« これもカルチャーギャップというもの? | トップページ | マスコミは堕落した?! ~ もうたらいは回さなくていいの? »

2008年11月 4日 (火)

阪南市立病院問題の奇妙な経過

大阪府阪南市の阪南市立病院がなにやらとても面白い?ことになっているようです。
そもそも発端となったのは昨年6月に報道された同病院内科崩壊の話で、これ自体は関西都市部の地域中核病院クラス崩壊という目新しさはあったものの、しょせんは当時どこにでもありふれていた公立病院崩壊ネタととらえられていた話ではありました。

阪南市立病院、内科閉鎖へ(2007年6月25日)

常勤医5人退職…後任メドたたず

 大阪府阪南市が、医師不足で7月以降に市立病院の内科を閉鎖せざるを得なくなり、財政再建団体に転落する恐れが出ている。

 病院の収入が減るうえ、退職してもらう看護師ら最大約60人に退職金を払うことで生じる病院事業会計の赤字を補てんすると、市の一般会計の累積赤字が最悪で約20億円に膨らみ、再建団体転落の危険ラインを突破する。市は医師探しに奔走している。

 同病院(185床)の内科では、和歌山県立医大から派遣されている常勤医5人全員が、今月末で退職する。さらに、同医大が補充を断ったため、非常勤の医師4人も「常勤医がいないと緊急時の対応が不安」などとして同時に辞めることになり、内科を閉鎖せざるを得なくなった。同病院の収入は昨年度の見込みで20億9300万円で、そのうち内科が37%の7億7400万円を占め、閉鎖すると、大幅減収になるのは必至。一方、市の試算では、閉鎖に伴って「余剰人員」になるために退職してもらう看護師ら約60人の退職金が約6億9200万円にのぼり、病院事業会計は今年度だけで10億4500万円の赤字になる見込みだという。

ま、内科医がごっそり退職したことの経緯に関しては色々と噂はあるのですが、伝え聞くところではこの手の公立病院の常であまり待遇は良くなかったらしいと言うことですね。
金銭的にももちろんですが、もともと内科が忙しいなど労働条件もよくなかったことで、いろいろと貯まっていたものが爆発したという感じのようです。

もともと経営的にはよかったとは言えない同病院ですが、稼ぎ手の内科がごっそり抜けたことでますます経営悪化が進行したのは想像に難くない話。
何しろ内科のバックアップがなければ外科系その他も満足な仕事はできませんから、いつものように退職の連鎖が発生するのは当然のことでしょう。
半年ばかりが経過した今年1月にはついに入院全面休止というあれ?この道はいつか来た道舞鶴市民病院?な状況にまで転落してしまいます。

阪南市立病院、入院を全面休止へ 医師の大半が退職(2008年1月29日)

 大阪府阪南市は28日、市立病院(185床)の入院受け入れを4月から全面休止する方針を市議会特別委員会で明らかにした。11人いる常勤医師のうち少なくとも7人が3月末で退職する見通しとなり、後任の確保も難しいため。医師不足は全国的に深刻化しているが、大都市近郊の公立病院が入院を全面休止するのは異例だ。岩室敏和市長は「存続を含め、病院の今後について2月中旬に結論を出したい」としている。

 阪南市立病院は1953年開設。近隣の泉南市と岬町を含む約15万人医療圏の中核病院と位置づけられている。

 市によると、退職する見通しなのは整形外科、胃腸科・外科、小児科、麻酔科の医師。いずれも和歌山県立医科大(和歌山市)出身で、大学による「引き揚げ」とみられる。院長と小児科医の2人が4月以降も外来のみ診療を続ける意思を表明し、歯科口腔外科の2人は未定という。

 同市立病院では昨年6月末、過重勤務の懸念を理由に9人いた内科医が一斉退職し、内科診療を全面休止した。ほかの科の診療は続けてきたが、入院患者数が前年の約3割にまで激減。市幹部によると、和歌山県立医大の医局から「手術の機会が少なくなっている病院に医師を派遣し続けることは難しい」との意向が伝えられたという。

 阪南市は昨年夏以降、外部に経営を委ねる「公設民営化」や民間移譲も検討し、民間医療団体などと交渉してきたが、今もめどは立っていない。

さすがにこうした事態を受けて当時の岩室市長らも色々と手を打ってきたようで、まず医師の待遇改善にしなければならないと気がついたのは良いことだったと思います。
例えば今年春には公立病院では珍しい歩合制の導入で実質医師給与の大幅アップ!をうたったことがちょっとした話題になりました。
ま、病院公式HPで悲鳴混じりの医師募集呼びかけをするところまでは許せるとしても、トップページでいきなりフォントまで変えて「給与改定2000万!」なんて書いちゃうのはさすがにやりすぎかと思いますけどね(つか誰だよこの下品なページ作った奴は)。

医師確保へ「歩合制」で年収大幅増 大阪・阪南市立病院(2008年5月5日)

 大阪府阪南市は、勤務医の流出が続く市立病院(185床)に、診療実績に応じた歩合制を導入して医師給与を大幅に引き上げる方針を決めた。年収は現状より900万~1200万円程度増えて約1.8倍になる見込みで、全国水準を一挙に超える。公務員としての自治体病院医師に歩合制を適用するのは全国でも異例という。

 自治体病院は激務の割に報酬が低く、医師に敬遠される一因といわれる。同病院でも過重勤務への懸念から昨年6月末に内科医全員が退職。今年4月からは11人いた常勤医が5人に減り、補充が急務になっている。市は「地域医療を守るために協力してくれる医師に報いる給与体系が必要」と説明する。

 市が市議会に示した素案によると、現状の年900万~1300万円程度の基本給とは別に、患者数に応じた能率給を導入。入院1人につき1800円程度、外来1人で470円程度をそれぞれ支給する。1日平均で入院7人、外来20人を診ると年800万円強になる計算だ。
(略)
 諸手当を含む現在の平均年収は、全国平均より約200万円低い約1300万円(06年度)。これが新給与体系の導入によって、経験5年目の医師で約2千万円、20年目の部長級で約2600万円になると試算する。民間病院の水準を参考にしたという。関連の条例改正案を6月定例市議会に提出する方針。

 ただ、同病院は今年度、市の歳出の8%にあたる11億8千万円を一般会計から繰り入れても2億6千万円の不良債務が出る見通し。全職員の給与は医療収益の9割超で、全国平均(50%強)を大幅に上回る。新給与体系について、一部市議は「市民の理解が得られるだろうか」と疑問視しており、論議を呼ぶ可能性もある。

ま、職員給与が医療収益の9割って時点で「さすが公立病院…」と言いますか、もう終わってる病院の断末魔といいますか、とにかくヤバイ状況なことは明らかなんですが、問題はこの記事最後の一文。
この期に及んで「新給与体系について、一部市議は「市民の理解が得られるだろうか」と疑問視しており、論議を呼ぶ可能性もある。」というなら、この一部市議さんは医師の待遇を改善しない代わりに病院がなくなることに対する市民の理解を得るよう説明義務を果たさなければならないわけですがね。
一部市議の見識はともかくとして、給与引き上げの効果があったのか幾らかは新しい医師も集まり、今年9月から無事内科の入院も再開されたそうです。

内科再開に一安心 阪南市立病院(2008年09月17日)

 医師の大量退職で昨年7月から休止していた阪南市立病院の内科の外来診療と入院受け入れが、今月から再開された。市民らはひとまずほっとした様子だが、阪南、泉南両市と岬町の2市1町を合わせた15万人医療圏を支える中核病院の再生はこれからが正念場だ。
(略)
 内科の再開にこぎつけられたのは、常勤医2人、非常勤医1人を新たに確保したからだ。このうち内科の常勤医は今月着任。さらに別の非常勤医が26日から加わり、金曜の午前中の外来患者を診る。これで内科の外来診療は、月~金曜の午前中と金曜午後の態勢になる。

 07年度末で約9億8千万円の累積赤字を抱える病院経営の立て直しには、休止で離れた患者がどれだけ戻るかがカギになる。しかし、「まだ患者さんが戻ってくる傾向は見られない」と同病院事務局の森下伊三美経営企画課長は話す。
(略)
 岩室敏和市長は「内科の再開で市民の期待に応えられてほっとしている。今後も病院全体の医療サービスの充実を図っていく」と話している。

普通ならこれでめでたしめでたしで終わっていそうなところなのですが、この場合ここからが本番なのですよ。

さて、ちょうど今年の10月に阪南市長選がありましたが、当然ながらこの市立病院問題というものが主要な争点となったことは想像に難くありません。
現職の岩室候補、新人の福山候補とも市立病院再建を公約に掲げて戦ったわけですが、ここで注目すべきは選挙戦の際の福山候補の公約なのですね。

選挙:阪南市長選 現職と前副市長の争い 市立病院問題が争点--告示 /大阪

◇市立病院の建て直しを--福山敏博候補(58)=無新
 34年9カ月、行政に携わってきた。市立病院を立て直さなければ、毎日赤字が増えていく。招へいした医師が辞めてしまえばまた同じことの繰り返しだ。人脈を生かして大学や近隣の公立病院とのネットワークをつくる。現市政では必要な政策も実施できていない。税収をどう生かすか、見直さなければいけない時期だ。ぜひチャンスをいただきたい。

「人脈を生かして」というその人脈がどのようなものであるのかここでははっきりしませんが、「医師が辞めてしまえばまた同じことの繰り返し」という言葉からそれなりの問題意識をもって私立病院問題にあたることが予想される公約ですよね。
市長選自体は結局新人の福山候補が勝って新市長になったのですが、今回最大の問題はこの「同じことの繰り返し」を批判して当選した新市長がどういう方針で市立病院問題に臨んだかということ。
で、予想通りのオチと言いますか、こういうことになってしまったわけです。

阪南市立病院、待望の医師はや辞意…給与見直しに反発(2008年10月31日)

 大阪府阪南市立病院の内科医ら5人が辞職の意向を病院側に伝えていることがわかった。同病院は今年6月、医師の平均年収を1200万円から2000万円に引き上げたが、26日の市長選で初当選した元副市長が給与を引き下げる意向を表明したため、5人が反発したとみられる。大量退職となれば、内科の休止など病院運営に影響する恐れも出てきた。

 関係者によると、辞意を示したのは、内科と総合診療科の医師5人。

 同病院は昨年7月、和歌山県立医大から派遣されていた医師9人が相次いで退職したのを受けて、内科を休止し、一時は入院患者の受け入れもできなくなった。このため、市は、医師確保策として、給与を引き上げる歩合給制度を導入。大阪市内の民間病院などから医師を招き、今年9月から内科を再開したばかりだった。

 ところが、今月26日の市長選で、同制度の導入を主導した現職の岩室敏和市長が、新人の元副市長の福山敏博氏に敗れて落選。福山氏が当選後、「(歩合給制度は)公立病院になじまない」などと発言していた。

非常勤医3、4人も辞意…阪南市立病院(2008年10月31日)

 大阪府阪南市立病院の常勤医5人が退職する意向を病院側に伝えている問題で、別に非常勤医3、4人も同様に辞める意思を市側に示していることがわかった。同病院の医師は約30人で、病院としての機能を保てなくなる恐れも出てきた。

 関係者によると、今月26日の市長選で初当選した元副市長の福山敏博氏が、歩合給制度の見直しと和歌山県立医大を中心とした医師招(しょう)聘(へい)策を打ち出したことに医師らが反発。「詐欺にあったようなもので、市への信用を失った」として計8、9人が辞意を表明した。入院患者の手術が終わる来年2月頃に退職する可能性が高いという。

やはりあれですかね、「2000万円も出せば和歌山県立医大の助教授クラスが飛んでくる」なんて発言もあったんですかね?(苦笑)。

いや~最近の医師は奴隷根性が薄くなってきているのも確かなんでしょうが、この新市長もなかなかに動きが速くて素敵です(苦笑)。
そもそも和歌山県立医大が医師を出せないよと言ってきたのが一連の問題の発端だったわけですが、この新市長はどういう人脈でそれを覆すつもりだったのでしょうか?
しかもこうまで露骨に「釣った魚に餌はやらない」な態度ってもうなんと言いますが、あまりにあまり過ぎてかえって清々しいものがあります。

同病院が今後どういう経過をたどるのか判りませんが、とりあえずこの一事だけをもってしても立派に聖地確定、ですかね。
くれぐれもお断りしておきますが、ネタではありませんので念のため。

|

« これもカルチャーギャップというもの? | トップページ | マスコミは堕落した?! ~ もうたらいは回さなくていいの? »

心と体」カテゴリの記事

コメント

聖地ご指定ありがとうございます(* ̄ー ̄*)。

投稿: 阪南魔女 | 2008年11月22日 (土) 21時19分

はじめまして。
循環器内科医のDr. Iと申します。

事後承諾になってしまいましたが。
私のブログでも、記事を紹介させて頂きました。

「阪南市立病院で医師退職、簡単な経過」
http://kenkoubyoukinashi.blog36.fc2.com/blog-entry-407.html

今後とも、よろしくお願い致します。

投稿: Dr. I | 2008年11月22日 (土) 22時55分

わざわざご報告ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: 管理人nobu | 2008年11月23日 (日) 09時25分

「給与改定2000万!」みました。なんというか、もうちょっとお医者さんにどうやったらいいか相談すればいいものを、、と思いました。A企画とか、、、。
まあでも、麻酔科医には、麻酔診療報酬の50%と固定給を出すなど、かなり斬新な改革をしていて、もう一歩考えていればいいのになああと思います。公立病院の悪いところは、稼ぐ分野に投資も、人間、お金、医療資源の投入をしないで、逆に,支出をしぼることです。これでは、金の卵を産むアヒルを餓死させるようなものだと思います。

投稿: 麻酔科医 | 2008年11月24日 (月) 16時44分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/43006932

この記事へのトラックバック一覧です: 阪南市立病院問題の奇妙な経過 :

» 聖地認定完了☆阪南市 [東京日和@元勤務医の日々]
 個人的に、賃金を急に半分にすると宣言されたら、辞めるか辞めないのかは誰でも自由だと思っています。  そもそも、自治体が病院経営の能力がなく、赤字経営。待遇が悪く、病院の収入に直結する内科医師がまとめて離職(このあたりからかなり香ばしい・・・汗)。それがきっかけに公立病院の赤字が市当局の財政問題に直結。  仕方ないので成功報酬型で前市長が雇用した医師を、今度の市長が「医師には成功報酬は向かない・・・」。そりゃ辞めますわ。  いいですか?職人である医師を、プロ野球選手を契約更新で半分にしてやるから、前... [続きを読む]

受信: 2008年11月22日 (土) 12時07分

» 阪南市立病院で医師退職、簡単な経過 [健康、病気なし、医者いらず]
大阪の阪南市立病院で、新市長が突然、 「一方的に医師の給料を大幅に減らす。」 って言ったもんだから。 当然の事ながら、大勢の医師が退... [続きを読む]

受信: 2008年11月22日 (土) 22時56分

« これもカルチャーギャップというもの? | トップページ | マスコミは堕落した?! ~ もうたらいは回さなくていいの? »