« 情報発信と交流 ~ 医療と被医療の相互理解のために | トップページ | 阪南市立病院問題で抗議の辞職 ~ 全国に広がる公立病院の病根(1) »

2008年11月27日 (木)

救急問題ただいま迷走中 ~ システム改革に現場の声はどこまで反映されるのか?

先日東京都で相次いだ妊婦救急搬送の問題を受けて、関係者が桝添厚相に徹底調査を望む要望書を出したそうです。
まずはこちらの記事から紹介していきましょう。

妊婦受け入れ拒否「徹底調査を」…夫2人が厚労相に要望(2008年11月18日 読売新聞)

 東京都内で脳出血を起こした妊婦が複数の病院に受け入れを拒否される事例が相次いだ問題で、女性2人の夫が18日、舛添厚生労働相と面談し、再発防止や徹底した原因究明を求める要望書を手渡した。

 この日、厚労省を訪れたのは、10月上旬に8病院に拒否され、出産後に死亡した女性の夫(36)(江東区)と、9月下旬に少なくとも6病院に受け入れを拒否され、出産後に意識不明の重体となった女性の夫(39)(調布市)。2人は「二度と同じことが起こらないよう、徹底的に調査してほしい」などと要望した。

 舛添厚労相は面談後、記者団に対し、最重症の妊産婦や胎児の緊急治療にあたる「総合周産期母子医療センター」の設置要件について、「これからは、救急医療が同時にないと認めないという方向でやりたい」などと述べた。

この際に桝添厚相が「救急が出来なければ周産期母子医療センター設置を認めない」と発言したと報じられていますが、これはいささか説明を要する発言ですね。
先日も紹介しました「周産期・救急懇談会」でも北里大産科の海野教授が発言していましたが、そもそも周産期母子医療センターと言うものはその名の通り母子医療に関わるものであって、一般的な意味での救急が出来るかどうかは全く関係がないんですね。

海野信也委員(北里大学医学部産婦人科学教授)
「総合周産期母子医療センターが、母子救急の最後の砦であるように報道されているのだが、成り立ちの経緯はそういうものでは全くない。整備事業の主たる目的は、胎児と新生児の救急に対応できるだけのもので整備指針にも脳外科がなきゃいけないとは書いてない。産科、新生児、麻酔科の医師を置けばよくて、麻酔科は常勤である必要すらない。それで辛うじて施設基準をクリアしているような医療機関がかなりある。」

「え?それじゃ奈良の大淀病院や今回の東京みたいな症例はどうするの?」と誰でも思うところでしょうが、結論から言えばそんな症例に常時対応できる施設は全国でもそうそうはないというのが現状です。
今回の東京の事例を受けて桝添厚相は徹底的な調査を指示したと言いますが、その結果判ってきたことは産科救急に限らず救急医療全般における受け入れ能力の不足であって、「そんな素晴らしい医療体制は我が国には存在しませんでした」という事実だったということなんですね。
最近報道された中から幾つか救急に関連するニュースを拾い上げてみましょう。

周産期母子医療センターの7割、搬送受け入れ拒否を経験(2008年11月20日読売新聞)

 最重症の妊婦や新生児の救急治療を担う全国の「総合周産期母子医療センター」の7割が昨年度中、母体搬送の受け入れを断った経験があることがわかった。
 20日、厚生労働省が周産期医療と救急医療のあり方を検討する有識者会議に報告した。「新生児集中治療室(NICU)の満床」が拒否理由の9割を超え、厚労省はNICUの増床などを盛り込んだ対策の骨子案を同会議に提示した。

 東京都内で妊婦が病院に次々と受け入れ拒否されるケースが相次いだのを受け、厚労省が先月末から、45都道府県にある全75施設を対象に調査した。
 それによると、受け入れ拒否があったのは、回答した74施設の約72%にあたる53施設。このうち、理由をNICUの満床としたのが49施設と約92%を占めた。NICUの病床利用率は、90~100%が56施設と約76%に上った。NICUの充足状況では、22自治体が「不足」と答えた。
 厚労省が「24時間体制で複数医師の配置が望ましい」としている7床以上の母体・胎児集中治療室(MFICU)を持つ22施設のうち6施設は、土日や夜間に医師を1人しか配置していなかった。

重症患者の救急搬送時間、ワースト50件中12人が死亡(2008年11月14日読売新聞)

 2007年に東京都で救急搬送された重症患者のうち、119番通報から医療機関に収容されるまでにかかった所要時間ワースト50のケースで、少なくとも12人が死亡していたことが13日、総務省消防庁などの調査でわかった。
 中には、医療機関への照会回数が33回、搬送先に到着するまでに2時間56分かかった後に死亡していたケースもあり、救急医療体制の深刻な実態が改めて浮かび上がった
 総務省消防庁と厚生労働省が同日、民主党の長妻昭政調会長代理の調査要求に対し説明した。ただ、搬送時間と死亡との因果関係は不明で、長妻氏はさらに調査を求めている。

 照会回数が33回に上ったのは、90歳代の女性患者で、「誤えん性肺炎」で亡くなり、搬送から死亡までの日数は2日だった。「呼吸不全」で亡くなった80歳代の男性患者は、照会回数が21回で、搬送時間は2時間32分で、死亡までの日数は1日だった。長妻氏は「死亡までの日数が短い事例では、早く搬送されていれば、助かった患者もいたのではないか」と話している。
 また、死亡した12人のうち、搬送時間が長かった3人は火災や水の事故のケース。照会回数が3回以下と少なく、発生時に通報があり、救急隊が現場で待機したため、収容までの時間が長くなったと見られる。

 搬送後に回復して退院した事例でも、照会回数が50回、搬送に要した時間が4時間49分のケースや、照会回数が26回、搬送時間が4時間27分だったケースがあった。総務省消防庁によると、東京都では07年に、転院搬送も含め約5万人の重症患者を救急搬送している。

妊婦184人、脳血管障害に 06年 厚労省研究班調査 10人が死亡(2008年11月14日北海道新聞)

 

妊娠や出産に関連し脳血管障害を起こした妊婦は、二〇〇六年に少なくとも百八十四人おり、このうち十人が死亡していたことが厚生労働省の研究班(主任研究者・池田智明国立循環器病センター周産期治療部長)の調査で明らかになった。
 妊婦は胎児に酸素や栄養を送るため血液量増などで血管の負担が拡大、脳血管障害のリスクが高まるとされる。東京都内で十月、脳出血の女性が八病院に受け入れを断られ、死亡した事例などが明らかになっているが、国内の詳しい実態調査は初めて。

 調査は総合病院や周産期母子医療センターなど千五百八十二施設が対象。道内六十六施設を含む千百七施設が回答した。
 百八十四人の病名の内訳は、子癇(しかん)(高血圧などを伴う妊娠中毒症の一種)や高血圧性脳症八十二人(死亡二人)、脳出血三十九人(同七人)、脳梗塞(こうそく)二十五人(同なし)、くも膜下出血十八人(同なし)、脳静脈洞血栓症五人(同一人)など。
 死亡患者が多かった脳出血は診断までの時間が三時間以内なら死亡率が8%だったのに対し、三時間を超すと36%に上がった。また脳出血患者の72%は発症時に産婦人科を受診しているが、最終的な治療は85%が脳神経外科で受けていた。

こうした事態がなぜ起こっているのか、訴訟リスク等に絡んだいわゆる防衛医療の普及によって現場が昔ほど無理(無茶?)をしなくなったということもあるでしょうが、根本的な原因は需要が供給を上回っていることではないでしょうか。
たとえば石原都知事が自慢する東京都の医療体制にしても、その実態を見てみれば崩壊寸前と言うより、既に崩壊している事実を隠蔽していると言うに近いのではないかと思わされる状況のようです。

都のNICU満床 原因に周辺自治体から患者流入 広域的連携が必要(2008年11月18日産経新聞)

 東京都で相次ぎ発覚した妊婦の救急受け入れ拒否問題で、都内の産科救急施設の救急ベッドの恒常的な満床原因に、埼玉、千葉、神奈川県といった周辺自治体から患者が流入している実態があることが分かった。自治体ごとに産科救急施設の整備状況に大きな差があり、都心への流入が起きているとみられる。医療関係者らは、都県の枠を超えた仕組み作りの必要性を指摘している。

 問題になっている受け入れ拒否のケースで、病院側は「医師が別の出産に対応している」ことや「NICU(新生児集中治療室)が満床になっている」ことなどを理由にしていた。
 NICUなど高度な医療設備を持つ総合周産期母子医療センターは東京都の9施設に対し、神奈川県4、千葉県2、埼玉県1。東京では136万人当たりに1施設なのに対し、神奈川県218万人、千葉県302万人、埼玉県704万人とばらつきがあった。

 埼玉県唯一のセンターである埼玉医科大総合周産期母子医療センター(川越市)は、平成19年度に約500件の妊婦の母体搬送要請があったが、約200件しか対応できなかった。残る300件の多くが都内に搬送されたとみられる。県の周産期医療部会によると、県にNICUは83床あるが都の約3分の1。田村正徳センター長は「依頼数は受け入れ能力を完全に超えている。埼玉は都におんぶにだっこで何とかやりくりしている」という。
 4つのセンターがある神奈川県でも、県外病院に妊婦搬送するケースは少なくない。県によると、18年度の県外搬送事例は103件。全搬送件数の約1割に当たる。県外搬送の約8割が都内に搬送されているという。
 千葉県でも事態は同様。「東京東部に位置する都立墨東病院(墨田区)が、千葉県の妊婦の救急搬送の重要な受け入れ先になっている」と指摘する医療関係者は多い。

 周辺自治体でも総合周産期母子医療センターの整備構想はあるが、産科医不足が原因で実現しない状況だ。埼玉県では自治医科大学付属さいたま医療センター(さいたま市)で施設を整備したが、医師不足のため機能していない。
 医療関係者からは、立て続けに発覚した搬送拒否問題を受け、都の病院が周辺自治体からの搬送受け入れのハードルを高くすることへの懸念も出始めている

もともと首都圏は確かに医師人口も多いのですが、巨大な人口圧力を背にした医療需要に対しては過小な医療資源しか存在しなかった、しかも今や周辺各県からの医療難民もそろって東京都下に流入しているというのですから、いわば東京都救急医療の崩壊は必然であったわけです。
一番の問題はそうした医療の需要と供給のバランス崩壊を、「医者は大都市圏に偏在している」という神話を信じ込んで問題が顕在化するまで知ることすらなかった(現在も理解していない?)桝添厚相や石原知事のごとき無知な人々が医療行政の上にどっかと腰を据えているという現実でしょう。

こうした構造的な問題に対する有効な処方箋というものは存在しないのでしょうか?
実のところ東京のような巨大医療圏よりも、医療規模の小さい地方において先進的な試みが進んでいる場合があります。
旧世紀末頃には政府、マスコミ、国民がそろって医局潰しに邁進し、今では新臨床研修制度の影響もあって医師派遣システムとしての医局制度というものは全く昔日の面影がないほど落ちぶれ果てたものとなりましたが、実のところ地域医療を維持してきたのはこうした旧態依然たる医局制度の恩恵であったというのも医療関係者の間では周知の事実であったわけです。
まるで時代に逆行するように医局機能を積極的に強化、維持活用することで、地方でありながら今も有効な医療制度を維持している山形大の例を見てみましょう。

先生が消えていなくなった!絶望の医療崩壊ルポ(2008年12.15号プレジデントより)

(略)
東京23区には700床以上の大病院が21ある。その運営母体は大学が12(私立10、国立2)、都立が4、国立2、その他3。この12の大学病院のうち、8つは都心部の新宿・文京・港区にあり、残る4つは北部と南部に2つずつ。問題の起きた東部、西部地区には「分院」はあるものの、大学病院本院は存在しない。東京大学医科学研究所の上昌広特任准教授は話す。
「大学病院本院の不在は地域医療のうえで大きなマイナスです。養成機関である大学病院には多くの医師が集まるため、どの地域でも医療ネットワークの中核。それがない東部と西部はどうしても医師不足に悩むことになります」

12の大学病院のうち、都心部にある7病院は大正時代までに創設されている。残る5つのうち最も創立が新しいのは1971年の帝京大学医学部で、それ以降の開院はない。
専門病院でも需要の多い地域のほうが儲かる。たとえば癌研有明病院は3年前に大塚から有明に移転したところ、患者が増え、経営状況が改善した。本来、大学病院本院のない場所には大学の進出があるはずが、医療は自動調整が働かない。ベッド数の総枠規制という政治的失策の影響が大きい。

都立病院である墨東病院に対する要求は当初から過剰だったという。
『ガダルカナルの日本軍』に近い状況でした。地域唯一の中核医療施設でしたが、大学病院ではなく医師集めが難しかった。また約700床は私立大学本院の半分程度と、すべての診療科のレベルを高く維持するには困難な規模。それでも地域との連携で乗り切っていたが、2002年にERが開設され、三次救急の重篤患者だけでなく、一次・二次救急も担うようになり、パンクしてしまった」(上特任准教授)

病院の配置が人口に見合わないというのは全国的な問題だ。人口当たりの医師数が最も少ないのは埼玉県、茨城県、千葉県などの東京近郊の自治体。人口の急増に対して、公共投資がおろそかになっていたためだ。全国的には「西高東低」となっている。
(略)
日本では80年代以降、医師数に応じて医療費は増えるという「医療費亡国論」が唱えられ、増員が抑えられてきた。しかし欧米では90年代に「医師数と医療費は無関係」という学説が一般的になる。以後、先進諸国は医師増員に踏み切ったが、日本は約20年間、医師数を抑制してきた。日本の100床当たりの医師数は世界でも最低クラス。米国の5分の1でしかない。
医師不足は明らかだ。なかでも搬送拒否の問題が起きた墨東病院や担当医が逮捕・起訴された(のちに無罪確定)福島県立大野病院事件など、産科をめぐる医師不足は深刻である。
上特任准教授は「日本の周産期医療はいったん壊れるだろう」と悲観する。
「医療事故に対して訴訟を起こそうという圧力は引き続き高まっています。第二、第三の大野病院事件は必ず起きる。産科医が病院を立ち去るという状況に歯止めがかからず『もう出産ができない』という状況に陥らなければ、世論は変わらず、政治も動かない

消防庁によると、東京都における06年の妊婦の搬送拒否は528件。一方、秋田、福井、熊本、山形の四県は0件だった。四県のうち山形県は「周産期母子医療センター」の指定病院がない。山形大学医学部の嘉山孝正学部長は「あえてつくらせなかった」と説明する。
センター化はきわめて行政的な発想。医師にとって魅力がなければ人材は集まりませんし、搬送が1カ所に集中すればネットワークが壊れる。ハードよりもソフトの運用が重要なんです

医療はよく職人の世界にたとえられる。同じ外科でも心臓や脳、救急など「得意分野」によって能力は違う。そして何を得意としているかは、「素人」である役人にはわかりづらい。
02年に山形大学は県内の主要病院と「蔵王協議会」を発足させた。たとえば県内に産科の医師が「どこに」「どれだけ」いるかを調べ、搬送拒否のない体制づくりを整えた。医療者だからできる人材調整の仕組みだ。
こうした機能は従来、大学の医局が担ってきた。医局が新卒医師の人事権を握り、派遣先を調整していた。だが04年から新臨床研修制度が始まると、医師たちは医局に残らず、学歴と職歴を磨くため「ブランド病院」に集中するようになった。この結果、地方大学病院の多くは研修医を確保できなくなり、医局からの派遣に依存していた地域の中核病院は医師不足に陥った。
(略)
「私が取り組んだのは医局の『機能』の強化でした。小泉改革などを経て、医師の偏在を調整できなくなっていた。医師不足の解消には時間がかかります。医療者はいま何ができるかを考えるしかない」

近く政令指定都市に昇格するらしい岡山市でもER創設の動きがあるようですが、もともと岡山県というところは地方の中小県の割に二つの医学部を抱え比較的医療資源に恵まれたところでした。
そんな岡山でも「川崎医大の産科は講師と助教授の二人体勢になった」なんてトンでもない話が起こるというくらいですから、どうも行政が一方の主導を握っているらしいこの計画を見るとき、石原都知事がぶち上げた東京ER構想なるものがどういうことになっているかに思いを馳せないではいられない話ではあります。
スタッフの手配も含めて地方都市におけるこうしたシステムが実際に稼働までもっていけるものなのか、稼働したとして果たしてどこまで有効に働けるものか、今後の続報を生暖かく見守っていきたいところですね。

岡山市と岡山大、「ER」創設へ連携(2008年11月12日  読売新聞)

3交代制、24時間365日対応
 岡山市と岡山大が協力し、地域医療の向上を目指す「岡山大・市保健医療連携に関する委員会」(会長=高谷茂男市長、千葉喬三・岡山大学長、委員14人)は政令市移行に向け、救急や一般の患者を受け入れ、すべての症状を診察する「ER」(救急治療室)を創設する目標を盛り込んだ連携構想を示した。県によると、ERを備えた病院は県内にはなく、行政と大学が連携しER体制をつくることも珍しいという。

 ERは、全症状の患者を診断し、応急処置など初期診療を行う。手術などの治療は、専門の医師、診療科などに引き継ぐ。
 10日に委員会がまとめた構想では、市と岡山大が、医師や看護師が対応する「岡山総合医療センター」(仮称)を開設し、その中にERを設ける。ERは1~3室を想定。ER専門の医師を中心に3交代制を取り、24時間365日対応する。
 また、センターは同大学から研修医を受け入れ、学内に地域医療の向上に役立つ講座も開設することなどを確認。センターの設置場所、人員、費用などは未定で、双方の協力事項は今年度末までに決める。外部の病院との連携や、構想の中で市民病院をどう位置づけるかについても協議する。

 市によると、市内の主要7病院を利用した救急患者は、2006年度で計約16万人。5年間で約3割増加し、うち9割が軽症者という。同委員会は、患者自身では症状の判断が難しく、より高度な医療機関を頼ろうとする傾向が強まっているとみており、「このままでは、各病院で手術や入院が必要な重症患者を十分受け入れられなくなることが懸念される」とし、ERの必要性を強調している。
 高谷市長は「市民が安心できる政令市に向け、大きな柱が出来た。岡山型の救急医療体制『岡山ER』を実現させたい」と意気込む。千葉学長も「他の地域にない最適な医療体制実現のため、もっと手を携えるべきだ。使命感を持ち構想を進めたい」と話している。

いずれにしてもこうした試みの核心を握るのは、医師不足叫ばれる今の時代に必要な人材を確保できるかどうかですね。
山形大の例での「医療者だからできる人材調整の仕組み」とは言い得て妙ですが、医者も人の子ですから政策的に動かすためには桝添厚相の言うところのインセンティブで誘導するか、あるいは現場の実情に応じたきめ細かな手配をしていくかです。
厚相も口では判ったようなことを言っていますが、現実問題として政策に反映させることが出来るかどうかが一番問われているわけで、「桝添氏は昔から口だけ」などという不名誉な悪評を今後の行動でぬぐい去ることが出来るかどうかですね。

その意味では医局制度の崩壊は医師派遣システムの崩壊であるのと同時に、不十分ではあっても現場の医師達の声を吸い上げ代弁していたシステムの崩壊でもあるわけです。
医師会などという特定層の権益を代弁する団体の主張が医師の総意の如く扱われるのも、元はと言えばこれに対抗する団体がないことに起因するわけですが、現状では救急医療の現場を担当している医療従事者の声が吸い上げられていないことも大きな問題ですよね。
旧来の医局制度が必ずしも良いことばかりではありませんが、今後どんなシステムでその代用を果たすにせよ、少なくとも現場の声に対して聞く耳を持たない政策では医療従事者の誰からも支持はされないでしょう。
何より医局制度の縛りから解放された今の時代の医師達は、自分たちがどれだけの主体的な選択枝を持っているのかということをようやく理解し始めているのですから。

現場の意見をどこまで聞ける―厚労省周産期・救急懇談会(2008年11月21日CBニュース)

 議論の時間も少ないまま、先を急ぎ過ぎてはいないか―。相次ぐ妊婦の救急受け入れ困難の問題を受け、厚生労働省が緊急に開催を決めた「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」(座長=岡井崇・昭和大医学部産婦人科学教室主任教授)。11月20日に開いた第2回会合に、今後の対策についての骨子案が示された。しかし、会合では地域事例のヒアリングに90分以上が割かれ、骨子案についての議論は約40分ほど。自ら用意した資料の内容にほとんど触れることができなかった委員もいるなど、議論は不完全燃焼の様相を呈し、急いでまとめようと委員の発言をせかす座長の姿だけが目立った。委員は骨子案の総論には賛成するものの、各論となれば意見は分かれている。細部にどこまで現場の意見が反映されるのか、出口は見えないままだ。(熊田梨恵)

 この日の会合の資料に、同懇談会が年内にまとめる報告書のベースとなるとみられる「今後の対策について(骨子案)」が添付された。骨子案は、「良好な実績を上げている地域の救急搬送体制の例示」と「短期目標として実現可能な対策の検討」から成っており、会合での議論が内容を左右する「実現可能な対策の検討」の項目は、▽患者の病態と受け入れ施設のマッチング〔(1)病態の分類―必要な対応、処置と緊急度(2)施設の機能による分類(3)地域のネットワークの促進〕▽情報の伝達及び効果的活用〔(1)救急医療機関の状況=病床数、人員=の伝達とその迅速化(2)情報の統合、センター化(3)搬送先選定の迅速化=コーディネーターの配置=〕▽施設の機能充実と人員不足への対応〔(1)病床数の適正化=特にNICUの増床=(2)勤務環境の改善(3)パラメディカル、メディカルクラークの活用〕―の3つ。
 事務局や会合での岡井座長の発言によれば、骨子案は岡井座長が作成したもので、事務局は「中身にはノータッチ」としている。

 懇談会は年内に報告書をまとめなければならないため、あと数回の開催で議論の内容を取りまとめていく必要がある。このため、骨子案の内容にかかわる議論に時間を多く割くかと思われたが、同日の会合はヒアリングだけで予定していた120分のうち90分を使った。救急と産科医療の連携の事例などについて、3 人の参考人に加え、委員からも発表があったためだ。参考人には、日本助産師会の岡本喜代子副会長、厚労省から出向中の広島県健康福祉局の迫井正深局長、青森県立中央病院総合周産期母子医療センターの佐藤秀平・母体胎児集中治療部部長が招かれていた。

■病態で分類した受け入れを
 ヒアリング終了後、岡井座長は「残り時間が少ない」としながら、骨子案についての議論を始めた。「患者の病態と受け入れ施設のマッチング」の項目について、昭和大医学部附属病院で決めた母体搬送についての受け入れ判断基準を引き合いに、「病態を分類して、『この病態であればこの施設』というのを決めた方がいいんじゃないか。『この施設は胎児・新生児が強いから当然診る。母体が緊急のときはこちら』と整理する必要があるのでは」と述べた。さらに、病院の集約化の必要性にも言及し、「理想を言えば、大きな救急施設の中にどんなものでも受け入れられて、その中に周産期もあるというようなこと。日本はこれからそれを目指してほしい」と述べた。
 これに、杉本壽座長代理(阪大医学部救急医学教授)も同調した。ただ、「周産期すべてそうしろというのではなく、それぞれの役割がある」として、あくまで周産期母子医療センターや救命救急センターのほか、多くの診療科をそろえている大学病院で実施している模範的な例としてほしいと求めた。
 海野信也委員(北里大医学部産科婦人科教授)は、「そうはいっても(救急搬送について)取れないところや、機能しないところもある。実際の受け入れ実績も共に明らかにし、地域の先生方が評価しながらやれる仕組みも必要」と述べた。
 舛添要一厚生労働相は「医療者ではない立場から」と前置きした上で、「病態について、吐き気や嘔吐など、病態判断ができるのだろうか」と疑問を呈した。
(略)
 このほか、スムーズに搬送するためのコーディネーターの配置が骨子案に盛り込まれたことについて、池田智明委員(国立循環器病センター周産期科部長) が、地元の大阪府で運用がうまくいっている例を紹介し、「コーディネーターはOBの医師がよい」と主張した。これに対し、海野委員は「数少ない医師が現場に専念できる方がいいのでは」と述べ、医師である必要はないとした。海野委員は提出資料の中で、情報システムの更新や搬送先照会の実務は、原則として行政の責任で行うよう求めている。
 厚労相はコーディネーターについて、「質の問題に尽きる。力量によってうまくいくかどうかがあると思う。役所は『こんな資格がないといけない』とか、やぼなことは言わないので、コーディネーターの要件がどういうものかを詰めていただきたい」と述べた。

■画一的な情報統合は危険
 予定終了時刻を15分ほど超過しており、岡井座長は「周産期と救急医療の情報をネットワーク化するということで、皆さん異論はないと思う。情報をセンター化し、コーディネートして早く受け入れ先を探すということで、次の次の会に(案を)出したい」と述べ、議論を終えようとした。
 そこで田村正徳委員(埼玉医大総合医療センター総合周産期母子医療センター長)が、情報ネットワークの統合に異論はないとした上で、「関東圏、大阪圏で情報コントロールセンターをつくるようにしないといけない」と述べ、都市部の情報が周辺の県にも分かるようにしてほしいと求めた。
 さらに有賀委員が、周産期救急情報システムは都道府県単位だが、救急医療情報システムは、市町村消防の単位で運用していることを指摘し、「単純に一緒にやれるかは、地域で工夫が必要。地方は地方で上手にやっていくことがあるということでは」と述べた。
 岡井座長は「地方の特性で具体的にやるなど、地方の自分たちのやり方というのがある。ここ(懇談会)は全体のグランドデザインを考えるところだから、ここで皆さんの知恵をお借りして、いいものを考えていただきたい」と、ここでも早口で引き取った。

 最後に、阿真委員が発言した。「先生方はお母さんたちがどれほど不安を感じているかご存じかと思いながら聞いていた。本当にたくさんのお母さんたちがものすごく不安を感じている。これまで医療についてわたしのところになど来なかった一般のお母さんが、何か不安を感じて訴えている。不安は不安として、医療がいかに大切なものかに気付いている大事な時期だと思う。わたしたちができることを考えてきたから、次回話したい」。

|

« 情報発信と交流 ~ 医療と被医療の相互理解のために | トップページ | 阪南市立病院問題で抗議の辞職 ~ 全国に広がる公立病院の病根(1) »

心と体」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/43240704

この記事へのトラックバック一覧です: 救急問題ただいま迷走中 ~ システム改革に現場の声はどこまで反映されるのか? :

« 情報発信と交流 ~ 医療と被医療の相互理解のために | トップページ | 阪南市立病院問題で抗議の辞職 ~ 全国に広がる公立病院の病根(1) »