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2008年11月26日 (水)

情報発信と交流 ~ 医療と被医療の相互理解のために

先日紹介しました川崎医大産科の先生が提唱するところの「妊娠の心得11か条」ですが、なんでも予想以上に反響が広がっているようです。

「出産は死の危険さえあります」 医師作成「妊娠の心得」大反響(2008年11月24日J-CASTニュース)

   産婦人科医がブログに書いた「妊娠の心得11か条」が、ネット上で大反響を呼んでいる。背景には、「飛び込み出産」の例のように、リスクに無知な人が増えていることがあるらしい。どうしてこんなことになったのか。

安全・安心が当たり前と思っている人が増えている

    「セックスをしたら妊娠します」
    「神様から授かったら、それがどんな赤ちゃんでも、あなたの赤ちゃんです」

   こんな当たり前とも思える「妊娠の心得」。それを「11か条」にまとめたのが、岡山県の川崎医科大学附属病院で産婦人科医長をしている宋美玄さん(32)だ。宋さんがこの11か条を、自らのブログ「LUPOの地球ぶらぶら紀行」に書き、医療介護CBニュースが2008年11月17日付記事で伝えると、たちまちネット上で話題が沸騰した。
(略)
   当然知っているべきこうした「心得」が、なぜ知られていないのか。
   まず考えられるのが医療の進歩だ。ピルなどの避妊手段が普及し、出産で命を落とすケースもかなり減っている。そして、こうした医療を過信して、妊娠・出産期間を通じて、安全・安心が当たり前と思っている人が増えていることがある。

高齢出産によるリスクも増えている

   医療過信の典型的な例が、「飛び込み出産」だ。

   奈良県で2007年8月29日、救急車で搬送中の妊婦(38)が16回も病院に受け入れ拒否されて死産したケースは、妊娠7か月にもかかわらず、かかりつけ医がいなかった。
   「飛び込み出産ですと、HIVにかかっているのか、赤ちゃんが逆子なのかという情報がなく、病院側も不安になって尻ごみしてしまいます。そうして、妊婦の方も、結果的に不利益を被ります」と宋さん。「マスコミの論調は、どんな妊婦でも命を救って当然というものです。妊婦が無責任なケースでも、救えなければ医療側が責められるというのはどうかと思いますね」

   都内では、脳内出血の妊婦(36)がたらい回しにされ死亡した事故が08年10月22日に発覚した。このケースはかかりつけ医がいた。しかし、宋さんは、病院が受け入れても助かったか分からない危険な状態であったのにもかかわらず、ニュースが搬送を断ったことだけを強調していると感じた。そこで、妊娠リスクの存在を知ってほしいと思い、「妊娠の心得11か条」を書いたという。
   とくに、晩婚化が進んでいる中では、高齢出産によるリスクも増えていると宋さんは指摘する。「なおさら、合併症の発症などリスクの高さに気をつけないといけません」

   ただ、はてななどの書き込みの一部では、リスク強調は不安を与えるだけ、ますます子どもが生みたくなくなるといった声も出ている。
   これに対し、宋さんは、「患者と医者は、立場が違うので溝があるのは当然です。だから、私たちが毎日の医療で安全に力を入れていることも知ってもらい、その溝を埋める架け橋になりたい。11か条は、そのためにまとめました」と話している。

「医者はもっと自ら声を出していかなければ」とは桝添厚相も口にするところですが、マスコミにも黙殺されていた一昔前と違って今はネットで自己発信するという手段があるのは良いですよね。
もともとはネット上から広まった「医療崩壊」という現象に対する危機感ですが、近ごろの医療業界ではそこからさらに一歩を踏み出してリアル社会での活動につなげていく動きが各地で見られるようになりました。
現場では当たり前の常識とされているようなことでも部外者には案外知られていなかったりするもので、こうした活動はどんどんやっていかなければならないと思いますね。
というわけで、最近の試みの幾つかを紹介してみましょう。

コンビニ感覚で夜間受診も 小児救急医療考える 保護者ら100人 応急処置など学ぶ 豊前市で講演会(2008年11月22日西日本新聞)

 混雑しないからと夜間にコンビニ感覚で小児科を受診する保護者‐。切迫する小児救急医療の実情と家庭での応急処置法をテーマにした講演会が19日、豊前市総合福祉センターであった。保護者ら約100人が参加、子どもに異変が起こった際の見極め方などを学んだ。

 講演会は、保護者の適正な病院の利用と核家族化の進展に伴う育児不安の軽減を目的に、豊前青年会議所(久冨竜志理事長)が企画した。
 豊前築上医師会によると、管内の小児科専門医は2人だけで、診療を行っている医師を含めても計13人しかおらず、小児科医師は不足している。豊築休日急患センターでの勤務に加え、行橋京都休日・夜間急患センターへの出張も余儀なくされ、勤務は多忙という。

 講師を務めた、まえだ小児科医院の前田公史院長が、発熱、おう吐、腹痛・下痢、誤飲などの対処法を紹介。「熱があっても夜眠れて、顔色が変わらなければ大丈夫」、「せき込みだし、じんましんが出てきたらすぐに受診を」など具体例を挙げながら説明した。
 2人の子どもを持つ築上町赤幡の保育士楳沢(うめざわ)佳代さん(39)は「子どもが発熱したときの対処法などとても参考になった」と話していた。

地域医療 街ぐるみ  南砺市 /富山(2008年11月22日朝日新聞)

住民も対象にセミナー 医師を支える人材養成に力

 医師不足に悩む南砺市が、医師以外の医療職の能力向上や、住民の医療知識を深める取り組みを始めた。名付けて「地域医療再生マイスター養成」プロジェクト。医師をすぐに増やすことが難しい状況で、勤務医の負担を軽くし、今ある医療提供体制を守ることが狙いだ。
(略)
 症状の緊急度を判断し、初期症状に対応できる看護師ら医療スタッフがいれば、医師の仕事は軽減する。医学の基礎知識を持つ住民が増えれば、「コンビニ受診」などの抑止にもなるはず――。プロジェクトが目指すのは、医療の提供側と受け手の連携だ。

 同市がプロジェクトを始めた背景には、深刻な医師不足がある。三つあった市立病院のうち、2月に旧市立福野病院を外来のみの診療所に転換。診療所の小児科診療は現在、2週間に1回だ。公立南砺中央病院は10月から、夜間の救急車受け入れを一部制限している。

 同市医療局の倉知圓管理者は「もう少し今ある『医療』を大事にしないと、崩壊しかかってしまう」。そこで、富山大付属病院総合診療部の山城清二教授と協力し、昨年12月、医療スタッフ向けのセミナーを開くことから始めた。

 人材を「守る」だけでなく、「増やす」取り組みも進行中だ。山城教授は5月下旬から週1回、同病院の後期研修医らと、市内で在宅介護を受ける高齢者を往診している。同市を一般的な病気を判断・治療し、必要なときは専門医に紹介できる「総合医」を育てる場にするのが狙い。

 同市医療局も「地域医療を目指す人に研修先に選んでもらえるようになれば……」と期待している。

地域医療を考える県民フォーラム:医師不足の打開策探る 鳥取で開催 /鳥取(2008年11月25日毎日新聞)

◇「住民の協力不可欠」

 医療や行政の関係者らが参加して地域医療の問題点を話し合う「地域医療を考える県民フォーラム」が24日、鳥取市内のホテルで開かれた。参加した約400人は医師不足の現状や打開策についての講演、パネルディスカッションに耳を傾けた。

 厚生労働省の栄畑潤・大臣官房審議官が「日本の医療事情について」と題し基調講演。「現在の医師不足問題は、産婦人科や外科などのリスクを伴う診療科の医師数が年々減少している『診療科の偏在』と、各都道府県や市町村で医師数にばらつきがある『地域の偏在』の“二つの偏在”によって生じている」と指摘。「研修を終えた医師が各地域で働くようなシステム作り、産科医や外科医のリスクを減らす法整備などの包括的な取り組みが必要」と述べた。

 パネルディスカッションには、藤井喜臣・副知事や能勢隆之・鳥取大学学長ら5人が参加。兵庫県丹波市の県立柏原病院の取り組みが紹介され、本当に必要な人が受診できるよう、気軽なコンビニ感覚での受診をやめるよう地域で取り組んだところ、時間外受診が約半分になったという。また、1カ月で20日以上病院に通っている患者が実際は月2回程度の診察で十分だったケースなどが報告され、現在の医療体制では、患者の需要に応えられるだけの医師がおらず、住民の協力も不可欠であることが強調された。

 行政と医療の相互の取り組みに関心がある男性会社員(32)は「行政、医療、住民がそれぞれ動かないといけないことがよく分かった」と話していた。

小児救急医療電話 利用者の8割、病院行かず…兵庫(2008年11月20日  読売新聞)

兵庫県まとめ 安易な受診 歯止めに効果
看護師らの対応に安心感

 夜間や休日に子どもが急病を発した際、看護師らが相談に応じる「小児救急医療電話相談」(#8000)の利用者のうち、約8割が実際には受診せず、電話相談だけで済んでいるとみられることがわかった。体調のちょっとした変化でも病院に駆け込む「コンビニ受診」の歯止めに一役買い、兵庫県医務課は「経験豊かな看護師らの丁寧な対応が、保護者に安心感を与え、症状で治療順位を決めるトリアージのような役割を果たしている」と分析している。

 #8000は県が2004年11月に始めた。ベテラン看護師や助産師、保健師が常時2人体制で月~土曜は午後6時~午前0時、日祝は午前9時~午前0時に無料相談に応じる。2005年度は1万678件だった相談件数は、07年度には1・8倍の1万9258件に増加した。

 県の集計によると、07年度の約83%にあたる1万5908件が病院の紹介などをせずに、症状の相談のみで済んだという。目的別では「受診すべきかどうか」が最多の7821件で、次いで「対処法を知りたい」が7622件だった。症状では、発熱が全体の約3割を占め、嘔吐、発疹、転倒・転落、誤飲と続いた。

 また、「親切に対応してくれた」との声も多く、核家族化が進み、身近な相談相手がいないためか、育児の悩みを打ち明けるケースもあるという。

半ば崩壊している医療を支えるのはひとり医療従事者のみならず、被医療者の側からの努力も必要であるということがご理解いただけるでしょうか。
こうやって医療側と被医療側の連携と相互理解が進むばかりであれば何も困ることはないのですが、時にどうしたものか行き違いが生じることもあります。
兵庫県では上記記事のように電話相談もやっているのですが、残念ながら先日は神戸市で小児救急当番病院の新聞告知をやめるというニュースがありました。
これも記事を読んでみますと、結局は医療側と被医療側の救急医療というものに対するとらえ方の行き違いが発端となっているように感じますね。

小児科救急の当番病院「新聞掲載を中止」 神戸 (2008年11月18日神戸新聞)

 神戸市内の病院でつくる市第二次救急病院協議会(吉田耕造会長)は十七日までに、神戸新聞など各新聞に掲載している休日・夜間の小児科当番病院について、十二月から紙面掲載をやめるよう求める方針を決めた。同協議会は「軽症患者の受診につながり、本来の診療体制が維持できない」と説明。一方、保護者からは「事情は分かるが、いざというときに不便では」などと不安の声も出ている。

 同市によると、小児科の二次救急病院の輪番制は一九九一年に開始。新聞紙面の掲載は九八年に始まった。同協議会の十一病院が協力し、六甲アイランド病院(同市東灘区)や西神戸医療センター(同市西区)などとともに、市内の小児救急医療を支えている。
 二次救急病院は手術や入院が必要な患者が対象だが、実際は軽症患者が九割ほどを占め、医師の負担が増えている。当番病院は平日一病院、土日曜は二病院だが、医師不足もあって体制維持が難しくなっているという。

 半数近くが新聞を見て来院したとの推計もあり、軽症患者の受診を抑えるため紙面掲載の中止を求めることにした。神戸市と同協議会は「迷惑をかける面はあるが、理解してほしい。各新聞社には当番病院を案内する電話番号を掲載してもらえるよう要請したい」とする。
 東灘子育てサークルネットの人羅亜矢子代表(41)は「今のままの掲載がありがたいが、救急医療が抱える問題も理解できる。案内の電話番号はぜひ載せてほしい」と話している。(紺野大樹)

■代替措置求める声も

 神戸市内の病院でつくる市第二次救急病院協議会が中止を決めた休日・夜間の小児科当番病院の新聞掲載。軽症患者が多く本来の診療体制が維持できないのが理由だが、子育て中の父母にとり子どもの病気は一大事。「できる限り掲載は続けてほしい」と存続を訴える声や、代わりに病院案内の電話番号掲載を求める声も多い。
 神戸市東灘区で一歳二カ月の長女を育てる母親(35)は「娘が四カ月のとき、初めて高熱を出した。病院を探そうと、思いついたのが新聞。すぐに確認できて助かった」と振り返る。「ネットで確認できるにしても、パソコンを立ち上げる余裕もないほど焦る。当番医が新聞に載っていないとパニックになりそう。できる限り新聞掲載を」と話した。

 一方で、軽症患者の受診が多いのも確か。十一月に開かれた市小児救急医療体制検討会議会合では、ある医師から「限られた小児救急体制で、現状をいつまで維持できるのか。お尻に火がついている状態」と危機感を募らせる声も上がった。
 神戸市などは、代替策として当番病院を案内する「こうべ救急医療ネット」の掲載を依頼する。働く親でつくるワーキングマザーズスクエア代表の山本玲子さん(33)=東灘区=は「絶対というときは番号が載っていた方がありがたいが、病院を紹介してくれる番号があり、きちんとつないでもらえるのならいい」と理解を示す。
 地域医療を守るため、安易な救急受診を控えるよう呼び掛ける「県立柏原病院の小児科を守る会」(丹波市)の丹生裕子代表は「当番病院の掲載中止はやむを得ないと思う。患者側も県の小児救急の電話相談窓口を利用するなど協力してほしい」と話す。(森 信弘、小林伸哉、今泉欣也)

本気で需給バランスが崩壊していてコンビニ受診抑制をはかるのであれば、まずファーストコールは電話相談として、受診が必要と判断された場合に当番病院を案内するシステムとした方がいいかなと思いますがね。

それはともかく、そもそも二次救急とは入院を要する重症患者に対応する施設であって、地方都市で二次救急輪番制を採用しているところでも医療機関に対して公示することはあっても、一般の紙面で市民向けに広報するような情報ではないと思うのですが。
一次、二次という区分を今後も維持するつもりであるのならば、広くアナウンスすべきなのは初診を担当すべき一次救急施設のほうであって、一般への二次急公示など単に現場の負担を増やすだけなのではないでしょうか?
この辺りは何故こんな情報の新聞掲載が始まったのかの経緯が分からないと何とも言えませんが、当時の担当者が何かしら勘違いして住民サービスか何かのつもりで始めたといったことであるなら、早急に是正すべきなのは当然ですね。

さて、あまり大きな話題にもなりませんでしたが先頃こういう記事が出ていたことはご存知でしょうか?

医学生の従事したい診療科、「内科」がトップ(2008年11月18日CBニュース)

 医学生や初期研修医らが「将来従事したい診療科」のトップは「内科」であることが、全国医学部長病院長会議などが実施した「臨床研修に関するアンケート調査」の速報値で明らかになった。11月18日に開かれた厚生労働省と文部科学省の「臨床研修制度のあり方に関する検討会」で公表された。

 同調査は、臨床にかかわる現場の医学生、研修医、指導医などの意識を把握するため、全国医学部長病院長会議と臨床研修協議会が共同で実施。医学生や初期研修医、卒後3-5年目の医師ら8945人から回答を得た。

 医学生の「将来従事したい診療科または基礎系の分野」は、「内科」がトップで14.1%。次いで「小児科」(11.5%)、「整形外科」(5.1%)と続いた。初期研修医についても「内科」がトップで13.6%。これに「小児科」(6.9%)、「整形外科」(6.2%)が続いている。また、医師不足が特に問題となっている「産科系(産婦人科・産科・婦人科)」は、医学生の6.5%、「救急科」は2.1%にとどまった。

 また、国などの公的機関による医師の計画配置については、医学生の49.3%、初期研修医の56.5%、卒後3-5年目の医師の58.1%が反対した。「賛成」と「一定の時期・期間であれば賛成」「インセンティブとの組み合わせなら賛成」の条件付き賛成を合わせた割合は、医学生45.3%、初期研修医38.4%、卒後3-5 年目の医師37.9%。

 このほか、医師不足地域で従事することについては、「条件が合えば従事したい」とする医学生は70.5%、初期研修医は65.4%と、3人に2人前後に上っている一方で、「条件にかかわらず希望しない」との回答も共に20.6%あった。
 「医師不足地域で従事するのに必要な条件」としては、医学生、初期研修医共に「処遇・待遇(給与)が良い」が最も多かった。

医学生7割「医師不足地域で勤務OK」条件は給与・住居(2008年11月19日朝日新聞)

 医学生の7割は、医師不足地域での勤務も条件次第でOK――。全国160の大学と研修指定病院の医学生・研修医らを対象にしたアンケートで、こんな傾向が浮かび上がった。ただ公的機関による医師の計画配置には半数近くが反対。結果を分析した厚生労働省は「医師不足対策は、強制でなく勤務環境の整備が大切だ」としている

 全国医学部長病院長会議と指定病院でつくる臨床研修協議会が共同で10月に実施。医学生、研修医ら約9千人から回答を得た(回収率61%)。

 医師不足地域での仕事に「条件が合えば従事したい」と答えたのは医学生が71%。だが卒後1~2年の研修医は65%、卒後3~5年の医師は59%、研修医らを指導する役割の指導医は47%と、年を重ねるごとに割合は減った

 医学生が医師不足地域で働く条件としたのは、「処遇・待遇(給与)がよい」(67%)、「居住環境が整備されている」「自分と交代できる医師がいる」(以上、58%)と待遇面が目立つ。「他病院との連携がある」(45%)など、医療体制を重視する声も高かった(複数回答)。

 一方、国などの公的機関が医師の勤務地を決める「計画配置」について尋ねたところ、全体の52%が「反対」。特に卒後3~5年の医師のうち58%、研修医の57%が反対し、医学生の49%より割合が高かった。

一見して「あれ?こんなものなの?」と感じた方も多かったのではないでしょうか?
産科系志望の学生が6.5%と言いますが、今実際にこれだけの率の学生が産科系に来ている医学部がどれだけあるものでしょう。
条件次第で(その条件もよく見ればなかなか厳しいものも多いのですが…)僻地勤務も可という学生に至っては学生の7割超という高率であること、そして卒後年数を経る毎に年々その比率が低下していっていることにも注目すべきでしょうね。
現場を知らない学生だからと言ってしまうのは簡単ですが、ここで考えるべきはこうした志を持った学生達がどのような経過をたどって社会の現実に目覚め志を曲げてしまうのか、それを防ぐためには何をどうしたら良いのかということではないですか。

一昔前までは(今も?)世間知らずの医学生を引っかけるなんてことはショボい仕事の代名詞のようなものだった時代がありました。
部活動も引退して適当に国試勉強なんてしてるサークルの後輩を近所の居酒屋あたりにでも誘い出して、「どうだおい?うちに来れば毎日若い看護婦と飲み会だよ?」なんて適当なことをささやいていれば幾らでも引っかかるなんて素晴らしい時代もあったのです。
もちろんいったん引き入れてしまえば「え?毎日飲み会?何それ?」で僻地病院だろうが奴隷病院だろうが叩き売ってしまえという医局の権威が強かった時代でもあったわけですが、何しろ学生自身が進路決定と言うことに関して大した情報収集をするでもなく、耳に入ってくる噂と漠然としたイメージだけで決めていたような状況でした。

今の医学生はどうでしょう?確かに相変わらず世間知らずのお気楽学生もいるでしょうが、年々多くの学生が自らの手で情報を集めようとするようになってきている、あるいは別な言い方をするならば、自分が世間知らずであることを自覚するようになってきていると感じます。
例の新臨床研修制度からこのかたマッチングだの何だのと難しいことを言うようになりましたから、自分で情報を集めてこないとあっという間に負け組転落という焦りもあるのかも知れません。
いずれにしてもいったん自ら知ろうとするようになった医学生たちは、昔のようなあり得ない空手形にそうそう引っかからなくなるだろうし、騙されたと感じた瞬間に手のひらを返すのも早くなるでしょう。
医療側と被医療側とのコミュニケーションの問題として考えると、こうした状況は大きなチャンスであると同時に、極めて危ない事態となる可能性も秘めているわけです。

医学生らが臨床研修制度をテーマに勉強会(2008年11月19日CBニュース)

 医学生らが自身のキャリアについて学び、意見を発していくことを目的につくられた「医師のキャリアパスを考える医学生の会」が、「臨床研修制度」をテーマに第1回の勉強会を東京女子医科大で開催した。会場には80人を超える医学生らが集まり、勉強会に招かれた「医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究班」班長の土屋了介・国立がんセンター院長に対して質問や意見をぶつけた。

 土屋氏は初めに、日本の医師たちが医師を育てる教育について真剣に考えてこなかったことが今の世代の負担になっているとした上で、「現役の医師を代表しておわびしたい。何とか皆さんが医師を始めるころにもう少しまともな研修制度ができるように努力していきたい」と述べた。

 会場からは、「学生側に与えるインセンティブ」や「ローテーション」など、臨床研修制度に関する質問や意見のほか、5年生時に国家試験を受験する資格を認め、合格すれば実習を受ける権利を与えるなどの「卒前教育の充実」を求める声などもあった。

 同会の事務局の森田知宏さん(東大3年)は、「これほど大勢の人が集まるとは思っていなかった。こういう機会がないと、リアルタイムの情報を知る機会がなく、ネットに情報はあるがそれすら知らないという状況がある。何を求めるかという意見発信をする前に、何も知らないので、自分が何をしたいのかがまず分からない。選択肢も何もないので、この会を通じて漠然としたものを何か具体化できるお手伝いができたらいい」と、初の勉強会を終えた感想を語った。

最近では医療という業界がなにかと世間の注目を集めるようになっていますが、社会が医療について関心を抱くのと同等以上に、医療の側でも社会の動きに目を光らせ、耳を澄ましているということを常時意識していなければならないというわけですね。
なんでもないひと言に心痛める者がいるというのは医療側も被医療側も同じこと、医師不足やコンビニ受診問題などをはじめとする医療問題数多の今の時代においては、医療側から被医療側というだけでなく、被医療側から医療側に対しても相手を尊重しているのだという姿勢をアピールしていくことが大事になってきているということです。
となれば若い医師達を集め定着させるために必要なことは何かを端的に言えば、真摯に彼らの待遇を改善するよう努める、そして何より適当に嘘をついて騙そうとか二階に上げて梯子を外すなどといった不誠実なことはしないという、ごく当たり前のことになるのではないでしょうか。

医療であれ何の業界であれ人間同士の関係が基本である以上、最後にものを言うのはお互いの信頼であることは言うまでもありません。
「聖地」だの「心が僻地」だのと一度ついてしまったレッテルをはがすことがどれほど困難であるかを考えれば、何であれ思いつきで行動に走る前に少しだけ想像力の翼を広げてみることが必要なんだと思いますね。

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