったら、島根県出身者の入試枠をつくって、島根県での勤務を20 年、30 年間拘束する。その代わり地元の枠を設けて入学させてはどうか。つまり、それは県単位でものを考えるということです。国立大学については、国でものを考えるのですが、やはり県に戻せるような、そういうシステムというか、何かをつくらなければいけないのではないかと思うのです。どう考えますか。

投稿: 新小児科医さんのところにありましたが | 2008年11月21日 (金) 21時46分

その昔某県の自治医卒の先生方と親しく飲食をしたおりにいろいろと実情をうかがいましたが、あの9年というのは結構微妙な期間設定のようですね。
初期研修でローテートしている2年くらいの間は何か訳もわからないまま過ぎてしまう、ところがその後僻地に行って1年、2年とたつうちに「俺ってこんなところで何やってんだ?」と目覚めてくるものらしい。
それでも「俺、この奉公が終わったら残りの年限は基幹病院で後期研修するんだ」なんてアメがあるから何とか切れずにやっていけるのだとか。

いっそ20年、30年拘束と言わずもっと長期拘束のシステムを本気で導入してもおもしろいかも知れませんよ。
9年なんて中途半端にやっているから何となくの惰性で結構多くの人たちが乗り切れてしまったりするわけで、半ば一生ものとなったらハンパな心がけで足を踏み入れられるものではありません。
そういう試練をくぐり抜けるだけの覚悟を持っている人間なら絶対に途中で足抜けしたりはしないと思いますから公金投入の無駄もなくなるでしょう。

しかしその昔一生懸命看護師の御礼奉公を批判していたマスコミの系譜に連なる猪瀬氏のような方々がこうした大胆な提言をされるというのが興味深いですね(苦笑)。

投稿: 管理人nobu | 2008年11月22日 (土) 08時59分

素人意見で恐縮ですが、十分な医療費をぽんっとだす程の財力が都にはないというのもまた事実だと思います。医療政策に高すぎず安すぎずの正解はあるのでしょうか。不安になります。

投稿: 通りすがり | 2008年12月13日 (土) 23時18分

今どき財力万全の自治体なんてものがあるかどうかはともかく、問題は果たして金でどうこうなることなのかと言うことですかね。
このあたりは医療業界内部の人間においてもそれぞれ見解が分かれるところだと思いますし、自治体ごとに色々と違ったやり方をチャレンジしてもらうのがいいように思います。
少なくとも東京都には様々な選択枝にチャレンジする余力はあると思いますから(と言いますか、そういうことにしておかないと他の貧乏自治体が憤慨します(笑))。

投稿: 管理人nobu | 2008年12月14日 (日) 18時58分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/43141407

この記事へのトラックバック一覧です: 東京都の救急医療はデスマーチ?:

« 今日のぐり「そば茶屋いきいき」「天の(天乃うどん店)」 | トップページ | 迷走中の阪南市立病院のその後 »